1%減の72兆2990億円、親のゆとり度が子供に影響、15年の余暇市場

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レジャー白書2016の発表会
レジャー白書2016の発表会

 日本生産性本部(茂木友三郎会長)余暇創研は7月14日、東京都内で「レジャー白書2016」の概要発表を行った。15年の余暇市場の規模は72兆2990億円となり、前年比1・0%減となった。ただ、市場規模が突出して大きいパチンコ、パチスロを除くと同1・2%増で、3年連続のプラス成長となる。

 余暇活動参加人口の順位では、「国内観光旅行」が5年連続の首位。前年に比べ参加人口が100万人増加し、5千万人を超えたものはこの種目のみ。また、「ジョギング、マラソン」の人気が復活し、前年は28位だったが、19位まで順位を上げた。参加人口も50万人増えて、2190万人となった。

 余暇市場動向は、スポーツ部門が同1・9%増と微増で、4兆240億円を計上。スポーツ用品は、スポーツシューズが同5・9%増の1970億円、ウェアは同4・2%増の2750億円と好調。フィットネスクラブは同1・6%増の4390億円で、過去最大の市場規模へと拡大した。さらに、スポーツ観戦料も同5・4%増の1560億円と大きく伸びた。

 また、今年は例年の調査では取り上げていなかった5―14歳の子供の余暇に焦点を当てた調査を実施。子供の余暇活動に影響する要因として、親の時間面と支出面のゆとり度の増減について、注目した。

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 親自身の余暇時間が増えたと回答した場合、「ボウリング」、「ジョギング、マラソン」などのスポーツや「絵を描く、彫刻する」など、時間をかけて取り組む創作系の種目で子供の参加率が高くなっている。一方、減ったと回答した場合、「音楽鑑賞」、「スポーツ観戦(テレビ除く)」などの観賞系の種目が目立った。

 子供1人当たりの平均参加種目数は、余暇時間が増えたと回答した場合、13・3種目で、減った場合は12・4種目となった。

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 親の余暇支出が増えた場合、「温泉施設」、「動物園、植物園、水族館、博物館」、「遊園地」などの観光、行楽系の種目で子供の参加率が高くなった。一方、余暇支出が減った場合は、「ソーシャルゲームなどのオンラインゲーム」、「読書(勉強など除く)」、「ドライブ」などで、比較的安価にできる種目が並んだ。

 親の余暇支出が増えた場合、子供の平均参加種目数は13・9種目、減った場合は12・9種目となった。

 また、2016年度版には新項目として「ヨガ、ピラティス」を追加。「女性を中心に中高年が参加しているが、まだ伸びる余地があり、一度始めるとある程度習慣化する可能性がある種目」と初年度の調査を振り返った。

キズナサミット2016開く、「良地良宿」サービス開始(宿泊予約経営研究所)

末吉秀典社長が冒頭あいさつ
末吉秀典社長が冒頭あいさつ

 宿泊予約経営研究所(末吉秀典社長)は9月7日、神奈川県横浜市内のホテルで「キズナサミット2016」を開いた。全国から40社50人が集まった。今年のテーマは「値付け」。末吉社長は冒頭のあいさつで、「宿泊施設が利益を確保するには、施設、周辺の観光地のポテンシャルを最大限活かしきっていくことが大事」と話し、「今日はその具体的なアイデアや考え方を体感してほしい」と語った。

 同社は、「良い町があるから、良い宿屋がある。良い宿屋があるから、良い町がある。宿屋は、その土地の文化に寄り添うことで、もっと栄えていく」とする「良地良宿」(りょうちりょうしゅく)を経営理念に掲げている。末吉社長は「この『良地良宿』を、新たなプロジェクトとした新サービスの提供を始める」と報告。同社は「宿の集客パートナー」として、デジタルマーケティングを最大限活用することで収益最大化を支援していく。具体的には、ブランド構築へのコンサルティングや、宿により適した集客が可能な予約サイトの活用などの販促、自社ホームページの制作による活性化などをサポートする。

 キズナサミットでは、基調講演「きちんと儲けるためのプライシング戦略」には公認会計士の田中靖浩氏が登壇。その後、同社事業創造戦略室の坂本真士マネージャーが「宿泊施設のプライシング戦略~利益の確保と根付けの方法について」をテーマに、ワークショップ・セミナーを開いた。

 夕刻からは、アル・ケッチァーノの奥田政行シェフと、横浜ベイホテル東急のコラボディナー「実食体験セミナー」も行った。

奥田政行シェフも参加
奥田政行シェフも参加

道東に周遊観光バス、広域観光目指し試験運行

出発式のようす
出発式のようす

 知床や阿寒湖など、道東の代表的な観光地を巡りながら移動できる「ひがし北海道周遊観光バス」の試験運行が8月20日から始まった。2次交通の整備充実をはかることで、観光客の広域周遊観光を促す。

 道内の観光団体や民間企業などでつくる「プライムロードひがし北・海・道」推進協議会(上野洋司会長)の事業で、札幌観光バスの関連会社・クールスター(福村泰司社長)が運行する。外国人旅行者の利用も想定し、通訳案内士(英語)が同乗する。

 北ルート((1)札幌→層雲峡(2)層雲峡→ウトロ)、南ルート((3)札幌→十勝川(4)十勝川→ウトロ)――の2系統4区間を往復する。最少催行人員は1人。途中の乗下車が可能で、立ち寄り観光も楽しめる。

 運行は、11月2日までと12月23日―来年3月15日(南ルートは12月25日―同3月13日)。料金は大人2千―6500円。道東・道北エリア内での宿泊が利用条件。

ぐるなび、“LIVE JAPAN”活用、東京観光をワンストップで

LIVE JAPANの説明を受ける一行
LIVE JAPANの説明を受ける一行

 ぐるなび(滝久雄代表取締役会長)は9月3日、観光庁が主催する「カンボジア報道関係者による東京観光に関する取材」で来日した報道関係者一行に対し、“LIVE JAPAN”による快適なナビゲーションを提供した。全日本空輸(ANA)による成田―プノンペン間の直行便就航にともない来日した一行に、東京の魅力を知ってもらうのが狙い。

 “LIVE JAPAN”は、訪日外国人観光客に対し、ワンストップで観光情報を提供することを目的としたWebサイト。スマートフォン端末からの利用も快適で、利用者は、食事や宿泊施設の情報から、目的地に至るアクセス方法まで、同サイト1つで必要な情報を得ることができる。

 一行は、同社の住田博人副グループ長から“LIVE JAPAN”の操作方法を教わり、浅草寺境内を目的地に設定したうえで、観光に出発。さっそく仲見世へと向かった。

雷門の大提灯に興味津々
雷門の大提灯に興味津々

 同サイトでは「観光する」と「食べる」、「買う」、「泊まる」のアイコンボタンを用意。表示される画面をタッチするだけで目的地にたどり着けるよう工夫されており、ワード検索の手間を省いた仕様となっている。マップ機能も有するため、混雑のなかでも、はぐれる心配なく買い物に集中できる。同機能を利用した一行も、人形焼や扇子など日本の伝統的なお菓子や文化を堪能しつつ、無事境内にたどり着くことができた。

 周辺の飲食店を検索する機能も付いているため、観光を楽しみながら、電話一本でランチやディナーの予約を済ませることができる。

 4月からサービスを開始した同サイト。ぐるなびと東京急行電鉄、東京地下鉄が事務局を務めている。私鉄各社やANA、JALなど全22社が参画し、訪日観光ガイドのスタンダードを目指す。

 来日したカンボジア報道関係者一行は5人。現地発行の英字新聞、「The Phnom Penh  Post」や、「KAMPUCHEA  THMEY DAILY」の記者など、同国を代表する報道関係者が集まった。

【9月19日まで】めんたいパーク大洗、開店7周年記念で感謝祭を開催中

7周年チラシ

 茨城県大洗町の「かねふくめんたいパーク大洗」が9月に開店7周年を迎え、9月9―19日までの11日間に、7周年を記念した感謝祭を開催している。

 館内の直売所で3500円分の買い物をするごとに1回、明太子製品や帆立シューマイなどが当たる空くじなしの福引大会に挑戦できる。1等には明太子1キログラムがプレゼントされるほか、必ず食品がプレゼントされるためお得な福引となっている。

 そのほか、土曜・日曜・祭日には小学生以下の子どもを対象に、7周年記念のオリジナル缶バッジ作りを実施。好きな色に塗って作れるオリジナル缶バッジは、家族での旅の思い出づくりにもなることだろう。

 かねふくめんたいパーク大洗は2009年9月に開業。館内には無料で見学できる明太子工場、直売所や明太子グルメを楽しめるフードコーナーなどがある。明太子の作り方や歴史などについて、展示やムービーなどを見て体験しながら学ぶことができるため、子どもから大人まで楽しむことができる。

 営業時間は午前9時―午後6時。大型バス12台、乗用車120台の無料駐車場を完備する。

 予約・問い合わせ=TEL:029(219)4101。

【イベント概要】
■期 間 : 9月9日(金)~9月19日(月)の11日間
■会 場 : 「かねふくめんたいパーク大洗(茨城県東茨城郡大洗町磯浜町8255-3)」
■時 間 : 午前9時 ~ 午後6時まで
■内 容 
 ◎福引大会(空くじなし)
  直売所で3500円お買い上げ毎に1回抽選
  ☆1等☆ 明太子1キログラム
  ☆2等☆ 明太子450グラム
  ☆3等☆ 帆立しゅうまい
  ☆4等☆ ヤリイカ明太
  ☆5等☆ ちょっぴり明太子製品
   
 ◎7周年記念オリジナル缶バッジ作り
  小学生以下の子どもを対象に土曜・日曜・祭日開催

そのほか、かねふくめんたいパーク大洗の詳細はホームページ(https://mentai-park.com/park/ooarai/)から。

総額52%増の373億円、訪日受入事業は93%増(17年度観光関係予算概算要求)

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 観光庁がまとめた2017年度の概算要求では、前年度予算比58%増の316億2800万円を求めた。ストレスフリーの旅行環境の整備に155億3200万円、観光産業の革新に123億4400万円、観光資源の魅力向上に33億3100万円、その他に4億2千万円。また、東北の復興枠として57億3500万円を求め、総額で同52%増の373億6300万円を要求した。訪日客の受入環境の整備と海外プロモーションが大きな額を占めるが、従来の規制・制度など抜本的な見直しや、地方創生に資する事業なども加速化させる。また、税制改正でインバウンド向けに酒税の免税制度の創設が要望された。
【平綿 裕一】

酒税の税制改正を要望

〈ストレスフリー〉
 17年度は「ストレスフリーの旅行環境の整備」に前年度比93%増の155億3200万円を要求した。このうちユニバーサルツーリズム促進事業に3200万円。今年度の補正予算で「訪日外国人旅行者受入基盤整備・加速化事業」に155億円を計上したが、同事業を17年度の新規施策として、補正予算と同じ155億円を要求した。

 新規施策の背景に、堅調な増加傾向にある訪日客が一因にある。今年7月時点で約1400万人を超え、引き続き増加すれば秋を過ぎるころに2千万人に達する。続けて、20年に4千万人、30年には6千万人へ向け、さまざまな動きが活発化している。このスピード感のなかで、観光に関する多くのインフラ整備と連携する。また、ハード・ソフト両面からの受入環境整備を通じて、世界水準の観光拠点の整備を、さらに加速化させていく考えだ。

 具体的な施策を見ていくと、ハード面に102億円を充てて観光案内所や交流設備、クルーズ船受入環境などの整備、改良を支援する。ソフト面は、宿泊施設のインバウンド対策で館内の無線LAN環境整備やトイレの洋式化、多言語化などを支援し、53億円を充てる。

 ユニバーサルツーリズム促進事業では、20年の東京オリンピック・パラリンピックや高齢化社会を踏まえ、既存の観光案内所の「バリアフリー相談窓口」化を促進する。現在は全国28カ所ほどだが、各都道府県1カ所ずつに設置を目指す。

〈観光革新と国際競争〉
 「観光産業の革新と国際競争力の強化」全体で、同39%増の123億4400万円を求めた。このうち、日本政府観光局(JNTO)によるビジット・ジャパン(VJ)事業に100億円(JNTO運用費交付金)、国と地方の連携によるVJ事業に15億円、MICEの誘致の促進に2億3800万円を充てた。JNTOは運用交付金で100億円を要求しているが、このなかに訪日プロモーションやMICE関連のプロモーションなども含まれる。

 VJ事業は観光庁の15億円とJNTOの運用費交付金100億円の内数で、既存市場の確保に加えて欧州米豪を中心とした富裕層市場開拓に取り組む。プロモーションは、「映像」の力を最大限に駆使し、質が高く魅力ある訪日観光のブランドイメージを確立し、グローバルメディアを介して世界に発信する。

 MICE関連は観光庁の2億3800万円で、MICE商品の企画、開発や経済波及効果の調査、ユニークベニューなどを支援する。JNTOは100億円の内数で、日本のMICE統一ブランドを活用した日本初の年間を通じた大規模なキャンペーンの展開など、海外プロモーションを強化する。

 また、健全な民泊サービスの普及は新規施策として1億3400万円を要求した。新たな宿泊モデルとして期待は大きいが、近隣住民とのトラブルなども予見される。観光庁は今回の要求額で、民泊に関する相談窓口や広報の設置をはかる。

 通訳ガイド制度の充実・強化は同156%増の5千万円と大幅に拡充した。業務独占の廃止から名称独占へ移行したうえで、通訳案内士の質を担保していく。業務に即した試験改善や研修制度の導入および更新制の義務化、地域ガイド育成支援などに取り組んでいく。

 そのほか、新規施策で旅行業における情報セキュリティの強化支援事業に3100万円を、観光人材育成支援事業では3億9100万円を計上。人材育成は(1)観光経営を担う人材(2)観光の中核を担う人材(3)即戦力となる実務人材――の3層構造で育成、強化をはかる。それぞれ順に育成拠点を、大学院段階(MBAを含む)に形成、大学観光学部のカリキュラム変更、地域の観光分野の専修学校などの活用で対応。

〈地方創生〉
 「地方創生の礎となる観光資源の魅力向上」の大枠で33億3100万円を計上。このなかで、広域観光周遊ルート形成促進事業に19億9千万円、地域ブランド確立支援事業に2億5200万円、テーマ別観光による地方誘客事業に1200万円を充てる。テーマ別観光では、新しいテーマの設定も視野に支援する。加えて、地方創生に役立つ観光施策の検討、評価、改善に必要となる各地域の観光統計を整備するために5億3千万円を充てる。

 東北の復興に関しては、全体で57億3500万円を要求した。東北地方へのインバウンド推進による観光復興事業(東北観光復興対策交付金)は44億6600万円、JNTOによるVJ事業(東北観光復興プロモーション)で10億円、福島県における観光関連復興支援事業では2億6900万円を充てる。20年には12年の3倍にあたる150万人泊を目標に、復興に向けた取り組みを強く推進する。

 17年度はインバウンド向けに酒税の免税制度も要望された。消費税が免税となる輸出物品販売所の許可を受けた酒蔵で、インバウンドを対象に販売した場合、酒税が免税となる。同制度を創設することで、地方の酒蔵ツーリズムを振興し、日本産酒類の認知度を向上させ、さらに輸出促進をもはかっていく。

旅のプロ ― 空気のような存在こそ練度が高い

 魚を釣りに行っても、酒場のバーに座っても、その人が一つのことにどれくらい訓練を積み重ねてきたか、という練度が自然なかたちで感知される。遊びだけではなく、仕事においても熟練の度合いが鈍い光を放つ。

 旅も同様である。旅行会社の社員と同行取材の旅を経験してきたが、彼らはホテルや航空機、鉄道などの裏事情に精通する旅のプロだけあって、自ずと添乗員的な役回りになる。これはさまざまなトラブルに遭遇し、乗り越えたり、回避したりしてきた経験の層が意識せずとも、凛々しさや、頼もしさを醸し出しているせいでもある。

 自分自身の旅を思い返してみると、わりと色々なところに行って来たな、と感慨にふけることもある。辺鄙な場所にも好んで訪れたし、後で考えると「危険な橋を渡った旅」もいくつかある。

 業種を問わず、年がら年中、世界中を駆け回るビジネスマンも、思いのほか多い。彼らは決して旅行業界の人間ではないのだが、国際空港などでの空き時間の潰し方や、搭乗手続きの手際の良さを目の当たりにするにつけ、いつまで経っても旅の錬度の上がらない己の旅の素人ぶりに気づかされる。

 出張帰りの新幹線に乗っても、私は未だに缶ビールとビーフジャーキーや柿ピーなどを買って、夕暮れが迫る田園風景を眺めながら、ひとときの旅情を楽しんでいる。しかし、しばしば巡り合うのは、隣に座るビジネスマンが車窓に映る景色には一切目を向けず、ミネラルウォーターで乾いた喉を潤しながら、一心にパソコンの画面を見つめ、企画書やら、管理データなどを作成している場面だ。

 「この人はもう、新幹線での大移動は日常であって、座席はオフィスのデスクと同じであるのだな」と赤ら顔で、旅に動じない男に感心してしまう。

 誰かと旅をすることで、その人のことをより深く理解できる。

 旅行作家やトラベルライターと言われる人たちと旅を共にすることがよくある。彼らは、一言でいえば、旅に「貪欲」である。朝日が綺麗に見える場所があると聞けば、朝4時に起きて、その場所に行こうとする。夜中に星がくっきり見えると耳にすれば、それが真冬であろうと、セーターを何重に着込み、外に出る。これらは極端だが、例えば旅に貪欲な人と、一般的な人が2人で旅に出たときに、一方は近くに話題の店があると「せっかくだから行こう」と誘う。一方は「ホテルでゆっくりしたいのでこれ以上出歩くのは疲れるから嫌だ」と感じるケースが往々にしてある。

 夫婦や恋人同士で旅をすると、このような細かな行き違いが重なり、その結果「この人とは旅のスタイルも、生き方もすべてが合わない」と別れるパターンもある。旅とは恐ろしいものだが、そのような深い関係でなければ、「へぇ~、この人はこんな旅の仕方をするんだ」と新たな発見をすることもある。

 旅慣れた人と、旅に興味の無い、あるいは旅に関心を失った不感な人は、表面的には見分けをつけづらい。旅のプロのような風情を、一見して見破られる人はまだまだだ。酒場で常連面をして目立つ奴も、まだ浅い。場に空気のように溶け込んでいる人こそが、練度が高いのである。旅先に溶け込み、空気のように存在感の無い旅人になりたい。

(編集長・増田 剛)

【特集No.440】 千草ホテル 市場環境にどう適応していくか

2013年9月11日(水) 配信

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客様の強い支持を得て集客している宿の経営者と、工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が、その理由を探っていく人気シリーズ「いい旅館にしよう!Ⅱ」の第5回は、福岡県北九州市八幡で千草ホテルを経営する小嶋亮社長が登場。結婚式場業の定義に縛られず、「アニバーサリー・デザイン・カンパニー」へと発想の枠を広げ、内製化した自社の強みを活かす千草ホテル現場の取り組みを語り合った。

【増田 剛】

 小嶋:千草という名前が生まれたのは1914年で、料亭から始まっています。千草は千の草、つまり雑草のことで、「雑草のようにどんなに踏みつけられてもたくましく生き残っていきましょう」という創業者の思いが込められています。
 当時、官営八幡製鉄所ができて非常に街が盛り上がっていました。私の曾祖父が愛媛から北九州の八幡に出てきて、港湾労務者として働いていたのですが、曾祖母が小料理屋を開くと繁盛したため、料亭を始めたという流れです。料亭千草は八幡製鉄所など大企業の社長や重役の接待に使っていただいていたようです。
 戦後は、焼け野原の中で料亭を再開しました。うちは分家筋にあたり、曾祖父の長男が料亭を継ぎ、次男だった私の祖父が分かれて、1942年に割烹旅館を始めました。これが千草ホテルの直系の流れです。料亭と同じく官官接待需要を取り込みつつ、旅館機能を付加した感じです。
 しかし、あくまでも接待が中心で、宿泊機能が現在も“サブ的”な位置付けなのは、そこがスタートだからです。
 父の代になって結婚式が盛り上がり、その後、「レストランウェディング」や「ハウスウェディング」に取り組むようになっていきました。私は2015年7月に専務から社長に就任しました。

 内藤:完全にマーケットの需要にあわせて業態転換していったのですね。

 小嶋:現在は、洋室宴会と和室宴会という2種類があるのですが、洋室宴会でブライダルが伸びていき、和室宴会は今でも確実にある接待需要を取り込むために、八幡エリアに関しては広げています。最近は個人客も増え、全体の半分を占めています。

 内藤:客層が変わってきたということですね。

 小嶋:戦後は千草ホテルで結婚式を挙げるのがステータスだった時代がありました。最盛期で年間370―380組の挙式を行っていましたが、次第に競合が現れ、また、お客様も八幡よりも栄えていく小倉の方にシフトしていきました。新日鉄も規模が縮小していくなか、「新日鉄御用達」というブランド価値はどんどん消えていき、当館も厳しい状況にありました。
 1994年にレストランウェディングの会場を北九州で初めて作り、大きく当たりました。1つの宴会場で年間226組というのが最高なのですが、これ以上受け入れられないくらい取れていた時代がありました。この成功によって、門司にもレストランウェディングの宴会場を作り、しばらくはホテルとレストランウェディングの2事業でやっていました。その過程で付帯事業を取り込もうと、自社の中に写真部門を作りました。次に衣装部門、美容部門も抱えるようになり、最後に花部門も内製化して、付帯事業を売上に取り込んできました。

 内藤:飲食事業もやられましたね。

 小嶋:フランチャイズチェーン(FC)を4―5年やってやめました。

 内藤:なぜ着手し、なぜやめたのですか。

 小嶋:ブライダル需要が高まっていくなかで、並行して「新規事業で売上の新しい柱を作りたい」という思いがありましたが、思ったほどには売上が伸びませんでした。今はホテルとブライダルだけで、生産性向上とクオリティアップ、収益性の向上に集中して取り組むようにしています。

 内藤:内製化していった主な理由はなんですか。

 小嶋:それはやはり、収益性の向上です。ある程度の組数以上であればペイできるという計算です。

 内藤:内製化によって売上が増えたとしても、固定費も増えます。固定費が重くなる怖さから、多くの経営者は、できるだけ変動費にしていくために、外注へ舵を切りたがります。

 小嶋:現時点で、経営判断するのであれば、さまざまな付帯事業を取り込む発想は、私自身ないと思います。

 内藤:内製化していくメリットについてはどのように考えていますか。

 小嶋:プライシングのときにパートナーさんたちとの原価交渉などが煩雑ですが、内製化していると、全社トータルで1組当たりの利益を見ることができるので、お客様との金額交渉などには利点を感じます。
 そのほかにも、花部門が社内にあるので、施設の飾りなどは使いやすいですし、写真部門もあるので、広告写真を自社で撮ることもできます。また、いわゆる写真だけの結婚式である「フォトウェディング」を最近始めていて、これも衣装と美容と写真のすべてを内製化しているので、自社のスタッフの余力を使って利益を出すことが可能です。ですから、リスクの低いかたちでフォトウェディングのスタートができました。

 内藤:商売というのは周辺市場に対する適応であり、歴史を見ていくと、業態転換を繰り返しています。
 2014年に100周年を迎え「アニバーサリー・デザイン・カンパニー」という理念を掲げ、今後の方向性を示されましたね。

 小嶋:結婚式場業という定義をやめて、業態転換というほどではないかもしれませんが、アニバーサリー(記念日)という定義に、発想の枠を拡げていこうと考えました。
 それまでどんな宴席であっても料理をお出しして、場所を貸して、「おめでとうございました」という定まった世界観でした。今は一つひとつのアニバーサリーそのものをしっかりと考え、お子さんのお祝いであれば「それをどのようなおもてなしにするとお客様が喜んでくださるか」など、個別に議論をして、サービスメニューを変えて提供するということをやっています。一つひとつの宴席の満足度が上がらなければ、「次も」と思ってもらえないわけですから、「まずはそこから始めよう」と言っています。すべて一様のサービスから変えていこうとしています。今はまだその段階です。
 あとは、これを次につなげていくことも同時進行で動いています。法事のお客様に対して、3回忌、7回忌など、そのタイミングが来たらこちらからご案内もしています。
 これをもっと有機的に、お子さんのお祝いで来られた時に、おじいちゃん、おばあちゃんがいたら、長寿のお祝いで当館に誘導できるような情報提供や手法、どのタイミングでやるのがベストなのかなど、試行錯誤をしながらアイデアを出し合っています。

 内藤:裏を返せば、さまざまな専門部門を持って内製化していることが生かされていますね。

 小嶋:そうですね。花部門がありますから、お祝いの宴席のお花なども受けられるような流れも作っています。これまでは「ブライダルのためのお花」という意識がスタッフに強過ぎて、新しい発想がなかったのを、「どんどん自社の強みを活用していくべきだよね」という感じに変わってきました。パティシエ部門もあり、ケーキも内製化しています。

 内藤:例えば、子供の七五三などは、かつての八幡製鉄所の接待とはまったく異なるサービスです。小さな子供が走り回るのを嫌がるお客もいるわけですよね。アニバーサリーという定義では、実務的にやっていこうとすると結構大変だと思いますが。

 小嶋:七五三の主役はお子さんなのですが、当館を選んでいただけるのは親御さんであったり、おじいちゃん、おばあちゃんだったりするので、お子さんが喜ぶことで親御さんたちが喜ぶというようなサービスを考えてメニュー化しています。

 内藤:例えばどのようなことですか。

 小:お子さんのお名前が事前にわかるので、社内の達筆なスタッフが、色紙にお子さんの名前を書いてウェルカムカード、ボード的なものにして、宴席のときに飾ってお出迎えをしています。
 これは結婚式のときのウェルカムカード、ボードからの発想を取り入れたのですが、非常に喜ばれています。初誕生日のお祝いには、「選び取り」(将来占い)などのメニューも用意しています。お食事の中で初誕生用のお子さんでも食べられるゼリーやケーキを作ってお祝いしたり、細々したことを工夫しています。

 内藤:そのように細かく対応するのはとても大事ですね。

 小嶋:お子様ランチは「和のお子様膳」と「洋のお子様膳」を用意しています。内容的なものは、これからの課題だと思います。

 内藤:そのほかにも、畳敷きか、椅子席かという問題もあります。

 小嶋:当館は掘り炬燵のスタイルなのですが、ご要望があればそれを椅子、テーブルに変えています。畳敷きにしてしまうと、高齢のお客様などは「きつい」と感じられてしまう方も多くいます。

 内藤:子供連れが来たときは、より安全な畳敷き、高齢者の場合は高御膳で椅子を用意する。ただ高齢者と子供が一緒になったときにはどうするかが問題になりますが、結局「使いやすい」というのが1番大事だと思います。
 私は一貫して迷った時には「お客様の判断に委ねなさい」という考え方です。オプションを用意したうえで、「どうしましょうか」と予約の時に聞いてしまうのがいいと思います。
 「お客様の判断に委ねなさい」というのは、前もって準備するとそれが在庫になり、変更になったら大変です。前もって聞くというやり方もありますが、お客はその場の気分で決めることもあるので、その場で建て替えができるのがベストです。できるだけリードタイムを短縮する。そのための作業性をどうやって高めていくのかが大事です。料理はでき立てがいい、というのと同じです。でき立てが食べられるというのは、調理と食べるタイミングがぴったりと合っていることなので、お客のニーズをすべて聞くことが可能になります。
 ですから、お客様のニーズにこちらのタイミングをどう合わせていくかということが一番大事な部分なのです。

 小嶋:人数が増えれば難易度が上がっていくので、そのバランスの取り方が難しいですね。

 内藤:一定の人数を超えると割り切るという考え方もあります。

 小嶋:割り切るとは。

 内藤:例えば、「でき立てはとりあえず20人を超えると対応しない」などです。結果的には、さまざまなオプションを用意して「お客様の判断に委ねるようにしていく」というのが一番いいと思います。
 そのほかにも、米寿のお祝いなどは、どうされていますか。

 小嶋:お子さんのお祝いだと色々アイデアが出てきますが、長寿のお祝いでは特別なおもてなしの仕方など、あまり多くのアイデアが出て来なかったですね。ただ、食事に関しては、固いものが食べられないなどもありますので、予約の段階で細かくお聞きして対応するようにしています。

 内藤:新たな商品開発を考えると、なかなか斬新なアイデアは出てきませんが、「今よりも良くする」という風に考えるといいかもしれません。「提供している肉や刺身のサイズは本当にこれでいいのか?」といった具合に考えていくと、少しずつ改善され、新しいアイデアも現場から出てきます。

 小嶋:今は新郎新婦が料理を選んで出しているのですが、出席者からすれば食べたいものを食べたいはずなので、究極の目標は100人規模の結婚式であれ、当日メニューを渡して、好きな料理を選べるというのがベストです。そのレベルと、現状のどこでバランスをとっていくかを考えています。多くのホテルでは和洋折衷で対応していると思いますが、当館では招待状を出す時点で3種類(洋・和・酒飲み用のつまみ料理)をお客様に選んでもらうようにしています。

 内藤:それはがんばっていますね。

 小嶋:ブライダル、結婚式は縮小している市場ではありますが、自らを磨いていくことでトップランクにいれば、10年くらいはやっていけると思っています。

 内藤:いや、ブライダルは未来永劫続きますし、トップランクであれば決して潰れません。下位から潰れていきます。

 小嶋:結婚式が駄目になっていった最大の原因は、フォーマット化です。2時間半の宴席のなかで自由に使える時間は、お色直しの中座を挟んだ前後15分ずつしかない。それ以外はほとんどフォーマット化されています。フォーマットを作ったおかげで、かなりの数の結婚式を1日の中に詰め込める日本独自のシステムができ上がったのですが、結局これが1組1組のパーティーをつまらなくしていきました。若い世代も「こんなものにお金をかけてやりたくない」と感じているということだと思います。
 私たちは今、2時間半すべてを本当にいいものにできないかと考えています。1組1組のお客様の情報を引き出して、上手にアレンジしていくのがプランナーの役割であって、その部分を磨いていくことが結果として、上を目指すなかでコアな価値になるのではないかと考え、試行錯誤しながらやっていっています。

 内藤:私はよく「いいもの」の定義はなんだろうと考えます。「いいもの」は品質であり、品質の定義はISO9000で定まっています。何と規定しているかと言えば、「要求事項を満たした割合」です。これは「お客の判断に委ねる」ということであり、お客の潜在的な要求事項に対してこちらが掘り起こし、最終的にお客が「自分が欲しかったのはこれだったのか」というようなものを見つけてあげることだと思います。
 それでは、次にとても素晴らしい取り組みだと思っています「チグシス」(千草システム)の話をしましょう。

 小嶋:最初は、ブライダルの顧客管理のデータベースを自分で作ったことから始めました。入社してすぐですから12年前です。顧客台帳が全部手書きだった時代に、お客様の情報管理のデータベースを作り、そのシステムでいつ来館されて、いつ成約したか、決まらなかったか、どういう見積りを出したかという「見積り発行機能」を手作りしたのがスタートです。少しずつ機能を追加していって、接客者ごとの成約率や、マーケティング情報も出せるようにしていきました。

 内藤:具体的に、どのような機能を加えていったのですか。

 小嶋:例えば、営業マンの成約率が芳しくないときに、原因分析ができるように、来館されたお客様の年齢層や、出身地、接客した時間帯、どういったことにこだわりのあるお客様なのかといったアンケート情報などをすべて入力し、スタッフ別に「見える化」して指導も行っています。
 現在、アニバーサリーという切り口での顧客リストを、ホテルシステムで作ろうとしています。こちらはお客様軸で見られるようにする予定です。
 お寺の檀家さんのシステムなども参考にさせてもらい、ご家族単位での宴席の種類や、それぞれの宴席のときの料理、スタッフとのやり取りの内容などを残していけるようにしたいと思っています。さらにこの情報を現場のサービススタッフがタブレット端末などでいつでも見られるようにと考えています。

 内藤:檀家さんのシステムを参考にするとは面白いですね。

 小嶋:ご家族単位でさまざまな宴席が紐づいていきますし、それらを上手に管理できるように、使いづらい仕組みにならないように気をつけていきたいと思っています。

 内藤:今ある家族のデータも、新たな世帯を作って枝分かれしていきますし、また亡くなられたり、離婚などもあるので、データベースとしては相当に工夫しなければ難しいですね。
 仕入れなど管理システムや、情報共有システムも構築されていますよね。

 小嶋:仕入れの管理は、取引業者に、食材カテゴリーごとに6カ月、3カ月、1カ月などの期限で見積りを出すタイミングが決まっています。そのたびに見積りを定型フォーマットで出していただいて、同じ食材に複数社からの見積り金額を比較し、最も安いところに自動的に発注書が行くシステムにしています。
 基本的には各調理場の発信で行っていますので、このシステムを使って発注する場合と、納品に来た業者の方に直接口頭で発注するケースもあります。当然、システムを通して発注した方が確実に値段は下がるのですが、直接口頭で頼んだ方が利便性は高いので、このシステムの利用率を上げるために、使いにくい部分を修正しながら利用率を上げていこうとしています。

 内藤:どういう工夫を考えられたのですか。

 小嶋:入力の仕方では1行ずつ登録していくのが面倒なので、登録可能な商品を一覧で見ることができるようにしようとしています。
 また、1日の必要な派遣人材数を発注する「バンケット・マネジメント・システム」では、当日の宴席の予約データをもとに、時間帯ごとにプランニングをしていき、トータルの数値も出ます。発注ボタンを押すと、発注書が出てくるのですが、その日が終わったあとに実際時間帯ごとに実績を入力することで、差異が出てきます。その差異理由を入力することになっていますが、その差異がないように振り替えられる仕組みにしています。
 また、大きな宴会場にはすべて小さなカメラを置いて、フロントや厨房から見えるようにしました。これによって、宴席が終わりそうになるとフロントスタッフがマイクロバスの運転手に声をかけて、フロントの前につけるように指示を出します。以前は部屋の担当者から連絡があってはじめて動いていましたが、前倒しで動けるようになったので効率が上がりました。厨房は動き出しのタイミングをランナーの指示で動いていたのを、料理長がモニターを見ながら動き出せるメリットもあります。情報がリアルタイムに入ることで、より早い判断につながっていき、結果的にお客様をお待たせすることが若干ですが減ってきています。
 そのほかにも、レストランの構造が悪く、サービススタッフの待機場所から入口が離れて見えないため、しばしばお客様を入口のところで待たせていましたが、レストランの入口にカメラを置くことによってタブレット端末で見えるように改善しました。

 内藤:以前、倉庫の集約など整理整頓をやられましたね。

 小嶋:相当に物を捨てて、広くなりました。その後、事務所の扉をすべて取っ払って中を見えるようにしました。その分、整理整頓するようになり、机の上に物を置かないようにもなりました。綺麗にする、整理整頓するという意識は高まっています。

 内藤:そのような現場の地道な取り組みが一番大事です。人時生産性の計算や、労務管理に取り組むのはいいのですが、結局現場が変わらないと、結果は出て来ない。現場のオペレーションをどう考えていくかを最重要視しています。
 現在のお客様の満足度はどうですか。

 小嶋:レストラン部門は今期初めて黒字を達成しました。お客様が地道に少しずつ増えてきたこともあって、評価していただいているのかなと捉えています。毎年少しずつですが右肩上がりで推移しています。

 内藤:私は、「客数が満足度を表す」と考えています。どのような努力によるものですか。

 小嶋:メニューそのものも色々工夫しています。以前はグランドメニューを決めると、しばらくはそのままにしていましたが、今は出ないメニューがあれば、改良するようにしています。
 また、調理部門と、レストランのサービス部門の責任者と、私と支配人が常に顔を合わせて定期的に話し合う場で、毎月数字の共有をするようにしました。それまで厨房は原価率と出数しか見ていませんでしたが、損益情報を提示し、意識が高まってきました。

 内藤:具体的にはどのようなデータを提示しているのですか。

 小嶋:レストランの部門ごとの組数、客数、客単価、フード、ドリンクの内訳、団体客が入ったときは団体客の構成などをすべてチェックしながら、売上の増減の原因の共有などを行っています。そのうえで、対応策を考えています。
 例えば、これまで洋食のみのメニューでしたが、和食のオーダーも確実にあることが見えてきたので、和膳のラインナップも増やし、売上も伸びていきました。
 最初は洋食屋というコンセプトで始めたのですが、ホテルの中のカフェのため幅広い客層を取り込むことも可能なので、もっと需要を見て柔軟に対応していこうとしています。さらに、早い段階から、厨房と私や支配人がイベントなども話し合い、情報を共有することで具現化しやすくなっています。
 そのほかにも、「みんなもっと勉強していかなければならないよね」というところから、調理スタッフらを東京の話題のレストランに連れて行ったりもしています。これによってモチベーションも上がっているのを感じます。今では私がいなくても損益計算書を見ながら問題点を指摘し合うようになっています。

 内藤:ブライダルとの情報共有はどうですか。

 小嶋:ホテルの全部門のマネージャークラスを集めて、週に1回ミーティングを行っています。これは私が実データを使って講義をするようなかたちです。ホテルシステムから出してきたデータベースのデータを、エクセルのピボットテーブルの機能を教えることによって、それぞれの自分の部署のお客様の情報をちゃんと分析できるようにしました。
 あるとき、ブライダルのスタッフが、宴席のドリンクの状況を分析して、「うちは値付けが安すぎるのでは?」ということがわかってきました。よくよく調べてみると、ビール1本の単価が、市場平均よりも1割ほど安くなっていました。市場平均値まで上げてもお客様への影響はほとんどなさそうなので、「その分の年間収益が上がるのでやろう」という結論になりました。
 現場のスタッフからこのような分析と提案が出てくるようになったのは、面白いことだと思います。

 内藤:実態が見えてきたということですね。

 小嶋:今まで感覚的な議論だったところに、ようやく数字を基に議論できる環境になってきました。これまで会議では「インパクト」や「効果が大きい」などのワードがよく出て、私が「大きな効果ってどのくらいなの?」と具体的に聞いたときに、黙り込むスタッフが多かったのですが、今はエクセルデータなどによる具体的な数字を基にした答えも返ってくるようになりました。少しずつ意識の中で変わってきているのを感じます。

 内藤:スタッフが喜ぶのはお客に褒められることが一番だと思います。お客に褒められると、意識の変化が大きく加速していきます。

 小嶋:恥ずかしい話ですが、1年前までホテルの中で朝礼がありませんでした。朝礼の中で、お客様からのお褒めの言葉や、お叱りを受けた点などを話すと、少しずつお客様への意識が高まってきました。

 ――宿泊の方はどうですか。

 小嶋:現在20室です。年間稼働率は50%にも届いていません。金、土曜日は結婚式に列席される方の利用がほとんどで、春休みや夏休みのシーズンは家族連れで近くのスペースワールドに来られる方々もいます。それ以外の平日は近隣の企業への出張利用などで利用されています。
 現状では積極的に部屋を売っていこうとはしていないのですが、千草ホテルの周りには観光資源がたくさんあるなと思っています。スペースワールドのほかにも、皿倉山は全国的にも夜景の名所です。価格競争に走らずに、広めの部屋で、朝もビュッフェではない朝食も楽しんでいただけるような売り出し方も考えています。

 内藤:一案ですが、「部長クラスの出張宿」などもいいと思います。会社の出張費の上限あたりに値段設定し、美味しい朝食と、夕食も少し贅沢できるような雰囲気をつくり出すといいのではないかと感じました。千草ホテルの客室も和風モダンですごく落ち着いて雰囲気はいいですね。

 小嶋:「昭和のいい感じ」とお客様に言われたことはありました。

 内藤:1人当たりの客室単価はどのくらいですか。

 小嶋:6千―7千円の間くらいです。
 これまで宿泊は全社の収益の2%分ということもあり、手を付けずにいた面もありました。今でもすべて私の目が届いているわけでもありません。だからこそ週1回のマネージャーミーティングで、ある程度現場主導で少しずつ改善していくムードを作りたいと思っています。エクセルを使っての分析なども、1つの布石だと思って取り組んでいます。

 内藤:これからも現場の細かな改善によって進化し続けることを期待しています。

※ 詳細は本紙1640号または9月15日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

観光庁関係に208億円、訪日受入基盤を整備(16年度第2次補正予算)

 政府は8月24日の臨時閣議で、2016年度第2次補正予算を決定した。観光庁関係は208億円が計上された。一般会計として「訪日外国人旅行者受入基盤整備・加速事業」に155億円、「地方誘客のための緊急訪日プロモーション」に45億円。東日本大震災復興特別会計で「東北地方へのインバウンド推進による観光復興事業」に8億円が充てられた。

 国交省は補正予算国費に1兆2257億円を計上。16年8月2日に閣議決定された「未来への投資を実現する経済対策」で掲げられた4本の柱に基づき編成をした。(1)1億総活躍社会の実現の加速(2)21世紀型のインフラ整備(3)地方の支援(4)熊本地震や東日本大震災からの復興や安全・安心、防災対策の強化――この4つの柱のうち、21世紀型のインフラ整備に3828億円を計上。観光庁関係の約96%の予算がこの中に計上され、そのほか、大型クルーズ船の受入環境改善に165億9500万円や、羽田空港などの機能強化に101億3900万円、良好な水辺空間の形成による観光地の魅力向上に21億6800万円が充てられた。

洋彩和膳ラミュゾン

 栃木県日光市の「鬼怒川グランドホテル夢の季」を取材してきた。今年10月に旅館開業50周年を迎える同館では、年間を通してさまざまな50周年記念事業を実施している。

 なかでも注目の取り組みは6月にオープンした、「会話」と「食事」と「お酒」を楽しむ大人の空間、新感覚食事処「洋彩和膳ラミュゾン」だ。初の「R―12」指定で小学生以下の子供は利用ができない。

 コンセプトは「和の要素」を重視した洋食スタイル。和食だが見た目は完全にフレンチのフルコース料理。当初は20―30代の女性客を想定していたそうだが、実際にふたを開けてみると利用客の多くは50―60代の中高年層だったという。箸を使い、器は有田焼など和の陶器を中心に、日本酒はワイングラスでいただくという徹底したこだわり。センスが光る。

【古沢 克昌】