海旅の広域な知識を、エリア・スペシャリスト新設、トラベル・カウンセラー制度

 日本旅行業協会(JATA)研修・試験部が事務局を務めるトラベル・カウンセラー制度推進協議会は、2015年度から「エリア・スペシャリスト(AS)」制度を新設する。海外旅行販売の広域な知識習得を目指してもらうもので、13年度まで開講していた「デスティネーション・スペシャリスト(DS)」を廃止し、再編したかたち。カウンター業務担当者を中心に受講を呼びかける。

 ASは、海外旅行で人気の高い国や地域を8つのエリアに分け、エリアごとに一般情報や観光・地理、文化・歴史、自然、交通・宿泊、飲食・ショッピング、エンターテイメント、ビジネス・トラベルなどの分野を学ぶ。受講はウェブ上で完結し、期間は5カ月。春期講座の募集は3月初旬―4月初旬、受講期間は5―9月、秋期講座の募集は8月初旬―9月初旬、受講は10―2月。

 JATAの金信男研修・試験部長は11月12日に開いた定例会見で、AS制度新設について「インターネット予約が増加する一方、旅行会社店舗のカウンター業務に対する期待も変わらず高い傾向にある。対面で相談できることがお客様に安心感を与える」と述べ、期待に応えるための人材育成が必要だとした。また、DSを再編したことに対しては、各社から、より広域な知識を身につけられる制度の要望が高かったことや、DSで展開していた22講座では、1人ですべて受講するのに長期間要することなどを理由にあげた。今後は、ASを各社の社内講座への採用と資格保有による昇任・昇格を働きかけるほか、観光系大学へも広報していく。

 ASの開講講座は「ヨーロッパⅠ」「ヨーロッパⅡ」「ヨーロッパⅢ」「アジアⅠ」「アジアⅡ」「北・南米」「ハワイ州・グアム・マリアナ(サイパン)・その他」「オセアニア・太平洋」の8つ。1講座の受講・終了試験料は1万4千円。認定料は3千円。認定の有効期間は最新情報習得のため5年間で、更新料は5千円。認定の要件は旅行会社か関連企業に勤務し、実務経験が1年以上あることや、申請時の直近3年以内に申請エリア内の1カ国・地域に1回以上の渡航経験があることなど。

 なお、DS認定者の資格有効期限は2019年3月末まで延長するが、その後、資格を得たい場合はAS講座を再度受講する必要があるという。

「オンリーワンのまち」認定第5号、南信州・飯島町観光協会に(ふるさとオンリーワンのまち)

飯島町観光協会の三石宏之会長(右)と津田令子理事長
飯島町観光協会の三石宏之会長(右)と津田令子理事長

 NPO法人ふるさとオンリーワンのまち(津田令子理事長)はこのほど、長野県・飯島町観光協会(三石宏之会長)が取り組む「『ふたつのアルプスが見えるまち』南信州・飯島町がもたらす自然の恵みを活かしたまちづくり」を、「ふるさとオンリーワンのまち」の第5号認定した。「オンリーワンのまち」は、そのふるさとにしかない独特の風土や伝統文化、産物などに光を当て、全国ブランドの観光資源に育てることで、継続的な地域活性化に結びつけることを目的としている。

「ふたつのアルプスが見えるまち」

 長野県上伊那郡飯島町(高坂宗昭町長)は、中央アルプスと南アルプスに囲まれ、天竜川が大地を潤す信州伊那谷の中央に位置する「ふたつのアルプスが見えるまち」。ふたつのアルプスから湧き出る清流が織りなす自然に囲まれた町は美しい農村風景として広がる。3千メートル級の山々から里山・里川へと変化に富んだ河岸段丘を描き、「理想の移住スポット」として近年注目されている。同町役場には「定住促進室」を設け、町をあげて移住促進に取り組んでいる。

 自然豊かな環境のなかで、「信州の名水・秘水越百(こすも)の水」や、米、ナシ、リンゴなどの農産物、アルストロメリアやシクラメンなど色鮮やかな花の生産にも力を入れている。さらに、トラベルミステリーの巨匠・西村京太郎氏の作品「赤と白のメロディー」や、柴崎コウ主演映画「食堂かたつむり」の舞台にもなっている。飯島陣屋が置かれるなど歴史も深いのが特徴だ。

認定授与式で高坂宗昭町長があいさつ
認定授与式で高坂宗昭町長があいさつ

 11月7日には、同町文化館で「ふるさとオンリーワンのまち」認定授与式を開き、飯島町観光協会の三石会長に津田理事長から第5号の認定書が渡された。NPO法人からは津田理事長をはじめ、大越信行副理事長、石井貞徳専務理事(旅行新聞新社社長)ら6人が出席した。

 津田理事長は「地元の人には当たり前の風景かもしれないが、ふたつのアルプスが見える、素晴らしい自然の恵みを活かした飯島町観光協会のまちづくりにスポットを当てた。今後は、飯島町の皆さんがこの認定を上手く利用して地域活性につなげていただければ」とあいさつした。

中央アルプスを背景に千人塚公園(飯島町観光協会提供)
中央アルプスを背景に千人塚公園(飯島町観光協会提供)

 来賓として出席した高坂町長は「少子高齢化が進むなか、飯島町も若者の定住をはかりながら地域活性化に取り組んでいる。今回このような栄えある認定をいただき感謝している。今後の我が町の取り組みの弾みにしていきたい」と祝辞を述べた。

 三石観光協会会長は「観光協会として光栄に感じている。これを機にふるさとの山々を全国に広め、『オンリーワンのまち』として地域の活性化、そしてより一層の定住促進につなげていきたい」と語った。

 ふるさとオンリーワンのまちは、今後も年に2、3件を新たに認定していく予定だ。

 問い合わせ=事務局・旅行新聞新社(公式メディア) 電話:03(3834)2718。

ミス73人をVJ特使に、日本の魅力発信など依頼(観光庁)

ミス73人をVJ観光特使に
ミス73人をVJ観光特使に

 観光庁はこのほど、2014ミス・インターナショナル世界大会に参加する各国・地域代表ミスを「ミスVJ観光特使」に任命し、11月6日に東京プリンスホテルで国際文化協会との共催による任命式を行った。

 国際文化協会が主催する2014ミス・インターナショナル世界大会に参加するため訪日した各国・地域代表ミスの73人に、今後、SNSなどによる日本の魅力発信や、現地で行う訪日プロモーションへの参加などビジット・ジャパン事業への協力をお願いした。

 任命状は観光庁の久保成人長官から、ミスを代表してキューバ代表のアディスレイディ・アロンソ・ロドリゲスさんに渡された。久保長官は「日本で見つけたおもしろいものやクールなものをぜひ母国の人たちに伝えてほしい。また、皆さんの国の魅力を日本の人たちに伝え、日本と皆さんの国のツーウェイツーリズムが盛んになるよう期待している」と英語で語りかけた。

初の5千億円超え、5カ国で74%占める(13年第3四半期訪日外客消費額)

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 観光庁がこのほど発表した2014年第3四半期(7―9月期)の訪日外国人消費動向調査によると、訪日外国人の旅行消費額は前年同期比41・2%増の5505億円と、調査開始以降初めて5千億円を超えた。これにより、2014年の訪日外国人の旅行消費額は第3四半期までで1兆4677億円となり、昨年年間値の1兆4167億円をすでに上回った。

 同期間の訪日外客数は同25・3%増の347万9千人と大幅に増加し、旅行消費額の増加につながった。

 国籍・地域別にみると、中国がトップで同102・3%増の1847億円(構成比33・5%)。台湾が同26・7%増の939億円(構成比17・0%)、韓国が同5・3%増の529億円(構成比9・6%)、米国が同15・0%増の393億円(構成比7・1%)、香港が同21・5%増の349億円(構成比6・3%)と、上位5カ国で全体の73・7%を占める。次いでタイが144億円(構成比2・6%)、オーストラリアが126億円(構成比2・3%)、英国が111億円(構成比2・0%)、フランスが110億円(構成比2・0%)、ベトナムが88億円(構成比1・6%)と続く。中国は、1人当たり旅行支出が同18・7%増の23万6353円、訪日外客数が同70・4%増の78万1309人と大幅に増加したため、旅行消費額は前年より約2倍になった。

 訪日外国人1人当たりの旅行支出は同12・7%増の15万8257円と、調査開始以来初の15万円台となった。中国の1人当たり旅行支出と訪日客数が大幅に増加したことが大きい。国籍・地域別にみると、前出の中国のほか、米国が同3・8%増の18万1896円、香港が同9・4%増の14万8135円、台湾が同11・2%増の12万8560円、韓国が同8・7%減の7万3487円。

 1人あたり旅行支出の費目別内訳をみると、トップの買い物代が同17・2%増の5万3047円、宿泊料金が同5・3%増の4万9132円、飲食費が同16・0%増の3万4596円、交通費が同17・4%増の1万7108円、娯楽・サービス費が同0・4%減の3723円となった。

【第2回旅館甲子園】ファイナリスト プレゼン順決定、2月18日(東京国際展示場)

ファイナリストの5旅館が本大会に挑む
ファイナリストの5旅館が本大会に挑む

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会青年部(山口敦史部長)は11月12日、「第2回旅館甲子園」ファイナリストの説明会を開き、抽選により当日のプレゼンテーションの順番を決定した。

 プレゼンテーションの順番は(1)山景の宿流辿(宮城県・青根温泉)(2)土佐御苑(高知県高知市)(3)ホテル松本楼(群馬県・伊香保温泉)(4)峡谷の湯宿大歩危峡まんなか(徳島県・大歩危祖谷温泉)(5)春蘭の宿さかえや(長野県・渋温泉)――となった。

 第2回旅館甲子園は2015年2月18日に東京国際展示場(東京都江東区有明3―21―1)の会議棟B1レセプションホールで開かれる。正午開場、午後1時開演を予定する。

“ハイテクと文化を融合”、 観光大臣サミットに出席 、JATA・田川会長

 国連世界観光機関(UNWTO、タレブ・リファイ事務局長)とワールド・トラベル・マート(WTM、サイモン・プレス代表)は11月4日、英国・ロンドンで「観光大臣サミット」を開いた。旅行見本市のWTMロンドン内の最大イベントの1つで、今年で8回目。日本からは日本旅行業協会(JATA)の田川博己会長が出席した。そのなかで田川会長は2020年の東京五輪を最大限に生かし、「持続可能なハイテクと文化を融合させた観光立国の実現を目指したい」と発言した。

 JATAは11月12日の定例会見で、田川会長が出席したパネル討論会の概要を報告した。これによると、サミットには33カ国が参加し、討論会には各国の観光大臣・観光局長や民間の要人らが登壇。2時間のパネル討論会はUNWTOのリファイ事務局長からの「メガ・イベントの実施地域はインフラ投資・雇用などが創出され、あらゆるコミュニティが関与する最も効果的なレガシー。また、実施国に無形の利益を産み出す」という発言から議論がスタートした。田川会長はテーマを「観光立国創生へのチャレンジ」とし、(1)オリンピック遺産として観光の重要性を認識した中長期アクションプランの構築(2)日本ブランド向上の機会としてメディアを通した露出の増加(3)官民、異業種間連携など強力なパートナーシップの構築(4)日本全体でハードとソフト両面のインフラ整備を推進し、快適な旅行環境を整備すること――の4項目を具体的に取り組むべきこととして発表した。

 このほか、中小国からは、すべての国が規模の大きいメガ・イベントを実施することはできないという声も挙がった。そのうえで、「文化イベントがキーポイント」や「持続可能な小さいイベントを支援している。“メガ”の新しい定義を確立すべき。例えば3人で作ったイベントでもソーシャルメディア(SNS)で500万人と対話できる」など、自国にあった“メガ・イベント”の展開を紹介した。

旅館で働く女性へ、印象アップの化粧術講座(飯坂温泉)

短時間でできる化粧術を学んだ
短時間でできる化粧術を学んだ

 福島県・飯坂温泉の匠のこころ吉川屋で9月17日、「旅館で働く女性の印象アップヘアメークセミナー」が開かれ、女将や従業員約30人が、短時間でできる化粧術や髪のまとめ方などを学んだ。

 全旅連青年部の異業種コラボ事業委員会が化粧品会社・資生堂の協力を得て実施した。「おもてなし」という言葉が重視され、接遇研修などに取り組む宿は増えている。一方、第一印象を左右する「整容」については、個人の意識にまかせているのが実情だ。そこで今回、温泉街で参加者を募り、和装で働く女性の高感度が上がるヘアメーク講座を実施した。

 講師を務めたのは、資生堂で宣伝広告のヘアメークを中心に活動する山田暢子さん。チークやリップで血色感を出すなど、短時間でできる、美しく清潔感の感じられる化粧術を伝授した。

 資生堂ビューティークリエーション研究センターの戸田幸枝さんは「旅館も日本の美を体験する場の1つ。化粧の力で女性がイキイキと輝き、お客様からの印象、そして自身のモチベーションを高めていただくための手伝いをしたい」という。

 講座を企画した飯坂温泉旅館協同組合青年部の和田一成部長(ほりえや旅館)は、「参加者の表情が豊かになった」と手応えを実感。全国各地に取り組みを広げるとともに「男性向けの講座も企画したい」と意欲的だ。

読売新聞にて「ピンクリボンのお宿ネットワーク」がご紹介されました

ピンクリボンのお宿ネットワーク『メディア掲載情報』を更新いたしました。

2014年11月19日掲載 
『読売新聞』の全国版朝刊にてピンクリボンのお宿ネットワークをご紹介いただきました。

その他メディア掲載情報はコチラから!
(弊社の『ピンクリボンのお宿ネットワーク』ページへリンクしています)

 
☆ピンクリボンのお宿ネットワークとは☆
 乳ガンを患い、手術を受けて回復の道を歩みながらも、術後を気にして旅をあきらめてしまうという女性の方たちに、心ゆくまで旅館・ホテルでの入浴などを楽しんでいただきたいという目的で設立された団体です。

【11月25日】鷹泉閣岩松旅館、ピンクリボンデー開催(宮城県作並温泉)

岩松旅館
清流を望む「香華の湯」

 宮城県作並温泉の鷹泉閣岩松旅館は11月25日、乳がん経験者とその家族など寄り添う方の限定宿として営業する「第4回全館貸し切りピンクリボンデー」を開く。

 当日は、心ゆくまで温泉を楽しめるよう、清流を眺める「香華の湯」を乳がん経験者専用とするほか、脱衣所の照明を少し暗めに調整するなどの環境を整える。また、秘湯の趣あふれる天然岩風呂や大浴場不二の湯など、湯めぐりを存分に楽しめるよう、浴衣やバスタオルは2枚ずつ用意。夕食には養生に配慮した和食膳を提供する。1泊2食付きプランのほか、日帰り入浴も受け付ける。

マークデータ

 同館では、10年前からレディースデーを設けるなど、女性に優しい宿としての取り組みを続けてきた。ピンクリボンデーの開催は昨年の春からスタートし、年に2回、春と秋に行っている。

 問い合わせ= 電話 022(395)2211。
 ホームページ= 鷹泉閣岩松旅館

宿の懐の深さ ― 生きがいを感じられる社会に貢献

 この前、お昼に古びた蕎麦屋でカツカレーを食べていたら、ラジオから群馬県・湯宿温泉の老舗宿で、30年間働く80歳になる女性がインタビューを受け、「すごく働きがいを感じる」という楽しげで、若々しい声が聴こえてきた。

 このあたりが旅館の懐の深さだな、とラジオを聞きながらカツを頬張った。

 政府は女性が活躍できる社会づくりを推進している。だが、メディアにも責任があるのだろうが、経団連クラスの一流企業が女性管理職の割合を競うようなところばかりにスポットが当たっている印象だ。過疎地であっても、年を重ねた女性であっても、いきいきと働くことができ、生きがいを感じられる社会をつくることも、あまり目立たないが、大切なことだと思う。

 自宅の最寄り駅の近くに自転車置き場がある。そこでは定年後のおじさんたちが元気に働いている。朝、自転車を預けようとする通勤・通学者たちに笑顔で「おはようございます」と、大きな声であいさつしている。羨ましいくらい、いきいきしている。40―50代のサラリーマンは朝から疲れた顔で駅に向かっているのに、自転車置き場のおじさんたちはいつも元気である。女子高生やOLにサービスでタイヤの空気を入れてあげたりしている。傍から見ていて楽しそうである。日が暮れてもおじさんたちがいるので死角がなくなり、夕暮れ時でも女性や子供たちも安心である。おじさんたちは小遣いを稼げるので、長年連れ添った奥さんとレストランで食事をすることもできるし、孫が遊びに来たときにはオモチャを買ってあげることもできる。自分の趣味に生かすこともできる。旅行にも行ける。

 厚生労働省がこのほどまとめた2013年度「衛生行政報告」では、旅館はこの1年間で1381軒減少し、4万3363軒となった。1都道府県当たり、約30軒が1年間で減った計算になる。一方、ホテルは13軒増え、9809軒となった。ずっと増加傾向にあったホテルも前回調査では減少し、今回も微増とそろそろ頭打ちの状況になってきたようだ。しかし、客室数を見ると、旅館は5706室減ったが、ホテルは1万2227室増え明暗が分かれた。

 サッカーではボールをキープできる選手は重宝される。人並み外れたテクニックで、ボールを奪いに来る相手をかわし、ピンチを救ったり、チャンスを生み出したりする。ボールをキープしている時間帯は味方にとって安全であり、あらゆるチャンスの可能性を含んでいる。旅館やホテルも、観光客をまちにキープできる能力があれば、地域活性化に向けた無限の可能性をもたらす。けれど、観光客をキープできる宿泊施設がなければ、旅人は素通りしてしまう。まちから大型旅館やホテルが消えてしまうことの損失は、計り知れなく大きい。

 今の社会は余裕を失っている。全般的にギリギリで、どこかギスギスしている。ブラック企業、ブラックパートなどの現象も社会問題となっている。

 だからこそ、80歳の女性が旅館でいきいきと働いている話などを聞くと、本当の豊かさの証明である「余裕」を感じる。そして、余裕を生み出せる旅館という存在の懐の深さを感じる。遠方から訪れる宿泊客だけでなく、従業員に生きがいを与えられる宿は、大きな社会貢献をしている。

(編集長・増田 剛)