取消料徴収の仕組みを、事後カード決済問題を協議

楽天トラベルと事後決済問題を協議
楽天トラベルと事後決済問題を協議

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(佐藤信幸会長)は5月8日、「事後オンラインカード決済サービス」導入によるキャンセル料の取扱いの問題で、楽天トラベル(岡武公士社長)と協議会を開き、楽天トラベル側から、事後決済サービスにおいても今後キャンセル料を徴収する仕組みを作る方針であるとの回答を得た。

 この問題は楽天トラベルが4月4日に宿泊予約サイトのシステムを変更し、「事後オンラインカード決済サービス」を開始したことに端を発した。従来は、カード決済であれば、予約の時点で決済する事前カード決済や現地宿泊施設でのカード決済だけであったが、新たにチェックアウト翌日に自動決済する事後カード決済を導入。これに対し、宿泊施設側はキャンセル料の徴収について反発した。事前のカード決済であれば、キャンセル料の決済も自動で行われていたが、事後カード決済では、宿泊施設側が予約者に対し直接請求しなければならず、キャンセル料の未回収という事態の多発や、消費者にキャンセル料徴収を免れる方法という印象を与えかねない懸念があった。

 全旅連では、楽天トラベルのカード決済システム変更後、青年部が主導して、事後決済サービス導入の延期や、ユーザー向け説明ページでの「キャンセル料発生対象日におけるキャンセル時にはキャンセル料が請求される」ことの明示などの要望を行っていた。

 5月8日の協議会には全旅連側からは、佐藤会長、大木正治会長代行、総務委員会の宮村耕資委員長、広報小委員会の永山久徳小委員長、伊藤真司委員、横山公大青年部長、利光伸彦特別対策担当副部長、内田宗一郎特別対策委員長、新山晃司財務担当副部長が出席し、楽天トラベル側からは岡武社長、齋藤克也常務執行役員、吉崎弘記国内営業部マネージャーが出席した。この席で楽天トラベルは「クレジットカードで決済(安心のチェックアウト後払い)」説明ページ内に、キャンセルの際はキャンセルポリシーに則りキャンセル料を支払うよう説明が記載されたリンク先のページへ誘導するような改善を行ったことを報告。さらに今後、事後決済サービスにおいてもユーザーの同意を得ることを前提にキャンセル料を徴収する機能の付加を進めている旨の説明があった。

リクルートとキャンセル対策を協議
リクルートとキャンセル対策を協議

 合わせて、楽天トラベルから、事後決済サービスのリリース後に見られるカード決済比率、キャンセル率等の傾向、ユーザー動向などを報告。クレジットカードの決済比率はリリース前よりも10%増加して30%程度となり、キャンセル率、キャンセル料の請求対象となる予約日3日前のキャンセル率は減少傾向にあるという。

 また、ユーザーが事後カード決済と現地でのカード決済を混同することがある点については4月16日に改善。領収書が即時に発行できない問題については、事前カード決済に誘導するよう改善していく説明があったという。

 一方、2大ネットエージェントとして楽天トラベルと双璧をなすリクルートとは、前日の5月7日に宿泊予約キャンセル対策について協議。リクルート側からは宮本賢一郎営業1部部長、満田修治営業2部部長、秋山純じゃらんnet編集長、事業推進部の青木貴洋氏が出席した。(1)オンラインカード決済の予約は現地決済より8%程度低い(2)宿泊日の2日前がキャンセル件数のピーク――というデータを紹介。キャンセル防止対策としては、キャンセルポリシーの設定による直前のキャンセル防止、キャンセルが発生した場合もキャンセル料の徴収が可能になる「オンラインカード決済専用プランの活用」が効果的と施設側に勧めた。

 また、4月にじゃらんnet内でキャンセル料請求について消費者に向けて注意喚起を強化したことや、今後もキャンセル料請求に関する啓蒙をはかっていくことが説明された。

No.311 一の湯グループ - 「人時生産制」で経営効率化

一の湯グループ
「人時生産制」で経営効率化

 お客様の強い支持を得て集客している旅館は、従業員の職場環境を整え、お客様に真摯に向かい合える仕組みができているのが特徴だ。「いい旅館にしよう!」プロジェクトのシリーズ第4弾は、神奈川県・箱根を中心に8軒のグループ旅館を展開している「一の湯」の小川晴也社長と、産業技術総合研究所の工学博士・内藤耕氏が対談。従業員1人が1時間に稼ぐ粗利益を示す「人時生産性」(にんじせいさんせい)を用いて、バックヤードの効率化をはかった成功例について語り合った。

【増田 剛】

 

  

 【対談者】

「引き算」の経営を断行
産業技総合研究所サービス工学研究センター
副研究センター長(工学博士)
内藤

×

作業の発生元から取る
一の湯代表取締役
小川

 

※ 詳細は本紙1463号または日経テレコン21でお読みいただけます。

東京スカイツリー開業 ― ふっきれた高さに敬意(6/1付)

  5月22日に開業した東京スカイツリーは、「希望の塔」なのかもしれない。近年、暗いニュースばかりが日本を覆っていた。いや、バブル経済が崩壊してから20年以上、日本は自信を喪失することの方が多かったが、久々に空を見上げ、明るい表情になったような気がする。

 エッフェル塔も東京タワーも、東京スカイツリーも、自立式電波塔としては誕生時に高さ世界一。賛否両論があっても、次第に愛されていくのだろう。

 小さな頃に読んだ本に、世界三大無用長物というのがあった。エジプトのピラミッドと、中国の万里の長城、そして日本の戦艦大和と書いてあったが、どれもその壮大なスケールが、今もドラマチックに魅了する。

 観光地は、それぞれが「オンリーワン」であるため、一つの舞台上で競争することはできない。しかし、「ナンバーワン」であることが、必然的に人気観光地になることが、今回の東京スカイツリー誕生を見て感じたことだった。世界一のものに対して、人々は、それが自然物であれ、人間の建造物であれ、敬意を示すものなのだ。

 たとえば、莫大な費用をかけて世界で2番目に早いスポーツカーを造るのなら、むしろ「オンリーワン」の車を造った方がいいだろう。世界で2、3番目に大きなサッカースタジアムを造るのなら、もう少し頑張って、世界最大のサッカースタジアムを造った方が絶対にいい。地方議会などでは、良識派の議員や首長が、あと一歩のところで思いとどまり、適正規模より中途半端にデカイものを造って大赤字を出してしまうケースが全国で散見される。だが、どうせデカイものを造るなら、思いっきりふっきれた方がいい。投資に対する見返りがきっと大きいはずだ。だからといって、陳腐な発想や、思いつき程度のハリボテではまったく意味がない。市民の血肉を注ぎ込んだ、歴史に耐え得るドラマチックな建造物でなければならない。

 東京スカイツリータウンの「開業5日間で来場者100万人突破」は恐るべき数字だ。仙台市と同規模の人口が、わずか5日間で訪れたことになる。この現象は当分続くだろう。来場者の多くは、両手いっぱいにお土産やグッズを買って帰る。浅草や隅田川周辺との新旧文化の対比も面白い。ぜひ世界の人々にも東京、日本の魅力を感じてほしい。

(編集長・増田 剛)

東京スカイツリー開業、初日の5月22日22万人が来場

グランドオープンした 東京スカイツリータウン
グランドオープンした
東京スカイツリータウン

 東京スカイツリーを中心に展開する新しい街「東京スカイツリータウン」(東武鉄道、東京都墨田区)が5月22日開業した。都内最大級の312店舗をほこる商業施設・東京ソラマチも同日オープン。初日は施設全体で約21万9千人(うち東京スカイツリーには約9千人)が来場し、多くの人でにぎわった。

 東京スカイツリータウンは、とうきょうスカイツリー駅と押上(スカイツリー前)駅をつなぐ東西長さ約400㍍、広さ約3・69㌶におよぶ“新しいまち”。高さ634㍍の自立式電波塔・東京スカイツリーや、商業施設・東京ソラマチ、オフィスタワー、水族館、プラネタリウムにより構成される。東武鉄道は土日祝日など最大1日20万人、初年度来場者数を3200万人と見込む。

 同社は公共交通機関の利便性向上を目的に最寄り駅、とうきょうスカイツリー駅の全面リニューアルや同駅停車の特急列車ダイヤの改正等を実施。敷地内には乗用車1028台の駐車場を備えるが、同社・東京スカイツリータウン開業広報事務局は「混雑が予想される開業から一定期間はとくに、公共交通機関を利用してお越しいただきたい」と呼びかける。敷地内には観光バス30台の駐車場(完全予約制・2時間)も完備する。