旅行会社3社がスマートニュースで「ワク旅」提供へ ワクチン接種者向けプラン

2021年12月7日(火) 配信

ワクチン接種者向けにHISと阪急、東武トップが旅行企画

 エイチ・アイ・エス(HIS)と阪急交通社、東武トップツアーズの旅行会社3社はこのほど、スマートニュース(鈴木健社長、東京都渋谷区)の提供するニュースアプリ「SmartNews」内で、新型コロナウイルスのワクチン接種者向け旅行プラン「ワク旅」の提供を開始する。

 「ワク旅」は、ワクチンの接種者を対象に地元銘品の進呈や、旅先で使えるクーポンを付与するなどの特典付き旅行プランを3社が企画し、提供する。

 一例として、「新宿発限定特急で行く 鬼怒川プラザホテル夕朝食付」プランでは、1グループにつきロゼワインボトルを1本プレゼントする。各プランの情報は、「SmartNews」の「新型コロナワクチンチャンネル」と「トラベルチャンネル」で掲載されるという。

「街のデッサン(248)」「京都で、ロジオロジーを発見した」、滞在型ホテルが地域研究拠点に

2021年12月7日(火) 配信

旅の新しいデザインをステイホテルが秘める

 「そうだ京都、行こう。」――これは名コピーではないか。10月の初旬、私もふと思った、そうだ、京都に行こうと。

 どういう訳か、秋の気配が行き渡ると日本の各地でコロナの感染者が減ってきた。コロナ前は、必ず年に1度はパリでアパルトマンの部屋を借りて、数週間過ごすことを何年も習いにしてきた。それがコロナ禍で不可に。旅への憧憬が心の中で鬱積していた。11月になると、私と同じような心持の人々が旅に出るに違いないと予感した。まだ静かな京都を楽しむのは、10月の内だと判断した。ワイフと2人、何日間か京都に滞在することにした。

 幸いなことに大学院での教え子が、京都でステイ型ホテルの運営会社に関わっている。彼のアドバイスを受けて、新京極通にある東急ステイの1室を押さえた。2年ぶりの新幹線の席を予約するときからワクワクした。鉄道系カードで簡単に改札ゲートも通れるように処置した。空白の2年間があって、旅する手続きを再学習した。

 品川駅から乗る新幹線が事故で遅れたが、生憎な出来事も旅の興としてワイフとおしゃべりで享受した。既に日暮れた京都駅にようやく到着しタクシーにて新京極へ。運転手が河原町の交差点前で車を止めて「この通りの奥にホテルのフロントがありますよ」と教えてくれた。新京極通を入っていくと、確かにドーナツ屋の2階がフロントになっている。長期滞在型のステイホテルはそれでも良いのだと私は得心した。部屋は立派に再開発されたホテルの9階一番奥にあった。48平方メートルの広さで京都の町が一望できる部屋が用意され、4泊5日の滞在が始まる。次の朝、子供のように早起きしてワイフと早速ホテルの周りを散歩する。

 京極とは、かつては京の端を意味していたが、この都に手を掛けたい豊臣秀吉が洛中に寺を集めて寺町を造った。寺は秀吉には肝心な折に武士たちの宿泊施設を意図していた。明治初めの槇村正直府知事が、東京に天皇がお移りになられ衰微した街の復興策に盛り場として寺町通に並行させ、新京極を誕生させた。飲食店、映画館、土産物店が集積し、観光客や修学旅行生たちのメッカとなった。

 そのにぎわいは続いているが、映画館がステイホテルとなり、若者たちを魅了するセコンド(古着)ハウスの集積に変貌した。しかし周囲の狭い路地が今でも生きていて、実に魅惑的で面白いレイヤー空間の創出に寄与している。その路地研究を「ロジオロジー」と名付け、未来都市の鍵にしようと私は旅で覚醒した。

コラムニスト紹介

望月 照彦 氏

エッセイスト 望月 照彦 氏

若き時代、童話創作とコピーライターで糊口を凌ぎ、ベンチャー企業を複数起業した。その数奇な経験を評価され、先達・中村秀一郎先生に多摩大学教授に推薦される。現在、鎌倉極楽寺に、人類の未来を俯瞰する『構想博物館』を創設し運営する。人間と社会を見据える旅を重ね『旅と構想』など複数著す。

LINKED CITY参画企業に迫る④ デジタル技術を活用した街巡りアプリ(コーギア株式会社)

2021年12月7日(火) 配信

 コーギアはデジタル技術を活用して、サステナブルでワクワクする街づくりを応援しています。各地のロケーションデータとエンタメコンテンツで企業や社会が抱える課題解決や、データ活用による事業開発支援・地域創生支援などに取り組んでいます。

 その一例として、ソニーが開発した音声によるAR(拡張現実)のスマホアプリ「Locatone(ロケトーン)」を活用して、さまざまなロケーションをエンタメ化し、来訪者参加・体験型のアクティビティを企画・制作しています。アプリをダウンロードしてイヤフォンを付けて町を歩くと、地図に登録されている場所で自動的にその場所に関わる「音」が聞こえ、関連する情報画像などが表示される「音による仮想現実」が体験できるようになります。

 このほか、まちの新しい魅力や楽しみ方を発見するコンテンツを制作し、人を集めながらも密集状態を回避し、地域がにぎわう施策立案・実施をご支援いたします。

 人々が感動したり、心豊かな時間を過ごしたりしていく場所に必要なのは、技術や便利さといったスペックよりも、何故そこに行くのかという目的だと我われは考えています。ワクワクするような目的地作りをご一緒させてください。

企業情報

コーギア株式会社

E-mail:support@corgear.co.jp

参画企業が進めるLINKED CITYの全容

すみだメタ観光祭開く 観光振興の可能性を語り合う(メタ観光推進機構)

2021年12月6日(月) 配信

メタ観光推進機構は12月4日(土)、観光会議を開き「すみだメタ観光マップ」を紹介した

 メタ観光推進機構(牧野友衛代表理事)はこのほど、東京都墨田区や墨田区観光協会などと連携し、「すみだメタ観光祭」を開いた。12月4日(土)には、観光会議「メタ観光マップで考えるこれからのすみだ」を開催し、メタ観光マップの紹介や、今後のメタ観光の可能性について討論を行った。地域の魅力を多層レイヤーとして位置情報と共に地図上へ可視化し、観光振興につなげる新たな試みだ。

 

 観光会議の冒頭で、メタ観光推進機構代表理事の牧野氏は、「メタ観光マップは、個々人が必要としている、需要のある情報を1つの地図にまとめる試み。地元の人でさえ知らなかった、気付かなかったような場所も網羅した。その集大成を報告させていただく」と話した。

 完成した「すみだメタ観光マップ」の制作報告では、「食事・買物」や「まちあるき」、「文化・アート」、「ネットで話題」などの多層レイヤーを表示し60のカテゴリに分け、墨田区を表示したマップ上に約1700個のタグを作成した。

 例として、従来1つの寺院としてしか紹介されていなかった場所が、葛飾北斎のゆかりの地であり、落語の舞台になった場所であり、スカイツリーのビュースポットであるなど、メタ観光マップ上のタグが表示されることで1つの場所に多彩な魅力が存在していることが可視化された。

 また、街の新たな魅力付けとして4人のアーティストが作成した作品「すみだ新景」のモチーフとなった場所も、「すみだメタ観光祭」のカテゴリで表示している。

 大村雪乃氏や本条直季氏、鈴木康弘氏、架空荘のアーティスト4人が参加した「すみだ新景」は、すみだ北斎美術館MARUGEN100で展示中。期間は12月12日(日)まで。入場無料。

完成した「すみだメタ観光マップ」

「見えない」を可視化 興味を誘導する試みへ

 

 観光会議の後半では、「メタ観光の開発~振興へ」をテーマに、墨田区産業観光部部長の鹿島田和宏氏や、墨田区観光協会理事長の森山育子氏を招きパネルディスカッションを行った。

 東京スカイツリーが開業した2012年以降の墨田区観光振興における課題について、森山氏は「当初は区内回遊性を期待していたが、スカイツリー一極集中から脱することができなかった。コンテンツはあるが生かし切れていないのが現状」と振り返った。「ツアー造成やイベントの展開など、これからメタ観光マップを有効活用したい」と期待を語った。

 鹿島田氏は、「既存のものをどう生かすかが大事であり、観光のためだけに何かを作ってはいけないと考える」とし、「区外の友人や、遠方の親戚を呼んで墨田の行きつけのお店で食事をしても観光と呼べるのではないか。そのくらい観光が身近で、気軽なものになればいい」と考えを述べた。

 牧野氏は、「ランドマークにしか行かない人、自分の興味のあるところにしか行かない人がそれぞれいる。そのなかで、レイヤーにして地図上に表示することで、普段見えていない場所にも気付いてもらえれば。何回でも訪れてもらえるような仕組みや魅力づくりをしていく」と意気込んだ。

LINKED CITYの全容に迫る⑤ 地域をエンターテインメントシティに

2021年12月6日(月) 配信

(左から)川村晃一郎氏、川村文彦氏、小野氏、岡田氏(画面)

 国際観光施設協会(鈴木裕会長)の旅館観光地分科会(川村晃一郎分科会長)は今年3月、観光型スマートシティ「LINKED CITY」構築に向け研究会を発足した。地域資源とAI、IoTデジタルオープンプラットフォームによる事業インキュベーションで雇用を創出。都市と地域、地域と地域をつなげることで分散型社会の構築を実現させることが狙い。

 今回は地域が課題にしている観光客の集客や回遊などの関係人口の創出に向けて、地域の人が活躍できるコンテンツづくりに取り組む活動に迫る。

 川村(文):ソニーのグループ会社であるコーギア社では、地域が課題にしている集客や回遊の支援事業に取り組んでいます。この一環として、ソニーが開発した音声によるAR(仮想現実)のスマートフォンアプリ「Locatone(ロケトーン)」を活用し、街巡りのツアーを造成し配信しています。

 同アプリは今、YOASOBIさんやLiSAさんなどの大物アーティストを起用したツアーで注目が集まっています。これからは地域とのツアーにも力を入れていき、その地域に行かないと、音と仮想現実を体感できないものをコーギア社からも仕掛けていきたいと考えています。

 小野:ツアーで指定された場所に行くと、その場所でしか聴けない音声ガイドを聴けたり、ARを合成した写真が撮れたりできます。撮影した写真はツイッターやインスタグラムなどのSNS(交流サイト)で、ハッシュタグを付けて投稿ができます。

 コンセプトは「地域全体をエンターテインメントシティに」。地域ならではのコンテンツを掘り起こし、磨き上げてつなげていくことでカタチにしていきます。

「ロケトーン」で音声を聴きながら街巡りを楽しめる

 川村(晃):自治体や観光協会などから委託を受けて、アプリに掲載するコンテンツを作るということですね。自治体側は見せ方のアドバイスを受けられ、こういうことに感度の高い人らの集客にもつなげられます。

 ガイドさんはお願いすること自体にハードルが高かったり、開始時間などの制約があったりしますが、これは現地に着いたらいつでもツアーを始められますね。

 川村(文):一番はガイドさんに直接案内してもらえることが良いのですが、今は3密回避の時代。スマホだけあれば個人ででき、3密を比較的避けやすく、疑似ガイドとしても役に立つというのがソニーが開発したこの「ロケトーン」アプリです。

 一方で、面白いガイドさんのノウハウをアプリに落とし込んで、アーカイブ化する利用もできます。地域を魅力的に語ることができるガイドさんの引退などの課題に直面している地域もあると思いますので、段々失われていく可能性があるものをデジタルで解決していき、次世代につないでいければと思います。

 岡田:ラポ社では、写真や動画をイベントやテーマパークで、リアルタイムに参加するゲスト同士のスマホで共有できるフォトシェアリングサービスを開発しています。SNSの普及に伴い、インスタグラムで指定のハッシュタグが付いた写真を収集して、1つのサイネージなどに映し出すサービスも始めました。

 これらは元々、ウエディング利用で開発し展開していましたが、コロナ禍でウエディング需要が激減し、リアルタイムで人が集まる機会がなくなっていきました。そんななかで、ソニーマーケティングさんから法人向けブラビアを活用した客室インフォメーションのサービスとして展開できないかとお話をいただきました。

 ホテル客室やロビーのブラビア画面に、旅の思い出として投稿した地域のインスタグラム写真をシェアし、観光予備群の宿泊客に地域観光を訴求する。ホテルを起点にしたまちのにぎわい創出を進めています。今は北海道帯広市の「NUPKA Hanare(ヌプカハナレ)」でテスト的に導入しており、今後色々な観光地域に入れていければと考えております。

フォトシェアリングサービス(イメージ)

 川村(文):ロケトーンと連携できるかもしれませんね。ロケトーンで投稿した写真を、ホテルのディスプレイに映して共有してもらう。アプリをダウンロードして写真と同じ場所に行けると案内してもらえれば良い流れです。そのためには、まずロケトーンでその地域の知る人ぞ知る場所をピックアップしたツアーを用意する。ツアー化されていれば紹介がしやすく、より好循環につながることでしょう。

 川村(晃):ホテルのフロントの人が紹介するのが重要だと思います。旅行で一番過ごす時間が長いのはホテルですし、泊食分離の宿泊に特化した地方ビジネスホテルほど逆にハマり、転機になるのではないかと感じます。ちょっとした会話とこのようなテクノロジーを使うことで地域観光が発生するということは、ホテルとして良い投資ではないでしょうか。

 川村(文):ツアーの企画が重要になっていきますね。一番重要なのはどういう設定と脚本を書くのかだと思います。

 川村(晃):地元コンテンツということだと“方言を話す”おばあちゃんと、ナレーションによる掛け合いとか面白そうですね。

 川村(文):面白いですね。実際に公開されているツアーを見てもらうとわかるのですが、比較的掛け合いのものが多いです。ナビゲーターと全然地域を知らない人とが掛け合っていく内容のものが、聴いていてリズムが良くて聴きやすい。

 川村(晃):フォトシェアリングサービスもロケーションツアーサービスもありますから、そこにどういうコンテンツを入れていくか。これからの観光の磨き上げの発信ツールになりますね。

「観光革命」地球規模の構造的変化(241) COP26と観光の未来

2021年12月6日(月) 配信

 英国のグラスゴーで開催されていたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)が11月13日に閉会した。国連気候変動枠組条約は1992年に採択された国際条約で、現在の条約締約国は197カ国・地域。条約の目的は大気中の温室効果ガス濃度の安定。95年にドイツで第1回のCOPが開催され、ほぼ毎年1回開催されている。

 今回のCOP26では石炭火力発電の段階的廃止が主要テーマで、議長国の英国は「化石燃料への補助金や石炭の段階的廃止の加速」を締約国に求める合意文書の草案を公表し、議論がまとまりかけていたが、採択直前にインドや中国などが「脱石炭」をめぐって反発し、最終的に「段階的な廃止(Phase out)」から「段階的な削減(Phase down)」へと表現が弱められた。

 COPは197カ国・地域が参加する大規模な国際会議であり、各国・地域の思惑が異なるために「脱石炭」のように世界的合意の形成は容易ではない。例えば、日本政府は「石炭からの脱却」、「化石燃料事業への公的融資の廃止」、「40年までに新車の排ガスをゼロにする」などの個別取り決めには署名していない。とはいえCOP26では「気温上昇を1・5度までに抑制する」や「世界の温室効果ガス排出を30年までに45%削減し、50年までにゼロにする必要のあること」などが合意されている。

 現在、世界的に「グリーンリカバリー」が共通の目標になりつつある。直訳すると「緑の復興」であるが、コロナ禍からの復興に当たって「地球温暖化の防止」や「生物多様性の保全」などを推進することでより良い未来を目指す動きである。EUは既に「欧州グリーンディール政策」を公表して脱炭素化やグリーン経済の実現などを目指している。米国のバイデン大統領は200兆円を諸々のグリーンリカバリーに公共投資して35年までに電力の脱炭素化を目指そうとしている。北欧諸国やカナダなどはまさに「グリーンリカバリー先進国」として実績を上げている。

 世界的な気候変動の今後の行方は、旅行・観光産業にとって存立基盤を危うくしかねない最重要課題である。世界の動きを注視しながら、業界として効果的なグリーンリカバリーとの向き合い方を検討する必要がある。

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

 

 

津田令子の「味のある街」「栗渋皮煮」――紅葉館(群馬県・嬬恋村)

2021年12月5日(日) 配信

鹿沢温泉 湯本 紅葉館「栗渋皮煮」1瓶(8個入り)1500円▽群馬県吾妻郡嬬恋村田代681▽☎0279(98)0421。

 「大自然の光と風……。木の香りと静寂さの中に流れるくつろぎの時間を感じていただければ」と、紅葉館の5代目館主小林昭貴さんはおっしゃる。

 

 紅葉館は、上信越高原国立公園の豊かな自然にとけ込む木の香りの優しい宿だ。2013年に、全面リニューアルし歴史と伝統にモダンさが加わり、女性グループなど新たなファンを魅了している。舞い降りるように空に輝く満天の星の夜には、ロマンチックでファンタジーな刻を過ごすことができるのだ。

 

 「玄関前には湯の丸高原を源流とする渓流があり、窓からは山あいの清々しい風景をお楽しみいただけます」と小林さん。源泉掛け流しの最高品質の湯と、料理旅館ならではの美味しい食事も好評を博している。

 

 紅葉館は1869(明治2)年創業。かつての鹿沢温泉には数件の旅館が建ち並んでいたが現在紅葉館のみ。また鹿沢温泉は「雪山賛歌発祥の地」でもある。嬬恋村の説明版によると、1926年1月京都帝国大学の山岳部が鹿沢温泉でスキー合宿され、合宿が終わってから後に第1回南極越冬隊長をされた西堀栄三郎氏、京大カラコルム遠征隊長となった四手井綱彦氏、アフガニスタン遠征隊を勤めた酒戸弥二郎氏、並びに東大スキー部OBで後にチャチャヌプリ遠征隊長をされた渡辺漸の4人が退屈まぎれに「山岳部の歌」を作り上げたものだという。これを記念し「雪山讃歌の碑」を鹿沢温泉に建立した。

 

 毎年この時期、決まって取り寄せているのがこの宿自慢の期間限定「栗渋皮煮」だ。10月に入るとすぐに作製に取りかかり販売をスタートさせる。栗は、長野県小布施産のブランド栗を使い煮込んでから冷蔵庫で味を馴染ませる。8個入りの瓶詰で1500円という価格も魅力の一つ。栗の旨味の向こうに雪化粧した浅間山の風景が見え隠れする1品だ。蓋を開けなければ、2~3カ月は日持ちするのでお節にも使えるのもうれしい。

 

 「静かな山のいで湯と語らいを楽しみ、心からくつろぐ幸せなひと時をお過ごしください」と小林さん。流れる時間すべてが紅葉館のおもてなしだと実感した。

(トラベルキャスター)

 

津田 令子 氏

 社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。

「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(131)失くしてはならない強みを知る 独自性に未来を託す

2021年12月5日(日) 配信

 

 コロナ禍で伸ばした業界の1つに通販があります。外出制限されるなかで、スマホで簡単に商品がお取り寄せできる手軽さが、多くの消費者に受け入れられたと思います。そういう私も時々利用しますが、箱を開けた瞬間「こんなもの頼んだかな」と思うこともよくあります。

 そんななかで、お世話になっている方の記念日にプレゼントを贈ろうとしましたが、以前からよく利用するメーカーが、メッセージカードを受け付けないということで、今回は利用をやめました。

 自分用であれば問題ないですが、今回はプレゼント用です。「もの」を単に買うのではなく、送る側の想いを受け取り手に届ける「こと」が最も大切なのです。メーカーに問い合わせると、利用が多くて対応できなくなったということでした。大切にすべきことを見失ってはならない、と強く感じたのです。

 「宿泊産業でも同様に大切なことを忘れてはいけない」と強く感じています。他社の価格ばかりに気を取られて、集客のために安さを大切にしていないでしょうか。ビジネス客には、価格は安く立地も仕事に便利な場所が大きな要素となるでしょう。

 ただ、家族と利用する場合は何が最も大切な要素となるのか。価格という人も、料理という人もいるでしょう。あるいは、温泉にゆったりと浸りたい人もいるでしょう。

 要素は1つではなく、複合的に考えて選択する人は多いと思います。

 しかし、忘れてならないのは、それらは単に手段であるということです。旅の目的は、楽しい時間を過ごし、思い出を創ることではないでしょうか。通販企業のように、私たちが本来持っていた強みを失くしていけません。なぜ自分の宿が選ばれているのかを、正しく知ることが大事です。

 それを知る重要なタイミングが、予約時に「何に期待をされて選ばれたのか」を伺うことです。

 価格を武器に集客してきた企業にとっては、「安かったから」の声は正解を意味しますが、次もまた安くないと選ばれないことでもあります。

 料理にあまり自信がないという企業に対して「料理」が、その答えとして多ければ、価格を上げてでもその声に応えて行くべきでしょう。いまの価格に対しての料理の価値といった中途半端な戦略ではいけないのです。

 強みを伸ばして、お客様に選ばれる理由をより強く打ち出していくことが差別化を進めるために必要な戦略です。

 なによりも「人」が選ばれる対象となった時に、その独自性は強い価値を創り出すと考えます。私たちはどんな強みに未来を託すべきなのでしょうか。

コラムニスト紹介

西川丈次氏

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。

 

 

【精神性の高い旅~巡礼・あなただけの心の旅〈道〉100選】-その8- 源頼朝の二所詣(4)伊豆山神社を歩く(静岡県熱海市) “強運”と“縁結び”の力感じる 赤白の龍は温泉の神様

2021年12月4日(土) 配信

 源頼朝ゆかりの「二所詣」は、いよいよ今回で最終地点である伊豆山神社を訪問する。7月3日に伊豆山地区を襲った土石流被害からの復旧も進み、現在は伊豆山神社へ車でもアクセスできるようになっている。
 
 伊豆山神社はもともと第5代孝昭天皇の時代に遡るとも言われているほど、由緒のある神社である。応神天皇、仁徳天皇からの崇敬も受け、以来歴代皇族が頻繁に参拝している。そのような伊豆山神社は、明治初期に廃仏毀釈が行われる前は、伊豆山大権現と呼ばれ、神仏習合の形態を取っていた。修験道の霊場でもあったため、多くの修験者がこの地で修行した。
 
 

 源頼朝は西伊豆の蛭ヶ小島に配流されていたときも、伊豆山大権現まで足を運ぶことは許されていて、たびたび別当密厳院の覚淵阿闍梨に教えを受けていた。
 
 21歳の頼朝は、平氏方の地方豪族として頼朝の監視役であった伊東祐親が京に出仕している間に、その3女の八重姫と通じ合って子を作ってしまう。帰郷してその事実を知った祐親は激怒し、その子を伊東の轟ヶ淵に投げ、八重姫を他家へ嫁がせ、頼朝の殺害を企てた。頼朝はその情報を得るや否や、伊豆山に隠れ、伊豆山権現によって匿われたことで、命拾いをしている。
 
 その後、頼朝は北条政子と恋仲になる。頼朝と政子はその関係性がばれないように、たびたび伊豆山で逢瀬を楽しんだという。2人の関係を知り、結婚に反対する政子の父北条時政は、地元における平氏の代官である山木兼隆に政子を嫁がせようとするが、政子は山木家に到着した夜に抜け出し、伊豆山に隠れ、伊豆山権現は政子を匿った。
 
 その後、平家打倒の兵を挙げるときも、物心両面から頼朝をサポートしたのが、伊豆山大権現であったとされている。
 
 頼朝は鎌倉幕府を開いた後も、伊豆山大権現への信仰を篤くし、毎年二所詣として参詣している。
 

伊豆山神社本殿

 そのような由緒を持つ伊豆山神社は、頼朝の武勲にあやかり、強運、勝負事の神様として、また、政子との出会いの場であったことから、縁結びの神様として、あらゆる層の参拝者が絶えない。本殿には、強運と縁結びにちなんだシンボル的なものをいくつも目にすることができる。
 
 まず目にするのが、手水舎にある赤白二対の龍である。走湯山(伊豆山の別名)縁起に、「伊豆山の地下に赤白二龍交和して臥す。その尾を箱根の芦ノ湖に付け、その頭は伊豆山の地底にあり、温泉の湧くところは、この龍の両眼二耳鼻穴口中である」とある。すなわち、熱海をはじめとするこの近隣から湧く温泉の神様でもある。赤龍は火、白龍は水を象徴し、二龍の力が和合して温泉として湧き出ているとされている。
 

伊豆山神社の象徴である赤白二龍

 この赤白二龍は、伊豆山神社のお守りにも描かれており、黒を背景に赤白龍が交わるデザインのこのお守りは、ものすごいパワーを感じるものとなっている。今年度受験を控える娘のために迷わず買って帰った。
 
 本殿には縁結びのスポットも数多く存在する。頼朝と政子が隣り合って腰掛け、愛を語り合ったとされる腰掛け石や、縁結びのおみくじを結ぶところもハート型となっていたりして、女心がくすぐられる。ちなみに、駐車場から本殿に向かう道に、女優の小泉今日子氏が寄進した鳥居を見ることもできる。
 
 伊豆山大権現は元々修験の地であったことから、本殿からほぼ1時間山道を登ったところにある本宮社も参拝するべきであろう。現在では本宮社は近隣まで宅地が造成されているので車でも行くことができるが、山道を一歩一歩踏みしめながら参拝するからこそ、心が洗われるものである。山道の途中に、白山神社、結明神本社があり、霊験あらたかな巨石も見られ、この道が修験の道だったことが窺える。

 

旅人・執筆 島川 崇
神奈川大学国際日本学部国際文化交流学科教授、日本国際観光学会会長。「精神性の高い観光研究部会」創設メンバーの1人。

 

旅行新聞新社 「100選」事業のロゴ一新 12月13日から配布開始

2021年12月4日(土)配信

 旅行新聞新社は12月11日の100選ランキング発表に合わせ、事業ロゴマークを一新します。

 新しいロゴデータの配布は12月13日から行います。

 デザインは“日本らしさ”(中央部の赤)をモチーフに、歴史を刻み続ける「伝統」(ダークブラウン)、プロが選ぶ「信頼」(白)を配色しました。さらに、日本を代表する「栄冠」と、未来への「発展」――のデザインを組み合わせたビジュアルとしました。

 【伝統】観光業界で最も歴史のあるランキング発表事業【信頼】旅のプロ(=旅行会社)による推薦【栄冠】日本を代表する選ばれた施設・企業【発展】未来への発展・前進・希望――の4つの要素を体現するデザインです。

 観光がグローバル化するなかで、日本らしさを強調し、本ランキングの特徴「プロが選ぶ」という「信頼」を大切にするシンボルマークとして、広く、長く「愛されるように」との想いを込めました。

 旅館100選のほか、観光・食事、土産物施設100選、優良観光バス30選、水上観光船30選のロゴマークが新しくなります。

 使用申請のご案内は12月11日、旅行新聞新社ホームページ「INFORMATION(お知らせ)」に掲載します。入選各社のパンフレットやホームページ、旅行会社の企画商品などで、ぜひご活用ください。