移住・交流センター開設、首都圏の受け入れ拠点に

移住・交流センター開設

 長野県は5月25日、東京交通会館(東京都千代田区)の長野県東京観光情報センター内に「長野県移住・交流センター」を開設した。「職」と「住」の相談にワンストップで対応できるよう、移住専門相談員とIターン相談員をほぼ常駐で配置。首都圏における信州・長野への移住・交流の拠点として、移住希望者と市町村や各関係団体を横断的につないでいく。

 長野県観光部の野池明登部長は、開設にあたり「ふるさと回帰の傾向もあるなか、長野には自然や温泉、人情などさまざまな魅力がつまっている。移住に向けた情報を発信し、具体的な要望に応えていきたい」と意気込みを述べた。また移住推進にあたり、本年4月からは県観光部内に移住・交流課を新設。既設の「楽園信州」推進協議会とともに、市町村や民間団体など幅広いネットワークによるフォローを強化していく。

 2010年度、長野県及び市町村の移住相談対応の移住者・Iターン就職者実績は396人(240件)。5年後の17年度に1千人を目指す。

 開設時間は日曜、祝日を除く午前10時から午後6時。

 問い合わせ=電話:03(3214)5655。 

旅行作家の会、年に一度の大集会開く

高峰温泉の後藤英男社長
高峰温泉の後藤英男社長

 旅行作家の会(代表=野口冬人氏、竹村節子氏)は6月5日、東京・池袋のホテルメトロポリタンで第27回「年に一度の大集会」を開き、80人を超える旅館経営者らが一堂に会した。

 開会のあいさつで野口冬人氏は「昨年は東日本大震災の影響で中止となったが、『今年はぜひ開いてください』という声を全国の皆さんからたくさんいただき、開くことができた。今後も互いに協力しながら旅行業界の発展に尽くしていきたい」と語った。

 講演会では、長野県・高峰高原の「ランプの宿高峰温泉」社長の後藤英男氏が「高峰温泉再建と時代に合わせた経営」について講演した。

 後藤氏は火災により、宿も顧客名簿もすべて焼けてしまった状態から、一通のお客様のお手紙によって勇気づけられ、再建に向かった話や、現在5千人のファンづくりを行っており、「時代や景気に流されない顧客づくりに取り組んでいる」と話した。

女将も壇上にずらり
女将も壇上にずらり

 続いて桜美林大学名誉教授で観光アドバイザーの内藤錦樹氏が「最近の旅行動向」について講演した。内藤氏は「今後、付加価値のある滞在型宿泊旅行が伸びて行くのではないか」と展望したほか、「現在は女性のひとり旅が多く、宿は採算の取れるしくみづくりが必要」と述べた。

震災前の同月水準に、井手長官「巻き返し簡単ではない」

 日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)が発表した4月の訪日外客数推計値は、前年同月比163・9%増の78万800人。震災前の2010年に比べ、4月単月で0・9%減、2012年1―4月累計ベースで4・0%減となり、震災前のレベルまでほぼ回復した。

 各市場の動向をみると、韓国は前年同月比139・1%増の15万2500人。多くのLCC新規就航で座席供給量が拡大するなどプラス要因もあるが、円の高止まりの影響が大きく、震災前の2010年と比べて19・6%減と震災からの回復は鈍い。

 中国は、桜の時期に向けたプロモーション効果などで観桜ツアーへの関心が高まり、2010年比0・8%減、2011年比96・4%増の14万9600人と、4月単月の過去最高に迫る数値となった。

 台湾は、オープンスカイによる新規路線就航や増便で日台間の航空座席供給量が増加し、2010年比26・5%増、2011年比287・7%増の13万8800人と4月単月の過去最高に迫る数値。

 香港は継続的な規模の大きい地震の報道の影響を受け2010年比5・1%減、2011年比665・5%増の4万4200人と10年より少し落ち込んだ。

 そのほかでは、タイが訪日旅行プロモーションの効果で2010年比10・8%増、2011年比409・9%増の4万800人と単月で過去最高を記録。インドも2010年比9・8%増、2011年比29・4%増の6100人と4月として過去最高を記録した。

 井手憲文観光庁長官は5月24日の会見で訪日外客数について「4月単体でみると2010年比で0・9%のマイナスとほぼ震災前の水準に戻っているが、1年の3分の1に当たる1―4月の数字でマイナス4%というのは結構大きく、巻き返しは簡単ではない」とコメント。「訪日の絶対数が一番多い韓国がなかなか回復しないのは厳しい。韓国に対してはこれまでもいろいろな対応を行い、5月にも観光庁でソウルへ行き、旅行会社やクルーズ船へ日本の安全・安心の発信やプロモーションを行ったり、スカイツリーにスポットを当てた韓国TVの番組作りを提案したりもしているが、すぐに回復するものでもないので、楽観的には捉えていない」と厳しい現状認識を語った。

 なお、出国日本人数は、2010年同月比15・0%増、2011年同月比25・1%増の139万5千人。4月として過去最高を記録し、10カ月連続の増加となった。

仙台・宮城DC来春に、全国販促会議に700人

復興状況や各地の魅力を伝えた
復興状況や各地の魅力を伝えた

 仙台・宮城観光キャンペーン推進協議会(会長=村井嘉浩宮城県知事)は5月28日、ホテルメトロポリタン仙台で来年4月から6月に行われる「仙台・宮城デスティネーションキャンペーン(DC)」の全国宣伝販売促進会議を開き、旅行会社社員や、地元関係者ら約700人が参加した。

 08年以来5年ぶり2度目の開催。キャッチコピーの「笑顔咲くたび 伊達な旅」には、来県者を笑顔のもてなしで迎え、支援への恩返しをしたいとの思いを込めた。

 村井会長は、「全国からの支援に感謝し、鎮魂の意味を込めて仙台、宮城の明るい明日を紹介したい。たくさんの人が生きた証しとして、磨きあげられた観光の魅力を感じてほしい」とあいさつした。

 会長職務代行副会長の奥山恵美子仙台市長は「仙台の街を心にかけ、機会があれば訪れてみたいと思っている人たちの心をノックし、仙台・宮城からの案内状を届けて頂きたい」と送客を呼び掛けた。

 「仙台・宮城お国自慢」と題したプレゼンテーションでは、県内を5つのエリアに分け、商店主や観光ボランティアガイド、高校生らが登壇し、地元の魅力を伝えた。会場では各エリアの観光PRコーナーや南三陸町の語り部コーナーを設けたほか、旅行会社各社との商談会も開いた。

 参加者らは翌日から7つのコースに分かれて、南三陸町や石巻市などの被災地や松島、鳴子温泉などを訪れた。

No.312 地銀、観光振興に動く―前編― 地域産業間のコーディネーター

地銀、観光振興に動く―前編―
地域産業間のコーディネーター

 地元に多くの取引先を持ち、それぞれの細かなニーズを把握する地方銀行は、地域産業間のコーディネーターとして新たなビジネス創出の担い手となることが期待されている。先行きが不透明な時代、中長期的な視点から成長分野への投資が不可欠だ。なかでも観光業は成長分野の1つと位置づけられ、専門の行員や、部署を置く地方銀行が増えてきている。地銀の観光振興の取り組みにスポットを当てた。

【沖永 篤郎、飯塚 小牧】 

 

  

観光・環境分野担当 藤澤学 調査役

「成長分野を横断的に支援」 ― 千葉銀行 成長ビジネスサポート室

 千葉銀行は2009年8月、観光ビジネス支援を強化することを目的に初めて観光専門の行員を置いた。千葉県は東京ディズニーリゾートや成田空港を有し、全国でも有数の観光地。09年の延べ宿泊者数は1552万人の全国第4位と健闘している。震災の影響で昨年は減少したが、ここ数年は増加傾向にある。広報室の小笠原潤調査役は、「県が観光を盛り上げていこうという気運があるなかで、地方金融機関として、我われサイドからもムーブメントを起こしていきたい」と話す。…

 

 

黒岩祐介法人部コンサルティング
営業グループ長

「着地型のプレゼン会、観光振興に向け初開催」 ― 八十二銀行

 八十二銀行(山浦愛幸頭取、長野県長野市)の法人部は、リッキービジネスソリューション(澁谷耕一社長、東京都千代田区)と共催で5月22日、東京都内で長野県着地型旅行商品のプレゼン会を開いた。同銀行は、昨年4月、法人部コンサルティング営業グループ内に観光専門の担当者を配置するなど、地域経済活性化の観点から観光振興に力を入れており、今回もその一環として開催した。会では県内5地域が旅行会社に地域の魅力を紹介したほか、個別の商談会も実施した。…

 

 

 

澁谷耕一社長

リッキービジネスソリューション 澁谷社長に聞く ― 「銀行と企業をつなぐ」

 リッキービジネスソリューション(澁谷耕一社長、東京都千代田区)は、金融機関と企業をつなぐ経営企画のアウトソーシング事業や、金融機関向けの研修事業、サポート事業などを手掛ける企業だ。澁谷社長が長年の銀行勤務経験を生かし、2002年に単身で設立。今年で10周年を迎えた。現在は全国の地方銀行と組み、地域の食や観光を東京で売り込むイベントなども展開している。…

  

 

 

※ 詳細は本紙1464号または日経テレコン21でお読みいただけます。

プレスツアーのコース ― 人工的な公園よりも……(6/11付)

 今や、多くの地域が観光PRに熱心で、プレスツアーを行い、テレビや新聞、雑誌、ブログなどに観光素材をアピールしてもらおうという動きが活発化している。現地の行政トップや観光担当者、事業者との懇談会を設定し、忌憚のない意見を集めて、地域の観光に生かしていこうとする姿勢には、積極的な意欲と、柔軟さが感じられ、すごく好感を持ってしまう。

 けれど、自治体が主催するプレスツアーのコース設定に少し疑問を持つことがある。残念でもある。招待されておきながら、「つまらない」などと言うことは、大変口幅ったいことではあるが、でも、本気で地域観光に取り組もうとされるのならば、次のようなところはコースから外した方がいいのではないか。あえて言わせてもらえば、自治体が出資している○○公園や、○○交流館、資料館、記念館のようなものである。

 すべての地方に行っているわけではないので、当然例外があることは百も承知なのだが、基本的にそれら建物は綺麗で清潔感があり、予算が潤沢にあれば世界的な有名建築家、そうでなければ地元の建築家がデザインしたすっきりとした建物である。館内に入ると、大きなパネルの写真や年表などがガラスケースの中で展示され、中には電飾の装置が付いた大がかりな仕掛けで説明してくれたりする。また、公園の方は、敷地面積が広大で、壮麗な噴水があり、憩いの広場がコンクリートと芝生などで整備されている。ゴミもあまり落ちていないし、何かのイベントをやっていない時期には地元住民もあまり訪れない。観光客の姿など滅多に見かけない。そのような空間に、東京から飛行機やら新幹線やらを乗り継いで、大型バスからぞろぞろとカメラとメモ帳を持った記者やジャーナリスト、ブロガーが降りて周りを見回す。自治体の観光担当者が、公園の説明を20分ほどして、隅々まで1時間ほど散策するという流れだ。

 記者たちが本当に見たいのは、綺麗に整備された広大な公園などではない。このような公園は、各市町村に必ず一つはある。遠い未知なる地域を訪れたときは無機質で人工的な公園ではなく、魅力溢れる宝に会いたい。せっかく予算を使うのなら、ツアー参加者に「私たちのまちの何を見たいか」を、事前に聞いた方が効果的かもしれない。

(編集長・増田 剛) 

【当選者発表】第37回プロが選ぶ100選宿泊券プレゼント

今回もたくさんのご応募ありがとうございました。

2012年4月20日の締め切り後、厳正なる抽選の結果、ご当選者が決まりました。

このトップページ左側リンクバナー「プレゼント当選者発表」にご当選者のお名前を掲載いたしましたのでご覧ください。
ご当選者の皆様には当選ホテルから近日中に宿泊券をお送りいたします。どうぞ楽しいご旅行をお楽しみください。

東京スカイツリー開業、初日の5月22日22万人が来場

グランドオープンした 東京スカイツリータウン
グランドオープンした
東京スカイツリータウン

 東京スカイツリーを中心に展開する新しい街「東京スカイツリータウン」(東武鉄道、東京都墨田区)が5月22日開業した。都内最大級の312店舗をほこる商業施設・東京ソラマチも同日オープン。初日は施設全体で約21万9千人(うち東京スカイツリーには約9千人)が来場し、多くの人でにぎわった。

 東京スカイツリータウンは、とうきょうスカイツリー駅と押上(スカイツリー前)駅をつなぐ東西長さ約400㍍、広さ約3・69㌶におよぶ“新しいまち”。高さ634㍍の自立式電波塔・東京スカイツリーや、商業施設・東京ソラマチ、オフィスタワー、水族館、プラネタリウムにより構成される。東武鉄道は土日祝日など最大1日20万人、初年度来場者数を3200万人と見込む。

 同社は公共交通機関の利便性向上を目的に最寄り駅、とうきょうスカイツリー駅の全面リニューアルや同駅停車の特急列車ダイヤの改正等を実施。敷地内には乗用車1028台の駐車場を備えるが、同社・東京スカイツリータウン開業広報事務局は「混雑が予想される開業から一定期間はとくに、公共交通機関を利用してお越しいただきたい」と呼びかける。敷地内には観光バス30台の駐車場(完全予約制・2時間)も完備する。

創立50周年を祝う(日本旅のペンクラブ)

西村京太郎氏が講演会に招かれた
西村京太郎氏が講演会に招かれた

 日本旅のペンクラブ(代表会員・山本鉱太郎氏)は東京都文京区の椿山荘で、5月16日の第25回「旅の日」の会に合わせて、創立50周年記念大会を開いた。

 講演会では、トラベルミステリー作家の西村京太郎氏と聞き手の津田令子氏が「旅とサスペンス~麗しき日本 愛しき風景~」をテーマに語り合った。

 西村氏は「最近の特急は窓が開かなかったりしてトリックが作りづらくなった。また、小説上であっても、観光地や旅館の方から、『ここを舞台に殺人事件を起こすのはやめてほしい』という声も多く、難しい」と漏らすと、会場にいた地方観光関係者から「ぜひ私たちのところでお願いします」という名乗りもあがった。

「旅の日」川柳大賞に吉川弘子さんが受賞
「旅の日」川柳大賞に吉川弘子さんが受賞

 「第32回日本旅のペンクラブ賞」は、「スパリゾートハワイアンズ」(福島県いわき市)に決まり、表彰式を行った。同社は東日本大震災で甚大な被害を受けながら、「フラガール全国きずなキャラバン」が避難所への慰問など全国約250公演を行った。今年2月には「きづなリゾート」をテーマにグランドオープンし、震災復興のシンボルとして、温泉とフラガール、スタッフが訪れる人を元気にしていることが受賞の理由。

 第4回「旅の日」川柳の表彰式も行われた。全国から3945句の応募があり、吉川弘子さん(神奈川県川崎市)の「少しだけ 行方不明に なれる旅」が大賞に選ばれた。

スパリゾートハワイアンズのフラガールショー
スパリゾートハワイアンズのフラガールショー

 50周年記念懇親パーティーでは、山本鉱太郎代表理事が「日本旅のペンクラブは50年間、まちづくりや旅の文化の発展に貢献してきた。そして今や、日本で最も歴史のあるアクティブな旅の書き手の文化団体に成長した。これからも全国の心ある方々とスクラムを組んで観光日本の発展に力を尽くしていきたい」と語った。

 アトラクションとして「スパリゾートハワイアンズ」のフラガールショーも行われ、会場は盛り上がった。

鶴雅グループ 大西雅之社長に聞く

鶴雅グループ 大西 雅之社長
鶴雅グループ 大西 雅之社長

 鶴雅グループ(大西雅之社長)は6月9日、旗艦店あかん遊久の里鶴雅と昨秋取得した旧ホテルエメラルドとを一体化し、温泉リゾートホテルとしてリニューアルオープンする。本紙のインタビューに答えた大西社長は、「新しい絵を描ける施設を取得したのは大きなチャンス。3、4泊の連泊需要にも対応できる施設を目指す」と語った。

【鈴木 克範】

≪“新装”機に滞在リゾートへ、3、4泊の連泊にも対応≫

<隣接ホテルが休館に>

 東日本大震災直後の昨年4月、グループ9館のうち2館を休館した。東北海道は東京、札幌などの大消費地から遠く、震災の影響は大きかった。同じ4月、隣接するホテルエメラルドが7月から休館すると発表された。

 温泉街の真ん中で旅館の灯りが消えると「斜陽感」がでてしまう。阿寒全体が大打撃を受ける。だが日本中、投資マインドが冷え込んでいた。外国資本が出てくる可能性もほとんどない。そんななか金融機関の仲介もあり、運営されていたカラカミ観光と休館が地域に与えるダメージについても話し合った。旅館はひと冬閉館したままだと、設備がだめになる。そうなれば再生に億単位の追加投資が必要になる。冬前に譲渡についての結論を出してもらいたいとお願いした。

<取得でチャンス得た>

 昨年の9月下旬、ホテル取得のニュースが流れると、多くの友人からは2つのことを言われた。1つは「やむを得ない選択なのだろうが、負担になるのでは」。これが大方の反応だった。一方、金融機関の見方は違っていた。「少ない資金で客室を増やすことができる。やり方次第でいい投資になる」。両面を検討したが「地域と共に繁栄する」という弊社の原点に戻り、これをチャンスと捉える決意をした。

 鶴雅はそれなりに稼働も順調で、使える場所は隅々まで生かしてきた。魅力を加える設備投資の余地がもうなかった。しかし、さまざまな国からの観光客、滞在型の旅行、1人旅など需要は多岐にわたる。とくに3、4泊して楽しめる温泉街になり、ホテルもその機能を備える。これが21世紀に生き残っていく本質と考える。新しい絵が描ける施設を得て、国際リゾートホテルを目指すスタートラインに立てた。

<羽ばたくふたつの翼>

 6月9日、館名を「あかん湖鶴雅リゾートスパ 鶴雅ウィングス」に変更し、リニューアルオープンする。取得したホテルを「東館」、あかん遊久の里鶴雅を「西館」とし、2館はアイヌ文化を紹介する回廊で結ばれる。館を鶴に見立て、ふたつの大きな翼を広げた姿を館名に表した。

 東館は1階から3階のパブリックスペースを大変革する。1階のロビーには、アイヌ文化を中心としたギャラリーミュージアムを作り、東館のロビーへ回廊でつなぐ。ここに阿寒ゆかりの作家らが手掛けた彫刻などを展示し、郷土文化を発信する。

 その奥はラウンジ空間。支笏湖(水の謌)で採用した「素足の空間」を取り入れる。食事は、定山渓(森の謌)のブッフェレストランをさらに進化させ、260席のスローフードレストランを新設する。席数が増えたことで「西館」のブッフェダイニング「天河」(220席)の混雑も緩和できる。

 スパの充実は滞在型リゾートには不可欠だ。東館の2階と3階は客室を取り壊し、「温泉スパゾーン」にする。阿寒湖を望む男女共用の岩盤浴ラウンジなど、新しいスタイルの施設が加わる。今年の冬は西館の大浴場にも手を入れたい。大きなスパゾーンが2つできるので、閑散期なら片方ずつ改装できる。

 チェックインロビーも2つに分ける。東館は団体とインバウンド客、西館は個人客を迎える。それぞれの館に客層別のロビーを設けることでゆとりと機能が充実した空間をめざす。

<阿寒の商品開発も>

 温泉街では阿寒湖アイヌシアターによるアイヌ文化の発信や、阿寒湖の世界自然遺産登録などの取り組みも始まった。

 モノづくりでは行政の力も借り、今年から2カ年かけて、アイヌ文化の商品開発をすすめたい。温泉街のホテルで提供できるアイヌ料理はそのひとつ。阿寒湖温泉でかつて当たり前だったモノづくりを再生する。アイヌ人形劇を題材にした商品や木彫りの実用品にアイヌ文化を織り込むのも一案だ。協議会を立ち上げ、阿寒湖温泉地域だけで扱うなどの条件をクリアしたものを認定し、資金支援も行っていきたい。

 「世界的にも希少な球状のマリモが生まれる阿寒湖を世界自然遺産に」という機運も高まっている。くしくも今年は、阿寒湖のマリモが国の特別天然記念物に指定されてから60年の節目を迎えた。国内広報にも力を入れたい。昔マリモが絶滅した区域では自然再生にも取り組んでいる。今は展示水槽の見学だが、数年後には自然のなかでマリモを見られる仕組みが実現できそうだ。

<航空事情改善に期待>

 6月から10月にかけて、日本航空と全日本空輸が羽田―釧路便の機材を大型化するなど、道東便の航空座席が5―7割増える。これは大きな追い風だ。今年はLCC(格安航空会社)元年とも言われる。まずは新千歳空港へ就航するが、あと2年くらい後に激変するのでは。今まで恵まれてこなかった地方便が力を取り戻すと思う。

 昨秋の道東自動車道開通は、札幌圏からのアクセス向上に加え、昼間着の千歳便を利用しても道東へ入ることができるようになった。北海道ガーデン街道やひがし北海道3つ星街道など、地域の楽しみ方や魅力を発信する商材もできてきた。阿寒も観光協会内に旅行業を立ち上げ、着地型商品に対する受け皿ができ始めた。

 さらに7月からはJRグループと旅行会社が共同で展開する「北海道デスティネーションキャンペーン」が始まる。新しい館を構えて迎える今夏の期待は大きい。