「街のデッサン(262)」児童絵画コンクールと少年の旅、小学1年生の疾駆する情感

2023年2月12日(日) 配信

山懐を抜け、人生の旅へ(会津磐梯山に行こう!あかべこ、作者:吴昶悠)

 小学1年生の吴昶悠(ウー・チャンユウ)くんの描いた絵を見て深く感動した。そこには絵画のテクニックだけではなく、吴くんの子供としての何か強い情感を感じたからだ。

 その絵に出会ったのは、「世田谷児童絵画コンクール」でのこと。コンクールは、畏友の伊佐裕氏が主宰するもので今期が9期目。伊佐氏は「伊佐ホームズ」という住宅を中心とした技術レベルの高い建築会社を経営し、地域にこだわり、住まいがコミュニティの基盤になるという信念を燃やす企業家だ。美しい環境を保持するために「まちづくり」や「場づくり」の思想を大切にしている。そこで、地域に暮らす子供たちに「ぼくの町、私の好きな場所」をテーマにコミュニティの誇りとなる「場=プレイス」の絵画を描いてもらうことを思い立つ。伊佐氏自身が画家を目指し東山魁夷の風景画に傾倒、一時は弟子入りを志したが無念にも叶わず、高校時代の先輩に東京芸大の油絵科の教授を勤めた坂口寛敏先生がいて、機会あるごとに励まされ絵画展を創案した。伊佐氏と私は、北海道の原野の先駆的まちづくりで知られる実業家の紹介で知り合った。伊佐氏が事業を立ち上げたばかりのときで、30年を超える親交となる。

 絵画コンクールの1期目から審査員を頼まれたが、その経験は貴重だった。毎年小学1年生から6年生を対象にして300点以上集まる作品の中から優れた絵画を選ぶのは、彼らの作品を判別することではなく、彼らの作品から多くを学ぶことと知った。そして大きな楽しみは作品を提出した彼らがさらに毎年、修練し磨き上げた作品を提出してくれることだ。その昇華する作品を見続けることで、私自身が美の感性を涵養されることになる。絵画展で才能を担保された彼らプチ画家たちがこれからの社会と人生をどう創り出すか。

 吴くん家族は中国から日本に移住し、磐梯山の麓が最初の暮らしの場だった。吴くんが世田谷に移住したのは昨年の小学校に入学する直前。磐梯山の山里から世田谷の都会への移住は、5人の家族の一人ひとりにどんな感慨を与えたのか。学校で絵画募集を知って絵筆を執った吴くんが描いたのは、世田谷の風景ではなく磐梯山麓を走る電車。それは最初の故郷となった場所からの別離と、これからの世田谷での見えない未来が乗っている。絵の中に自分自身だという「赤べこ」が描かれている。何とエーゼンシュタインのモンタージュ手法だ。人生の大変節を描く小学1年生。その彼の心を思いやって何故か涙が出た。小さな旅が、人間を大きく飛翔させるのだ。

コラムニスト紹介

望月 照彦 氏

エッセイスト 望月 照彦 氏

若き時代、童話創作とコピーライターで糊口を凌ぎ、ベンチャー企業を複数起業した。その数奇な経験を評価され、先達・中村秀一郎先生に多摩大学教授に推薦される。現在、鎌倉極楽寺に、人類の未来を俯瞰する『構想博物館』を創設し運営する。人間と社会を見据える旅を重ね『旅と構想』など複数著す。

 

「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(145)混雑する中でも感謝の想いを伝える行動を 顧客情報をもてなしに

2023年2月11日(土) 配信

 

 全国割が実施され、インバウンド客も少しずつ戻ってきました。ホテルのフロント周りは多くの人で混み合い、これまでスムーズだったチェックインも長い時間が必要となっています。ワクチンの接種証明書に有効期限はないので、個人確認ができれば記録にあると思うのですが、この1カ月に宿泊したホテルで何度か確認されました。ここで不快な想いをさせては、これから始まる滞在に高い満足度を提供するのは難しくなります。

 先日、約1年ぶりに利用したホテルで、「いつも喫煙室のご予約ですが、今回は禁煙室でのご予約をいただいております。変更いたしましょうか」という、感動の言葉を掛けられました。私も喫煙室希望でしたが、満室で予約が取れなかったのです。

 お客様の中にはこの1年で禁煙した人もいるかもしれないので過去の顧客情報から、事前に部屋を変更していただくホテルもあります。ただ、可能であれば準備をしておきチェックイン時に確認した方がより良いでしょう。

 そのホテルでは、さらに「お部屋を替えることで、いつものようなベッドメイキングができておりません」と言われて驚きました。ホテルがオープンしたころ、「掛け布団のシーツが深くマットの下に入れられていて、休むときに寝苦しい。もう少し緩めに入れてもらえればうれしい」という要望をしました。次に宿泊したときには、「いかがでしたか」と、前回聞いたことが希望通りに実行されていたかどうかの確認がされたのです。

 それから5年間、私が泊まる部屋のシーツは、いつも希望通りにされていました。違和感を持ったときには強く記憶に残るのですが、改善されるとその違和感が記憶に残らなくなってしまうものです。しかし、その環境こそが居心地の良さを生み出し、またここで過ごしたいという想いを高めます。

 チェックインのあと、一旦部屋に入りましたが、荷物だけ置いてすぐにトップ階にあるレストランに行きました。そこでまた驚くような光景に出逢ったのです。入口で迎えられて、カウンターに案内されましたが、そこには私宛のメッセージプレートが既に用意されていたのです。

 チェックインから10分も経っていません。レストランに来るかどうかも分からず、時間もないなかで席を取り、メッセージを用意する。ただ1人のお客様のために温かく迎える準備と手間を掛けてすること。人との接触が少なくなった今だからこそ、こうした小さな感動が心に残るのかもしれません。チェックアウト時には、「1カ月遅れになりましたが、お荷物にならなければ良いのですが」とアロマのセットをプレゼントしてくれました。

 

コラムニスト紹介

西川丈次氏

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。

 

 

 

「めぐる」「たべる」「つかる」 3つの視点で地域の宝探し ガストロノミーツーリズムの成功事例や課題などをフォーラム開き共有

2023年2月10日(金) 配信

(左から)ホセ・マリ=アイセガBCC学長、荒井奈良県知事、ズラブ・ポロリカシュヴィリUNWTO事務局長、石井副大臣

 奈良県コンベンションセンター(奈良県奈良市)で昨年12月12―15日、日本初のガストロノミーツーリズム世界フォーラムが開かれた。

 国連世界観光機関(UNWTO)とバスクカリナリーセンター(BCC)による7回目の世界フォーラムで、日本での開催は初めて。約30カ国から食と観光に携わる政府関係者ら約450人が参加。「女性と若者の活躍促進」や「観光地、生産者の価値向上」に焦点を当て、ガストロノミーツーリズムの成功事例や課題などを共有した。

□第7回UNWTO世界ガストロノミーフォーラム(奈良)

約400人が会場に

 ガストロノミーツーリズムとは、その土地ならではの食を楽しみ、歴史や文化を知る旅のこと。

 開会式でUNWTO事務局長のズラブ・ポロリカシュヴィリ氏は岸田文雄首相が10月3日に行った所信表明演説で「インバウンド観光の復活により、訪日外国人旅行消費額の年間5兆円超の達成を目指す」と語ったことに触れ、「ガストロノミーツーリズムはそのための非常に素晴らしい方法。目標が達成されるよう、我われも支援する」と表明。「ガストロノミーツーリズムは社会を発展させ、雇用を創出し、地域の結束を強め持続可能な開発を可能にする。新しい観光地に人々を呼び込む力がある」と力を込めた。

 一方国土交通省の石井浩郎副大臣は、観光庁の調査で海外から日本を訪れる人が期待することの第1位が日本食を食べることと説明し、「まさに日本の食文化は海外の方を引き付ける重要な観光資源であり、(この結果は)ガストロノミーツーリズムへの期待の高さを表している。国土交通省としても本フォーラムを契機に、地域活性化の柱の1つとしてガストロノミーツーリズムを推進する」とあいさつした。荒井正吾奈良県知事は「皆様と今日、明日とここでお話しすることは、持続可能な開発のためにも、地域的な社会の貢献のためにも必要なことであり、奈良での議論が実りあるものになることを祈願している」と語った。

日本各地の魅力を発信

 3日間にわたり行われたフォーラムでは、事例の共有やフィールドワークなどを展開したほか、旭川大雪圏地域連携中枢都市圏や岩手県、下呂市観光協会など日本各地約30の自治体や団体らがブースを設け、地域の食や文化、観光の魅力を発信した。また13日に行われたガラレセプションでは徳島県三次市や滋賀県なども地域の伝統食などを参加者にふるまい、その土地の味を発信した。

 12日には開会式に先駆けサイドイベントも行われ、ガストロノミーツーリズムや持続可能な観光に関わる地域関係者や支援事業者らが登壇、パネルディスカッションを通じ取り組みを共有。ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構の小川正人理事長もスピーカーとして参加した。

□ガストロノミーツーリズムは 経済・雇用・文化継承の点で重要

(左から)本保代表、荒井奈良県知事、サンドラ・カルバオ部長、ホセ・マリ=アイセガBCC学長

 国連世界観光機関(UNWTO)とバスクカリナリーセンター(BCC)は昨年12月13日、JWマリット・ホテル奈良で会見を行い、同フォーラム開催までの経緯やガストロノミーツーリズムの重要性などを語った。

 UNWTO本部、観光市場情報・競争力部長のサンドラ・カルバオ氏は冒頭ガストロノミーとツーリズムを組み合わせることが、「とくに地方の雇用を生み出す起爆剤になる」と語った。

 そのうえで、「地方で伝統的な食や経験、地元食材を使った食事を楽しむということはゆっくりではあるが、再発見されている。そしてこの傾向は、新型コロナウイルス感染症の流行・拡大により人々があまり混んでいないところで本物の体験をしたいと感じるようになり、動きを加速させている」と現状を分析した。

 BCC学長ホセ・マリ=アイセガ氏は「ガストロノミーツーリズムは経済や雇用、文化の継承の観点で重要」と強調し、「世界的に重要性が増している」と結んだ。

 またホセ・マリ=アイセガ氏は「朝一番で魚市場に行き朝食を食べる、造り酒屋に行き酒造りの行程を見学したり試飲を楽しんだりする、レストランでどんな食材が使われているかどう調理されているかを感じ知ること、そして時には発酵ワークショップなどに参加すること」がガストロノミーツーリズムであると語り、「このような観光を楽しむ人は自分で情報を探したいという欲求があるので、情報の発信と関わる人の教育も重要になる」と強調した。

 サンドラ・カルバオ氏は「(レストランで食事をした際に)その食材の原産地はどこか知りたい、訪れたいと考える人が増えている。またそれにとどまらず、生産者との対話を通じ学びたいという欲求も生まれている。今後ツーリズムとして重要になるのは、容易なカタチで提供すること」と強調した。

 会見には奈良県知事の荒井正吾知氏とUNWTO駐日事務所代表の本保芳明氏も出席し、開催の喜びなどを語った。

スマート事故防止システムで健康管理 データ蓄積し会社を守る(日本健康経営)

2023年2月10日(金)配信

松本大成社長

 日本健康経営(松本大成代表、東京都中央区)は、従業員とドライバーの健康への意識を高め、万が一の事故を防ぐ仕組み、「スマート事故防止システム」をリリースした。

 生活習慣を意識することが安全対策につながると考える同社。「運転手の健康状態を日々チェックしデータを残しておくことが、万が一の事故の際に会社を守ることにもつながる」と語る松本代表に話を聞いた。

 ――「スマート事故防止システム」とは。

 「スマート事故防止システム」は従業員とドライバーの健康への意識を高め、万が一の事故を防ぐ仕組みです。

 国土交通省の事業用自動車健康起因事故対策協議会が2020年度にまとめた「健康起因事故発生状況と健康起因事故防止のための取組」をみると、運送業界の「健康状態に起因する事故報告件数」は、13年から19年までの5年間で約2・4倍増加しています。

 また、過去7年間で健康起因事故を起こした運転者1891人のうち心臓疾患、脳疾患、大動脈瘤および解離などの兆候が見られた人が31%を占めています。このうち、死亡した運転者327人の疾病別内訳は、心臓疾患が53%、脳疾患が12%、大動脈瘤および解離が14%を占めていることが分かります。

 運送業界では点呼時の血圧測定やアルコールチェックなど、事故防止に向けたさまざまな取り組みが行われています。一方、死亡事故の原因の約80%を占める血管と血流に関わる疾患に対しては、十分な取り組みができていないのが現状です。

 そこで、医療機器の販売などを行うメディコアジャパン(東京都港区)の「スマートパルス」を使い、精神的・身体的ストレスの情報、自律神経のバランス、血管の健康状態を日常的にモニタリングする仕組み「スマート事故防止システム」を21年にリリースしました。

 ――同システムの特徴は。

 このシステムの重要なポイントは、健康を企業が「管理」するのではなく、従業員自身が「健康への意識を高めること」です。

計測のようす

 測定自体も簡単で、一分間機器に人差し指を挟み、リラックスしている間に測定が終わります。

計測結果イメージ

 1日1回個々が測定したデータはクラウド上に蓄積され、いつでも個人のスマートフォンやタブレットなどを通じ確認することができます。

 このデータの確認を通じ、生活習慣に気を配り、日々の健康管理を行う意識を身に着けてもらうことが、ドライバーの健康増進につながり、事故防止に役立つと考えています。

 これに加え、導入されている企業が必要と判断された際には、禁煙や食生活改善などのセミナーも行います。

 ――同システムを企業が導入するメリットは。

  WILL法律事務所(大阪府大阪市)の清水伸賢弁護士は、「健康起因事故が起こった際に会社が責任を免れるためには、運行供用者責任の免責事由が必要になります。会社としては、自動車の運行に関し注意を怠らなかったことを立証する必要があり、少なくとも従業員の健康状態を把握し、その対策を十分採っていたといえる事情がなければならない」と、会社側の心構えを話されています。

 万が一事故が発生した場合を考えると、従業員の健康状態を日々管理していたことを証明できるデータを蓄積しておくことは、会社を守るためにも重要になると考えます。

 ――システムを利用する際の費用は。
 

 1人当たり税込み8800円。以後、システム管理と運営サポート費用として、月額1万1千円(税込み・100人まで)。スマートパルスは従業員30人毎に1台無償で提供します。
 

 ――導入されている企業では、健康データをどのように管理されていますか。
 

 個人で管理しているケースと、会社で一括管理しているケースの2つがあります。導入している企業では、7割が会社での管理、3割が個人での管理を行っています。
 

 ――松本社長はバス事業社に対しても、同システムの導入を進めていきたいとの考えを示されています。

 バス業界でも、運送業界と同様に運転手の高齢化が課題になっています。また、「健康起因事故発生状況と健康起因事故防止のための取組」の中でも、乗合バスの「健康状態に起因する事故報告件数」が多いことが指摘されています。貸し切りバスも今後、コロナ禍からの需要回復を見据えた場合、毎日従業員の健康管理をしていることを見せることが、他社との差別化につながるのではないかと考えています。

 また観光バスは教育旅行での利用も多いですが、こうした取り組みは保護者や旅行会社の安心感にもつながると考えています。

 ――観光業界では「ヘルスツーリズム」への注目が高まっています。

 例えば、宿泊施設にスマートパルスを設置していただくことで、宿での滞在でストレスがどの程度軽減したかなどを見ていただくことができるので、宿泊施設のプランで利用していただくのもいいかもしれないですね。

 ――ありがとうございました。

 

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日本健康経営
〒104-0061
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JATA、トルコ南部地震への義援金 会員会社対象に2月28日まで受け付け

2023年2月10日(金) 配信

 日本旅行業協会(JATA、髙橋広行会長)は、2月6日に発生したトルコ南部を震源とする大地震で被害に遭われた方々に対し、「心よりお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます」とコメントを寄せた。

 あわせて、被災者への支援の一助として、JATA会員会社を対象に、義援金の受け付けを2月9日(木)から開始した。 

 募集期間は2 月28日(火)まで。金額は一口1万円。寄せられた義援金は、トルコ共和国大使館への寄付を予定している。

 詳細はJATAホームページまで。https://www.jata-net.or.jp/about/jata-csr/about04_04/page-28728/

白川村の食文化学ぶ  集落守る人の思いに触れる

2023年2月10日(金) 配信

合掌造りの家々

 岐阜県・白川村は昨年12月、村単独では初となるファムトリップを実施した。

 世界遺産集落に集中する観光客によるさまざまな課題解決に向け、同村は公共交通機関でストレスを感じることなく移動可能な、飛騨地域の周遊ツアー造成を進めている。ファムツアーでは村の食文化と合掌造り集落を守り抜いてきた人々の思いを中心に、村の観光の在り方を模索。メディア関係者や現地ガイドとの意見交換を行った。

 合掌造り集落で有名な白川村は、魅力的な食文化に出会えるまちでもある。冬の間雪に閉ざされるこの村では大豆が貴重なたんぱく源となり、「すったて汁」や「石豆腐」といった郷土料理が祝いの席や報恩講(浄土真宗開祖の親鸞聖人の祥月命日の前後に営まれる法要)などのハレの場で親しまれてきたという。
 

 「すったて汁」は、茹でた大豆をすり鉢や石臼などですりつぶした「すったて」に、濃い味噌汁を加えた汁物。具材は入っておらず、シチューのような味わいと、口の中に広がる大豆の香りが食欲を掻き立てる。

 村ではこの「すったて汁」を地元食材と掛け合わせ鍋料理にアレンジ、2014年に開かれた「ニッポン全国鍋グランプリ」に出場しグランプリを獲得した。

ます園文助のすったて鍋と魚の甘露煮

 ファムトリップでは「ます園文助」でこのすったて鍋を味わった。同店ではこのほかに、湧水を利用して育てたイワナやアマゴ、ニジマスを味わうことができる。

 一方の石豆腐は、貴重なたんぱく源として日持ちさせるため水分を極力抜いた豆腐で、荒縄で縛っても崩れないほどの固さに仕上がっている。ファムトリップで訪れた「深山豆富店」は2021年3月に後継者がいないことなどから一度閉店したが、ヒダカラ(岐阜県飛騨市)が事業継承するカタチで再オープン。

 同店では白川村の湧き水と天然にがり、国産大豆を原料とし、ぎっしり詰まった大豆の味と香りをしっかりと堪能することができる「石豆腐」をはじめ、すったてやこも豆腐、豆腐に合う調味料などが購入できる。また店内では、同店おすすめの「豆腐ステーキ」などさまざまな豆腐料理のレシピを配布している。

古田氏が石豆腐を紹介

 店主の古田智也氏は「ほかの豆腐にはない固さと、凝縮して固くすることで感じられるしっかりとした豆の味が魅力」と語り、「残していかなければならない財産」と力を込める。

 郷土食に加え白川村では17年から合掌造り住宅を活用した食の体験「遠山家家ごはん」を展開している。重要文化財「旧遠山家住宅」の座敷で地元の食をふんだんに使った「遠山家家ごはん」が味わえる企画で、提供される弁当は村内の老舗旅館「御母衣旅館」と人気飲食店「お食事処次平」が特別に考案。提供時には「村人のもてなしの心」を少しでも感じてもらえるよう、祝い事や仏事の際のごちそうのもてなしに使われた「高膳」で提供する。

村を核に観光客を飛騨地域に分散

 今回のファムツアーは、観光庁・環境省「持続可能な観光コンテンツ強化事業」の支援を受け実施された。観光客が公共交通機関を使いスムーズに移動できる飛騨地域周遊の旅行商品を造成するにあたっての意見を収集し、旅行商品としてブラッシュアップしていくことが狙い。

 19年、過去最高の約215万人の観光入込みを記録した白川村。一方で奥深い山峡の村で鉄道の駅がないため、移動が車両に限られてしまい、駐車スペースの不足という問題が発生。繁忙期となるゴールデンウイークやお盆、シルバーウイーク、紅葉シーズンなどは、白川郷ICを超え高速道路まで続く駐車場待ちの車による渋滞が問題になっている。また、村内観光に利用できる2次交通が整っていないため、金沢や高山などから高速バスで村を訪れた人の滞在先が世界遺産集落に集中してしまっている。

 こうした問題を解決するべく白川村は、村を核に周辺の高山市や飛騨市の個人では訪れ難い魅力ある観光スポットを巡る周遊プランの造成を進めている。観光振興課観光担当の小瀬智之課長補佐は「白川村が含まれる飛騨地方は、独自の文化と伝統、豊かな自然をベースとした魅力ある観光スポットが点在していますが、公共交通機関でのスムーズな移動が難しい地域でもあります。周遊プランでは、公共交通機関を使うケースが多い外国人観光客やシニア層の小―中規模のグループをターゲットに、訪れる人が公共交通機関を利用して移動する際ストレスを感じることなく観光を楽しめるような行程を組んでいきます」と構想を説明。「これによって、地域の観光の相乗効果を生みだしたい」と力を込める。

 これに加え小瀬氏は村のサステナブルツーリズムの在り方にも触れた。「白川村は結による屋根の葺き替えや、合掌造り家屋の保存活動など、既にサステナブルな取り組みを実装しているので、訪れる方には集落での観光を楽しむとともに、保存活動などへの理解を深めてもらうことも、サステナブルツーリズムのひとつになる。一方、サステナブルツーリズムを推進しすぎることで、住民負担が増す状況は避けなければなりません。無理のない範囲で、サステナブルツーリズムを白川村流に展開するのが理想です」と強調した。

 事業目的を実現するための効果検証の助言などを行う十六総合研究所飛騨國サテライトリサーチ部の研究員、森俊介氏は白川村の観光の魅力と可能性を「合掌造り家屋の成り立ちから、そこでの人々の暮らしや経済活動、そして昨今の保存活動に至るまで、『持続可能な生活』が営まれ続けられてきたこと」と説明。「現代における持続可能性を考えるうえで、『リビングヘリテージ』としてこのことを伝え続けることが重要となる」と自身の考えを述べた。

 そのうえで、「人口減少問題をはじめとしたさまざまな課題を抱える飛騨地域は『課題先進地』と呼ばれ、今後の日本の未来を考えるうえで、非常に重要な地域であると認識しています。今後も白川村が持続可能な村であり続けられるよう、伴走していく」と語った。

「観光革命」地球規模の構造的変化(255) 生物多様性と観光

2023年2月10日(金) 配信

 

 政府は新型コロナの感染法上の位置付けを従来の「2類相当」ではなく、季節性インフルエンザと同じ「5類」に5月8日から移行する方針を打ち出した。コロナ禍が生じた3年前から今日に至るまで、観光業界は不況で苦しみ続けてきたので、人の動きの活発化に伴って、ようやく本来の活況を取り戻すことができそうである。

 

 とはいえ、新型コロナウイルスが完全に終息したわけではなく、世界のどこかで新しい変異ウイルスが生じて、日本にもたらされることは必至だ。従って観光業界は5類への移行で浮かれて、コロナ禍以前の「観光の量的拡大」に戻るのではなく、「観光の質的向上」を重視すべきだ。ポストコロナで、観光の質的向上をはかる際の重要な要素は数多くあるが、とくに「健全な生態系」と「生物多様性」が重要だ。

 

 スイスで設立された「世界経済フォーラム(WEF)」は、毎年1月に世界10大リスクを公表している。今年の10大リスクは、次の通り。①気候変動緩和策の失敗②気候変動への適応の失敗③自然災害と極端な異常気象、④生物多様性の喪失や生態系の崩壊⑤大規模な非自発的移住⑥天然資源の危機⑦社会的結束の低下と二極化⑧サイバー犯罪の拡大とサイバーセキュリティの低下⑨地政学的対立⑩大規模な環境破壊の事象――。

 

 WEFは生物多様性の喪失や生態系の崩壊を危惧している。現に地球に生息する800万種以上の動植物のうち、約100万種が絶滅の危機にさらされていて、毎年約4万種が絶滅しているともいわれている。生物多様性とは地球上の数多くの生き物が多様な生態系の中で互いに支え合っていることを意味している。森林伐採や乱開発による生物多様性の喪失と生態系の崩壊は、地球温暖化やパンデミックの発生につながっている。ひいては観光の質的向上を阻害する要因になり得る。

 

 昨年12月にカナダで開催された国連生物多様性条約第15回締約国会議で、生物多様性の回復に向けて30年までに「地球の30%保全」を目指すことが国際目標として採択された。いわば世界全体の3割を自然保全区域にすることを目指すわけだ。生物多様性の恩恵を受けている観光業界は真っ先に「地球の30%保全」に賛同して社会的アピールの促進をはかるべきである。

 

 

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

 

 

全旅連次期会長に井上善博氏(福岡県)を選任

2023年2月9日(木) 配信

全旅連次期会長に選任された井上善博氏

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(多田計介会長)は2月9日(木)、東京都内で第2回理事会を開き、次期会長に井上善博氏(常務理事)を選任した。

 次期会長選挙には井上氏と、大木正治氏(副会長)の2氏が立候補をしていた。

 当日開票の結果、次期会長に決まった井上氏は、ともに戦った大木氏に謝意を述べ、「コロナ禍で課題は山積している。観光立国の再始動に向け、多田会長をはじめ、全国の皆様の知恵をお借りしながら精進し、努力していきたい」と述べた。

 井上 善博(いのうえ・よしひろ)氏は1968年生まれ、54歳。福岡県・原鶴温泉「ほどあいの宿 六峰舘」社長。2009~10年度には全旅連青年部長を務めた。

 

「感染症と人権」について研修

「感染症と人権について」講演する法務省人権擁護局調査救済課の江口幹太課長

 理事会に先立ち、法務省人権擁護局調査救済課の江口幹太課長による講演「感染症と人権について」を行った。全国47都道府県の理事長らが出席し、新型コロナウイルス感染症に関する人権問題や、偏見や差別のない社会を目指し、ハンセン病問題についての正しい知識や歴史を学んだ。

鳥取県立美術館、25年春オープン メディア懇談会開く

2023年2月9日(木) 配信

鳥取県立美術館 外観イメージ

 鳥取県立美術館パートナーズと鳥取県教育委員会は2月8日(水)、2025年春に開館する鳥取県立美術館(倉吉市)の事業内容を説明するメディア懇談会を開いた。鳥取県教育委員会の梅田雅彦美術館整備局長は、同美術館について、「都道府県立の美術館としては、ほぼ最後の施設」との認識を示した。

梅田雅彦美術館整備局長

 同美術館は、鳥取県立博物館美術部門の約50年にわたって集められたコレクション約1万点と、活動を引き継ぐカタチで運営する。収蔵スペースや常設展示室を拡充するほか、県民ギャラリーやワークショップルームの新設、アート・ラーニング・ラボ(A.L.L)のなどの設置で教育普及部門を充実させることで、芸術文化にいつでも触れられる環境を整備する。

 コンセプトは「未来を『つくる』美術館」。収集については、既存方針である「鳥取県の美術」を引き継ぎ、新たな方針として「国内外の優れた美術」と「同時代の美術の動向を示す作品」を掲げた。

 収集品の購入予算は、基金というカタチで年間約5億円を確保する見込み。

 美術館は、民間の資金と経営能力などを活用するPFI方式が採用された。大和リースを代表企業とした10社のパートナーズが建設し、完成後の所有権は県に移管する。維持管理や運営はパートナーズが担うカタチとなった。PFIの事業期間は2040年まで。総事業費は約142億円となる。

 年間来館者数は10万人を目標としている。

1月の宿泊業倒産は4件 旅行業は3件すべてコロナ関連倒産(東京商工リサーチ)

2023年2月9日(木) 配信

東京商工リサーチはこのほど、23年1月の宿泊業倒産を発表した

 東京商工リサーチがこのほど発表した2023年1月の宿泊業倒産は4件(前年同月は同件数)だった。04年以降の過去20年で最少件数。負債総額は同62・1%減の7億8500万円となり、3カ月ぶりに前年同月を下回った。1月としては、20年間で初めて10億円台を下回り、負債5億円以上の倒産が発生しなかった。同社は、「各種支援策の実施や、移動制限がなくなったことで、低水準で推移している」とみている。

 新型コロナ関連倒産は前年同月と同数の3件だった。

 おもな倒産事例では、ゲストハウス院(京都府京都市)が1月16日(月)、京都地裁から破産開始決定を受けた。負債総額は約4億5200万円。

 同社は2010年8月に創業し、京都市内を中心にゲストハウスを23施設程度運営していた。

 訪日観光客の増加を受けて積極的な集客に取り組み、外国人スタッフを多数採用して15か国語に対応できる体制を築き、19年8月期には約7億円を計上していた。

 しかし、新型コロナ感染拡大によりインバウンドが激減。20年8月期の売上高は約3億円にまで減少し、資金繰りも限界を迎えて今回の措置となった。

 宮城県で温泉旅館「笹谷温泉 湯元一乃湯」を運営していたグロウスは1月16日(月)、仙台地裁に破産を申請した。負債総額は約3億円。

 宮城の秘湯として人気を博していたが、東日本大震災に伴う建物被災の影響で休業を余儀なくされ、20年以降は新型コロナの影響で業績が悪化し債務超過に陥っていた。先行きの不透明さから今回の措置となった。

 また、22年1月の旅行業倒産は3件(前年同月は無し)発生した。6カ月ぶりに前年同月を上回った。負債総額は3億9800万円。3件すべてが新型コロナ関連倒産となった。

 同社は、「22年10月から入国者数の上限が撤廃され、全国旅行支援も実施されたことから旅行需要が回復基調にある。しかし、コロナ禍の長期化で業績が悪化し、経営を立て直すことを断念して倒産したケースが大半を占めた」と分析した。