No.360 東鳴子温泉 勘七湯 - 「困った人を受入れる」宿の使命

東鳴子温泉 勘七湯
「困った人を受入れる」宿の使命

〈「21世紀の宿を考える」シリーズ(3)〉 勘七湯

 旅館経営者へのインタビューシリーズ「21世紀の宿を考える」の第3弾は、宮城県・東鳴子温泉の「勘七湯」7代目館主・高橋聖也氏が登場。「湯治の原点は日常にある」と語る高橋氏は、「本物の温泉と、居心地の良い空気を提供し続けること」が湯治文化を継承することと考える。また、「温泉そのもの」に対して敬意を持ってほしいと、強く願う。「困った人がいれば受け入れるのが旅館の社会的な責任であり、使命である」という信念に基づいて、宿を経営している。

【増田 剛】

湯治の原点は日常にある

≪京都の俵屋旅館で1年間修業、「一つのものを極める姿勢」学ぶ≫

 勘七湯の創業は1784(天明4)年です。東鳴子温泉で最も歴史の古い宿の一つで、私は7代目になります。古くから湯治療養を目的に多くの人々がこの地を訪れ、私も幼少のころから毎日、湯治客と接してきました。現在の客室数は40室で、旅館部が20室と、自炊の湯治客と食事付きのお客様もいるのですが、湯治部が20室。湯治客のピークは1―2月です。

 

※ 詳細は本紙1532号または1月27日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

学生に人気の旅行業界 ― 旅人は事情を抱える生身の人間

 朝日学情ナビが2015年3月卒業・修了予定の全国の大学3年生・大学院1年生に聞いた(有効回答8291人)就職人気企業ランキングをこのほど発表した。上位は(1)JTBグループ(2)オリエンタルランド(3)全日本空輸(ANA)(4)資生堂(5)伊藤忠商事(6)三菱東京UFJ銀行(7)日本航空(JAL)(8)東日本旅客鉄道(JR東日本)(9)エイチ・アイ・エス(HIS)(10)三井住友銀行――となった。

 公務員の人気が高いなど、近年の就活状況は安定志向が強いと言われるなか、サービス業の旅行会社がトップ10に2社も入っている。また、観光産業と関わりの大きいオリエンタルランド、ANA、JAL、JR東日本も顔をそろえ、一見すると、観光関連企業の人気ランキングの様相だ。100位の中には、24位に近畿日本ツーリスト、56位に日本旅行、94位に阪急交通社もランクインされている。宿泊施設では唯一、99位に帝国ホテルが入った。

 安定志向というよりも、「やりがい」を優先させてか、はたまた親しみやすさからなのか、サービス業の人気が高いことを表している。観光産業、とりわけ旅行会社は根強い人気を持っている。私が学生だった20数年前も旅行会社の人気は高かった。しかし、そのころと今は大きく状況が異なる。

 大手旅行会社では「旅行経験がほとんどない学生が多く志望してくる」という話をよく耳にする。これはちょっと驚きだ。数十年前だったら、旅行会社に就職したいと考える学生は、「バカ」が付くほどの旅好きであったはずだ。HISの平林朗社長は高校卒業後、海外を放浪。その後HISにはアルバイトからスタートし、40歳という若さで社長に就任する異色の経歴の持ち主だが、創業者の澤田秀雄氏も若き日は海外放浪者であり、HISには「若き無謀な挑戦」というDNAが受け継がれているようだ。

 旅行会社には多かれ少なかれ、このような血が流れているという印象が強いのだが、今は時代が変わったということか。大学の観光学部の学生もあまり旅行をしないと聞く。

 「老人会の幹事をしていたときには、旅行会社や旅館から贈答品やダイレクトメールが送られてきたのですが、役職を終え、その後妻も亡くなり1人になったとき、かつてお世話になっていた旅館に泊まりに行ったのですが、対応が冷たくて……」。ご高齢のお客が東鳴子温泉「勘七湯」のご主人・高橋聖也さんに寂しそうに語ったというエピソードが印象的だった。

 宿から手厚くもてなされることもなく、「家に1人でいるよりも孤独な思いをした」という老人の気持ちを想像すると、切ない。団体客を取り仕切る幹事と、年老いた一人ぼっちの個人では、社会的な地位は違う。でも、まったく同じ人物である。 

 旅行会社の営業マンや大型旅館などの場合、1人客よりも、30人の団体客の方がありがたいに違いない。けれど、社会的な立場や地位によって、手のひら返しの対応をしてしまっては、やはり寂しい。旅人はそれぞれの事情を抱える生身の人間である。そしてさまざまな思いを胸にしまって旅をしている。

 旅行会社や宿泊施設に就職を志望する学生には、見知らぬ土地で旅人が感じる孤独な思いや、地域や宿で“人の温かみ”に接した経験がすごく大事な気がする。

(編集長・増田 剛)

危機管理に提言、旅行会社の役割と行動示す(JATA)

 日本旅行業協会(JATA)はこのほど、危機管理の提言として「観光危機管理における組織的マネジメントのあり方」を策定し、2013年12月27日、観光庁に提出した。提言では、危機発生時の初期対応と復興支援の両面で旅行会社の役割が大きいことを指摘。これまでの実績をもとに、具体的な行動指針「旅行安全マネジメント」を提起した。

 12年4月の高速バス事故や中国・万里の長城での日本人遭難など旅行中の重大事故が多発したことから、13年4月、観光庁に出された「観光産業政策検討会提言」のなかで、旅の安全確保に組織的な安全マネジメントの取り組みの必要性が盛り込まれた。これを受け、JATAは13年6月以降、海外旅行推進委員会の安心安全部会を母体に、国内旅行推進委員会、訪日旅行推進委員会のメンバーを加えた横断的な「拡大安心安全部会」を設置し、検討を重ねてきた。今回の提言はそれらを最終的にまとめたもの。

 旅行安全マネジメントの対象は企画旅行契約。大きく、経営トップかトップが指名する役員が安全管理責任者として、現場まで「安心安全」の意識のもとに動く組織づくりと、PDCAサイクルに沿った具体的取り組みの推進で構成する。具体的な取り組みのガイドラインは(1)ツアーオペレーターとの契約に関する基本事項(2)ツアーオペレーター業務に関わる安全マネジメント調査票(3)国内・訪日旅行における安全基準項目(4)「旅行安全マネジメント」の自主点検チェック表――などを提案する。

 一方で、日本の大手旅行会社は世界基準でみても高い安全マネジメントを既に有しており、これはあくまでも最低基準としての位置付け。また、JATA会員だけではなく、全国旅行業協会(ANTA)会員を含めた業界全体への普及が重要と考える。

 1月8日の会見で菊間潤吾会長は「日本の旅行会社は海外旅行の分野で事故時の初期対応などきめ細やかな対応をしてきたが、国内旅行、訪日旅行に範囲を拡大して、旅行会社の実情に即したより一層の安心安全を担保していくためのグランドデザインづくりを行った。会社の規模を問わないガイドライン」と語った。観光庁からも「素晴らしい取り組み」と評価されたことを報告。今後は会員への周知徹底をはかっていく。

埼玉県観光モニターツアー

 1月某日、埼玉県観光モニターツアーに参加してきた。今回の見学コースは、春日部市の首都圏外郭放水路→上尾市の恵比寿亭で昼食→北本市のグリコピア・イースト→地場物産館「桜国屋」といずれも初めて行く施設ばかり。

 首都圏外郭放水路は埼玉県東部の浸水被害を軽減するため、流域河川の洪水を地下に取り込み、地底50メートルを貫く総延長6・3キロのトンネルを通して江戸川に流す世界最大級の地下放水路だ。巨大な柱が59本も林立する調圧水槽の内側は、まるで地下神殿に迷い込んでしまったような異空間を体験することできた。

 今回の見学施設はどれも観光素材として潜在価値が高く、これを生かさない手はない。点だけでは弱いが点を線で結ぶことができれば、日帰り観光の目的地として化ける要素は大きい。

【古沢 克昌】

外国人入国者1125万人、13年23%増で大台突破(法務省)

 法務省が発表した2013年の外国人入国者数速報値(再入国者数を含む)は、前年比22・7%増の1125万4841人と、初めて大台の1千万人を突破した。

 就労や留学などで日本に中長期在留している外国人の出入国(再入国)を除く新規入国者数も同26・5%増の955万4419人と過去最高を記録。円高是正による訪日旅行の割安感やASEAN諸国に対するビザ発給要件の緩和が後押しした。

 国・地域別の新規入国者数をみると、韓国が同21・2%増の230万5980人とトップ。次いで台湾が同51・5%増の216万5282人、中国が同6・4%減の98万3270人、米国が同11・6%増の74万2812人、香港が同57・2%増の71万8826人、タイが同77・2%増の44万3740人、オーストラリアが同18・7%増の22万6505人、シンガポールが同33・7%増の18万5352人、英国が同9・8%増の17万877人、マレーシアが同38・1%増の16万6467人と続いた。

 また、日本人出国者数は同5・5%減の1747万2627人だった。

60周年記念事業を実施、旅の構造「滞在型」へ(国際観光施設協会)

中山庚一郎会長
中山庚一郎会長

 国際観光施設協会(中山庚一郎会長)は1月14日、東京都千代田区のホテルメトロポリタンエドモンドで2014年賀詞交歓会を開いた。中山会長は「公益社団法人になって3年目、さらに我われの協会は今年60周年を迎える」とし、「2月18―21日まで東京ビッグサイトで開かれる国際ホテル・レストラン・ショーのなかで、60周年記念事業として国際観光施設協会の活動を広く社会に知ってもらうことを目的に『美しい日本文化とエコ技術』という事業を行い、5千人の来場を目指す」と述べた。「公益法人というのは社会と結びつかなければ意味がない。我われの取り組みや事業が社会を巻き込んでいくには、まずは我われの活動を知ってもらうこと」と説明した。

 さらに、「我われは1泊型が主流の旅の構造を、滞在型へと変えていく活動も行っている。世界を見ても日本の1泊型の旅行スタイルは特殊。外国人旅行者も(食事など滞在型に対応していない宿泊施設に)困惑してしまう」との考えを示し、宿や温泉地、観光地など全体的に滞在型への旅の構造に変えていく必要性を訴えた。最後に中山会長は「観光産業は大地に根差した産業。大地の力を活かしていくことが我われの活動のテーマだと思っている。力を合わせて前進していこう」と呼び掛けた。

 来賓の観光庁の石原大観光産業課長は「昨年は訪日外国人1千万人を達成した。これからは質をどう高めていくかが大事」とし、「外国人観光客と合わせて、日本人も国内旅行で2泊、3泊と滞在したくなるような地域づくりにも取り組んでいきたい」と語った。

「ゴール設定が重要」、観光協会の課題を議論(観光おもてなし研究会)

女性だけのおもてなし研究会
女性だけのおもてなし研究会

 観光庁と日本観光振興協会は協働で、地域の観光協会などの現状や求められる役割について議論・研究するため、「観光おもてなし研究会」を立ち上げ、昨年12月17日に第1回研究会を開いた。ゴール設定や、観光客と地域とのコミュニケーションポイント増加などの重要性が提起された。同研究会の模様はニコニコチャンネルで生中継され、全国の観光協会からの反応や質問も紹介された。

 同研究会のメンバーは、日中コミュニケーションの可越取締役、日本交通公社の久保田美穂子観光研究情報室長、交通新聞社の矢口正子旅の手帖編集長、首都大学東京都市環境学研究科観光科学域の矢ケ崎紀子特任准教授、リクルートライフスタイルじゃらんリサーチセンターの横山幸代副センター長の5氏。

 多くのメンバーがゴール設定の重要性を強調。横山氏は「何のためにおもてなしをするのか、おもてなしが消費につながっているのかを、しっかり考えなくてはいけない」と指摘し、消費を促すもの、旅行者がほしいものから発信していくよう提案した。矢ケ崎氏は「首都圏からたくさんの観光客に来てほしい」という過去の成功体験にもとづく漠然とした目標を捨て、具体的な達成目標を掲げることを提起。「観光客は何人来てほしいのか、消費額がどれだけあれば良いのか、ビジネスとしてやっていくにはシビアに考え、ゴール設定する必要がある」と語った。

 また地域の魅力について、距離や情報の少なさを超える「人を呼ぶ大きな魅力」と、「来てみて初めて分かる第2の魅力」の、2段階に整理して考えることを提案。矢ケ崎氏は、「第2の魅力はあたかも観光客が自分で発見したように仕込まれているとなお良い」と語った。

 そのほか、満足度を上げるために、観光客と地域とのコミュニケーションポイントをいかにたくさん持つかが重要と提起され、可氏は、パンフレットの日本語から外国語への単なる直訳ではなく、各地域の差別化の研究と戦略立案の段階から外国人専門家を招くことを提案した。

 なお、同研究会は今後2回程度開く予定。

「地域・人・心をつなぐ」、お客様感謝会開く(イーグルバスグループ)

谷島賢社長
谷島賢社長

 イーグルバスグループ(谷島賢社長、埼玉県川越市)は1月4日、埼玉県の川越プリンスホテルで、取引先関係者や顧客など約80人を招き「2014年イーグルバスグループお客様感謝会」を開いた。

 谷島社長は「燃料費高騰や人手不足などバス業界の取り巻く環境は厳しいが、東京オリンピック開催が決まるなど明るい展望もある。当社では昨年8月に川越から毎日、京都・大阪への高速バスの運行を開始、今年4月には東秩父村に営業所を開設する」と語った。また、「川越を国際観光都市にしたいという思いからアジア諸国との絆も深めていきたい」とし、「今後も地域をつなぎ、人をつなぎ、心をつなぐ会社としてツーリズムを主体とした地域おこしに邁進していく」と結んだ。

 来賓の川合善明川越市長は「イーグルバスグループには福祉バスでお世話になっている。観光面でも新しい企画を次々打ち出し、地元のにぎわいの創成に協力してもらっている。川越は東京オリンピック開催の際はゴルフ会場になる予定であり、世界から川越に多くの人が来てもらう受入体制を行政、民間が一体となって整えていくので今後ともお力添えいただきたい」と述べた。

訪日は大幅増見込む、JTB14年旅行動向

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国内0・2%増、海外も回復へ

 JTBがこのほど発表した2014年の旅行動向見通しによると、1泊以上の国内旅行人数は前年比0・2%増の2億9150万人、海外旅行人数は同2・1%増の1780万人。また、訪日外国人数は同14・3%増の1180万人と、2013年に続いて国内、海外、訪日ともに13年を上回ると予測。とくに訪日外国人数は大幅に増加するとみる。

 14年は、4月からの消費増税前の駆け込み需要に期待がかかる。その後の反動により消費の停滞期が予測されるが、企業業績回復による後半の盛り返しが期待される。また、12年からの経済政策により、緩やかな円安基調が続くと予測され、訪日外国人数の増加への後押しになるとみる。

 消費増税による旅行支出の停滞の可能性については、同社が11月に実施した旅行動向アンケートから、増税後もシニア層の旅行意欲が底堅いとの結果が出た。

 国内旅行は、連休の日並びをみると週末3連休の回数が前年より1回減少。ゴールデンウイーク(GW)は前半3連休と後半4連休に分かれるため、比較的近場で動く人が多いと予想される。平均消費額は、消費増税や円安、原油高、旅行意欲の高いシニアを中心に、質の高い旅行を求める傾向などを背景に上昇する見込み。また、オリンピックに向けて開業される外資系高級ホテルでの過ごし方や、大型商業施設での都市型レジャーが注目される。

 海外旅行は、LCCを含めて航空座席数が増加傾向にあることや、近隣諸国との関係が13年より落ち着きつつあること、シニア層の旅行意欲が底堅いことにより13年からの回復を見込む。14年は羽田空港の国際線発着枠が6万回から9万回に増加し、またLCCの新規就航も増え、航空機利用が増えることが予想される。人気の旅行先をみると、ハワイや東南アジアのリゾートが人気となっており、暮らすように過ごす滞在型旅行への志向も高まっている。

 インバウンドは、12年から国際関係の悪化による中国からの観光客が大きく減少していたが、13年終盤には回復の兆しが見え始めた。円安傾向の継続に加え、富士山や和食の世界遺産登録など、日本への関心が高まっていることから、引き続き回復傾向とみる。韓国は、震災後からの回復が遅れていたが、13年には震災前のレベルまで戻り、14年も前年並み。欧米からの訪日も経済の回復と共に増加している。東南アジアは13年のビザ免除・緩和効果ほどではないが、引き続き増加すると予測される。

14年国内はやや厳しい1年に、日本交通公社旅行動向シンポ

国内と訪日を分析
国内と訪日を分析

訪日は地方での受け入れが鍵

 日本交通公社は2013年12月19日に「第23回旅行動向シンポジウム」を開き、観光政策研究部の塩谷英生次長と相澤美穂子主任研究員が国内・訪日旅行市場の動向と展望について講演した。2014年の国内旅行は旅行意欲が伸び悩み、やや厳しい1年になるとの見方を示した。一方、訪日旅行の今後は、東・東南アジアの中間層と高所得層の増加による市場拡大が期待でき、FIT化とリピーター増加で地方での受け入れが重要になるとの展望を語った。

塩谷次長
塩谷次長

 国内旅行はまず、景気動向と旅行市場の関連について解説。国内旅行量の長期波動は景気との連動が基本で、塩谷次長は「旅行量のピークは、インフラ整備が熟して景気が下り坂になるタイミングで発生することが多い」と説明した。続いて旅行実績との連動がみられるJTBオピニオンリーダー層調査を紹介。消費増税や給与・ボーナス減少の懸念など景気への不安から、14年の年間旅行回数が増えると答えたのは前年調査の40・4%から31・8%に減少し、14年は「やや厳しい1年になる」と予想した。

 近年の旅行市場の質的変化をみると、ネット旅行会社の躍進、航空運賃自由化、高速道路割引、LCC登場、ダイナミックパッケージ増加などの構造変化でFIT化が加速。旅行会社の取扱額は07年の8兆2千億円をピークに、12年には6兆円まで減少、旅行会社利用率も中期的にみて低下傾向だ。2000年代前半には、自由度の高いフリープラン型旅行の比率が上がり、00年代後半には旅行予約サイトの利用率が上昇。旅行の申込み方法は、旅行予約サイトの利用が07年の13・4%から12年の24・9%まで増加し、その分宿泊施設での直接予約が41・9%から31・5%に減少した。

外国人比率30年に、6%から17%へ拡大

 2030年に向けた観光地経営のポイントには、(1)80代ツーリズム(2)FITを中心としたインバウンド(3)スマート観光地――の3つをあげる。

 日本の人口は10年の1億2800万人から30年には1億1700万人まで減少。宿泊観光旅行量は20年間で1200万人回減り、年代別では、70代と80代以上のみが増加する。70代以上は、観光旅行の利用交通機関で自家用車比率が低く、貸切バス比率が高い。塩谷次長は、「80代ツーリズムの成立には団体ツアーとFITの両面の施策が必要」と話した。

 将来の延べ宿泊数の動向をみると、12年の4億3900万人泊から30年には4億5千万人泊へと微増。内訳をみると、日本人が4億1300万人泊から3億7300万人泊へと大きく減少し、外国人が2600万人泊から7700万人泊へと飛躍的に増加する。外国人比率は6・0%から17・1%へとアップし、人口減による日本人旅行量の落ち込みをインバウンドが相殺する形になる。国内観光消費額に外国人客消費が占める比率は、日本は11年の4・5%から30年にはイギリス並みの17・1%まで増加。外国人観光客比率の高い地域では、国内旅行市場が縮小しても延べ宿泊者数が増える見込みで、塩谷次長は「外国人客を受け入れられない地域は、旅行量がマイナスになる」と指摘した。

 また、観光地の経営は、人口減少と財政悪化の課題が大きく、塩谷次長は「スマート観光地への取り組みが必要」と強調。「法定外税や、入湯税超過課税、協力金、事業収入などの自主財源が課題で、観光部署の予算規模は小さく、都市計画や交通計画と連動した観光計画が不可欠だ」と提起した。

地方ニーズ拡大、交通が課題に

相澤主任研究員
相澤主任研究員

 相澤主任研究員はインバウンドの動向と展望について解説した。03年のビジット・ジャパン(VJ)キャンペーン開始から約10年で市場が2倍に拡大。韓国、台湾、中国、香港のシェアが大きく伸び、東南アジアも増加、英仏独、米国・カナダは横ばいだった。震災前と13年を比較すると、台湾と香港、東南アジアが大幅増をみせ、欧米は横ばい。各国の海外旅行における訪日シェアは、台湾が震災前の13%から12年に14%へと微増したのに対し、韓国は20%から15%、中国も8%から5%へと減少。いまだ回復していないことがわかる。

 旅行内容の変化をみると、10年と12年の比較で、香港を除くアジアで個別手配率が上昇しており、とくにシンガポールと中国の伸びが顕著。パッケージツアー利用率の高い台湾でも45%から51%へと増加し、ついに個別手配率が半数を超えた。

 台湾の2倍以上の伸びをはじめ、各国で訪日リピーターが増加しているが、相澤主任研究員は「訪日回数が増えるにつれ、地方への訪問率が上がり、地方への分散化が進む」と報告。フリープランやFITでの台湾人再訪日希望者の49%に地方訪問経験があり、同じく49%は未経験だが地方訪問を希望している。ただし、地方訪問への課題点も少なくなく、言語よりも交通機関の手配の手間や交通費、移動時間などの懸念が多かった。また、ショッピングニーズの高さから大都市を拠点に地方を訪れたいという声も多い。

 今後の見通しでは中国、インド、東南アジアで引き続き高いGDP成長率が見込まれ、早ければ30年ごろまでにはマレーシア、中国、タイが先進国入りする。中間層や高所得層の増加でアジアの市場拡大が期待され、20年には訪日外客数1600万人、25年に1980万人、30年に2440万人の予想をたてた。

 震災や中国の旅遊法施行がFITの進展を後押し、FIT化とリピーター増加にともない、地方訪問のニーズが徐々に顕在化。相澤主任研究員は「地方でどれだけ受け入れられるかが今後重要になる」とまとめた。