「観光革命」地球規模の構造的変化(239) 世界競争力と日本の未来

2021年10月7日(木) 配信

 スイスのローザンヌに拠点を置く「国際経営開発研究所(IMD)」は世界最高峰の高等研究・教育機関として高い評価を得ている。1989年以降、毎年数多くの指標の詳細な分析に基づいて「世界競争力ランキング」を公表している。

 ランキングの指標は、4つの大分類と20の小分類から成る。①経済状況(国内経済、国際貿易、国際投資、雇用、物価)②政府効率性(財政、租税政策、制度的枠組、ビジネス法制、社会的枠組)③ビジネス効率性(生産性・効率性、労働市場、金融、経営プラクティス、取り組み・価値観)④インフラ(基礎インフラ、技術インフラ、科学インフラ、健康・環境、教育)。

 日本は同年から92年まで世界競争力ランキングの第1位を占めてきた。バブル景気が崩壊してから4位に下落、97年の金融不安(北海道拓殖銀行の破綻など)で競争力が17位に急落した。

 その後20位台で推移したが、2020年にはそれまででワーストの34位に激落。同年のアジア諸国のランキングと比べると、シンガポールは1位、香港5位、台湾11位、カタール14位、中国20位、韓国23位、マレーシア27位、タイ29位の後塵を拝している。要するに日本はさまざまな分野で国際競争力を失っており、厳しい現実認識に基づいて日本の未来を構想する必要が生じている。

 IMDの世界競争力ランキングが示している日本の弱点を列挙すると、次のようになる。「政府の効率性」では、財政赤字の是正、高齢化社会への財政対応、日銀による経済への影響の是正、海外からの投資に対する閉鎖性の打破などが必要。

 「ビジネスの効率性」では、意思決定の遅さ、柔軟性の欠如、起業家精神の弱さ、ビッグデータの活用不全、管理職の国際経験の乏しさなどが問題で、人的資本の整備、デジタル化を活用した意思決定や市場対応の迅速さ、外国のアイディアを受け入れる文化の開放性などが必要。「インフラ」では、研究開発によって蓄積された優れた知識資本を十全に活用できるマネジメント能力や語学能力を改善する教育制度の改革が必要。

 世界各国の競争力を冷静に分析したうえで、日本の将来ビジョンと周到な戦略を明確に構築し、世界に伍して日本を確実にリードできる優れた政治家の登場が必要不可欠だ。

 

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

 

 

21年上半期・旅行業倒産16件 コロナ関連倒産が9割超え(東京商工リサーチ調べ)

2021年10月6日(水) 配信

東京商工リサーチはこのほど、2021年上半期(4~9月)の旅行業倒産動向をまとめた

 東京商工リサーチがこのほど発表した2021年上半期(4~9月)の旅行業倒産は16件となり、前年同期比166・6%増と急増した。前年同期を上回ったのは4年ぶりとなる。このうち新型コロナ関連倒産は15件と、全体の9割超を占めた。同社の集計では、20年に廃業した旅行業者は過去10年間で最多の158社にのぼり、同社は「21年はこれを上回る可能性がある」と危機感をあらわにした。

2021年4~9月期の旅行業倒産動向

 今年度上半期・旅行業倒産の負債総額は23億7400万円(前年同期比91・6%減)となった。2年ぶりに前年同期を下回ったが、20年6月に発生したホワイト・ベアーファミリー(負債278億円)の大型倒産による反動減が生じた。

 コロナ禍による倒産は15件となり、全体の93・7%を占めた。21年1―9月は、2月と9月を覗いた7カ月間で、新型コロナ関連倒産が旅行業倒産の100%を占める結果となった。

 原因別では「販売不振」が14件(同366・7%増)と最多に。コロナ禍の業績悪化を原因とした旅行業者が大部分を占めた。同社は、「国内旅行よりも海外旅行の方が壊滅的な状況。海外旅行に特化した業者の倒産が散発している」と懸念を示した。

 負債額別では、5000万円以上1億円未満の6件が最多となり、全体の37・5%となった。負債1億円未満の小規模倒産が全体の約7割を占めた。このことから、経営体力に乏しい小規模業者の、息切れ倒産が相次いでいることが分かった。

 地区別では、9地区の打ち6地区で発生し、最多は関東9件(同1件)。このうち東京都が7件となった。ほか、九州で3件(同2件)、東北・中部・北陸・中国が各1件。

人流抑制が長引き、息切れ倒産相次ぐ

 新型コロナの感染拡大は、入出国規制や緊急事態宣言の発令で国内外の人流を抑制し、今もなお旅行業界に大打撃を与えている。政府は実質無利子・無担保融資や、持続化給付金、雇用調整助成金などの支援策を講じた。

 20年7月には「Go Toトラベルキャンペーン」を開始したが、感染拡大の影響で同年12月に事業を停止し、未だ再開には至っていない。

 同社は、「人流抑制が長引き、旅行だけではなくビジネス関係でも、リモートワークの浸透で出張が大幅に減少している」と厳しい現状を振り返る。起死回生に期待していた東京オリンピック・パラリンピックは無観客の開催となったことから、「大手旅行会社も軒並み赤字決算に陥り、早期・希望退職や、本社売却などで生き残りをはかっている」(同社)。

 東京商工リサーチが今年8月に行ったアンケートでは、旅行業の38・2%が「コロナ禍の収束が長引いた場合、廃業を検討する可能性がある」と回答した。

 10月4日(月)に就任した斉藤鉄夫国土交通大臣は就任会見において、Go Toトラベルの再開に前向きな姿勢を見せたが、「業界からは入出国制限の早期緩和を求める声も根強い」(同社)。

 同社は、「コロナの収束時期にもよるが、それまでは旅行業の息切れ倒産や、廃業の増加が危惧される」と調査をまとめた。

観光庁、接種証明の観光運用 ツアー38件で実証実験へ

2021年10月6日(水) 配信

観光庁(写真はイメージ)

 観光庁は10月5日(火)、観光分野での「ワクチン・検査パッケージ」の運用に向け、技術実証を行う旅行会社11社の対象ツアー38件を発表した。

 ワクチン・検査パッケージの技術実証は、感染対策と日常生活の両立をはかっていくため、実務的な運用や効果を確認するのが目的。飲食やイベント、旅行の各分野で必要な技術実証を行うことが決定している。

 今回の技術実証では、旅行会社が実施するツアーや宿泊施設を対象に、感染防止対策を継続したうえで、ワクチン接種歴の確認や事前の検査のオペレーションなどを検証する。併せて、事業者や旅行者に対するアンケート調査などを実施する。

 なお、今後も対象ツアーの追加、公表を予定している。今回公表された技術実証を行う旅行会社11社は次の通り。

 ANA X▽エイチ・アイ・エス▽クラブツーリズム▽JTBメディアリテーリング▽ジャルパック▽T―LIFEホールディングス▽東武トップツアーズ▽日本旅行▽阪急交通社▽読売旅行▽ワールド航空サービス

JTB、JR四国と共同企画 貸切列車で巡る四国4県の旅

2021年10月6日(水) 配信

四国4県の旅で乗車するキハ185系(イメージ)

 JTBメディアリテーリング(遠藤修一社長、東京都文京区)はこのほど、四国旅客鉄道(JR四国)と共同で、貸切列車「四国一周号」で巡るツアーを売り出した。四国デスティネーションキャンペーンと、同社ブランドのJTB旅物語30周年を記念したもので、3泊4日の行程で自然豊かな車窓が魅力の四国4県を列車で巡る。

 車両はJR四国の特急気動車キハ185系3両を使用し、通常は特急車両が運行しない路線も走行。列車旅のハイライトとして、阿波池田―徳島駅間は同車両に、観光列車「藍よしのがわトロッコ」車両を併結させる初の試みも行われる。

 行程では列車に乗車するだけではなく、個人では体験できない特別な要素を盛り込んでいる。2日目は、海の見える駅として人気の下灘駅でホームへ降りて絶景観賞。3日目は列車旅から少し離れて、大型バスを利用しての大歩危遊覧船や祖谷のかずら橋などを観光する。4日目は、観光列車「四国まんなか千年ものがたり」専用の「ラウンジTAIJU」を特別見学。秘境駅・坪尻駅でのスイッチバック体験などをツアーに盛り込む。

 このほか、4日間の昼食は各県ならではの弁当を用意する。徳島県内は、通常「藍よしのがわトロッコ号」車内でしか販売していない「藍よしのがわうなぎ弁当」を堪能できる。

 運転日は11月30日~12月3日まで。JTBメディアリテーリング大阪、中部、首都圏出発のツアーを発売する。

LINKED CITY参画企業に迫る② 客室をスマート化、近隣地域の情報拠点に( ソニーマーケティング)

2021年10月6日(水) 配信

地域の情報を紹介する客室のブラビア画面

 ソニーマーケティングは、法人向けブラビア(業務用ディスプレイ・テレビ)と導入する宿泊施設のシステムを連携することで、フロント業務や客室テレビのスマート化を実現し、ホテルや旅館を利用するお客様と地域をつなぐための情報提供や、回遊の拠点となる施設づくりをお手伝いします。

 ブラビアと連携する客室インフォメーションでは、宿泊施設内の案内だけでなく、例えば、北海道十勝市のホテル、ヌプカハナレの導入例では、施設近隣のおすすめの温泉施設やサイクリングコースの案内、地元の画廊の作品紹介をしています。地図などの詳細情報はQRコードをお客様ご自身のスマートフォンで読み取り、確認できます。

 また、地域のイベント情報をカレンダー形式で表示できる機能や、SNS(交流サイト)にシェアされた画像を旅の思い出として共有することも可能です。

 ブラビアで情報発信する地域コンテンツの制作は今後、地元クリエイターやSNSとの連携、地元情報誌のデータ活用のほか、学生の地域学習を通して実現していくことを模索中です。そのための学びの場も検討していきます。

企業情報

法人のお客様向け購入相談デスク

TEL:0120-30-1260

参画企業が進めるLINKED CITYの全容

「めぐる」「たべる」「つかる」 3つの視点で地域の宝探し ONSEN・ガストロノミーツーリズムイベントづくりのウラガワ~山口県・俵山温泉~

2021年10月6日(水) 配信

温泉街を歩く参加者

 ONSEN・ガストロノミーツーリズムは、全国の食文化や景観、地域の人との触れ合いが魅力のイベント。各地域が自分の地域の魅力を、余すことなく参加者に味わってもらおうと工夫を凝らす。過去6度俵山温泉でイベントを主催したSD―WORLDの藤永義彦代表に、イベント造成時のポイントや地域の変化などを聞いた。

 ――イベント実施の狙いを教えてください。

 俵山温泉は湯治場として栄えてきましたが、ライフスタイルの変化からか急速に活力が失われています。イベントを通じて全国から来られたお客様、俵山を認識していただき、リピーターとして再訪いただくことで、少しでも温泉街のにぎわいを取り戻せるのではないかとの思いがあります。

農家の縁側カフェ

 ――毎回異なるテーマを設定されていますが、地域の魅力を発掘するうえで意識していることはありますか。

 俵山には多くの人たちに誇れるような景勝地があるわけでもなく、湯けむりが上がる温泉らしさを演出することもできません。一方で、外湯文化を残した昭和レトロな温泉街は人々を魅了する場所だと思うので、温泉街を中心に毎年コースを変更し、季節に合った食材を工夫しながら内容を決定しています。また、参加者に喜んでいただけるサプライズも、用意しています。

 古くから湯治場として体の具合の悪い方々と接してきた地域の方々には、知らない人たちも暖かく迎え入れるという文化が根付いています。地元の人たちとの交流こそが、俵山のイベントの魅力ですね。

 ――イベント開催時以外の時にも俵山温泉に足を運んでもらうための工夫はしています。

 「西の横綱」と言われる俵山温泉の泉質は、一度入っていただいたら絶対にわかるほど素晴らしい泉質です。ですから、イベントで来られて温泉の魅力にはまってしまったお客様は、リピーターになっていただけるのではないかと思っています。また我われも、観光コンベンション協会などと連携し、宿泊プランなどもセットとして販売するようにしています。

ガストロノミーポイント

 ――参加者の反響はいかがですか。

 概ね良好です。私たちが狙いとしている地元の方々との交流という点もアンケート結果を見ると成果が感じられますね。

 ――イベントを実施してから地域に変化はありましたか。

 地域住民の認識も進み、イベントをきっかけとしたウォーキングのイベントなども開催されるようになってきました。ワーケーションのアクティビティの1つとして、街歩きなどもメニュー化しています。

ガストロノミープレート

□第7回 ONSEN・ガストロノミーウォーキングin 長門・俵山温泉

 俵山温泉での今年のONSEN・ガストロノミーツーリズムイベントは、11月13日に行われる。7回目となる今回は、紅葉の名所「西念寺」を中心に秋の俵山を周遊する約9㌔のコース。食は、俵山の名物ジビエ料理や俵山おでんなどを用意。「獺祭」や「ほれぼれ」などの地酒とともに楽しめる。自ら収穫したゆずきちは、絞ってソーダ割ジュースで味わえる。

 主催者は、「熱量豊富な温かい人たちとの交流。寒暖差を生かした新鮮でおいしい旬な農産物。国内で唯一生産量が伸びている山口県の名酒の数々。とにかく一度参加してみてください。泉質抜群『西の横綱』俵山温泉でお待ちしています」とPRする。

開催日;11月13日(土)
募集人数:100人
当日受付場所:長門市俵山温泉湯町駐車場(熊野神社横)
参加費:中学生以上4000円、小学生2500円

ONSEN・ガストロノミーツーリズムコラム 油分を含む珍しい温泉(北海道・豊富温泉)

2021年10月6日(水) 配信

町営日帰り入浴施設「ふれあいセンター」

 

 豊富町の温泉は、世界的にみても「アゼルバイジャンの油風呂とここだけではないか」ともいわれる珍しい泉質を持つ温泉として知られています。油分を含んだお湯は、石油の臭いも特徴で、保温効果が高く美肌の湯としても知られています。効能は神経痛、関節痛、慢性湿疹などと言われ、近年はアトピー性皮膚炎や乾癬といった皮膚疾患などに悩む方々に注目されています。

 東京都や愛知県、広島県などの皮膚科の先生のすすめもあり、湯治を目的に来られる方も多く、平均2週間くらいの滞在をされています。湯治をきっかけに移住される方もおり、近隣市町村への移住も合わせると、ここ10年の間で約100人が移住されました。

 豊富町には温泉以外にも、「利尻礼文サロベツ国立公園」に指定されているサロベツ湿原や、晴れた日には海に浮かぶ利尻山・夕日が一望できる稚咲内海岸などたくさんの見どころがあります。兜沼に併設されているキャンプ場は、ゆったりとした時間を過ごせる私のお気に入りの場所です。

 グルメでは、酪農のまちならではの新鮮な牛乳を使ったソフトクリームやプリン、カタラーナを町内の飲食店、豊富町観光情報センターで購入できます。また町営日帰り入浴施設「ふれあいセンター」内にある食堂、味彩で提供している、新鮮なエゾ鹿肉のジンギスカンもおすすめです。

【豊富町観光協会 事務局長 栗山尚久】

 

LINKED CITYの全容に迫る③ ホテル軸に まちづくりを拡張

2021年10月6日(水) 配信

(右から)光成氏、空山氏、川村氏

 国際観光施設協会(鈴木裕会長)の旅館観光地分科会(川村晃一郎分科会長)は今年3月、観光型スマートシティ「LINKED CITY」構築に向け研究会を発足した。地域資源とAI、IoTデジタルオープンプラットフォームによる事業インキュベーションで雇用を創出。都市と地域、地域と地域をつなげることで分散型社会の構築を実現させることが狙い。

 今回はITやIoTを活用することによって人と人、人とまちを結び付けることでの「長期滞在の実現」や、「ホテルが軸となる、拡張したまちづくり」に迫る。

 光成・最初に、「LINKED CITY」の入口となる研究「町じゅう旅館・ホテル」構想の進捗状況から報告します。

 我われが進める「町じゅう旅館・ホテル」構想は、AIやIoTを活用し、業務負担を軽減することで「業務リソースの再配置」を目指しています。従業員がまちを案内するガイドとなり、地元の素晴らしい景観や、その土地ならではの体験ができる施設など、旅行者が自分で検索しても見つけることができないディープな情報を発信する。こうした付加価値をつけることで宿泊単価が上がるだけではなく、飲食店や土産物屋を含めた地域内での人の流れも創出できれば滞在時間は自然と伸びていきますし、住民とのコミュニケーションが生まれることで再訪意欲も喚起できると思います。

まちあるき情報の例

 理想を実現させるためには、AIとIoTのソリューションの開発も大切です。例えば、客室のテレビや、ロビーのサイネージを通し、「地域情報」を発信することができます。またその情報に映し出されるQRコードを通じてMaaSと連動させることで移動のためのルート案内やクーポンの配布などを行うことができます。ほかに、ジョルテのイベントカレンダーを通じて、イベント情報を発信できます。

 空山 ・「LINKED CITY」に参画している企業が保有するソリューションを組み合わせることで、さまざまなアイデアをカタチにしやすいです。
 だからこそ、「目的」が重要になります。「目的」によってアプローチは変わるので、「LINKED CITY」を導入する市町村ごとにコンセプトも当然違っていていいと思っています。

 各地域の魅力を発信することに関しては、魅力的だと思っている場所に「なぜ行かれないのか」を考える必要もあります。東京都内に住んでいる人がいくら魅力的だからといってすぐに北海道の帯広に行くことは、費用面や日程などさまざまな理由から難しいと思います。こういった人に対しては、まず神奈川県の箱根など近い場所を旅行し、今まで気が付いていなかった魅力に気が付いてもらう。そこから徐々に距離を伸ばしていけるようにしたらいいのではないでしょうか。

 川村・ハードがあっても中身がなければ意味がないですよね。例えば、ソニーのテレビがあっても、映像や、人と人、人とまちがつながるためのコンテンツがないと地域の活性化の役には立ちません。

 また、その映像やコンテンツは、地元の人が創らないと意味がないと思います。我われは手段を提供することはできますが、本気でやろうという人がいない限りそのコンテンツの価値は生まれません。この部分を自治体やホテル・旅館などと一緒にやっていきたいと思っています。

 光成・同様に大切なのは、地域情報の発信や動画の制作は、地域の人が主体的に行うこと。動画の制作は、地域のクリエイターに依頼する以外に、地域でクリエイターを目指す学生にも参加してもらうことで、新たな人材を育成していきたい。

 ロビーのサイネージで見られる地域カレンダーの情報も、簡単にテキストや写真を編集できるようにします。これによって、地域の飲食店のコアな情報なども発信ができ、滞在時間を延ばすことにつなげられればと考えています。

 もう1つ、人と人のコミュニケーションの創造も大切なので、宿泊客やまちの人が撮った写真を宿泊施設の客室のテレビで共有する仕組みなども導入できたら面白いと思います。

 空山・地域の人が発想したモノを実現できる環境を我われで整え、挑戦したい人を支援していきたいですね。

群馬・四万温泉 宿泊施設の改装増加 地域活性化はかるため一新

2021年10月6日(水) 配信

スパゲストハウスルルドの大浴場・露天風呂

 群馬県・中之条町四万温泉でリニューアルオープンする宿泊施設が増えている。コロナ禍の最中であるが、時期を見定めて現地取材を行ってきた。今回は四万温泉初のゲストハウスとして生まれ変わった「スパゲストハウスLULUD(ルルド)」と、今年3月に館内全体をリニューアルした「四万温泉柏屋旅館」を紹介する。

【古沢 克昌】

 四万温泉で旅館を経営するエスアールケイ(関良則社長)は、2020年12月に泊食分離を基本とする「スパゲストハウスルルド」を開業した。廃業した温泉旅館「花の坊」を買い取り、リノベーションしてまったく新しい宿泊施設が誕生した。

 源泉掛け流しの温泉とモダンなアートが融合する大浴場では、湯煙とともにミラーにアートが浮かび上がる内湯と、四万の自然を間近で感じられる露天風呂が愉しめる。滞在中は清掃時間以外いつでも入浴できる。

〈ルルド〉コンパクトシングルルーム

 客室は1人での滞在からグループでドミトリーや和室での滞在が可能。宿泊料金は1人1泊5千円前後。最もリーズナブルに宿泊できるドミトリータイプのコンパクトシングルルームは男女混合と女性専用が各5室ある。ダブルルーム(2室)はモダンでシンプルな空間にダブルベッドとソファー、デスクを完備したミニマムなゲストルーム。宿泊人数(最大2人)に限らず部屋料金が固定となるルーム・チャージ方式を採用しているので2人で利用すればリーズナブルに、1人利用であればゆったりと過ごすことができる。広さ12・5―15畳(定員2―4人)の和室(13室)もルーム・チャージ方式のため、人数が増えるほど1人当たりの料金が割安になる。客室数は全25室。

 宿泊総料金は部屋料金のほか、人数分の温泉施設利用料金、人数分の食事料金(プランで選択された場合)が加算される。

 共用スペースには男女別シャワールーム、トイレ、レストルームのほか、シェアキッチンやランドリーもある。共用の冷蔵庫も使用できる。1階にはライブラリーコーナー「ブックケイブ」があり、館内で本を購入して読むこともできる。

〈ルルド〉カフェ&ダイニング「シマノネ」

 食事ができるカフェ&ダイニング「シマノネ」は外部の飲食店が運営している。地元食材を生かしたオリジナルメニューや、群馬の飲食店の人気メニューを提供する。営業時間は午前11時30分―午後5時(※モーニングとディナーは予約制)。宿泊客以外でも利用でき、貸し切りで団体利用することも可能だ。

 関社長は「湯治文化を現代風にアレンジして四万温泉の魅力を発信していきたい。既存の宿とは異なるスタイルで、四万温泉から湯治の新しい形態として『SHIN湯治』を提唱したい」と語る。

 一方、柏屋旅館(柏原益夫社長)は、21年3月15日に館内全体をリニューアルオープンした。今年1月5日から旅館を全面休館し、リニューアル工事を進めてきた。

 今回のリニューアルの目的を訊ねると、柏原社長は「19年の終わりごろから21年にリニューアルしようと考えていた。施設の老朽化も目立っていましたし、新たに食事処を作ることが最大の目的だった」と話す。これまで部屋食対応でやってきたが、客室に食事の匂いが残ることや客室にあまり出入りをして欲しくないという声も多くなってきたことから、時代の流れに併せて食事処を作る決断をしたという。

柏屋旅館の食事処

 「当初はもっと開放的な食事処を考えていたが、間仕切りを置くなどして半個室タイプに変更した。プライベート空間も保ちつつ、スタッフとの会話も楽しめる快適な食事処になった」(柏原社長)。

 食事の内容もリニューアルした。夕食はスタンダードプランのほか、上州和牛A5プラン、ヴィーガンプラン、料理少なめプラン、渓流魚中心のプラン、上州牛尽くしのグルメプランなどから選べるようになった。朝食は今まで通り、和食・洋食・柏屋カフェでのブランチから選択できる。和食・洋食では新鮮野菜を温野菜でいただく「温泉蒸し」が新登場。ヴィーガン用の朝食にも対応できるようになった。

〈柏屋旅館〉デッキテラス付き和のついん-暁-

 客室は9タイプ14室に改装した。①露天風呂付き客室(花の間)1部屋②同(亀の間)1部屋③足湯テラス付き和室10帖(光の間)1部屋④デッキテラス付き和のついん3部屋⑤デッキテラス付き和室8帖(2階)3部屋⑥和のついん2部屋⑦デッキテラス付き和室8帖(1階)1部屋⑧2階のシングルルーム1部屋⑨デッキテラス付きシングル(1階)1部屋。

 このほか、無料で何度でも利用できる3つの貸切露天風呂にバスタオルを常備した。要望が多かった、貸切露天風呂の使用状況が分かる点灯ランプも館内2カ所に新設して好評だ。

〈柏屋旅館〉貸切露天風呂の使用状況が分かるランプを設置

 柏原社長は「今回のリニューアルを皮切りに柏屋カフェ2号店、旅館別館と集中投資をする予定だったが、少しようすを見ている。コロナ後を見据えて投資を始めている所も多く、勇気を出して次のステップを目指そうと思う」と現在の心境を語っている。

斉藤鉄夫国土交通大臣が新任会見 「Go Toトラベルは必要不可欠。再開のタイミングを検討」

2021年10月5日(火) 配信

斉藤鉄夫大臣(10月5日、国土交通省で新任会見)

 岸田文雄内閣が10月4日(月)に発足し、新たな国土交通大臣に斉藤鉄夫氏(公明党、衆議院議員)が就任した。5日(火)に開いた新任会見で、斉藤大臣は観光への継続的な支援と観光需要の回復を重点課題とし、Go Toトラベル事業については「必要不可欠な事業であり、再開のタイミングや内容を検討していく」と力を込めた。

 岸田首相の指示も踏まえ、とくに注力していく柱に、①国民の安全・安心の確保②コロナ禍からの社会経済活動の確実な回復と、経済の好循環の実現③活力ある地方創りと、分散型の国づくり――の3つを挙げた。

 安全・安心の確保では、自然災害の頻発・激甚化のなかで「防災・減災、国土強靭化のための5カ年加速化対策」を着実に進め、流域治水プロジェクトも推進していく。

 コロナ禍からの回復に向けては、「感染症対策をしっかりと講じることを前提に、ダメージを受けた観光業を支援する」と明言。「危機を乗り越えるために、まずは雇用の維持と事業継続の支援に注力する」と語った。 

 また、9月9日に新型コロナウイルス感染症対策本部で決定した「ワクチン接種が進むなかにおける日常生活回復に向けた考え方」として、感染の状況を十分に踏まえつつ、ワクチン・検査パッケージを活用して観光振興策の実施を検討することが盛り込まれており、斉藤大臣は「国交省としても内閣官房と連携して、検討を進めていきたい」と述べた。併せて「旅行業、宿泊業と連携しながら、ツアーや宿泊施設における運用の技術実証を実施する」予定だ。

 さらに、「2030年に訪日外国人旅行者数6000万人、訪日外国人消費額15兆円の目標を堅持していく」と述べ、長期的な計画に変更はないことを示した。