津田令子の「味のある街」「びわのしずく」――ピース製菓(千葉県館山市)

2023年3月13日(月) 配信

ピース製菓「びわのしずく」5個入り1箱837円▽千葉県館山市北条1866▽☎0470(22)0699。

 東京都心からわずか90分で海と山の両方のリゾートを満喫できる千葉県館山市。東京ではまだまだ寒い時期に訪ねてみると、既に菜の花や、梅など冬から春への花があちらこちらで見ごろを迎えていた。寒さしらずのハウスの中での、イチゴ狩りは、既に暑さを感じるほどだ。大粒で甘みも強くお土産にも買ってきた。    

 

 今回は館山銘菓の1つ、種をとりのぞいた枇杷の果実をまるごと使い、ひと口サイズのゼリーに仕上げたピース製菓の「びわのしずく」を紹介しよう。

 

 はじけるようなみずみずしさと、枇杷の甘酸っぱい風味が口いっぱいに広がり、1つ、2つつとあっという間に平らげてしまう。ゼリーにも枇杷エキスをたっぷり使用したこだわりようだ。常温保存可能なのでお土産や持ち運びにも便利。家に帰って冷蔵庫で冷やして食べるとさらにうまみが増したように感じる。店主によると、「枇杷のみずみずしさを、季節を問わずいつでも気軽に味わっていただきたい」という思いから生まれた商品だという。

 

 店の創業は1948(昭和23)年。「房州の季節と歴史を御菓子にこめて、郷土の香りを全国へ」との思いを今も受け継いでいる。1994年には第22回全国菓子大博覧会菓子博栄誉賞受賞を皮切りに、翌年には全国商工会議所会頭努力賞、2002年には全国菓子大博覧会菓子博栄誉大賞受賞、翌03年には第54回全国植樹祭の折に、天皇皇后両陛下にお買い上げ賜ると記されている。

 

 「平和な世界になるように」の願いを込めてピース製菓と名付けて以来75年余り、地元に根ざし、買っていただいた方々が笑顔になれるような菓子作りに専念してきたという思いと手作りならではのぬくもりを感じながら、爽やかなお菓子を味わっていただきたい。店は館山駅東口交差点を右折して徒歩3分ほどの場所にあるので帰途に就く前に立ち寄っていただければ。

 

 今、枇杷から生まれた館山の銘菓「びわのしずく」を個包装から取り出し、再び味わっている。口に入れた途端、風光明媚で心に響く館山の風景が甦ってきた。

(トラベルキャスター)

 

津田 令子 氏

 社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。

九州初サイクルバス 自転車分解せず持込可 西日本鉄道

2023年3月12日(日) 配信

4月運行開始のサイクルバス

 西日本鉄道(林田浩一社長、福岡県福岡市)が4月1日から、自転車を分解せずに、そのまま車内に持ち込める貸切バス「CYCLE CARGO」の運行を九州で初めて開始する。

 自転車が手軽な移動手段というだけでなく、アウトドアレクレーションとしても人気を集め、自治体でもサイクルツーリズムへの取り組みが活発になっている。

 同社でも、既に西鉄電車で「サイクルトレイン」を導入。23年度に予定の「ツール・ド・九州」をはじめとするサイクルイベント需要の高まりに合わせ、九州初の「サイクルバス」導入に踏み切った。

 車両は、既存の55人定員の貸切バスを改造して、車内前方を自転車積載部分として、最大18台を積み込める。車内後方はサロン席にも変更可能な客席となり、21人乗車できる。

 広いトランクルームも備え、大きな荷物も収納できるため、空港や駅から直接サイクリングツアーに参加できる。

 同社では、サイクリングレースの選手輸送や団体での貸切利用、 旅行会社、自治体などと連携した、九州各地への長距離のサイクリングツアーなどの利用を見込む。

【精神性の高い旅~巡礼・あなただけの心の旅〈道〉100選】-その23-観世音寺&太宰府天満宮めぐり(福岡県太宰府市) 1300年の歴史を持つ観音様の古刹 学問と文化の天神様の聖地

2023年3月11日(土) 配信

 悲しいときや苦しいとき、ここぞという心の拠り所となる神社仏閣が1カ所でもあると、心の平安を招いて、再スタートすることができます。神社仏閣にお参りすることは「心の苦しみや不安を解放し、心を安定させて、浄化する」といわれています。「祈り」とは、私たち人間が心の内と外にいらっしゃる神仏に向かって語りかけるコミュニケーションとのこと。

 

 さて、今回の舞台である観世音寺&太宰府天満宮は、西鉄福岡(天神)駅から太宰府駅まで、特急や急行などで約20分程度という、交通の利便性が高いのです。博多への観光とセットで訪れるにも、最適。

 

 

 太宰府市は、奈良時代から平安時代にかけて、九州全域を統轄する「大宰府」という役所が設置されていました。かつて太宰府市は、外交や行政の場所であり、文化の中心地でもありました。

 

 西鉄の太宰府駅は、太宰府天満宮の朱色に彩られ、太宰府市の花である「梅」をモチーフにした照明やベンチ、ホームには太鼓橋風の欄干を作るなど、太宰府の世界や歴史を感じさせるつくりになっています。

 

 その太宰府駅から徒歩20分程度で、1300年の歴史を持つ、観世音寺へ到着。観世音寺は別世界に来たような静けさに満ちた、天台宗の古刹です。7世紀後半、天智天皇の発願で、母の斉明天皇のご供養のために創建。以前この地に大宰府政庁があり、学びの施設、外国使節を支える館もあり、そのなかにこの観世音寺もありました。

 

観世音寺・講堂

 観世音寺といえば、境内の西側にある戒壇院。「戒壇」とは、修行中の僧に対し、きちんと戒律を守って仏教の学びをしているかどうか、国家が試験を行ったうえで、キャリアとして認めることです。奈良県の東大寺、栃木県の薬師寺、そして観世音寺が「天下の三戒壇」と呼ばれています。

 

 その戒壇院の隣にある講堂は、観世音寺にあたるお堂。内陣の須弥壇には、ご本尊の聖観音立像が安置。別名、「杵島観音」と呼ばれています。観音様は、あらゆる願いを叶えてくれる慈悲深い仏様です。一心に、ご自身の祈りをお伝えしましょう。

 

 最後には、講堂近くの宝蔵にも立ち寄ってみてください。「九州第一の仏教美術の殿堂」とも。宝蔵の2階には、巨大で大らかに私たちを漏れ落ちなく救ってくださるような、仏像がお迎えしてくれます。不空羂索観音、十一面観音、馬頭観音、いずれも5㍍前後の仏像が3体あります。地蔵菩薩、阿弥陀如来、大黒天など大きな仏像も、そろっています。少しの時間、これらの仏像と向き合うことで、心身の落ち着きが取り戻されて、スッキリされるでしょう。

 

太宰府天満宮

 太宰府天満宮は、太宰府駅からすぐ近くにあり、参道では名物の梅が枝餅をいただくのも、お楽しみの1つ。平安時代前期に、「学問や文化の神様」である菅原道真公が中央から、この太宰府へと赴任し、その後、天満宮の神様としてお祀りされました。太宰府天満宮、京都の北野天満宮、山口の防府天満宮を「三天神」と呼ばれています。

 

 参道を抜けて出迎えてくれる「御神牛」と呼ばれる牛の像が、境内に11頭もあります。道真公がお亡くなりになったとき、お亡骸を乗せた牛車を進めると牛が座り込んで動かなくなりました。そこにお墓を立て、お社を建てたのがのちの天満宮です。

 

 道真公は丑年生まれで、牛は天神様のお使いとなり、全国の天満宮で神獣としてお祀りされるようになりました。この御神牛の頭を撫でると知恵が授かり、自分の病気やケガをしているところを撫でたあと、御神牛の同じ部分を撫でると、悪いものが牛にうつって、快復するようです。帰りには、天満宮の隣にある、九州国立博物館で知性のパワーを満喫してみてください。

 

 

旅人・執筆 石井 亜由美
東洋大学国際観光学部講師、カラーセラピスト。精神性の高い観光研究部会メンバー。グリーフセラピー(悲しみのケア)や巡礼、色彩心理学などを研究。

〈観光最前線〉沖縄離島初のヒルトン

2023年3月11日(土) 配信

ヒルトン沖縄宮古島リゾートの全景イメージ

 沖縄県の離島に進出する初のヒルトンホテル、「ヒルトン沖縄宮古島リゾート」が6月に開業する。

 みやこサンセットビーチに隣接し、客室などからは〝宮古ブルー〟と称される宮古島の海やサンセットの絶景が見渡せる。地上8階建ての全329室。部屋数が最も多いデラックスルームで35平方㍍以上の広さがあり、ゆったり寛げる空間だ。最上階にはエグゼクティブルーム、スイートルームを設け、専用ラウンジも開設する。

 パブリック施設では開放感溢れるダイニングレストランや、ルーフトップバー、スパ、チャペルなどをそろえる。3つの屋外プール、2つの屋内プール、完全個室のトリートメントルームもあり、ファミリーやカップルなどあらゆる層のニーズに対応する。

「津田令子のにっぽん風土記(95)」犬も猫も家族とハッピーに~ 巣鴨・滝野川編 ~

2023年3月11日(土) 配信

16歳のわんちゃんと朝5時のお散歩
ペットシッター 菊地 昌子さん

 「巣鴨、滝野川を基点にペットシッターとして活動を始めたのは昨年です。その前は専業主婦でした。1人でお留守番をしている子(わんちゃん、猫ちゃん)のご飯やトイレ、そしてお散歩などのお世話が中心です」と菊地さんはおっしゃる。

 

 「私自身、愛犬をホテルに預けたことがありますが、旅行から帰ると精神的に参っていたことがありました。ペットの気持ちを考えたら1人の時間は多くても、いつもの環境で過ごせることのメリットの方が大きいと思います」と語る。

 

 この職業を志したのは「愛犬が闘病の末に他界して、私と同じように辛い思いをしている人がいるのではないか。犬猫ちゃん、そして飼い主様を励ましたり一緒に悩んだりすることはできないかと考えているときに、この仕事と出会いました」と話す。「私にとって4人目の子供(と言って過言ではないです)で誰より心の優しい子で、悲しいときは寄り添ってくれて、うれしいときは一緒にはしゃいでくれて、亡くなって1年半になりますが今も家のどこかにいる気がします」。

 

 現在、東京と千葉県上総一宮の2拠点生活をしている菊地さん。「千葉に行くと、うちの子がとてもうれしそうにしていました。お散歩は長いリードで田んぼの畦道を自由に歩けるし、家族みんなが居間にいて『誰のとこに行こうかな』って楽しそうにくしゃみをしながら(うれしいと鼻がむずむずする子でした)ぐるぐる回って最終的に家族みんなの中心に鎮座していました。彼にとっても私たち家族にとっても楽しい思い出です」と振り返る。「滝野川では、桜の花びらを蹴散らしたり花びらの中にお鼻を入れたりしていました。私は彼の後ろから片付けて歩いていました。くんくんと春の匂いを嗅いで楽しそうに石神井川に真っ直ぐ向かって行く姿が今も鮮明に思い出されます」。

 

 滝野川へ移る前には、ご主人の仕事の関係で9回も引っ越しをされてこられた。そのなかでも現在の家が一番長く住んでいるという。「住んでみて気づいたのは西巣鴨という場所がものすごく便利だということ。この辺の人は『西巣鴨最強説』を唱えています」と地元愛を語る。

 

 「夢の夢ですがパピーティーチャーになりたいと思っています。パピーのときに社会性を身に着けることができれば、わんわん人生が素晴らしいものになると思うからです。そのお手伝いができたらしあわせです」。菊地さんの弾けるような笑顔が印象的だった。

 

津田 令子 氏

 社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。

ANA新ブランド「AirJapan」 中距離国際線、まずは東南アジアへ

2023年3月10日(金) 配信

ANA系列国際線新ブランド「AirJapan」は3月9日(木)、サービス発表会を開いた

 ANAホールディングスは3月9日(木)、国際線新ブランド「AirJapan」のサービス発表会を開いた。シートや機内食、機内BGM、客室乗務員の制服などについて紹介。就航地は東南アジアを中心とし、成田空港を拠点に段階的に路線を拡大していく考え。就航時期は2024年2月を予定する。

 ブランドコンセプトは「Fly Thoughtful」。峯口秀喜社長は、「フルサービスキャリアでもLCCでもないハイブリッドキャリア」としての位置付けを目指すと話した。また、「ほかのLCCや、タイ航空、シンガポール航空など、アジアのフルサービスキャリアと勝負していかなければならない。価格設定は手ごろな価格を用意する予定」とした。

 全席エコノミークラスで3列324席の座席を備えている。黒を基調とした座席に、ブランドカラーである曙色をスティッチで施している。広めの足元と深めのリクライニング設計をすることで、中距離国際線の7時間前後のフライトでも快適に過ごせる居住性を重視した。モニターが備え付けられていない代わりに、利用者個人のスマートフォンやタブレットを設置できるタブレットホルダーを装備し、Type―AやType―CのUSBポートを備えた。機内Wi―Fiを通じて、映画やビデオプログラムなどの機内エンターテインメントを楽しむことができる。

左・膝が前方座席に当たらない広さを確保、右・タブレットホルダー横にUSBポートを備える

 また、機内食は事前予約メニューと機内で注文できるメニューの2つを用意する。コンセプトは「フードロスの削減」と「空から日本の美味しさを発信」とした。

 機内BGMは東京藝術大学との産学連携プロジェクトで選ばれたもの。和楽器と洋楽器のアンサンブルで構成された曲「あい」は、機内でお客を迎える際に流される。

 客室乗務員の制服は「すべてにやさしい制服」として、現役の客室乗務員が関わり製作した。ブランドカラーの藍色と曙色をあしらい、日本の伝統である「結び」や「重ね」をデザインに取り入れた。

 25年までに関西国際空港から東南アジアまで伸ばしていく予定で、「ターゲットが訪日観光需要であるため、ANAグループとして、関西国際空港における国際線路線網の拡充につながる」との認識を示した。

 LCC航空のPeach(ピーチ)と連携協定を結んでいるため、コールセンターの共有などの準備を進めている。「成田・関西の両空港において、ピーチの国内線ネットワークによる日本各地への乗り継ぎ需要の創出も行う」とした。

【特集 No.629】室蘭市「白鳥大橋」魅力倍増プロジェクト インフラ活用“地域が稼ぐ観光”へ

2023年3月10日(金) 配信

 インフラツーリズムによる新しい北海道観光の活性化を目的に、北海道室蘭市(青山剛市長)では「白鳥大橋」魅力倍増プロジェクトが進んでいる。1月21日には、北海道開発局が“稼げる”観光地への可能性を探るシンポジウム「東日本最大の吊り橋・絶景の白鳥大橋の観光資源化」を開催した。西胆振地区の登別市、伊達市の首長も登壇し、自然や温泉など豊富な魅力と連携した広域観光についても推進していくことを確認した。

【増田 剛】

広域連携で競争力高める

 室蘭市は天然の良港に人とモノが集まり、古くから工業都市として発展した「鉄のまち」。大自然と工場群がコンパクトに共存する室蘭市を象徴するシンボルとして、勇壮な白鳥大橋がある。

 一般国道37号白鳥大橋(橋長1380㍍)は1998年、馬蹄型をしている室蘭市の両端を結ぶ東日本最大の吊り橋として誕生した。市内の企業が有する新しい技術や、製品も数多く使われているのも大きな特徴だ。

 開通から20周年を迎えた2018年に開催したシンポジウムで、室蘭市の青山市長は、「船でアクセスして主塔に登ることができるツアーを実施すると面白いのでは」と、公共施設を活用した大胆なインフラツーリズムの提案を行った。

 この提案をきっかけに、室蘭市と、国土交通省北海道開発局室蘭開発建設部は、白鳥大橋という公共施設を活用した“稼げる観光”を目指して、さまざまな検討がスタートした。

インフラツーリズム

 国土交通省は、インフラツーリズムの理念として次のように定義している。

 「インフラへの理解を深めていただくため、普段訪れることのできないインフラの内部や、日々変化する工事中の風景などの非日常を体験するツアーを展開することにより、地域に人を呼び込み、地域活性化に寄与することを目指すもの」。

 代表的なインフラツーリズムの例としては、2020年4月から運用を開始した八ッ場ダム(群馬県)や、巨大な「防災地下神殿」になぞらえられる「首都圏外郭放水路」の内部を巡るツアー、世界最長の吊り橋「明石海峡大橋」の高さ300㍍の主塔の上から体感するツアー、湯西川ダム(栃木県)に水陸両用バスで直接ダイブして遊覧するツアーなどがある。

 2020年8月には、国交省から「インフラツーリズム魅力倍増プロジェクト」の社会実験モデル地区(全国で7カ所)に選定された。

 民族共生象徴空間「ウポポイ」や、北海道を代表する温泉地・登別温泉、クルーズが人気を集める室蘭港などとの地域連携モデルとして、連泊客の増加やインバウンドの誘客も視野に入れ、「地域が稼ぐ観光」への取り組みが本格化していった。

高さ100㍍の主塔へ

 白鳥大橋は自動車専用道路のため橋上で駐停車できない。このため、主塔に登るには船に乗って主塔が建つ人工島に向かうことになる。主塔の「中間梁」と呼ばれる、海面から約100㍍の場所へは、エレベーターで昇る。そこは羊蹄山や駒ヶ岳も眺望できる360度の大パノラマが広がる絶景ポイントとなる。

 現在は地元のクルーズ運営会社「スターマリン㈱」(伊藤京香社長)が室蘭港内を船で一周し、主塔登頂と室蘭の工場群を海から間近で見学できるコースをいくつか設定している。……

【全文は、本紙1895号または3月14日(火)以降日経テレコン21でお読みいただけます。】

全旅連青年部、和田観光庁長官に要望書 「自力で立つため劣後ローン延長を」

2023年3月9日(木) 配信

(左から)和田浩一長官、星永重部長、塚島英太政策担当副部長

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会青年部(星永重部長)は3月6日(月)、観光庁の和田浩一長官に「宿泊観光産業に対する支援のお願い」と題した要望書を提出した。

 債務ではなく、自己資本としてみなされるほか、民間の金融機関からの融資を受けやすくなる政府系金融機関の日本政策金融公庫などで実施し、3月末に終了予定だった資本性劣後ローン制度について、星部長は「金融機関と相談し、現在は活用方法が見え始めてきた段階にある。(支援に頼らず)自力で立っていくために延長してほしい」と訴えた。なお、同制度は3月8日(水)に、今年9月までの延長が決まった。

 人手不足に苦労する宿が多いことを踏まえ、観光産業の従事者や、就職を考えている人に誇り持ってもらうため、国から「宿泊産業が我が国の基幹産業である」とのメッセージを発信することも要望。持続可能な地域となるための支援や、地域固有の魅力をより生かすための高付加価値化次事業の継続的な実施、残された地域事業者にとって負担となる廃屋の撤去に対するサポートも要求した。

 和田長官は「観光産業が日本の成長戦略の柱であることは政府の共通認識。宿のホスピタリティはきめ細かな日本のサービスの象徴でもあり、キラーコンテンツとして残すべき」と話した。今後については、「持続可能な宿泊施設の在り方を一緒に議論していきたい。要望に対し、できることを考えていく」と応えた。

〈旬刊旅行新聞3月1・11日合併号コラム〉―― 日本の温泉文化と商業主義  「温泉への強い想い」を発信する機会に

2023年3月9日(木) 配信

 福岡県・二日市温泉の老舗旅館「大丸別荘」が最低でも週に1回以上お湯の取り換えをしなければならないところを年に2回しか行っておらず、基準値の3700倍ものレジオネラ属菌が検出されていたというニュースに、とても大きなショックを受けた。

 

 「大丸別荘」といえば、福岡県を代表する老舗旅館の1つだ。「よくわからない温浴事業者がずさんな管理で商売をしていた」というのとは重みが違う。

 

 ずっと昔に、大丸別荘に宿泊したことがある。歴史を感じさせる名旅館という印象が強かった。客室や料理の細部は既に忘れてしまったが、大浴場については今もしっかりと記憶に残っている。入浴したのは深夜に近かったので、大浴場は私一人きりだった。温泉の湯気が立ち上るなか、源泉掛け流しの雰囲気のある温泉を満喫した。

 

 

 厳しいことを言うようだが、近年は温泉好きの私も、心理的、物理的な距離が生まれつつある。その大きな理由は、マナーの問題だ。コロナ禍以前にはインバウンド客が激増し、大型旅館の大浴場などは、外国人客に囲まれているという状況が多々あった。日本の素晴らしい温泉を、世界中の旅行者とともに楽しむことは大歓迎であるし、そうあるべきだとも思う。

 

 けれど、現実はそのような理想的な姿ではなく、体を洗った石鹸がまだ残っているタオルを湯船に浸けていたり、体を洗うこともなく、いきなり湯船に入ってきたりする人の多さに少々うんざりしていた。

 

 これはマナーを熟知していない外国人観光客だけでない。小さな共同浴場などでは、最も慣れ親しんでいるはずの地元の人たちのそのような光景を何度も見てきた。

 

 

 古くから裸で入る日本の温泉文化は独特のものがあり、水着着用が基本の外国の温泉文化とは大きく異なる。一方で観光産業と深く結びついた結果、一部の施設では商業主義が強くなり過ぎた傾向は否定できない。

 

 戦後の高度経済成長期には団体旅行が隆盛期を迎える。大型バスで団体客が乗り込み、宴会場で酒を飲み交わし、大浴場に皆で温泉に浸かって大満足して帰っていった。海外旅行ブームが本格化するバブル期まで、国内旅行といえば温泉旅館で豪華な料理と、大浴場で温泉を満喫することを意味していた。

 

 その後、団体旅行は減少し、個人旅行が主流になっていくと、貸し切り風呂や露天風呂付き客室などの人気が高まり、それらを備える旅館も増えていった。そうすると〝花形〟だった旅館の大浴場は、時代から取り残されたような、どこか宙ぶらりんな存在となっていった。マナーの乱れに対する対応や、衛生管理などの意識が希薄になった面があるのではないかと感じている。

 

 

 今回の一件は、温泉旅館全体に非常に大きなマイナスの影響を与えた。一方で、温泉への想いが強い、極言すれば、温泉がなければ存在理由すら失ってしまう、例えば日本秘湯を守る会の会員宿もある。また、古くから「湯守」が命懸けで源泉を管理している宿もある。憤りはどれほどだろうか。

 

 温泉に対する消費者の目が厳しいなかで、今ほど「温泉への想い」を広くアピールできる機会はないのではないか。温泉を愛する宿は、本物の温泉文化の素晴らしさを発信してほしいと願う。

(編集長・増田 剛)

 

日旅連関西 新会長に金子氏 田岡氏は相談役に

2023年3月9日(木) 配信

総会のようす

 日本旅行協定旅館ホテル連盟関西支部連合会(田岡茂会長、291会員)は2月21日、大阪市内で2023年度通常総会を開き、役員改選で新会長に金子博美氏(琵琶湖グランドホテル)を選出した。5期10年会長を務めた田岡氏(心の宿三國屋)は相談役に就いた。

 田岡会長は冒頭あいさつで「激動する経済情勢の中で、情報を共有しながら日本旅行さんと良い商品を作っていきたい。23年は兵庫DC、25年にはいよいよ大阪・関西万博の開催が控える。安物ではなく付加価値のある物を売っていくべきだ。これからは観光、教育、環境、健康の4Kが重要になる」とあいさつした。

 来賓の日本旅行の小谷野悦光社長は「万博を睨んでさまざまなプロジェクトが展開されている。2025年は我われ日本旅行にとっても創業120周年の節目。コロナ禍のなか中期経営計画を練り直し、ある程度の手は打てた。今年から発展成長のステージに入る。地域のポテンシャルを高める取り組みなどに取り組み、我われの価値向上につなげていきたい。親会社であるJRとグループ全体での取り組みも加速させ、違いを生み出していく」と話した。

 新会長に就任した金子氏は「コミュニケーションをはかりながら、連合会を盛り上げていきたい。『一隅を照らす』という好きな言葉の通り、置かれた立場で精いっぱいできる限りのことをしていきたい」と抱負を述べた。