“多頻度昼行路線守れ”、新制度の活用法など紹介(高速バス・マネジメント・フォーラム2012)

成定竜一代表
成定竜一代表

変化対応で選ばれるバスに

 高速バスマーケティング研究所(成定竜一代表)は10月24日、東京都内で「高速バス・マネジメント・フォーラム2012」を開き、国土交通省が4月の高速ツアーバス事故を受け移行期間を短縮した、高速乗合バスと高速ツアーバスを一本化する「新高速乗合バス」制度の活用法などを紹介した。そのなかで成定氏は「地方、多頻度昼行路線をどう守るか」とし、変化に対応して選ばれるバスになる重要性を説いた。

【飯塚 小牧】

 

 

フォーラムの全体風景
フォーラムの全体風景

 同フォーラムは、高速バスマーケティング研究所が既存の高速乗合バスを対象に昨年から開催しているが、今回は全国の会社から153人が参加。昨年の81人と比較すると約2倍の参加となり、関心の高さが窺われた。

 成定代表は冒頭のあいさつで、4月の高速ツアーバスの事故に触れ、自身が高速ツアーバス連絡協議会の顧問を務めていることから「今でもあの事故がなぜ防げなかったのか、考えてしまう」と心境を語る一方で、「事故から得たものを再発防止や業界の成長に活用しきらなければならない」と強い決意も表明した。

国交省・小熊氏
国交省・小熊氏

 フォーラムは導入として、国土交通省自動車局旅客課バス産業活性化対策室長の小熊弘明氏が、事故後の安全対策や新制度について語った。小熊氏は事故後の国交省の対応として、旅行会社と貸切バス事業者間の書面取引の義務化や、消費者からの情報を受ける「高速ツアーバスの安全通報窓口」の設置などを報告。今後は、今年3月まで開いていた「バス事業のあり方検討会」の再設置や各種安全対策の検討会の設置などを講じることを紹介した。

 新制度については、事故以前に設置した「バス事業のあり方検討会」で協議した結果、両者を一本化する「新高速乗合バス」制度を導入するに至った経緯を語り、事故が起きたことで、移行期限を来年7月末と大幅に前倒ししたことを説明した。会場に集まった既存の高速乗合バス事業者にとっては、運行計画や運賃・料金の事前届出期間が短縮されるなど優位な点も示しながら、「ビジネスチャンスを広げる機会だと捉えてほしい」と理解を求めた。現在、停留所を持たない高速ツアーバスにも停留所が義務づけられることに関しては「本来は事業者が独自で取得するものだが、社会的問題として行政が関与して環境整備をしていきたい」と述べた。

 本題のマネージメントについては、成定氏が持論を展開。成定氏によると高速バスの成長フェーズは、高速ツアーバスの登場などで現在、第3フェーズの「バスを選んで乗る時代」にあり、大都市間路線では既に定着し、都市と地方を結ぶ夜行路線にも着実に進展しているという。その波は高速乗合バスの“本丸”である地方向けの多頻度昼行路線にも押し寄せるとし、「従来のまま生きた化石になってしまうのか、その変化に大きく対応していくのか問われている。勇気を持って変革を」と語気を強めた。

 今後の変化としては、「ポスト4・29」を提示。「事故の背景に、旅行会社が搾取しているため安全にお金が回らないという声があるが、それは間違い。コスト削減圧力や販売側に力があるのはどの業界でも同じだ。だからといって他の業界は生産側が小売店に不良品や腐ったものを納品することはない」と言及。そのうえで、バス業界の特殊性として規制産業で同基準だったものが、規制緩和で「松竹梅」が出てきたことをあげ、「目に見える品質は高速ツアーバスを中心にウェブ活用で差異化に成功し、がんばっている会社が利益をあげるサイクルができたのに対し、安全という目に見えない品質は誰も手を付けてこなかった。最低限の法令遵守以上にがんばった会社が報われないのが問題」と語った。しかし今後は「安全が選ばれる基準になる。当たり前に行っていることでよいので、画像と数字と固有名詞で具体的に、なぜそうなのかを利用者に明確にすることが必要だ」と、ウェブを活用した安全の可視化を訴えた。

 また、新制度移行にともない「高速バス・ビッグバン」が訪れると主張。現在の高速ツアーバスとの競争だけではなく、既存業者間の競争も激化するとし、「共同運行の関係はいい意味でお互いにプレッシャーを掛けあう関係になっていかなければならない。既存の関係性の再構築が求められている」と述べた。

 このほかフォーラムには全国に先駆けて多頻度昼行路線で高速ツアーバスと激しい競争を経験した、宮崎交通のバス事業本部乗合部乗合業務課・田代景三課長が事例紹介として登壇。ツアーバスとの底のない価格競争の経緯などを紹介した。一方で、「ツアーバスを追いかけてばかりでお客様を見ていなかった。今後は、お客様を見て、より魅力ある商品を展開したい」と本音を語り、会場の同業者から大きな拍手を集めた。

 また、京王電鉄バスによる基幹システムの紹介や、来年から高速乗合バスサービスを展開するリクルートライフスタイルの「じゃらんnet」など各事業者からの事業紹介も行われた。

体験レポート、栃木をEVで観光(日本旅行)

今回利用したプラグインハイブリッドカー(PHV)
今回利用したプラグインハイブリッドカー(PHV)

充電の不安除く努力を

 日本旅行は、栃木県の委託で栃木県レイル&EV(電気自動車)観光モニターツアー「日光・鬼怒川エリア、那須エリアをドライブする観光モニターツアー1泊2日」を企画した。現地までの往復の鉄道とレンタカー、宿泊がセットになった観光モニターツアーで、このうち後半の11月に実施された那須エリアのモニターツアーに参加し、実際に体験した感想をレポートする。
【古沢 克昌】

 同モニターツアーは、日本有数の自然環境を誇る日光・鬼怒川エリア、那須エリアを環境に優しい鉄道(レイル)とEV(電気自動車)・PHV(プラグインハイブリッド自動車)レンタカーでドライブすることで、EV・PHVの走行状況や充電器の利用などについて意見や要望を収集・分析し、今後のEV・PHVの普及につなげることを目的に実施された。今回は首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)在住者が対象で、大人2人1組の申込みが条件。

 利用するレンタカーは、電気自動車(EV)の三菱i―MiEV、日産リーフ、ホンダフィットEV、プラグインハイブリッドカー(PHV)のトヨタプリウスPHVの4車種が用意され、今回はトヨタプリウスPHVを利用してのモニターツアーとなった。

 東京駅から那須塩原駅まで新幹線で移動し、駅前のレンタカー店でPHVを借りた。電気自動車は初めて運転するので充電器の利用方法や運転席のモニターの見方など詳細な説明を受け、出発した。現地では基本的なモデルコースをあらかじめ提示されていたが、宿泊先にチェックインするまでは自由時間なので、優待施設一覧などを参考にしながら自分なりに周遊コースを考えた。

 まず始めに、建築家・隈研吾氏がデザインを手がけたという那須芦野にある「石の美術館 STONE PLAZA」へ向かった。PHVのスタート時は、充電満タンで電気のみで走り出すが、走行可能距離は約20キロ程度なので最初の目的地に到着した時点ですでに電気残量はゼロとなっていた。電気がなくなると自動的にガソリン走行に切り替わる。

 石の美術館は昭和初期に建てられた石蔵を再生した、総石づくりの美術館。石と光のギャラリーなど幻想的な雰囲気がとても印象に残った施設だった。夜になるとライトアップされるので昼間とは違った顔も楽しめる。

 2軒目は紅葉のシーズンなので以前から一度訪ねてみたかったマウントジーンズ那須の「秋の紅葉ゴンドラ」に乗ってみることに。山頂付近はすでに紅葉が終わっていたが、山麓から中腹にかけての紅葉が見頃でとても素晴らしかった。8人乗りのゴンドラは所要時間が約10分間で乗り応えも十分。山頂駅には大展望台のほか、ドッグランもありゴンドラは全犬種乗車可という。

 昼食を済ませた後は午後から「お菓子の城 那須ハートランド」に移動して人気商品「御用邸の月」を購入。隣接の「ザ・チーズガーデン五峰館」では敷地内のカフェ&ガーデン「しらさぎ邸」でチーズケーキのセットをいただく。どちらも観光バスやマイカー客でにぎわっていて、那須町の風評被害もだいぶ払拭されたのではないかと実感した。

 今回の宿泊先は「ホテルエピナール那須」。事前に入手していた充電設備ポイントマップには、那須地域の充電器設置場所が記されているが、同館の備考欄には「お問い合せ下さい」と記載されていたため、少し早めにチェックインして充電設備の有無を確認。どうやらつい先日設置されたばかりでマップの印刷時には間に合わなかったようだ。駐車場の一角には確かに充電設備はあった。車にプラグを差し込んで約1時間半でフル充電状態に。しかしながら大型宿泊施設にも関わらず、充電器がまだ1台分しかないため、利用者が重なった場合を考えるとまだあまり実用的ではないように思えた。

「那須どうぶつ王国」
「那須どうぶつ王国」

 翌日はチェックアウト後にカピバラが見たくて「那須どうぶつ王国」へ向かった。今年7月にオープンした「カピバラの森」は、カピバラと直接触れ合うことができるコーナーで子供だけでなく大人も楽しめるテーマパーク。おやつのエサやり体験など、子供以上に大人が楽しんでいた。昼食はユニークなオリジナルメニューの「カピバランチ」や「アルパカレー」がおすすめだ。午後は「那須ガーデンアウトレット」に立ち寄り、おみやげのショッピングや外食を楽しんだ。

 2日間の走行距離は合計136・7キロ。レンタカー返却時に駅前のガソリンスタンドで満タン証明を出してもらうため、給油に立ち寄るとガソリンは1・28リットルしか消費していなかったので給油代金は200円でお釣りがきた。このまま電気自動車が普及するとガソリンスタンドも商売が成り立たなくなるのではと心配になったが、レンタカー店の店長は「そのうちガソリンスタンドでも電気を売る時代が来ると思いますよ」と語っていた。

 PHVを利用しての今回の感想。(1)運転していて一番気になったのが電気残量。エアコンを使用していると思っていた以上に電気消費量が大きかった(2)都市部と違って周囲に何もない観光施設の場合、そこに充電設備がないととても不安になる(3)宿泊施設の場合、泊っている間に充電しておけばいいのだが、EV・PHVの利用客が多くなった場合もスムーズに対応できるのか疑問。利用者が少ない深夜時間帯に充電できるスキームを早急に考えてほしい――。

 化石燃料の価格高騰やいずれ枯渇することを考えると、環境保護の観点からもEV・PHV利用の方向性は間違っていないはずなので、まずは利用者が増えるための工夫、心配を取り除く努力が必要だと強く感じた今回のモニターツアーだった。

日本一のおんせん県、大分が温泉資源前面に

西田 陽一会長
西田 陽一会長

おんせん県観光誘致協議会 西田会長に聞く

 源泉数、湧出量、泉質数ともに日本一を誇る大分県はこのほど、豊富な温泉資源を前面に打ち出した「日本一のおんせん県」として名乗りを上げた。8月下旬から9月上旬には広瀬勝貞大分県知事をはじめ、観光関係者が大阪で大規模なプロモーションや旅行会社とのキャンペーンを展開した。その中心的役割を担う「おんせん県観光誘致協議会」の西田陽一会長(ホテル白菊社長)に、今後の取り組みなどを聞いた。

【平賀 葉子】

≪官民一体で誘客促進、温浴効果高める「機能浴」PR≫

 「おんせん県」のきっかけは、昨年の東日本大震災や九州新幹線全線開業など大分県観光にとっての逆風が吹いたこと。県の観光予算はこれまで全国最下位という状況だった。民間がいくら個々の力で頑張っても、それだけでは観光誘致はできない。官民一体となった大きな観光戦略が必要だ。そこで昨年11月に別府と湯布院の旅館組合が共同で広瀬知事への提言を行い、今回の観光戦略につながった。

 まず今年7月に民間主導で、県内110の宿泊施設や観光施設、タクシーやバス会社、観光協会などで組織する「おんせん県観光誘致協議会」を設立。ぼやけていた大分県観光の統一イメージを「おんせん県」と定めたことで、日本一の温泉の魅力を「錦の御旗」に掲げ、官民一体で全国にアピールする土台ができた。

 「おんせん県」はバーチャルな観光PRではなく、我われの顔が見えるリアルな活動が中心だ。宿泊施設では「おんせん県」のロゴが入ったそろいのポロシャツでお客様をお迎えした。都市圏の旅行会社へのセールス活動などでは、成果を数値化して検証し、旅行会社や旅行者のニーズをつかむ。

 今後は8月に県が策定した「おんせん県ツーリズム戦略」に基づき、「日本一のおんせん県おおいた(温泉マーク)味力(みりょく)も満載」をキーワードに、今年から3年計画でとくに関西圏へのPRを強化する。観光入込客数目標は10年度比100万人増の1900万人、宿泊客数は同16万人増の520万人と定め、25階建ての大分駅ビルや県立美術館も完成する2015年には大分にデスティネーションキャンペーンを誘致したいという目標もある。

 また、温泉の魅力を高める入浴法として「機能浴」をPRしていく。「機能浴」は世界にある12種類の泉質のうち11種類を持つ「おんせん県」ならではの入浴法であり、異なる泉質の温泉を2湯巡ることで温浴効果を高める。たとえば美肌コースなら、まず別府の明礬(みょうばん)温泉の強酸性の湯で皮脂や汚れを取り除き、次に保湿効果の高い鉄輪(かんなわ)温泉の湯に浸かれば、シャンプーとリンスをした後のような美肌効果が得られる。

 ほかにも女性には超ウルトラ美肌コース、企業向けにはストレスフリー、メタボが気になる男性向けにはダイエットなど、効果別のコースを設定してPRする。

 大分の素晴らしいところは5分、10分の距離に異なる泉質の温泉が湧いていること。そして別府や由布院以外にも、天ヶ瀬や日田、九重九湯、長湯温泉などほぼ全市町村に温泉があり、さまざまな泉質の温泉を巡る「おんせん県」でしか体験できない旅の楽しみ方を提案していく。注意事項など入浴ルールなどをまとめた「温泉攻略法」も制作中だ。

産官学の新しい展開へ、全国大会に井手長官が講演(日本国際観光学会)

松園俊志会長
松園俊志会長

 日本国際観光学会(会長=松園俊志東洋大学国際地域学部国際観光学科教授)は10月27日、東海大学代々木キャンパス(東京都渋谷区)で第16回全国大会を開いた。「産・官・学の新しい展開をめざして」をテーマに、基調講演には井手憲文観光庁長官が登壇、さらに「LCC時代の航空経営」について、ANA総合研究所代表取締役副社長の小堤雅史氏が講演した。

 松園会長は開会のあいさつで「観光業界はグローバル化のなかで、今はまさにパラダイムシフトの時期。観光庁長官の講演をはじめ、各研究発表者やコメンテーターとの真摯なる討議を期待している」と語った。

 

井手憲文観光庁長官
井手憲文観光庁長官

 井手長官は「日本は観光分野においては将来性のある新興国」とする一方で、隣国・韓国が訪韓旅行者数1千万人達成が確実な勢いに対し、「残念ながら日本が遅れている要因の1つに、予算の制約がある」と述べた。アジア各国の観光予算は、日本が111億円に対して、韓国は704億円、台湾は290億円、タイは199億円など。今後の展開については「ASEAN(アセアン)地域を成長させたい」と語った。

 ANA総研の小堤氏はLCC「ピーチアビエーション」の今年3―8月の実績をもとに、20―30歳代、高齢者、女性の利用率が高く、目的としては知人・親戚訪問需要が多い。一方、ビジネス需要は1割以下と紹介した。

 研究発表では、東洋大学国際地域学部国際観光学科准教授・島川崇氏の「自然災害の惨禍を集客施設として保存する決断をした立役者に関する研究」や、日本旅行広報室長・矢嶋敏朗氏の「旅行会社と観光系学部・学科の関係についての考察~旅行会社への就職の願いを叶えるには~」など36の発表が行われた。

東電賠償東北5県へ拡大、全旅連・佐藤会長の交渉過程レポート

東電との交渉の記録
東電との交渉の記録
 
全旅連 佐藤信幸会長
全旅連 佐藤信幸会長

 東京電力は10月18日、原発事故による観光業の風評被害賠償の対象地域について、これまでの福島・群馬・栃木・茨城の4県と、千葉県の一部市町村、山形県米沢市、宮城県丸森町に加え、青森、岩手、宮城、秋田、山形の東北5県を追加することを発表した。東北5県への拡大に向けて陣頭指揮を取り、東電と交渉を重ねてきた全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の佐藤信幸会長の、何十回にもおよぶ東電との交渉や、困難を極めた各県の調整など、賠償を勝ち取るまでの交渉の過程を追った。
【伊集院 悟】

≪東電と粘り強く交渉、ノウハウを伝え後方支援を

 2011年5月23日、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会で意見陳述。「公式の場で初めて風評被害について説明。賠償へ向けた交渉の第一歩を踏み出した」。6月29日、原子力損害賠償紛争審査会に提出するデータを集計。8月1日、観光庁へ風評被害について説明。8月5日、原子力損害賠償紛争審査会の中間指針が発表され、福島・茨城・栃木・群馬の4県の賠償が認められる。 

 8月8日、全旅連の委員長会議で今期の目標を原発の風評被害への対応に決める。8月9日、観光庁へ4県だけでなく隣接県の賠償もするよう要請。9月2日、全旅連で原発事故の風評被害について委員会を開く。9月4日、民主党観光振興議員連盟会長の川内博史衆議院議員に原発事故の風評被害について詳細を説明。今後の対応について相談。

 9月5日、東京電力と直接、原発事故の賠償について協議。「これまでは観光庁を通してだったので、初めて交渉のテーブルについた」。9月13日、東京電力と協議。9月20日、山形県議会に、賠償対象に4県だけでなく山形も含めるよう国に対しての請願書を提出。9月27日、山形県観光交流局課長と県物産協会専務と県議会に請願する内容を確認。9月28日、奥村展三文部科学副大臣(当時)と輿石東民主党幹事長に東北5県と新潟・千葉・埼玉・山梨・東京・神奈川を賠償対象に含めるよう要望。

 10月7日、山形県組合の常務理事会で、福島など4県同様の賠償を要求することに理解を求める。「風評被害の賠償を求めることで、風評被害がさらに広がるのではないかという不安など、1つの県組合のなかでもさまざまな意見があり、県としてまとまるために幾つもハードルを越えなくてはならない」。10月20日、観光庁に、風評被害について隣接県も認めてもらえるよう要望。10月21日、山形県観光物産協会主催で原発風評被害の初会合を開く。「パフォーマンスだけになってしまった感あり」。

 10月31日、全旅連正副会長会議で、原発賠償要望を東北・関東の県だけにしたことに対し、北海道が指摘。地域選定の難しさを実感。「どこまで対象を広げるかは本当に難しい問題。広がれば広がるほど、まとまるのが難しいと実感した」。11月6日、鹿野道彦農林水産大臣(当時)と前田武志国土交通大臣(当時)に風評被害の損害賠償を陳情。11月8日、山形県旅館会館で第1回風評被害相談会を開く。

 11月16日、全旅連東北ブロック会議を開き、損害賠償でまとまることを決議。「県組合だけがまとまっても県議会が動かないとうまくいかない。県によって対応に温度差もあり、まとまるのが大変」。11月21日、県組合長会議で県組合として損害賠償を要求することを説明。11月25日、吉村美栄子山形県知事へ風評被害の損害賠償を陳情。

 11月29日、川内衆議院議員と民主党観光振興議員連盟提出資料の打ち合わせ。11月30日、全国生活衛生同業組合中央会と合わせて旅館組合でも民主党議連に陳情。12月6日、山形県組合で第2回風評被害相談会開く。山形県観光交流局課長と東電から6人が出席。

民主党観議連総会で風評被害を説明(11年12月)
民主党観議連総会で風評被害を説明(11年12月)

川内議員とともに文科省へ意見(11年12月)
川内議員とともに文科省へ意見(11年12月)

 12月7日、民主党観光振興議員連盟総会で中間指針の見直しを要求。東北・北海道・山梨・千葉の県庁職員が風評被害の状況をデータで説明。12月13日、自民党議連で細田博之自民党総務会長らに陳情。12月16日、山形県組合で第3回風評被害相談会開く。山形県観光交流局課長と東電から3人が出席。12月26日、第4回同相談会開く。山形県観光交流局課長と東電から3人が出席。銀山・蔵王の被害の大きさを理解してもらう。

 2012年1月7日、山形県観光交流局課長と今後の東電への対応を協議。1月8日、鹿野農水相(当時)の新年会で、鹿野農水相(当時)と吉村山形県知事に東電との交渉の現状を報告。1月11日、山形県組合で第5回風評被害相談会開く。山形県の資料をもとに東電弁護士に損害賠償を相談することが決まる。1月12日、東北ブロックで福島の理事長から、風評被害相談会に文科省と経産省の出席を要請した方がよいとのアドバイスを受ける。1月13日、鹿野農水相(当時)に損害賠償について陳情。

 1月25日、山形県組合で第6回風評被害相談会開く。東電がこれまでの資料をもとに米沢市に損害賠償を認めることを提案。山形県組合理事会で東電の提案を報告。2月3日、東電が米沢市だけに賠償するという提案を、山形県組合として受け入れる旨を吉村山形県知事に報告。2月6日、東北ブロック原発風評被害損害賠償対策委員会委員長に秋田県旅館ホテル生活衛生同業組合の松村譲裕理事長が就任。「宮城県は風評被害をあまり表にしたくないと考える人もいて積極的に動くのが難しい」。

 2月7日、文科省と経産省で2月14、16日の山形県の相談会に出席を要請。「原発の賠償にはこの2省が重要」。2月14日、山形県組合で第7回風評被害相談会開く。経産省資源エネルギー庁電力ガス事業部原子力損害賠償室の守本憲弘室長が出席。2月16日、山形県観光物産協会で2回目の説明会実施。文科・経産省も出席。2月18日、川内衆議院議員後援会で小沢一郎衆議院議員と鳩山由紀夫元首相、前田国交相(当時)に東電の損害賠償指針の見直しを陳情。

 3月1日、経産省の守本室長へ修学旅行の風評被害の損害賠償について相談。3月3日、舟山やすえ参議院議員から参議院決算委員会の代表質問で風評被害を取り上げるので資料がほしいとの要望を受ける。3月4日、仙峡の宿銀山荘とおおみや旅館の社長と緊急会議を開き、舟山参議院議員へ提出する資料の相談。

 3月8日、経産省から提案のあった教育旅行・ツアー旅行について、資料をどう集めるか5旅連会長に意見を聞く。3月21日、文科省に舟山参議院議員の国会代表質問に対する回答を文章で要求。4月11日、吉村山形県知事とJA山形の今田正夫会長とともに、樽床伸二幹事長代行(当時)、平野博文文部科学大臣(当時)に陳情。4月17日、輿石幹事長と経産省に陳情。4月20日、第8回風評被害相談会開く。

 5月15日、経産省が、東北の風評被害について教育旅行やパック旅行を対象にすることを提案。5月16日、山形県組合の理事会で経産省の提案を報告。「修学旅行は一部の旅館だけの賠償になるので受け入れられない」。5月19日、経産省守本室長に教育旅行やパック旅行について、「旅館では特定ができないので難しい」と意見調整。5月23日、東北ブロックで各県の取り組みについて報告。東北5県がまとまり、北・東北知事会に要望書を提出することを確認。6月7日、経産省で東電の損害賠償について協議。6月23日、経産省と山形県組合で損害賠償について協議。

 6月25日、山形県組合で第9回風評被害相談会開く。東電が東北5県に風評被害があったことを認める。「3月11日以前に予約があった18歳以下の子供を含めた旅行について賠償する」。6月28日、川内衆議院議員と舟山参議院議員に風評被害の損害賠償について要望。7月4日、東北ブロックで東電の提案に対し協議。不満の声多数。「3歳以下の子供は食事のカウントをしないし、中学生以上は大人料金なのでカウントできない」。

 7月12日、鹿野衆議院議員と舟山参議院議員、橋本清仁衆議院議員を中心に、東電が損害賠償を受け入れるよう経産相、文科相から働きかけるよう要請。7月12日、鹿野衆議院議員と東電本社会議室へ。各旅館の売上と損害額を提出。7月24日、東電本社へ県別の損害額を集計し提出。

 7月30日、東電の東北5県への賠償額が提示される。賠償額は米沢の10%。7月31日、鹿野衆議院議員や舟山参議院議員、橋本衆議院議員に、「この金額では組合員は承諾できないだろう」と話す。8月1日、全旅連東北ブロックへ東電の賠償額案を報告。「落胆の声多数」。8月7日、経産省で東電の賠償案では話にならない旨伝える。

 8月15日、東電部長と経産省で会い、賠償金額について協議。8月21日、議員会館で鹿野衆議院議員、橋本衆議院議員、舟山参議院議員に東電の賠償案を報告。8月21日、東北ブロックで東電の部長から賠償案について説明。8月22日、山形県庁で賠償案について報告。8月24日、東北ブロック長と東電賠償について協議。

 8月28日、「原子力損害賠償紛争解決センター(ADR)が損害額の7割賠償」と新聞報道されるが、実際は計算方法により7割ではない。8月29日、東北5県の緊急理事長会議を招集。ADRは時間がかかるので、東電と合意することで一致。条件は逸失利益を50%とする案を提示。8月31日、山形県組合常務理事会でこれまでの東電賠償について説明。9月6日、山形県観光交流課にADRの損害賠償発表以降からの対応を説明。9月7日、経産省・文科省・東電と東北5県の理事長が集まり逸失利益50%で大筋合意。

 佐藤会長は交渉の過程を振り返り、「各県によって状況はまったく違う。なかには風評被害を訴えることで、さらに風評被害が広がるのではないかと不安に思い、損害賠償の動きにあまり積極的でない県もあり、まとまるのが大変だった」と話す。「大企業相手にこれだけの大きな交渉をするのは初めて。損害賠償を認めてもらうために、どこに行き、何をしたらよいのかという前例や道筋もなかったので、何度も何度も足を運び、同じことを何度もしてきた。東電や支援いただいている議員の方に呼ばれれば、自身の予定は白紙にし、何度も何度も顔を合わせて協議してきた。粘り強く取り組んだのがこの結果につながったのではないかと思う。今回は川内先生をはじめ、熱心に取り組んでいただいた議員の方々のご協力がとても大きな力となり、大変感謝している」とこれまでを語った。

 現在、新潟県や箱根町(神奈川県)が賠償を認定してもらうために、積極的に動いている。「ここから先に賠償対象を拡大しようとするなら、全旅連や各ブロックの大きい単位ではやれることに限界が出てしまい、調整も難航してしまうので、県単位で動くのがベスト。賠償対象に認定してもらうために、どういう資料を集め、どこを巻き込み、どこにどう働きかけていけばよいのか、わからないことがあれば聞いてほしい。1度経験しているので、そのノウハウを伝えることはできる。他人任せにはしない、やる気のある地域にはどんどん情報提供をして、後方支援をしていきたい。あきらめなければ可能性はある」とエールを送った。

創立40周年盛大に祝う

(株)全旅、和歌山で記念式典

 全国旅行業協会(ANTA)の保険業務を取り扱う会社として1973(昭和48)年に設立された、株式会社全旅が、このほど創立40周年を迎えた。

 記念式典が10月23日、和歌山県和歌山市の「和歌山マリナ―シティ・ロイヤルパインズホテル」で開かれ、関係者200人が参加した。大下英治氏による「稲むらの火―濱口梧稜に学ぶ」の講演や、塗善祥しによる中国琵琶の演奏など華やかに行われた。 

(株)全旅の池田孝昭社長
(株)全旅の池田孝昭社長

 二階俊博全国旅行業協会(ANTA)会長はじめ、下宏和歌山県副知事ら来賓が多数参加したことに対し、池田孝昭社長が御礼を述べ、「40年の歴史には、先人たちの苦労の上に成り立ってきた。これまで、保険事業、クーポン事業を中心に旅行、物販、ネット事業の拡大をし、協会会員の事業拡大と利便性の向上に努めてきた。さらなる企業価値の向上に取り組んでいく」と決意を語った。

 来賓として二階ANTA会長、下宏和歌山県副知事、浅井修一郎和歌山県議会副議長、土生川正道高野山無量光院住職がそれぞれ祝辞を述べた。

 

 

女将らに感謝状を贈呈
女将らに感謝状を贈呈

  また、二階ANTA会長から、姜東錫2012麗水世界博覧会組織員会委員長、李参韓国観光公社社長、朴三求錦湖アシアナグループ会長に感謝状を贈呈。さらに、池田全旅社長から、昨年災害に遭った東北地方や和歌山県の旅館の女将、山口淑子(台温泉・観光荘)、高橋知子(秋保温泉・緑水亭)、渡邉いずみ(土湯温泉・山水荘)、片桐栄子(磐梯熱海温泉・ホテル華の湯)、小渕祥子(川湯温泉・冨士屋)、奥川美香(勝浦温泉・勝浦観光ホテル)さんに感謝状を贈呈した。

 懇親会は、吉井和視和歌山県議会議員自民党和歌山県連幹事長の乾杯ではじまり、「全旅ハイパーフレンズ」のおやじバンドの演奏などで盛り上がった。

13年交流人口700万人へ、第27回日韓観光振興協議会

加藤審議官(右)と慎局長
加藤審議官(右)と慎局長

 加藤隆司観光庁審議官と慎庸彦(シン・ヨンオン)韓国文化体育観光部観光産業局長を代表とする日韓両国が10月29日、北海道の函館国際ホテルで第27回日韓観光振興協議会を開き、2013年の日韓間の交流人口目標を700万人とした。

 日韓観光交流促進に向けた日韓両国の協力や風評被害対策、地方観光交流拡大などについて合意し、確認文書を取り交わした。

 そのなかで2013年の日韓間の交流人口目標に700万人を掲げ、日韓間をとりまく諸課題の状況にかかわらず、観光交流は原則としてそれに影響されることなく推進することを確認した。また、自然災害、疾病などの観光へのリスクが考えられる危機的状況が発生した際に、風評被害を含め相互に協力することをうたった。

 さらに、地方観光交流の拡大に向け、2013年を「日本地方観光交流元年」として日韓両国で積極的に活動することを誓った。

「地熱発電の隠された真実」、佐藤好億氏監修

“開示されないデータ”

 「地熱発電の隠された真実」は、日本温泉協会副会長・地熱対策特別委員長、日本秘湯を守る会会長などを務める佐藤好億氏が監修した。サブタイトルは「温泉文化滅亡の危機~温泉地は、地熱発電の工業廃湯を旅人に入浴提供しろというのか~」。

 佐藤氏は40年以上、全国の温泉地を行脚するなかで、地熱開発や地熱発電所が建設された地域で、温泉の枯渇や泉質変容、温度低下などに加えて、樹林の枯死やヒ素流出、地すべり、水蒸気爆発、群発地震などの影響を耳にし、実際に目にしてきた。日本において地熱開発の危険性やデメリットの検証が十分にされていないなかでの「開発ありき」の国や開発業者の姿勢に、本書は「地熱発電が本当に世間一般に流布されているような安心安全なエネルギーなのか?」と問いかける。

 地熱発電所周辺で生じた影響など、さまざまな事例を科学的なデータに基づいて紹介しながら、地熱発電に対する正負両面の理解を深め、見極めたうえでの判断の必要性を訴えている。

 国や開発側が有するデータはほとんどが開示されておらず、開発のメリットのみが情報として流される現状に危機感を覚える。

 温泉旅館の経営者をはじめ、地方自治体の温泉・観光関係者には必読の書である。474ページフルカラーで、1500円(本体1429円+税)。

 問い合わせ・書籍注文=地熱発電と温泉力について学ぶワーキングチーム(代表=岡村興太郎氏) FAX 0248(84)2568、Eメール chinetsu2012@gmail.com まで。 

12年度秋の叙勲・褒章、伊藤正司氏(鹿の湯ホテル)が旭日双光章

勲章伝達式のようす
勲章伝達式のようす

 政府は11月3日付で2012年度秋の叙勲・褒章受章者を発表した。本紙関連では、鹿の湯ホテル会長で全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会常務理事の伊藤正司氏が双光章を受章するなど、5人が受章した。

 国土交通省の勲章伝達式は11月7日、東京都港区の東京プリンスホテルで開かれ、国土交通省の羽田雄一郎大臣は、「これまで我が国の発展に貢献されている。皆さまの輝かしいご功績にお祝いを申し上げたい」と述べた。

 本紙関連の叙勲、褒章受章者は次の各氏。

 【叙勲】旭日小綬章 幸重綱二(大分交通会長)=大分県バス協会会長 自動車運送事業功労▽旭日双光章 伊藤正司(鹿の湯ホテル会長)=全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会常務理事 生活衛生功労▽森松平(杉の子会長)=国際観光日本レストラン協会常務理事 観光事業振興功労

 【褒章】藍綬 村木營介(矢太楼会長)=全国旅館ホテル生活衛生同業組合連動会常務理事 生活衛生功労▽黄綬 樫本幸子(観光ホテル淡州大女将) 旅館業務奨励▽三浦公子(miura社長代理・女将) 旅館業務精励

旅館数4万6196軒に、ホテル234軒増、旅館710軒減(12年3月末時点)

 旅館数710軒減の4万6196軒――。厚生労働省がこのほど発表した2011年度「衛生行政報告」によると、12年3月末現在の宿泊施設軒数(簡易宿泊施設、下宿含む)は8万1404軒と前年度比で317軒増えた。しかし、旅館は4万6196軒で同710軒の減少となった。09年度から10年度に2060軒減少したことに比べ、小幅な減少となったが、減少傾向に歯止めはかかっていない。

 小幅になったとはいえ、旅館数の減少が続いている。10年度は東日本大震災の影響により、宮城県は仙台市以外の市町村、福島県の相双保健福祉事務所管轄内の市町村の統計が含まれないが、2010年度の4万6906軒から710軒減少して、12年3月末時点で4万6196軒となった。1980年代に8万3226軒とピークを迎えた後の減少傾向が止まらない。

 一方、ホテルは前年度から234軒増えて9863軒と、「旅館減少・ホテル増加」の構図は変わらない。

 客室数で見ると、旅館は前年度比2868室減の76万1448室、ホテルは同1万2295室増の81万4355室となった。09年度に旅館とホテルの客室数が逆転して以来、その差はさらに広がった。

 山小屋やユースホステル、カプセルホテルなどの簡易宿所は2万4506軒と前年度より787軒増加。下宿は839軒で87軒増えた。

 都道府県別に見た旅館軒数は、静岡県が3155軒で最も多く、以下は(2)北海道(2622軒)(3)長野県(2592軒)(4)新潟県(2190軒)(5)三重県(1626軒)(6)福島県(1552軒)(7)栃木県(1396軒)(8)山梨県(1361軒)(9)千葉県(1305軒)(10)兵庫県(1298軒)。トップ10で増加したのは、6位の福島県(100軒増)のみ。

 一方、ホテル軒数の上位は(1)東京都(684軒)(2)北海道(679軒)(3)長野県(519軒)(4)兵庫県(411軒)(5)福岡県(379軒)(6)静岡県(373軒)(7)埼玉県(368軒)(8)沖縄県(359軒)(9)大阪府(356軒)(10)愛知県(303軒)――となった。