和食文化の継承・促進へ、顧問・指南役に道場氏など(日本旅館協会)

顧問・指南役へ委嘱状を

 日本旅館協会(近兼孝休会長)はこのほど、全国各地での日本料理の開発研究・継承を後押しするため、6人の著名な料理人に「日本料理指南役」を委嘱し、同協会会員が気軽に相談できる体制を整備した。さらに、日本料理の第1人者である道場六三郎氏と大田忠道氏に「日本料理顧問」を委嘱し、日本料理・和食文化の継承について指導を受ける。

 ユネスコの事前審査を経て、日本食文化は「和食 日本人の伝統的な食文化」と題して世界無形文化遺産へ登録される見通しとなった。すでに登録されているのは、「フランスの美食術」「地中海料理」「メキシコの伝統料理」「トルコのケシケキの伝統」の4つ。日本旅館協会ではこの機会を捉え、さらなる日本料理・和食文化の国内外への発信強化を目指す。

 指南役への無料相談に加え、旅費などの負担はあるが指南役による現地指導も可能。また、顧問などによる料理講習会なども計画する。会員が日本料理に関して気軽に相談できる体制を整備することで、各会員施設のサービス向上と人材育成をはかっていく。

 10月15日に行われた指南役と顧問への委嘱状交付で、近兼会長は「観光庁や文化庁とも協力して日本料理を世界へ発信していきたい」と語り、観光庁の清水一郎観光戦略課長は「訪日外客数の拡大には、日本料理の力が大きい。和食には日本のおもてなしが詰まっており、日本文化の心。観光庁も発信に注力していきたい」とバックアップを約束した。

 また、道場日本料理顧問は「おもてなしは旅館が原点」と旅館の魅力を語り、「食材の旬を知る人が少なくなっている。食材そのものの味を生かす日本料理を継承していきたい」と意気込みを語った。

 日本料理顧問と日本料理指南役は次の各氏。

 【日本料理顧問】道場六三郎(懐食みちば主人)▽大田忠道(天地の宿奥の細道館主)

 【日本料理指南役】藤井修一(定山渓温泉章月グランドホテル総料理長兼白浜温泉白良荘グランドホテル総料理長)▽隈本辰利(穴原温泉吉川屋料理長)▽原口義昭(マホロバマインズ三浦料理長)▽井上明彦(湯村温泉佳泉卿井づつや料理長)▽梶本剛史(湯田温泉松田屋ホテル料理長)▽佐藤文昭(ダイニングすずしろ料理長)

No.355 今季のスキー商品 - 利便性向上やサービス強化

今季のスキー商品
利便性向上やサービス強化

 レジャー白書2013によると、スキー・スノーボードの参加人口計は2010年が970万人、11年同、2012年790万人と減少傾向だ。そこで近年、将来的に人口を増やすための取り組みとして19歳リフト券無料や子供レッスン無料など、スキー場を中心にさまざまな施策を講じている。また、減少傾向にはあるが、昨年はJRのスキーCMの復活など一部盛り返す動きもあった。今年のスキー商品の特徴や近年の動きを、バスツアーを得意とするビッグホリデーと航空機を使ったロング商品を展開するジャルパックに聞いた。

【増田 剛、飯塚 小牧】

≪お客様の利便性を最優先、横浜、千葉、埼玉から直行バス≫

 ――2014年冬スキー商品の特徴は。

 お客様に対して「さらなる利便の増進」という部分に力を入れる。とくに、お客様の自宅近くからスキー場まで「なるべく手間をかけずに行ける」ということに重点を置いた。

 昨シーズンまでと同様に、スキー場に向かうバスの出発地である東京・池袋のサンシャインに、首都圏のさまざまなエリアから無料の連絡バスを結んでいるが、それ以外に、横浜・町田、千葉・津田沼などから都心には入らずにスキー場に直接行くバス(スノーライナー)を多く設定するなど強化している。さらに、今年からは、大宮や川越など埼玉から直接スキー場に向かうバスもスタートさせる。

(ビッグホリデー  商品企画部スポーツ企画センター センター長・細木 聡氏)

≪今季の取扱目標は5万人、北海道とファミリーに注力≫

 ――昨年はスキー市場が盛り上がったとみられていますが、近年のスキー商品の取扱人員の動きを教えて下さい。

 総数でみるとやはり縮小傾向にある。

 スキーマーケットの動きは「パッケージで飛行機を使って北海道に行く」というカテゴリーを注視しているが、これは年ごとに他社と抜いた、抜かれた、という競争を繰り返している。そのため、縮小と言っても例えば当社の2009年取り扱いが多かったら、10年が少し減り、また11年で盛り返して……というような具合だ。

(ジャルパック  国内商品企画第1部北海道・東北・北陸グループ  統括マネージャー・中川 明子氏)

 

※ 詳細は本紙1523号または11月7日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

メニュー偽装問題 ― 料理人と客は信じ合う関係

 1年のうちに何回か、近所の弁当の宅配サービスを利用することがあった。メニュー片手に電話すると、指定した時間に、バイクで持って来てくれる。ピザ宅配サービスの弁当版だ。派手なチラシのメニューの中から、私たち家族はその日、自分の好きな弁当を選んだ。

 時間通り、若いバイトのお兄さんが弁当を持って来てくれた。鳥唐揚げや、海老フライ、ハンバーグなどの弁当が食卓に広げられた。それら弁当のうち、息子が選んだ明太子弁当を開けて驚いた。そこには明らかに明太子ではない、何らかの代用品が盛られていたからだ。

 私は福岡県出身で、明太子は福岡のソウルフードでもある。いや、そんなことはどうでもいい。誰が見ても明太子ではない、「何か他の代物」がご飯の上にびっしりと播かれ、その上に海苔が覆っていた。

 私が驚いたのは、弁当の名称そのものである主役の食材が、堂々と別のものになっていたことだった。脇役ならまだしも、メインの食材を、かくも悪びれず、異なる食材を使う業者であるのならば、もっと判別が難しい米や肉といった食材についても、到底信用できないと感じた。それ以来、この宅配業者は利用しないことにした。

 最近、大阪の高級ホテルでのメニュー偽装問題が騒がれている。何年か前には、同じ大阪の老舗料亭が客に出した料理の使い回しが世間を騒がせた。

 残念なことに、安く食べられることで庶民に人気の回転ずしチェーン業界でも、絶えず「偽装魚」の存在が噂されている。

 だが、常識では考えられない安い食材や料理に対しては消費者は疑いを持つ。「安いからには、それなりの理由があるはずだ」と警戒する。そして、安い料理を食すからには、ある程度の危険を覚悟しているのだ。

 一方で、世の中には高級店と呼ばれる店がある。社会的に高い信頼を得ており、それゆえに高い料金をお客から取る。一流と名の付く料亭やレストラン、ホテルは、このカテゴリーに当てはまる。

 さて、旅館料理はどうだろうか。地方にある旅館の料理は、東京や大阪の高級ホテルやレストランと比べると、よりローカルな食材が求められる傾向が強いのではないか。

 夕食や朝食の際に、手書きの献立表を配り、料理人や女将、仲居さんがお客に一品一品説明してくれる宿も増えてきた。

 古今東西、料理人と客との関係は、信じ合う関係である。これ以外に何もありはしない。味への信頼も大切だが、客に対して食材で嘘を付かないという、言葉にするまでもない信頼が、両者の根底には貫かれている。気候の変動、豊作不作の年もあり、名物の食材がたまたま入手しづらい状況にあるかもしれない。だからといって料理人が食材を偽装してしまったら、客との信頼関係は終わってしまう。

 目当ての食材がどうしても出せなければ、「違う食材を使って新しいメニューを作ってみました」と、正直に理由を説明してくれた方がうれしい。「今度、食材が入ったら教えてください」と客も答えるのではないか。せっかく遠方まで足を運んでいただいたお客様に対して申し訳ない、という気持ちがそれでもあるならば、地の食材で作った、手の込んだ小鉢を1品でもサービスすればいい。たったそれだけのことで、客はその宿を信頼しファンになるかもしれない。

(編集長・増田 剛)

11月13日ピンクリボンデー開催 <元湯鷹泉閣岩松旅館>

 ピンクリボンのお宿ネットワーク(事務局=旅行新聞新社)に加盟する「元湯鷹泉閣岩松旅館」(宮城県・作並温泉)は、11月13日に第2回ピンクリボンデーを開催する。

 同日は、周りを気にせず温泉でゆっくりくつろげるよう、乳がん手術を受けた人、および乳がん治療中の人の限定宿となる。食事は養生に配慮した料理を提供するほか、温泉三昧できるようバスタオル、フェイスタオル、浴衣を各2枚ずつ用意する。特別講演会として「女性の健康的な生き方をサポート」をテーマにした女性医師との対談も行う。

 なお岩松旅館では、全館貸切ピンクリボンデーを、春と秋の年2回実施している。

 問い合わせ=元湯鷹泉閣岩松旅館 ☎022(395)2211。

“元気です京都”CP、台風被害からの復旧アピール

門川京都市長(中央)と 京都五花街の舞妓らがアピール

 京都府京都市と京都伝統伎芸振興財団は10月4日、台風被害からの復旧をアピールするため、東京都八重洲の京都館で「元気です京都キャンペーンin東京」を開いた。

 9月に発生した台風18号で豪雨に見舞われた京都市では、代表的観光地の嵐山地区などで浸水被害が発生し、市役所や観光案内所へ状況を問い合わせる電話が急増していた。キャンペーンには、復旧した京都をアピールしようと、嵐山地区の観光関連団体の代表者や京都五花街の舞妓らが参加した。

 冒頭のあいさつで門川大作京都市長は「このたびの台風で、世界の多くの方にご心配をかけた。多くのご支援をいただいた」と感謝するとともに、「渡月橋が濁流に飲まれそうになっている報道の印象があり、大丈夫かとの声もあったが、関係者の懸命の努力で京都は元気になった」と、ほぼ復旧作業が終わったことを報告した。また、「観光おもてなし課長」の設置や、市内の景観を美化するための看板撤去の取り組みを紹介し、「美しさにさらに磨きをかけた京都にお越しいただきたい」と呼びかけた。

 会場では市長と舞妓による観光パンフレットの配布も実施。京都五花街の舞妓が一堂に会することは地元京都でもめったにないとあって、多くの通行人が足をとめ、舞妓と記念撮影する姿なども見られた。

国交大臣賞は阪急、ツアーグランプリ2013(JATA)

©一般社団法人日本旅行業協会

 日本旅行業協会(JATA)は9月14日、JATA旅博2013内で「ツアーグランプリ2013」の発表と表彰式を行った。大賞の国土交通大臣賞には阪急交通社の「アメリカ大陸横断バスと列車の旅15日間(南周りルート)」が輝いた。

 同賞は旅行業の企画力やマーケティング力の向上などを目的に海外旅行、国内旅行で最も優れた企画旅行(募集型・受注型)に対し、表彰を行うもの。今回は12年7月―13年6月までに催行された企画を対象に募集し、審査委員会(兼高かおる委員長)が企画の独創性などを基準に審査を行った。

 受賞商品は次の通り。

 【国土交通大臣賞 日本・アメリカ観光交流年特別賞】アメリカ大陸横断バスと列車の旅15日間(阪急交通社)【観光庁長官賞】パッケージ旅行部門 ANAワンダーアース(ANAセールス)▽南九州の口蹄疫・新燃岳噴火による被害からの継続した復興支援(読売旅行)【審査員特別賞】地獄の門と奇跡の大地9日間・12日間(西遊旅行)▽ルックJTB「世界の花」(JTBワールドバケーションズ)▽8Days 6Nights Fly&Drive Hokkaido Shiretoko Course(ANAセールス)【市場拡大貢献部門】「わいわいファミリー グアム・サイパン」でのベネッセコーポレーション企画監修イベント「海賊とわくわくEnglish Night!」企画【デスティネーション開発部門】~ゆったりとした時が流れる癒しの国へ~チャーター直行便利用 ラオス6日間(ジャンボツアーズ)【SIT部門】チュニジア ラクダと歩く砂漠旅(道祖神)【パッケージ旅行部門(国内)】琉球王国 激動の歴史とロマンに迫る3日間(三越伊勢丹)

「ふろモ課」を設立、温泉を全国に向け発信(熊本県)

「くまもと・ふろモーション課」の発表会見

 熊本県と県観光連盟は10月2日、熊本市内のホテルで、熊本観光の強みである「温泉」を全国に向けて発信する特命チーム「くまもと・ふろモーション課(通称ふろモ課)」の設立を発表した。

 蒲島郁夫熊本県知事や県宣伝部長でタレントのスザンヌさん、営業部長のくまモンら5人が記者会見にのぞみ、熊本県が提唱する2つの温泉効果などをアピールした。

 熊本県の源泉数は全国第5位で、県内では多くの市町村で温泉入浴が楽しめる。県が調べた温泉分析では、その特徴は美肌効果のある「美人の湯」とストレス解消効果のある「癒しの湯」、保温効果のある「子宝の湯」の3つに大別されるという。

 県では今後、ふろモ課を通じて、熊本の温泉に入れば、心身ともに熱くなる「のぼせモン効果」と美しくなる「美肌モン効果」を訴え、90の協賛宿泊施設の宿泊者に、ほかの施設入浴が1カ所無料になる「くまもと湯巡り手形」を提供する。

 さらに箱蒸し湯・湯治で知られる県北の「杖立温泉」では、美容・癒し・リラクゼーション効果を実感できる旅のプログラム「Neo湯治」を11月から開発する。

 このほか温泉効果を解説した「くまもとおふろ読本」を10万部発行。特設Webサイトで発信する。九州新幹線を最大限に活用し、平日の午後から休暇をとってお風呂を楽しむ「平日ふろグラム」も開発・提案する。

観光立国への“舵取り役”

 清水 一郎氏(しみず・いちろう)
1967年11月生まれ。愛媛県松山市出身。東京大学法学部卒業後、1990年運輸省(現国土交通省)入省。英国ケンブリッジ大学大学院修了、大臣官房総務課企画専門官、在英日本大使館参事官、航空局総務課企画室長、四国運輸局企画観光部長、大臣官房参事官(海事局)などを経て、13年7月から現職。

≪観光庁観光戦略課 清水 一郎課長、「日本人よ、旅行をしようよ!」≫

 今年7月1日、観光庁に「観光戦略課」が新設された。「観光立国」実現に向けた観光戦略の要に位置し、安倍内閣が進める成長戦略の柱の1つである観光行政の「舵取り役」として期待されている。初代課長に就任した清水一郎氏に、今後の重点施策や、7年後に開催が決まった東京オリンピックまでに取り組むべき課題、地域活性化などについて聞いた。
【増田 剛】

 ◇

 ――観光庁に新設された「観光戦略課」の役割は。

 今年6月11日に観光立国推進閣僚会議で決定された「観光立国実現に向けたアクションプログラム」と、閣議決定された「日本再興戦略―JAPAN is BACK―」において、観光は安倍内閣の成長戦略の柱の1つとして、明確に位置付けられました。つまり、観光は日本経済の成長戦略のエンジンであり、これを確実に前進させるために、「観光戦略課」が設置されたわけです。

 とくに、2013年は、観光立国の実現に向けた取り組みを本格化した小泉政権のビジットジャパン事業のスタートから10年、観光庁の発足から5年という「節目の年」に当たります。この節目の年に大きな数値目標を掲げました。訪日外客数1千万人を史上初めて本年達成すること、そして、2千万人の高みを目指していきたいと考えています。

 観光行政は、出入国審査やビザの問題ひとつとってもさまざまな省庁に関わり、観光庁だけで対応できるものではありません。国土交通省内の各局、さらには各省庁、民間や自治体など多くの関係者が、それぞれが主体的に取り組んでいただくことが大事です。観光戦略課は「どの項目をいつまでに」「誰が実施するのか」といった行程表を作成し、うまくベクトルをそろえて、前に進めていく「舵取り役」だと認識しています。柔軟性とスピード感を持って取り組んでいきたいと思っています。

 ――「アクション・プログラム」について。

 観光立国実現に向けたアクション・プログラムの施策は、約90項目におよび、実に多岐にわたっており、(1)日本ブランドの作り上げと発信(2)ビザ要件の緩和等による訪日旅行の促進(3)外国人旅行者の受入れの改善(4)国際会議等(MICE)の誘致や投資の促進――の4つの重点分野を強化・促進していきます。

 「日本ブランドの作り上げと発信」では、ビジットジャパン、クールジャパンなどの取り組みを政府全体で計画を作成し、オールジャパンでの情報発信が必要です。また、海外のテレビ番組枠の確保などによって、日本のコンテンツを継続的に海外に発信していきます。訪日誘客のためのプロモーションも、外国人目線に立ったコンテンツの展開を強化、拡大していく予定です。

 「ビザ要件の緩和」については、今年7月からタイやマレーシア向けのビザを免除したほか、ベトナムやフィリピン向けのビザを数次ビザに、インドネシアの数次ビザに関わる滞在期間の延長も実施しました。ビザの緩和は即効性があり、実績を見ても、大きな効果が表れています。

 「受入れの改善」では、外国人旅行者を受け入れる際に、空港や港の玄関口での出入国手続きの円滑化は、日本を訪れた最初の印象に関わってくる問題として、とても大事だと思っています。そして、多言語による外国語表記の案内も、道路標識だけでなく、美術館や博物館、自然公園、観光地などの充実化が必要です。

 また、Wi―Fiを整備することにより、外国人旅行客に便利と感じてもらえる「旅行しやすい環境」に改善していきたいと思います。これらも“おもてなし”の重要な要素の一つだと思っています。

 「MICE」については、海外のキーパーソンを日本に呼び込むことで、専門家による知見を活用した潜在需要の掘り起こしとともに、誘致ポテンシャルの高い都市として、世界トップレベルの国際会議都市へと育成していかなければなりません。このような4本柱の施策の推進を通して、目標の達成に向け、観光戦略課として全力で取り組んでいきたいと思っています。

 ――2020年に東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まりましたが、日本の観光にどのような影響がありますか。

 オリンピック開催地決定のテレビ中継を見ていて、IOCのロゲ会長が「TOKYO」と読み上げた瞬間、7年後に「日本を元気にする」一大イベントが日本で開かれることに感動し、大きな感銘を受けました。今後さらに世界の関心が日本に集まることで外国人観光客が増えることが予想され、観光にとって非常に大きな追い風、チャンスになると感じています。

 「7年後」というのは長いようで結構短い。五輪が東京で開かれるからこそできる観光戦略があると思いますので、しっかり取り組んでいきたいと思います。

 ――清水課長は、在英日本大使館や英国留学など、英国での経験が豊富です。ロンドンは昨年五輪を成功させました。7年後の東京五輪に向けての準備に当たり、参考になることはありますか。

 私は3年前まで英国の大使館に赴任していましたので、ロンドンが五輪の準備をしている姿を見ていました。そのなかで一つ印象的だったのが、ロンドンのボリス・ジョンソン市長が、ロンドンを自転車に乗りやすい街にしようと、「サイクリングレボリューション(自転車革命)」を実行したことです。ロンドン市内に綺麗なブルーのレンタサイクルをそろえ、観光客も乗り捨てで使いやすいように整備しました。車道にもブルーの自転車専用レーンを整備し、五輪開催に間に合わせたのです。ちなみに、ロンドンでは、自転車は車道を走ります。歩道を走ることはありません。

 外国人観光客は日本を訪れるとき、「安全・安心」であることを期待しますが、日本に来てみると、歩道を走る自転車に対しては、「危険を感じる」という声もあります。観光庁だけでできることではありませんが、東京で五輪が開かれる7年後に向けて、議論の1つになるのではないかと思います。また、「安全・安心」と言えば、ロンドン名物のパブの中が禁煙になったというのも象徴的なできごとでした。

 また、ロンドンでは赤い2階建てバスや、ブラックキャブなどの車両が美しい街の風景に溶け込み、絵はがきになるほど有名です。バスやタクシーなど公共交通の車両そのものが世界中の人にロンドンを想起させる「街の顔」になっています。

 東京のバスやタクシーはどうでしょうか。公共交通は、単に目的地に着けばよいというだけではなく、「街の顔」を作っているという発想が大事だと思います。都内のバスやタクシーの色に統一感を持たせるだけでも、街の印象は変わります。ニューヨークはイエローキャブ、ロンドンはブラックキャブ。東京は何色だろう、と言うように。そうすることで、ロンドンの2階建てバスのように外国人観光客も「一度は乗ってみたい」と思うのではないでしょうか。

 ――地方の活性化について、どのようにお考えですか。

 五輪開催は、東京だけではなく、地方をいかに盛り上げるかが大事な点です。ある意味、五輪は地方にとっても、「大きなチャンス」だと思います。開催効果はオリンピック期間中だけではなくて、すでに五輪開催が決定した瞬間から、日本は世界で注目され始めています。五輪に関わることだけを見ても、事前合宿やプレイベントも行われます。東京が注目されるということは日本全体が注目されることであり、東京五輪を地方が利用する絶好のチャンスだと思います。

■ □

 英国人は田舎が好きで、ロンドンの都会で働く人も、週末になると美しい田舎でくつろぐ文化があります。海外から訪れた観光客もロンドンだけを観光するのではなく、趣のある田園風景が印象的なコッツウォルズのような地方を訪れることが多い。英国では田舎で生活する人たちのプライドが高く、生きがいや喜びを感じながら豊かな生活を送っています。そういう文化を根付かせている英国の文化の奥深さを感じます。

 日本は、インバウンド1千万人を目指すことはもちろん大事なのですが、そのためには、日本人がもっともっと国内旅行をして、日本の魅力を知り、日本自慢をすることが結局インバウンド拡大にもつながると思います。日本人が海外旅行をするからこそ、航空路線も拡充され、それがインバウンドにもつながると思います。

 私は「日本人よ、旅行をしようよ!」というメッセージを強力に発信したいと思います。とくに、シニア世代には、タンス預金をするのではなく、旅行を通じて元気になっていただきたい。それが日本の元気にもつながっていきます。また、海外に対して日本に来てくださいというだけでなく、日本人自らも外国に積極的に訪れるという「双方向」の関係が大事だと思います。

 私は愛媛県松山市の出身で、昨秋まで1年半ほど四国運輸局にいました。瀬戸内海の景色は、ずっと地元にいると、その良さに気づかないのですが、東京から久しぶりに戻ってみると、素晴らしさに驚きます。瀬戸内海のきらきらした海と多島美はエーゲ海よりも美しいと思っています。いわゆるゴールデンルートに次ぐ「エメラルドルート」と言っても良いのではないでしょうか。

 「しまなみ海道サイクリング」という「海の上を走るサイクリング」が10月20日に行われ、さらに来年秋には、外国人を含めて1万人規模の大会として行われる予定です。世界にも例を見ないイベントで、海外からも注目されています。

 来年2014年は、四国八十八カ所の弘法大師空海による霊場開創から1200周年、さらに、道後温泉本館開館から120周年、瀬戸内海国立公園80周年など、四国にとってメモリアルな年です。

 四国ひとつとっても「ラストミステリー」があります。日本のどの地域にも、これまで気づかなかった新しい魅力の発見があるはずです。日本各地にある魅力を“ブランド”として作り上げ、広く発信していくことが、これからの日本観光にとって大切なことだと思います。

「100選」の中間集計 2回目

今年1月に開いた第38回「100選」表彰式のようす

 「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」。39 回目の投票が今年も10月1日から始まった。締め切りは10月末日。全国の旅行会社からの投票に基づき、「ホテル・旅館100選」と「観光・食事、土産物施設100選」および「優良観光バス30選」をそれぞれ選出する。「ホテル・旅館100選」の中間集計の2回目を紹介する。
(順不同)

 【北海道】
あかん湖鶴雅リゾートスパ鶴雅ウィングス▽第一滝本館▽登別石水亭▽知床第一ホテル▽知床グランドホテル北こぶし▽十勝川温泉第一ホテル▽観月苑▽ニュー阿寒ホテル▽ホテル鹿の湯花もみじ▽知床プリンスホテル風なみ季▽しこつ湖鶴雅リゾートスパ水の謌▽湯元名水亭▽望楼NOGUCHI登別▽割烹旅館若松▽丸駒温泉旅館▽海の別邸ふる川▽章月グランドホテル

 【青森県】
浅虫観光ホテル▽ホテルグランメール山海荘▽星野リゾート青森屋▽海扇閣▽不老ふ死温泉▽南田温泉ホテルアップルランド▽稲垣温泉ホテル花月亭▽花禅の庄▽酸ヶ湯温泉旅館▽下風呂観光ホテル三浦屋▽ホテル十和田荘▽八甲田ホテル

 【岩手県】
結びの宿愛隣館▽ホテル森の風鶯宿▽浄土ヶ浜パークホテル▽ホテル志戸平▽滝の湯いつくし園▽ホテル対滝閣▽愛真館▽南部湯守の宿大観▽ホテル紫苑▽悠の湯風の季▽瀬美温泉▽大沢温泉山水閣▽佳松園▽ホテル千秋閣▽矢びつ温泉瑞泉閣▽ホテル偕楽園▽長栄館▽四季亭▽ホテル羅賀荘▽ホテル龍泉洞愛山▽松川荘▽八幡平ロイヤルホテル

 【宮城県】
ホテル松島大観荘▽伝承千年の宿佐勘▽鷹泉閣岩松旅館▽松島一の坊▽篝火の宿緑水亭▽鳴子観光ホテル▽ホテルニュー水戸屋▽ホテルきよ水▽名湯の宿鳴子ホテル▽ゆづくしsalon一の坊▽南三陸ホテル観洋▽遠刈田ホテルさんさ亭▽岩沼屋▽小松館好風亭▽La楽リゾートホテルグリーングリーン

 【秋田県】
男鹿観光ホテル▽湯瀬ホテル▽男鹿グランドホテル▽秋田温泉さとみ▽妙乃湯▽栗駒山荘▽鶴の湯▽駒ヶ岳グランドホテル▽プラザホテル山麓荘▽花心亭しらはま▽ホテル鹿角▽都わすれ

 【山形県】
日本の宿古窯▽萬国屋▽蔵王国際ホテル▽展望露天の湯有馬館▽たちばなや▽ホテル八乙女▽月岡ホテル▽上杉の御湯御殿守▽ほほえみの宿滝の湯▽葉山館▽河鹿荘▽仙峡の宿銀山荘▽游水亭いさごや▽蔵王四季のホテル▽深山荘高見屋▽いきかえりの宿瀧波▽おおみや旅館▽亀や▽ホテル王将▽天神の御湯あづま屋▽高見屋別邸久遠▽龍の湯▽海辺のお宿一久

 【福島県】
ホテル華の湯▽匠のこころ吉川屋▽八幡屋▽丸峰観光ホテル▽大川荘▽庄助の宿瀧の湯▽風望天流太子の湯山水荘▽スパリゾートハワイアンズ▽四季彩一力▽旅館玉子湯▽陽日の郷あづま館▽金蘭荘花山▽櫟平ホテル▽裏磐梯高原ホテル

 【茨城県】
五浦観光ホテル別館大観荘▽袋田温泉思い出浪漫館▽筑波山江戸屋▽大洗ホテル

 【栃木県】
あさや▽花の宿松や▽鬼怒川グランドホテル夢の季▽きぬ川スパホテル三日月▽鬼怒川温泉ホテル▽日光千姫物語▽宿屋伝七▽ホテルエピナール那須▽ホテルニュー塩原▽小槌の宿鶴亀大吉▽湯ったりの宿松楓楼松屋▽彩り湯かしき花と華▽鬼怒川温泉山楽▽若竹の庄

 【群馬県】
草津白根観光ホテル櫻井▽四万やまぐち館▽源泉湯の宿松乃井▽舌切雀のお宿磯部ガーデン▽福一▽一番湯の宿ホテル木暮▽旅館たにがわ▽別邸仙寿庵▽万座温泉日進舘▽豆腐懐石猿ヶ京ホテル▽水上館▽香雲館▽ホテル一井▽長寿館▽温泉三昧の宿四万たむら▽望雲▽万座亭▽ホテル天坊▽草津ナウリゾートホテル▽辰巳館▽草津ホテル▽柏屋旅館▽妙義グリーンホテル▽奈良屋▽古久家▽かやぶきの郷薬師温泉旅籠

 【千葉県】
満ちてくる心の宿吉夢▽鴨川館▽鴨川ホテル三日月▽鴨川ヒルズリゾートホテル▽鴨川グランドホテル▽蓬莱屋

 【東京都】
水月ホテル鴎外荘

 【神奈川県】
海石榴▽箱根吟遊▽強羅花壇▽ホテル河鹿荘▽箱根高原ホテル▽箱根ホテル小涌園▽鶴井の宿紫雲荘

 【山梨県】
銘石の宿かげつ▽ホテル鐘山苑▽ホテルふじ▽若草の宿丸栄▽全館源泉かけ流しの宿慶雲館▽湖山亭うぶや▽秀峰閣湖月▽下部ホテル▽華やぎの章慶山▽富士野屋夕亭▽湖南荘▽石和名湯館糸柳▽風のテラスKUKUNA▽富士レークホテル▽ホテル八田▽常盤ホテル

 【長野県】 
ホテル翔峰▽明神館▽花屋▽上林ホテル仙壽閣▽藤井荘▽街道浪漫おん宿蔦屋▽ホテル白樺荘▽立山プリンスホテル▽緑翠亭景水▽ホテル木曽路▽ホテルやまぶき▽一茶のこみち美湯の宿▽ぬのはん▽白樺リゾート池の平ホテル▽RAKO華乃井ホテル▽白船グランドホテル▽双泉の宿朱白▽ユルイの宿恵山▽別所観光ホテル▽旅の宿滝の湯▽あぶらや燈千▽七草の湯▽浜の湯▽浪漫の館月下美人▽上高地清水屋ホテル▽昼神グランドホテル天心▽山野草の宿二人静▽ホテル清風園▽野沢グランドホテル▽ホテル阿智川▽石苔亭いしだ▽帝産ロッヂ▽横谷温泉旅館▽ホテル椿野▽ホテル紅や

 【新潟県】 
白玉の湯泉慶・華鳳▽ホテル清風苑▽水が織りなす越後の宿双葉▽夕映えの宿汐美荘▽風雅の宿長生館▽四季を彩る湯沢グランドホテル▽ゆもとや▽四季の宿みのや▽ホテル小柳▽岬ひとひら▽大観荘せなみの湯▽ホテル摩周▽赤倉ホテル▽ホテル國富アネックス▽よもぎひら温泉和泉屋▽国際佐渡観光ホテル八幡館▽ロイヤルホテル小林▽ホテル秀山七つの扉▽汐彩の湯みかく▽ひなの宿千歳▽湯沢ニューオータニホテル▽越路荘▽寺泊岬温泉ホテル飛鳥▽越後のお宿わか竹▽高志の宿高島屋▽鷹の巣館▽ホテル大佐渡▽ほてる大橋館の湯▽ホテルみかわ▽嵐渓荘▽ホテル瀬波観光▽湖畔の宿吉田屋▽伝統と風格の宿ホテル万長

 【静岡県】
稲取銀水荘▽堂ヶ島ニュー銀水▽いなとり荘▽ホテル九重▽坐漁荘▽季一遊▽ホテルカターラ福島屋▽柳生の庄▽観音温泉▽稲取東海ホテル湯苑▽桂川▽ホテル伊豆急▽ホテルサンハトヤ▽堂ヶ島温泉ホテル▽ホテルアンビア松風閣▽ホテルウェルシーズン浜名湖▽下田セントラルホテル▽ラビスタ伊豆山▽嵯峨沢館▽西伊豆クリスタルビューホテル▽熱川プリンスホテル▽瑞の里○久旅館▽星野リゾート花乃井▽赤沢温泉ホテル▽楽山やすだ▽舘山寺サゴーロイヤルホテル▽焼津グランドホテル▽杜の湯きらの里▽うみのホテル中田屋▽ホテルミクラス▽海辺のかくれ湯清流▽花のおもてなし南楽▽熱海後楽園ホテル▽山水館欣龍▽あさば▽ホテル暖香園▽古屋旅館▽熱海大観荘▽新かどや

 【愛知県】
旬景浪漫銀波荘▽ホテル東海園▽ホテル竹島▽源氏香▽伊良湖シーパーク&スパ▽風の谷の庵▽はづ別館▽平野屋▽粛 海風

 【三重県】
戸田家▽風待ちの湯福寿荘▽ホテル花水木▽サン浦島悠季の里▽鳥羽シーサイドホテル▽賢島宝生苑▽浜の雅亭一井▽ばさら邸▽日の出旅館

 【岐阜県】
水明館▽高山グリーンホテル天領閣▽本陣平野屋花兆庵▽岐阜グランドホテル▽穂高荘山月▽ひだホテルプラザ▽ホテルくさかべアルメリア▽吉泉館竹翠亭▽奥飛騨ガーデンホテル焼岳▽宝生閣▽八ツ三館▽十八楼▽ホテルパーク

 【富山県】
延楽▽金太郎温泉▽宇奈月国際ホテル▽ホテル立山▽延対寺荘▽宇奈月グランドホテル▽つるぎ恋月▽ゆめつづり▽砺波ロイヤルホテル▽磯はなび

 【石川県】
加賀屋▽瑠璃光▽ゆのくに天祥▽日本の宿のと楽▽法師▽辻のや花乃庄▽お花見久兵衛▽茶寮の宿あえの風▽花つばき▽たちばな四季亭▽ゆ湯の宿白山菖蒲亭▽花紫▽佳水郷▽まつさき▽宿守屋寿苑▽ゆけむりの宿美湾荘▽厨八十八▽雄山閣▽ホテル高州園▽日本の宿山乃湯▽旅亭懐石のとや▽翠明▽天空の宿 大観荘▽和田屋

 【福井県】
まつや千千▽グランディア芳泉▽つるや

 【滋賀県】
暖灯館きくのや▽びわ湖花街道▽里湯昔話雄山荘▽湯元舘▽京近江▽びわ湖緑水亭

 【京都府】
松園荘保津川亭▽おもてなしの宿渓山閣▽雨情草庵▽佳松苑はなれ風香▽佳松苑▽一望館▽みなと悠悠

 【兵庫県】
ホテルニューアワジ▽ホテル金波楼▽佳泉郷井づつや▽淡路インターナショナルホテルザ・サンプラザ▽西村屋ホテル招月庭▽有馬グランドホテル▽朝野家▽月光園游月山荘▽西村屋本館

 【奈良県】
さこや

 【和歌山県】
かつうら御苑▽ホテル中の島▽ホテル浦島▽白良荘グランドホテル▽花いろどりの宿花游▽浜千鳥の湯海舟

 【鳥取県】
皆生つるや▽華水亭▽三朝館▽依山楼岩崎▽皆生グランドホテル天水▽三朝薬師の湯万翆楼▽花屋別館▽湯喜望白扇

 【島根県】
玉造グランドホテル長生閣▽曲水の庭ホテル玉泉▽佳翠苑皆美▽白石家▽湯之助の宿長楽園▽旅館樋口

 【岡山県】
湯郷グランドホテル▽鷲羽ハイランドホテル▽清次郎の湯ゆのごう館▽八景▽ゆのごう美春閣

 【広島県】
ホテル鴎風亭▽景勝館漣亭▽みやじまの宿岩惣▽オリエンタルホテル広島

 【山口県】
大谷山荘▽白木屋グランドホテル▽萩観光ホテル▽西の雅常盤▽錦帯橋温泉ホテルかんこう▽松田屋ホテル▽ホテル西長門リゾート

 【香川県】
湯元こんぴら温泉華の湯紅梅亭▽琴平グランドホテル桜の抄▽ことひら温泉琴参閣▽喜代美山荘花樹海

 【徳島県】
和の宿ホテル祖谷温泉

 【愛媛県】
大和屋本店▽道後舘▽道後プリンスホテル

 【高知県】
土佐御苑▽城西館▽三翠園

 【佐賀県】
和多屋別荘▽萬象閣敷島▽大正浪漫の宿京都屋▽大正屋▽ホテル龍登園

 【長崎県】
東園▽ゆやど雲仙新湯▽雲仙宮崎旅館▽雲仙福田屋▽平戸千里ヶ浜温泉蘭風▽ホテルマルゲリータ

 【熊本県】
清流山水花あゆの里▽杖立観光ホテルひぜんや▽湯峡の響き優彩▽阿蘇プラザホテル▽山鹿温泉清流荘▽阿蘇の司ビラパークホテル

 【大分県】
九重悠々亭▽杉乃井ホテル▽ホテル白菊▽由布院玉の湯▽花菱ホテル▽ことぶき花の庄

 【宮崎県】
酒泉の杜綾陽亭

 【鹿児島県】
ホテル秀水園▽指宿白水館▽霧島山上ホテル▽指宿海上ホテル▽霧島国際ホテル▽指宿フェニックスホテル▽霧島いわさきホテル▽城山観光ホテル▽霧島ホテル

 【沖縄県】
ANAインターコンチネンタル万座ビーチリゾート▽ホテル日航アリビラ▽沖縄かりゆしビーチリゾート・オーシャンスパ▽ルネッサンスリゾートオキナワ▽リザンシーパークホテル谷茶ベイ▽ザ・ブセナテラス

LCC2社に厳重注意、定期検査の一部未実施(航空局)

謝罪するジェットスターJの鈴木社長(中央)

国土交通省航空局は10月9日、ジェットスター・ジャパン(鈴木みゆき社長)とエアアジア・ジャパン(石井知祥社長)に対し、機体の定期検査のうち一部が未実施のまま長期間にわたり航空機を運用していたことに対し、厳重注意を行った。必要な再発防止策を検討し、10月23日までに報告するよう求めている。

耐空性改善通報(TCD)では、水平尾翼の上部駆動装置の取り付け部の定期検査について、エアバス社が発行したサービス・ブリテン(SB)の手順に従っての検査を指示しているが、同2社はSBではなく、エアバス社のエアクラフト・メンテナンス・マニュアル(AMM)に従い定期検査を実施。2段階の目視確認のうち、AMMに記載のなかった一部が未実施のまま、ジェットスター・ジャパンは最大8カ月間、エアアジア・ジャパンで最大7カ月間、運航していた。SBとAMMはほとんどが同様の内容となっているが、唯一、1項目だけ違いがあるという。

同問題が9月30日に判明。ジェットスター・ジャパンは対象の7機で点検を実施し同日に完了。10月1日に許可を得て運航開始している。この検査の影響で全68便中18便が欠航し、2477人に影響が出た。

ジェットスター・ジャパンは10月9日に国土交通省内で会見を開き、同社整備本部長は「SBとAMMが、完全に同一内容であると誤解していた」と原因を説明。鈴木社長は「今回のことを厳粛に受け止めている。まだ若い会社なので、改めるべきところは改めていきたい」と謝罪した。また、エアアジア・ジャパンも、ジェットスター・ジャパンの後に同場所で会見を行った。なお、国土交通省航空局は、点検漏れ発生の原因や背景を調査し、必要な再発防止策を検討のうえ、10月23日までに報告するよう求めている。