ポイント付与開始、ランクごとの特別サービスも(エクスペディア)

6月2日に記者会見を開いた
6月2日に記者会見を開いた

 エクスペディア・ジャパンはこのほど、独自のポイント付与と、ステータスごとに特別なサービスやホテルでのVIP待遇を受けられるロイヤルプログラム「Expedia+(エクスペディア プラス)」の提供を開始した。

 エクスペディアのサイトやアプリなどから旅行予約をすると、次回の旅行予約時に使えるポイントをもらえる。

 ポイントの対象は、ホテル予約、航空券予約、ホテルと航空券を合わせたツアー予約。ホテルとツアーは75円で1ポイント、航空券は750円で1ポイントになる。3500ポイントで2500円割引のクーポンを発行される。

 また、ステータスプログラムとして会員ランクを「+ブルー」「+シルバー」「+ゴールド」の3つに分け、それぞれのランクに合わせた特典が受けられる。

 「+ブルー」からスタートし、予約日数が7泊以上か利用金額60万円以上で「+シルバー」に、15泊以上か120万円以上で「+ゴールド」になる。朝食やワイン、スパが無料になったり、客室がグレードアップされたりなど提携ホテルの特典や、会員限定のお得プロモーション、優先カスタマーサービス、予約時のボーナスポイント獲得などのサービスが受けられる。

 「Expedia+」提供開始の6月2日には東京都内のホテルで会見を開き、木村奈津子マーケティングディレクターがサービスについて説明した。

旅館の夜のロビー ― 「文化では飯は食えない」は本当か

 旅館の居心地の良さは、どこで感じるだろうか。多くの人は、プライベート空間である客室と答えるかもしれない。

 だが、私は居心地の良さを感じるのは、夜遅い時間帯のロビーなのである。

 夜の9時、10時にもなると、ロビーは人気が少なくなり、灯りのトーンも落としているので、ゆったりとしたソファに座ると、何となく落ち着く。

 小さな図書館がある宿もあるが、大体の宿にはロビー周辺に本棚や、雑誌ラックなどがあり、そこにさまざまな出版物が置かれている。旅館は旅人と、地域を結び付ける「場」であり、ロビーは、まさにその中心地である。

 少し夜更けに、人影の少なくなったロビーで何気なく手に取るのは、このような小さな雑誌であり、小さな本である。

 まったく従業員の姿が見えず、一人ぼっちで照明のほとんどないソファに座ることもある。別に放ったらかしが嫌なわけではない。誰かの視線を感じるよりも、気が楽でくつろげることも多い。

 趣味のよいランプや間接照明で、疲れのない空間を演出している宿もある。ロビーに、どこか文化的な薫りが漂う宿ならば、どのような方がこの宿のオーナーなのだろうと感じてしまう。私は、ロビーの大切さに気づいている宿が好きである。

 宿泊客にはさまざまな人がいる。旅に疲れ、お酒を飲むと客室で早々と眠ってしまう旅人もいれば、親しい友だちと夜遅くまでおしゃべりが楽しい夜もあるだろう。また、一人で宿を訪れ、客室に戻ってテレビを付けるのも味気なく、なんとなくロビーに出てきて、ソファに身を凭せ掛ける旅人もいるはずだ。

 先日、「旅の眼」という雑誌が送られてきた。「旅の眼」は、本紙でも連載コラムを持つ旅行作家の野口冬人氏が発行人、竹村節子氏が編集人として発行されている。今号で121号となる。色々な雑誌があるが、私はこの雑誌が届くのを楽しみにしている。

 今号は、冒頭に、こちらも本紙で連載コラムを持つ松坂健氏の「わたしの日本旅館原論」が掲載されている。

 小さな本なので、すぐ読み終えた。そして、何気なく読んだ「編集後記」の竹村氏の文字に目が止まった。

 〈かつて120軒あった賛助会員数も、現在約60軒。会員の減少は資金の減少につながり、以前のように出版活動ができなくなった。第28回「年に一度の大集会」で配布した『わたしの温泉観光論』で資金が底をつき、途方に暮れていたところ、水明館の滝晴子大女将が50冊、買い上げてくださって、121号発刊の目処がついた。ありがたかった〉

 私は、何度もこの文を読み返した。

 「旅の眼」の賛助会員の約60軒の館名が本の最後にずらりと並ぶ。規模の大小はあるが、いずれも文化の薫り高き、名旅館ばかりだ。そこからは「宿文化とはなにか」を常に考え続けるオーナーたちの顔がいくつも浮かんでくる。「文化では飯が食えない」という言葉をよく聞く。本当かどうかわからない。だけど、寂しい言葉である。

 ロビーはにぎやかな昼間ではなく、夜更けの静かな時刻に、文化の匂いを夜の植物のように発散させ、何かを語りかけてくる。そのような宿に敬服してしまう。

(編集長・増田 剛)

半年で2倍に拡大、消費税免税店1万8779店舗に(国税庁調べ)

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 国税庁がこのほど発表した、15年4月1日集計の全国の消費税免税店舗数は1万8779店舗となった。昨年10月1日集計の9361店舗から半年で約2倍に急拡大した。

 都道府県別に店舗数をみると、最も多いのは東京都で5469店舗、次いで大阪府が2316店舗、北海道が1132店舗、福岡県が1011店舗、神奈川県が994店舗、千葉県が801店舗、京都府が772店舗、兵庫県が701店舗、愛知県が672店舗、埼玉県が500店舗と続く。

 一方、店舗数が少ない都道府県は福井県、島根県、徳島県、秋田県など。

 全国の店舗数に対する東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、京都、兵庫の三大都市圏の割合をみると、14年10月1日は69・9%を占めていたが、今回集計では地方部で3736店増加し、三大都市圏の割合は65・1%となった。

 消費税免税店は12年4月に4173店舗、13年4月に4622店舗、14年4月に5777店舗と推移していたが、14年10月の外国人旅行者向けの消費税免税制度改正を受け、14年10月1日には9361店舗と大幅に拡大していた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

No.404 日本旅館協会総会特集、針谷了会長インタビュー

日本旅館協会総会特集
針谷了会長インタビュー

 日本旅館協会(針谷了会長)は針谷体制となり1年が過ぎた。(1)協会の正常化(2)会員メリットの拡大(3)観光立国への貢献――の3つを柱に、協会の財務体制にもメスを入れ、収支の大幅な黒字化に成功。委員会の一新、保険代理業務の協会直轄による安定的収益の確保、クレジットカード手数料の低減化などを断行し、今年度はさらに、旅館経営の生産性向上も積極的に推進していく。針谷会長にこの1年と今後についてうかがった。
【聞き手=石井 貞德・旅行新聞新社社長、構成=伊集院 悟】

 

 

 ――会長に就任されて1年が経ちます。この1年間の取り組みと成果、事業の進捗状況について教えてください。

 昨年6月、会長に就任させていただき、(1)協会の正常化(2)会員のための事業推進による会員メリットの拡大(3)観光立国への貢献――の3つを柱に取り組んできました。

 協会の正常化としては、まず定款の見直しを行いました。急場での2団体の合併のため、一般社団法人に関する法律と当協会の定款、定款と諸規定との間に齟齬があったので、総務委員会を中心に熱心に取り組んでいただき、諸規定を6本改正、3本新たに制定しました。昨年9月の臨時総会で定款を一部改正を承認いただき、さらにこの6月の総会で抜本的な改正案を提案する予定です。

 また、財務状況は約4300万円の赤字予算で、改革をしないと財政が破綻するようなひどい状況でした。そこでまずは支出の無駄を洗い出しました。事務所を全国旅館会館へ移転し賃貸料を抑え、団体合併にともない2人いた事務局役員を1人にしました。ホームページ「やど日本」は運営費だけで年間約1千万円かかっていましたが、コールセンターなどをなくし、ランニングコストのサーバー費用である年間8万4千円に削減。さまざまな団体・組織に加盟もしていましたが、それらも必要なものだけに精査し、団体会費支出を実質4割カットしました。…

 

※ 詳細は本紙1589号または6月17日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

北原体制がスタート、佐賀県で全国大会開く(全旅連)

北原茂樹新会長があいさつ
北原茂樹新会長があいさつ

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の第93回全国大会が6月3日、佐賀県の佐賀市文化会館で開かれた。北原茂樹新会長(旅館こうろ)は「私が経営している宿は京都で30室程度。歴代会長の宿と比べて(小さいので)どうかな、という不安もあるが、違った視点から宿泊業界を見ることができるのではないかという思いに至った」とあいさつ。さらに、「今宿泊業界には、インバウンド需要の拡大という追い風と、新しいビジネスモデルが我われ宿泊業を脅かすという向かい風の2つの流れがある。政治的な課題はしっかりと主張しつつ、向かい風もチャンスと捉え、商売でプラスとなるものは取り入れていく姿勢も必要」と述べた。続けて耐震問題や、人手不足の要因として生産性の低さを指摘し、「労務管理や就業規則の見直しなど具体的な行動を起こす時期に来ている」と強調した。

 会場では第18回「人に優しい地域の宿づくり賞」の表彰式も行われ、厚生労働大臣賞に、春蘭の宿さかえや(長野県)の「旅館の社員教育ノウハウを活用して、地域の人財育成に貢献」が受賞。全旅連会長賞には、道後温泉旅館協同組合(愛媛県)の「道後オンセナート2014」、選考委員会賞には、病気のこどもの旅行サポートグループ(有志7施設)の「病気のこどもの旅行サポート」が受賞した。

 その後、「我われ旅館業ホテル業は災害時には防災拠点としての重要な役割を担うことを自負し、経営の安定と地域経済の活性化に努めることを目指し鋭意努力する」旨の大会宣言が採択された。

 次回開催地は、5年に1度の東京開催年に当たり、6月8日に新宿区の京王プラザホテルで開かれる。なお、東京都ホテル旅館生活衛生同業組合(齊藤源久理事長)の主催は33年ぶりとなる。

 全国大会に先立って、2日には唐津市の唐津シーサイドホテルで2015年度通常総会開かれ、佐藤信幸前会長から、北原体制へのバトンタッチが行われた。新体制では副会長に野澤幸司新潟県理事長、多田計介石川県理事長、岡本厚大阪府理事長、井上善博福岡県理事長の4氏が新たに副会長に就任した。会長代行には佐藤勘三郎宮城県理事長の就任が決まった。

良いところ探し

 記事づくりで一番楽な方法は、批判的に書くことだ。とくにコラムなら、何かを批判しておけば、まあなんとかスペースは埋まる。ただ、それでは書き手としてあまりに進歩がない。今回は良いところ探しをしてみようと思う。

 着地ツアーの同行取材で街歩きをした。風情のある、元宿場の商店街。人影もまばらな通りでは、お年寄りがのんびりと歩いている。すると、街灯と一体化したスピーカーからダンスミュージックが。一行を出迎えてくれているのだろうか。おもてなしの心を感じる。住民はダンス好きなのかもしれない。うるさいとか、雰囲気に合わないなんて部外者は口にすべきでない。

 批判的な書き方は楽だ。だが、楽をしていることは見え見えだ。だから切り口を変えてみたが、やはり見え見えか。

【西田 哲郎】

10日間で受講者2500人超、6月9日から“後編”(観光庁)

オンライン講座「旅館経営教室」

 観光庁が5月26日から、同省ホームページでスタートしたオンライン講座「旅館経営教室」の受講者数は6月4日現在2500人を超えた。

 同講座はサービス工学研究の第一人者で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が講師を務めている。5月26日からの前編は「サービス生産管理」の方法をテーマに、1本約10分の動画講義で計100分間程度を受講。各週で数問の確認クイズが出題され、規定の修了条件(60%以上)をクリアすると、観光庁長官の修了証が発行される。

 5月28日時点の受講者を年代別にみると、40代が最も多く、全体の33%を占めた。次いで50代は21%、60代が17%、30代が16%、20代が9%と続く。エリア別では都市部の方が、受講率が高い傾向にある。職種別では、旅館・ホテルなど宿泊業は全体の26%で、小売業や飲食業、製造業などその他産業や、教育機関などの受講者も多い。

 また、北海道の鶴雅グループでは100人を超えるスタッフが受講し、成果は将来の人事にも反映させるという。

 観光庁観光産業課の小俣緑係長は「日本旅館協会など宿泊団体も『サービスの生産性』に高い関心を寄せていただいている。後編(第2週)は現場サービスの労務管理などの内容となっており、若い旅館経営者をはじめ、業種を問わず幅広い方々に受講してほしい。また、旅館経営の悩みなども掲示板で共有されており、いい場になっているのでは」と話す。

 後編は6月9日から公開し、「現場スタッフの労務管理とパフォーマンス評価」の方法が主な内容となる。前編、後編とも8月31日まで公開され、動画はダウンロードすることも可能だ。

          
≪キーパーソンに聞く 内藤 耕氏≫

 宿泊業を題材にした経営教室であるにも関わらず、旅館・ホテル以外で働いている人も多く聴講し、その内容に大きく共感されている。このことは、サービス産業生産性向上が政府の政策課題の最前面に出始めているのにその方法論がこれまで判然としていなかったのが、どうも業種の壁を超える普遍性ある科学的方法論がある可能性を示唆しています。現場でしばしば指摘されるサービスの内容や施設の規模の違いが問題の本質ではないということです。この「旅館経営教室」で紹介しているサービス生産性向上の方法論を学び、より労働条件が改善され、優秀なスタッフがより長く働いてくれるようになれば、直面する深刻な人手不足の問題も克服できようになります。つまり、これからの企業にとって重要なのは、この生産性向上への取り組みの是非ではなく、具体的にいつから生産性向上に取り組み始めるかです。

“ステップ”の年に、「動く。感じる。旅になる。」

田川委員長(中央)、見並副委員長(左)
田川委員長(中央)、見並副委員長(左)

ツーリズムEXPO、9月24―27日開催

 日本観光振興協会と日本旅行業協会(JATA)は5月28日、東京ビッグサイト(東京都江東区)で9月24―27日まで開く、「ツーリズムEXPOジャパン2015」の概要を発表した。2回目の開催となる今回は“ステップ”の年と位置付け、世界最大級の観光イベントとして、さらなる飛躍を目指す。 今年のツーリズムEXPOのキャッチフレーズは「動く。感じる。旅になる。」

 ツーリズムEXPOジャパン実行委員会の田川博己委員長(JATA会長)は「現在、東京五輪の20年を視野に、その中間年の16年を1つの節目として事業を計画している」と語り、今年は昨年からステップアップし、新しいプログラムや取り組みに挑戦していくとした。「16年はリオデジャネイロで、オリンピックの次回開催地として東京がコールされ、日本が注目される年。ツーリズムEXPOジャパンも大きく飛躍するジャンプの年にしたい。観光産業の関係者にとって、欠かせない観光総合イベントへの確立が大きな目標」と述べた。

 大きな5つの事業を展開するなかで新たな取り組みとして、観光産業の発展や拡大に寄与する団体や個人を表彰する顕彰事業「ジャパン・ツーリズム・アワード」を創設する。「国内・訪日領域」「海外領域」「UNWTO部門賞」の3部門を設ける予定。見並陽一副委員長(日本観光振興協会理事長)は、「地域や観光事業で大きな発信をしている人や取り組みに光を当てることが、観光立国に結びついていく」と意義を語った。

 国際観光フォーラムの今年のテーマは「Tourism&Culture―旅と文化―」。文化を守り、伝えながら資源化し、それをいかに産業として拡大、発信していくかを議論する。基調講演には世界貿易機関(WTO)元事務局長で、世界観光倫理委員会議長のパスカル・ラミー氏が登壇する。また、フォーラムでは新たに日本アセアンセンターと共催でASEAN地域にフォーカスした「インターナショナル・ツーリズム・リーダーズ・ミーティング」を開催。ASEANと日本の観光産業内の各専門家やトップらによる会議を行う。

 出展数1500コマを予定する展示会は、国内・訪日関連が約4割増加する見込みで、北海道新幹線開業を控える北海道が大きくPRを展開するほか、訪日外国人観光客の増加を背景に、ショッピングツーリズム協会が30コマと大規模なブースを展開する。

 今年の交流会「JAPAN NIGHT」は、都市空間を利用した「都市型MICE」を具現化。丸の内エリアの国家戦略特区を活用し、伝統と先端、技術とアートを通し、日本の多様性を体感する空間を演出する。

 これらの展開で、今年の入場者数は約17万人を見込む。若年層にはSNSでの発信強化をはかるほか、在日外国人向けのPRも積極的に行い、昨年から約1万人の増加を目指す。

旅館内に「ローソン」、宿泊客ニーズに対応(琵琶湖グランドホテル)

ローソン琵琶湖グランドホテル店
ローソン琵琶湖グランドホテル店

 滋賀県大津市のおごと温泉の琵琶湖グランドホテル(金子博美社長)の館内に5月9日、「ローソン琵琶湖グランドホテル店」がオープンした。旅館内に大手コンビニチェーンが出店する全国初の事例。オープン後に、同店の詳細や出足の状況など取材した。
【関西支社=土橋 孝秀】

 ローソン琵琶湖グランドホテル店は、館内1階ロビー内に新設。正面玄関入ってすぐのフロント横に位置する。婦人服や雑貨を販売していたブティックとロビーラウンジの一部を改装したもので、店内の広さは約200平方メートル。ローソンの一般的な店舗と比べ、ほぼ倍の広さがあり、飲料やおにぎりなどお馴染みのローソン商品のほか、同ホテルがこれまで売店で販売していた土産品約600種類をローソンに販売委託する。

 店内入ってすぐのスペースが土産品エリアで、菓子類や地酒、漬け物、コスメ商品などがずらりと並ぶ。奥がローソン商品のエリアで、淹れたてコーヒーを販売する「マチカフェ」のほか、ATM(現金自動預け払い機)や酒・たばこ販売、郵便・宅急便取り扱いなど通常のコンビニサービスを提供する。

 店頭のネオンサインはローソンカラーの青色をほとんど使わず、木目調の落ち着いた色合いにし、和風旅館の雰囲気とマッチするようにした。店員の制服も青白ストライプではなく、茶色のエプロンに黒シャツで統一。店内からは中庭を望み、開放的な空間になっている。営業時間は午前7時から午後11時。年中無休(休館日・貸し切りなど除く)。

 同ホテルの下田直輝専務は、従来の売店を閉鎖し、コンビニ導入に踏み切った経緯について、「お客様の利便性アップや幅広いニーズに応えるのが最大の目的」と話す。ローソンで購入した酒・つまみ類の宴会場への持ち込みはできないが、客室への持ち込みは可能。ローソンオープン前まで、客室で飲む酒やデザートを求めて、約400メートル離れたコンビニまで買い物に行くお客もいたという。

 一方、ローソンも新業態への出店を加速するなか、宿泊・日帰り合わせ年間24万人が利用する同ホテルの集客力に目を付けた。

 同店の長谷川尚太店長は「フランチャイズオーナーとして、別に1店舗運営しているが、新しいことの連続」と話し、宅配数の多さやピーク時の集中具合など“旅館内コンビニ”という特殊性に驚く。

 オープン後の状況は、土産品購入が大半で客単価は約1500円。従来の売店とほぼ同額だが、ローソン側からすると通常店舗の約3倍という。ローソン商品では酒やつまみなどが売れるが、ポテトチップスなどの袋菓子はほとんど売れないという。しかし、家族連れが多い夏場になると状況が変わる可能性もある。下田専務は「年間を通して状況を見ていきたい」と話し、「お客様の反応は好評。商品をさらに充実させ、魅力的な“コンビニ店舗型売店”にしていきたい」と意気込む。

お馴染みのコンビニ商品が並ぶ
お馴染みのコンビニ商品が並ぶ
店内の土産品コーナー
店内の土産品コーナー

下田直輝氏
下田直輝氏

琵琶湖グランドホテル・下田直輝専務

 ――コンビニ導入の経緯は。

 10―15年前は団体客中心で、売店では土産物のまとめ買いがほとんどだったが、今はまったく違う。個人客に客層が変化するなかで、今の売店のままでは売り上げ増は見込めない。お客様の幅広いニーズに応えるには、コンビニ導入が最善と考えた。旅館にコンビニを入れることに社内から異論もあったが、最近のお客様は旅館に対して、旅館ならではの「非日常性」に加え、シティホテルのような「機能性・利便性」を求めることが増えている。MICEやインバウンド客はとくにその傾向が強く、導入に踏み切った。

 ――改装にあたって。

 和風旅館のイメージを損ねない店作りを第一条件に求め、壁や床の色、照明などを提案した。具体的には、照明は通常店舗ではLEDの蛍光灯だが、ここではLEDのダウンライト。結果、柔らかい雰囲気に仕上がった。店頭のローソンマークもできるかぎり小さくしてもらった。

 ――店員におもてなしが求められる。

 スタッフの教育はローソン側の範疇だが、館内にある以上、「コンビニの対応が悪い」と言われれば、我われの責任も免れない。人材教育の徹底は繰り返し求めているが、今後も重点を置いていきたい。

 ――インバウンド客の利便性も高まるのでは。

 全館・全客室Wi―Fi対応するなどインバウンド誘致に力を入れている。台湾の旅行会社からは早速、「ホテルに到着する前に必ずコンビニに寄っていたが、その必要がなくなる」という喜びの声をいただいた。(同店を運営する)フランチャイズ会社には免税への対応と、ドラッグ商品などの充実も働きかけている。

 ――宴会の酒類売り上げ減などリスクは。

 コンビニ商品の宴会への持ち込みはできず、大きな影響はないと想定している。それよりもお客様の利便性が向上することで、旅館のイメージアップになる。会議などMICEの取り込みも強化しているので昼間のお客様も多い。これまでの売店売り上げをローソン側に差し出しても、宿泊客・日帰り客の増加などで全体の売り上げアップにつながると期待している。

長谷川尚太氏
長谷川尚太氏

ローソン琵琶湖GH店・長谷川尚太店長

 ――旅館内に初めての出店だ。

 客単価の高さに驚いた。通常店舗は400―500円程度だが、ここは約1500円。売れる時間も夜9時から11時と、朝7時30分から8時30分に集中する。人員シフトも難しいが、団体客の詳しい情報をホテルから毎日もらい、対策を立てている。

 ――ローソン商品の品ぞろえは。

 通常店舗の3分の1程度にアイテム数を絞っている。調味料や洗剤、日用品などは置いていない。ただ、不要と思っていた尿漏れパットやストッキングなどに意外な需要があることもわかった。旅先で粗相はしたくないというお年寄りのニーズがあり、ストッキングはホテルの従業員を中心に売れる。補聴器のボタン電池を買われたお客様もいて、他の旅館では電池が置いていないと喜ばれた。

 家族連れが増える夏場になると、おにぎりやジュース、弁当の需要が出てくるだろう。ホテルとしっかりコミュニケーションをとりながら、お客様のニーズに対応していきたい。

 ――店づくりについて。

 スローガンは「旅先の思い出に笑顔を添えて」。スタッフ全員でその想いを共有して、おもてなしに取り組んでいる。「いらっしゃいませ」の掛け声も通常店舗では大声を張り上げるが、旅館でそれは馴染まないので、落ち着いたトーンになるように工夫している。お客様はローソンに来ているのではなく、旅館に来ているということを肝に命じ、努力していきたい。

新社長に清水一郎氏、伊予鉄道

清水一郎社長
清水一郎社長

 伊予鉄道(本社・愛媛県松山市)は5月25日、新社長に清水一郎副社長が昇格する人事を内定した。佐伯要社長は会長に就任する。6月25日に開かれる株主総会と取締役会で正式に決まる。

 清水氏は国土交通省観光庁で観光戦略課長などを歴任し14年4月に退官、同年6月から同社副社長に就任している。

 清水氏は松山空港ビル、伊予鉄タクシー、伊予鉄トラベルの社長も兼任する。