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「鉄道開業150周年を契機に~寄稿シリーズ⑧」 辻聡氏「広域的自治体・事業者連携の取り組みを」

2022年9月25日
編集部

2022年9月25日(日) 配信

熊本県山鹿市に残る九州最古の鉄橋(ドイツ、ドルトムント・ウニオン社製)
辻 聡氏 レイルウェイ・トラベラー、日本鉄道保存協会顧問

 幼少期からの鉄道好きで、全国各地を乗り歩いてきた。「レイルウェイ・ライター」として活躍し、数々の鉄道ルポや評論、紀行を著した故種村直樹さんの知遇を得たお蔭で、私自身いくばくかの鉄道著作や寄稿の機会にも恵まれている。目下のテーマは日本の鉄道路線が開業した順に、各々の地を訪ね乗車する試みだ。題して「鉄道史を旅する」。新橋―横浜間に始まり、京阪神、北海道の幌内鉄道といった具合に歴訪すれば時間旅行の趣もある。

 直近の旅は、1889(明治22)年12月に博多―千歳川仮停車場間を開通させた九州鉄道。まず、博多駅至近の公園に立つ「九州鉄道発祥の地」碑を見物する。開業時の博多駅はここにあったのだ。鹿児島本線の下り列車に乗り、天拝山―原田間の車窓からも遠望できる「城山三連橋梁」は、線路が付替えられたため今に残る美しい煉瓦積みアーチ橋である。

 鳥栖駅の佇まいも捨てがたい。明治期の輸入レールがホームの上屋を支え、立ち食いそば店が盛業中なのも、昭和の時代の汽車旅を彷彿させて快い。駅舎は諸説あるものの1903(明治36)年築という。正面車寄せ上部の飾り物もおしゃれだし、線路をはさんだ裏手には古典蒸気機関車の268号機が静態保存され、さながら〝生きた鉄道博物館〟のようだ。

 千歳川仮停車場から千歳川(筑後川の異称)を渡り、対岸の久留米まで線路が延びたのは開業の3カ月後。このとき架けられた九州最古の鉄橋の一部が熊本県山鹿市の道の駅に健在である。その経緯を述べる紙幅はないが、せっかくだからここへも足を伸ばしてみた。

 九鉄は1891(明治24)年4月、門司(現門司港)まで達した。黒崎―小倉間は現在より内陸側にルートがとられ、当時の橋梁遺構などが北九州市の手で保存整備されている。さらに終着の門司港駅横には、かつての九鉄本社社屋を活用したJR九州の鉄道記念館も待つ。

 かように歴史をからめての鉄道旅行は見どころ満載で楽しいのだけれど、旅立ち前の下調べはひと苦労だ。今はネット情報が充実しているとはいえ、それぞれの自治体のホームページや先達の旅の記録などを丹念に見なければならぬ。たとえば「九州鉄道歴史探訪」といったかたちでバラバラの情報を一元化すれば、興味を抱く人は必ずや増えると思われる。

 市町村は自らの守備範囲のPRには熱心だが、もっと鉄道事業者や周辺自治体とも連携して広域的な横串をさしたらいかがか。郷土史博物館に埋もれているような鉄道関係史料にも光を当てれば、1本の鉄道を軸にさまざまな物語が織りなせるはずだ。

 福井・滋賀両県にまたがる北陸本線旧線のトンネル群や現存最古の旧長浜駅舎などを、敦賀市・南越前町・長浜市が連携して発信する「記憶の旅へ」事業、あるいは奈良市と京都府木津川市が共同で取り組む旧関西鉄道の一部、通称「大仏鉄道」遺構めぐりマップの作成等が参考になろう。

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