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【精神性の高い旅~巡礼・あなただけの心の旅〈道〉100選】-その14-斎場御嶽と久高島(沖縄県)神的なものを感じる場所 琉球王国の聖地を訪ねる

2022年6月4日(土) 配信

 ちょうど1年前の2021年5月から、精神性の高い場所を求めて旅を始めた。たまたま、源頼朝の二所詣に以前から関心があり、頼朝の歩いた道をたどっていたが、今年1月からNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」がスタートし、三谷幸喜氏の筆によって登場人物が生き生きと描かれていることから、いつの間にかドラマと連動した旅をしていた。

 

 しかし、この連載はドラマの舞台をたどる旅ではない。あくまでも現代人が失いかけている精神性を取り戻す旅を目指していたはずだ。連載も1年が経過し、ここでまた初心に立ち戻って、精神性を追求していきたいと気持ちを新たにした。

 

 今回は、精神性の高い旅の頂点と言っても過言ではない斎場御嶽(せいふぁーうたき)を感じるために、沖縄へ飛んだ。

 御嶽とは、琉球王国の聖地である。御嶽は琉球の神が存在する場所であり、地域の祭祀においては中心となる施設である。沖縄本島を中心に今も各地に存在し、地域を守護する聖域として時代を超えて信仰されている。琉球神道では神に仕えるのは女性とされるため、琉球王国時代すべての御嶽は完全に男子禁制だった。現在でも一定区域までしか男性の進入を認めていない御嶽もある。

 

 そのような御嶽のなかでも、最高位に存する斎場御嶽は、琉球の最高神女である聞得大君(きこえおおきみ)の就任式「大新下り(おおあらおり)」が執り行われ、国の吉凶を占う儀式も行われた。ちなみに斎場とは最上という意味である。

 

 琉球の神話では、日の大神(天にある最高神)が開闢の神アマミキヨに命じて島作りをさせたとされている。アマミキヨはこの命を受け、久高島や沖縄本島などを作った。

斎場御嶽の信仰の拠点「三庫理」

 斎場御嶽の領域中にはイビと呼ばれる霊域が6カ所存在する。その中でも、三庫理(サングーイ)は2つの巨大な岩が絶妙なバランスで支え合っている見た目にも特徴的な場所である。この三角形の岩の隙間を抜けると、左手に神なる島である久高島が望める場所に至るのだが、現在はこの巨岩の間を通り抜けることは許されていない。

 

 近年、三庫理付近から勾玉が発見されたことから、この斎場御嶽が琉球王朝における重要な信仰の拠点であったことが明らかにされてきた。

 

 三庫理こそが、斎場御嶽のシンボル的存在であり、圧倒的な存在感で来訪者に語り掛けてくるのだが、そのほかの6カ所のイビも、それぞれ神的なものを感じる場所である。

 

 イビの1つであるシキヨダユルアマガヌビーとアマダユルアシカヌビーは、それぞれ上から伸びてきた鍾乳石からしたたる水を受ける壺である。その水は天から流れてくる霊水「御水(うびぃ)」と呼ばれ、2つの壺にたまった水量で聞得大君は吉兆を占ったり、儀式に使用したりした。

久高島の聖地フボー御嶽に至る道。これより先は行けません

 斎場御嶽からほど近い安座真港からフェリーで20分のところに久高島がある。この島こそ、開闢神アマミキヨが最初に降り立った地である。周囲8㌔の細長い島で、最高標高も17㍍と低い。久高島は現在でも異界ニライカナイにつながる聖地とされている。琉球王朝時代から「イザイホー」と呼ばれる男子禁制の秘祭が12年ごとに行われていたが、後継者不在のため1978年からは行われていない。

 

 男子禁制にも関わらず、「芸術は爆発だ」で有名な岡本太郎がこのイザイホーに潜入して、映像を現在に残している。

 

 その貴重な映像が8月21日まで日本橋高島屋の高島屋史料館TOKYOにて「まれびとと祝祭」として展示されている。まれびととは来訪神のことであり、異界から来訪し、現世を祓ってまたもとの世界に帰っていく、それに新型コロナウイルスを重ね合わせることもできるのではないだろうか。恐るべし、岡本太郎。

 

旅人・執筆 島川 崇
神奈川大学国際日本学部国際文化交流学科教授。2019年「精神性の高い観光研究部会」創設メンバーの1人。

 

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