「忍者」で広域周遊へ 伊賀・甲賀市と連携協定 大阪観光局

2023年3月22日(水) 配信

(左3人目から)溝畑宏理事長、岡本栄市長、岩永裕貴市長

 大阪観光局(溝畑宏理事長)は2月22日、忍者ゆかりの地である三重県伊賀市(岡本栄市長)のほか、滋賀県甲賀市(岩永裕貴市長)と観光振興の連携協定を締結した。協定締結には伊賀上野観光協会と甲賀市観光まちづくり協会、信楽町観光協会も加わった。

 両市は忍者の聖地として知られ、2017年には「忍びの里 伊賀・甲賀―リアル忍者を求めて―」が日本遺産に登録された。忍者はアニメ放送などの影響もあり、海外での知名度が高くインバウンド誘客にあたっての有力コンテンツになりうることから、ゲートウェイ機能を強化する大阪と連携することで、広域観光ルート形成をはかる。

 「忍者の日」である同日の記者会見で、大阪観光局の溝畑理事長は「コロナ禍を経てインバウンド復活後の大きなうねりとして忍者をコンテンツしたモデルコースをつくっていきたい」と話した。

 伊賀市の岡本市長は「しっかりと連携をして潮流を捉え、プロモーションやコンテンツの造成に取り組んでいきたい。伊賀市では忍者体験施設の整備も進めている」と語った。

 甲賀市の岩永市長は「令和2年11月22日にリアル忍者館をオープンした。甲賀の観光のゲートウェイとして人気だ。第2期工事として、体験施設の整備にも着手する予定だ」と述べた。

 会見には国内外で活躍するダンサーのケント・モリさんが登場し、忍者をテーマに拡張現実(AR)を使ったダンス映像を披露した。

阿部長商店 フィランソロピー賞受賞 社会貢献顕彰で語り部評価

2023年3月21日(火) 配信

贈呈式に出席した阿部憲子女将(前列右から2番目)

 南三陸ホテル観洋(宮城県・南三陸温泉)を経営する阿部長商店(宮城県気仙沼市)はこのほど、日本フィランソロピー協会(浅野史郎会長、東京都千代田区)が主催する「第20回企業フィランソロピー大賞」の企業フィランソロピー賞を受賞、3月3日に東京都内で贈呈式が開催された。

 同賞は自社の経営資源を有機的・持続的に活用した社会貢献活動を顕彰するもので、2013年に創設。

 阿部長商店はKATARIBEカルチャーの創成が対象活動として受賞した。同社が経営する南三陸ホテル観洋は2011年3月11日の東日本大震災時に自ら被災しながら、約600人の避難者を受け入れた。また所有する多目的ホール、高野会館は震災遺構として保存している。このような経験を通じて始めた「KATARIBEプロジェクト」はホテル宿泊者を対象に被災した場所を、同館の社員などが語り部となる「語り部バス」の運行を毎日継続するなど、震災経験の風化防止だけでなく、命を守ることの大切さを共有する学びの場となっている。

 さらにこの学びを南三陸に留めることなく、「全国被災地語り部シンポジウムin東北」を開催し、国内はもとより海外へも発信し続けている。

 なお、今年の全国被災地語り部シンポジウムは2月26、27日の2日間、同館の姉妹館であるサンマリン気仙沼ホテル観洋で開催した。

【野村 一史】

〈観光最前線〉通販で日本酒を買いまくり

2023年3月21日(火) 配信

日本酒三昧の日々

 日本酒の新酒ができる時期は一般的に12月から3月の日本の最も寒い時期に当たる。温度の変化を起こさないように、適切な温度管理の下に保管するためだ。吟醸造りをする時には気温が一定して低くないと品質を安定させるのが難しいからとされる。

 冬にはしぼりたての新酒が各地の酒蔵から出回るため、日本酒にとって美味しい酒が楽しめる特別な季節だ。近年はコロナ禍の影響で、従来は酒蔵に出向かないと手に入らなかったしぼりたての新酒が通販でも販売されるようになった。一部離島を除く日本中の誰でもネットで購入することが可能になったのだ。

 但しいまだにネットでも買えない銘柄が存在するのも事実。一筋縄で行かないところが「日本酒探しの旅」の醍醐味なのかもしれない。それもまた愉しい。

【古沢 克昌】

旅行新聞の連載「精神性の高い旅」(石井亜由美氏&島川崇氏) NHK文化センター青山教室で講座「東京の五色不動巡礼の旅」5月14日スタート

2023年3月20日(月) 配信

石井亜由美氏

 旬刊旅行新聞で毎月1日号掲載の「精神性の高い旅」は、グリーフケアや巡礼、色彩心理学などを研究するカラーセラピスト・石井亜由美氏と、神奈川大学国際日本学部教授の島川崇氏が交互に執筆する大好評企画だ。

 5月14日(日)からは、NHK文化センター青山教室(東京都港区)の講座「ふらっと巡礼 心の旅」として9月まで計5回、石井氏による「東京の五色不動巡礼の旅」が企画された。

 実際に徳川3代将軍家光公ゆかりの地をめぐりながら、仏教や仏像、歴史、開運などについて、案内人の石井氏が楽しいトークで“癒しの旅”を受講者と共に体感していく。

4月9日「精神性の高い旅」トークイベント

 なお、4月9日(日)午前10時30分~正午まで、石井氏と島川氏による「精神性の高い旅」の講演会&対談のトークイベントが開催される。

島川崇氏

 「東京の五色不動巡礼の旅」のオリエンテーションを兼ねた内容で、コロナ禍で失ったものが多いなか、新たなステージに向かう「心穏やかとなる旅へ」と誘う。

山崎まゆみ・著「温泉ごはん 旅はおいしい!」(河出文庫)発刊 著者初の食べ物エッセイ 「読めば温泉に行って美味しいものが食べたくなる!」

2023年3月20日(月) 配信

「温泉ごはん 旅はおいしい!」〈山崎まゆみ著〉表紙

「ひとっ風呂の後は、おいしいものが待っている‼」――。温泉エッセイスト・観光ジャーナリストの山崎まゆみ氏はこのほど、河出書房新社から、著者初の食べ物エッセイ集「温泉ごはん 旅はおいしい!」を発刊する。

 同書は、月刊誌「味の手帖」連載の温泉と美味をめぐる名エッセイを厳選し、文庫化した。32カ国、1000カ所以上の温泉に入った山崎氏が、北海道から沖縄、さらには海外まで、名湯湧く地を訪れて味わった絶品料理や名物の数々、そこで出会った多くの人々との交流を綴った、「読めば温泉に行って美味しいものが食べたくなる」ことまちがいなしの本だ。

 アワビが“ダンシング”(房総鴨川温泉)や、夏の戦の戦利品・稲庭うどん(秋田湯沢温泉)、湯治する大豆・ラジウム納豆(栃尾又温泉)、「うどんタクシー」に乗ってみた(琴平温泉)などのほか、乳頭温泉郷、箱根強羅温泉、下呂温泉、長良川温泉、有馬温泉、嬉野温泉、別府温泉郷に加え、海外の温泉と美味にまつわるエピソードも盛りだくさんの内容となっている。

 4月6日発売予定で、文庫判240㌻。価格810円(外税)。

埼玉県旅行業協会、創立70周年式典開く 「協定会員と一丸となり活性化はかる」

2023年3月20日(月) 配信

約140人が集まった

 埼玉県旅行業協会(浅子和世会長、242会員)は3月7日(木)、三日月シーパークホテル勝浦(千葉県勝浦市)で創立70周年記念式典を開いた。埼旅協協定会員連盟と特別協定会員連盟も出席し、計約140人が祝った。

 浅子会長は3月13日(月)からマスクの着用ルールが緩和され、感染対策のガイドラインも廃止されることにも触れ、「(これまでの)団体の慰安旅行も復活し、業界も活性化していくだろう」と予想した。そのうえで、「団体旅行の回復後には、いち早く協定会員連盟の施設に送客してほしい。今後も一丸となって業界の活性化をはかっていく」と話した。

浅子和世会長

 さらに、1953年に消費者保護のために設立された経緯などの歴史を振り返った。コロナ禍の3年間については「大変苦労したと思う」と語り、会員を労った。

 来賓の照川由美子勝浦市長は「コロナ禍からの回復の兆しが見られ、安堵している。今後は官民一体となった観光振興により努める。これが地域活性化となることに期待を寄せている」と語った。

照川由美子市長

 埼旅協協定会員連盟の森田繁会長は物価高騰の影響を受けている状況を報告。「(値上げ後に)我慢をしてでも来てくれたお客様へ、さらにおもてなしを磨き上げていく」と話した。

森田会長

 福岡県の旅館で基準値を大幅に超えるレジオネラ属菌が検出されたことに触れ、「全国の宿に不信感を持たれることを危惧している。安心して送客してもらえるよう、より一層お客様の立場に立ったサービスを提供していく」と語った。

 茨城県旅行業協会の木村進会長はコロナ禍を経て個人旅行が増加していることから、「団体旅行にも注力しながら、2~3人の旅行も大事することが我われの新時代の役割。観光業を活性化すれば、世界が明るくなる。自信を持ってほしい」と呼び掛けた。

木村進会長

 旅行新聞新社の石井貞德社長は「旅行客に喜びを与えていることにプライドを持ってほしい。皆様はコロナ禍を乗り越える力を持っている。これからも1人でも多くのお客を笑顔にしてほしい」とエールを送った。

石井貞德社長

 感謝状の贈呈では、全会員に記念品として社名入りの楯が贈られた。協定会員連盟の会員には感謝状が贈呈された。また、協会の設立以降70年間、その発展に貢献したとして、イーグルトラベル(谷島賢社長、川越市)が特別功労表彰を受賞した。

 式典に先立って開催された昨年の全旅協旅行災害補償の取扱高上位3社を表彰する分科会では、来賓として駒井輝男副会長が登壇。昨年、国のガイドラインが緩和されたこととマスクの着用が自由になったことに触れ、「これらは団体旅行を中心とする皆様のセールストークに生かせるだろう。以前のように大勢で楽しめる旅行に励んでほしい」と呼び掛けた。

駒井輝男副会長

 ㈱全旅の中間幹夫社長は「今年度のクーポン事業の売上が初めて400億円を超えた。団体旅行が少ないなかで健闘してくれた」と敬意を表した。

中間幹夫社長

 懇親会も開かれ盛会裏に終わった。

東京會舘「Drape(ドレープ)」が日比谷玄関口にオープン 本格的なクラシカルフレンチを気軽に 榎本支配人「新しい食の舞台を創造していきたい」

2023年3月20日(月) 配信

ドレープの榎本貞樹支配人

 東京會舘(渡辺訓章社長、東京都千代田区)は3月16日(木)、東京・日比谷の玄関口に、本格的なクラシカルフレンチを気軽なスタイルで楽しめるレストラン「Drape(ドレープ)」をグランドオープンした。

 創業100年を迎えた東京會舘が数々の国公賓やVIPをもてなしてきた本格的なフランス料理の味わいはそのままに、コース料理やドレスコードにとらわれないビストロのように、アラカルトを中心とした現代的なスタイルへと再構築した。

 同店では、1人1品からでも、グループでシェアしながらでも、多様なスタイルに対応する。「ウフマヨ」や「パテ・ド・カンパーニュ」、「黒豚のオルロフ風」などクラシカルな料理に合わせて、ワインを中心にさまざまなドリンクもそろえている。

オープンキッチンのエンターテインメント性が特徴

 オープンキッチンの舞台から広がる開放的な食空間が特徴で、テーマは「劇場」。調理や接客の過程も、エンターテインメントとして楽しめる空間づくりにこだわった。

 榎本貞樹支配人は、「さまざまな文化・芸術が集まる日比谷で、新しい食の舞台を創造していきたい」と語る。

 営業時間は平日・土曜日が午前11時~午後10時、日曜日は午前11時~午後9時。席数は52席(127平方㍍)。

 所在地は、東京都千代田区有楽町1―5―2 東宝日比谷プロムナードビル2階。

アウトバウンドを19年水準に、本格回復への政策パッケージ策定(和田観光庁長官)

2023年3月20日(月)配信

観光庁の和田浩一長官は3月15日(水)に会見を開いた

 観光庁の和田浩一長官は3月15日(水)に開いた会見で、アウトバウンドの本格的な回復に向けた政策パッケージを策定したことを発表した。アウトバウンドの本格的な再開を見据えて、イン・アウトを両輪として双方向の交流拡大をはかり、出国日本人数を2019年水準である2000万人への回復を目指す。和田長官は「アウトバウンドはインバウンドに比べて回復が遅れている。業界団体や各国・地域の政府観光局と連携し、一層積極的な取り組みを進めていきたい」と力を込めた。

 アウトバウンドの推進について、同庁は「日本人の国際感覚の向上や国際相互理解の増進による諸外国との友好関係の深化をはかるもの。このうえで、双方向の交流拡大を通じて航空ネットワークの拡大、そしてインバウンドのさらなる拡大にもつながる」との認識を示した。

 政策パッケージでは、①諸外国との連携体制の強化②戦略的かつ効果的な取り組みの推進③安全・安心な旅行環境の整備・青少年交流の促進――の3つの柱を掲げた。3つの方向性から取り組みを実施するものとして、具体策は日本旅行業協会(JATA)などの業界団体と協議を行ったうえで決めていく方針だ。 

 1つ目の諸外国との連携体制の強化では、重点国・地域をはじめ各国・地域との連携体制を構築し、アウトバウンド増加に向けた強力な枠組みを整備する。2国家・地域間での海外旅行者数の設定など覚書の締結を推進し、各国政府観光局との総合的・一体的な連携スキームの構築を行う。

 2つ目の戦略的かつ効果的な取り組みの推進では、アウトバウンド増加のポテンシャルが高い若者やシニア層を中心に、戦略的かつ効果的な取り組みを推進する。各国政府観光局や旅行会社、航空会社などと連携した特別キャンペーンの促進や、ツーリズムEXPOのさらなる活用、戦略的・効果的な取り組みのためのマーケティング調査を行うとした。

 3つ目の安全・安心な旅行環境の整備・青少年交流の促進では、現地情報の発信を通じた安全・安心な旅行環境の整備や、次世代を牽引する青少年交流の促進をはかる。ツアーセーフティーネットによる現地の治安や医療機関に関する情報などの安全情報の発信の強化、参加事業者の拡大や、海外教育旅行のさらなる普及や促進、重点国・地域への送客強化に取り組む。

 和田長官は「イン・アウトともに、25年までにコロナ禍前の水準を超えたい」考えを明かした。

2月の訪日客数148万人、コロナ前77%まで回復

 2023年2月の訪日外国人旅行者数は、前年同月と比べて約88倍となる147万5300人となった。コロナ禍前の19年同月比は57%まで、水際対策が続く中国を除くと77%まで回復した。

 インバウンドの回復動向について、和田長官は「訪日個人旅行を解禁した22年10月以降、19年と比べた毎月の訪日者数回復率は毎月増加し、堅調な回復が続いている」と話した。今後の見通しについては「3月に中国からの入国者に対する水際措置の変更や国際クルーズが再開され、さらなる訪日客の回復につながる」と期待を寄せた。

 一方、23年2月の出国日本人数は53万7700人。同年1月と比べると約1.21倍だったが、19年同月比では約33%と回復には至っていない現状を明かした。和田長官は「円安や燃料費の高騰、そして感染への不安などにより海外旅行への機運が醸成できていないことから3割強に留まっている」との見解を示した。

「観光再始動事業」、3月中の採択を見込む

 インバウンドの本格的な回復に向けた「観光再始動事業」については、1月31日(火)~2月27日(月)まで公募を受け付けた。文化や自然、食、スポーツなど多岐にわたる分野から約1000件の申請があったと述べ、有識者などによる審査委員会で審査を行ったうえで3月中に採択を決定する見込み。なお今後、2次募集の実施も行う予定としている。

 和田長官は「同事業を活用してインバウンドの回復、それから地方への誘客をさらに加速して、訪日外国人旅行消費額5兆円の早期達成に向けて取り組みたい」考えだ。

〈旬刊旅行新聞3月21日号コラム〉―― 城下町 時間旅行という別軸の旅も楽しめる

2023年3月20日(月) 配信

 3月、静岡市に出張する機会があった。下りの小田急線で小田原駅まで行き、小田原駅から静岡駅まで新幹線「こだま」号を利用した。こだまはコロナ禍前には大きな荷物を持った訪日外国人旅行者で満席だった記憶があったが、どのような状況になっているかも興味があった。

 

 結局、乗り合わせた車両は、大きな荷物を持った外国人旅行者のグループでほぼ満席状態。車内も旅行客の話し声が楽しげで活気があった。窓の外の風景も麗らかで、春の訪れとともに、本格的な旅行シーズンが到来したことを感じた。

 

 折しも、マスク着用が「個人の判断」に委ねられた翌日であった。外国人を含めてマスクを外した人は少なかったが、日ごとに増えていくのだろう。

 

 

 あちこち旅をしているなかで、国内の県庁所在地で、ちゃんと訪れていない唯一の都市が、静岡市だった。もちろん、車や新幹線などで通過したことは数知れず。神奈川県で生活しながら、隣県の中心都市を訪れていないというのが、我ながら面白いと感じ入った。

 

 10年ほど前から、「静岡市には行っていないな」と、薄々気づき始めていた。やがて「今度何かあったら、行かなきゃ」と意識は変わっていった。

 

 しかし、なかなかその「何かあったら」が来なかった。おそらくこれまで何十年も、同じように「何かあったら」が来なかったのだ。ということは、「自分の意志で旅行目的地として静岡市に向かわなければ永遠に行けない」と気づいた矢先に、静岡市への出張が決まった。世の中って不思議だ。

 

 

 私なりの一般論であるが、行政都市的な意味合いが強い県庁所在地は、観光するには少々退屈な都市が多い。

 

 街の中心部には県庁舎や市庁舎があり、警察署、消防署、裁判所、地方銀行本店など、しゃちこばった公的施設とセットで、芝生に噴水などを設けた四角い公園があったりして、「清く、正しく、美しく」的な標語が似合いそうな建物が並ぶ。それら折り目正しさが、訪れる者には若干の窮屈さと、凡庸さを垣間見せるパターンが多い。

 

 他方で各都道府県の2番手、3番手の都市は、建物も、そこに住む住民も相対的に肩の力が抜けた空気を漂わす。県庁所在地であれば、必死になって隠そうとする廃れた感じの建物や、妖しい空気もそのまま晒されていることが多く、退廃的な気分に浸りたい旅行者が、場末の飲み屋街などに入ると、妙に気分がマッチすることもある。

 

 

 さて、静岡市は想像以上に活気があった。どこまでも続く商店街は古き伝統と、新しさが混在し、散策が楽しかった。美味しい店も2軒ほど見つけた。

 

 現在、NHK大河ドラマ「どうする家康」放映中ということもあり、晩年の徳川家康が隠居し、江戸初期には大御所政治(駿府政権)の中心地だった、駿府城公園にはぜひ行ってみたいと思っていた。

 

 塔頂にドームをのせた国登録有形文化財の静岡市庁舎本館や、静岡県庁舎本館など趣深い建物を眺めながら駿府城公園に入った。市民憩いの場という雰囲気だったが、外国人旅行者の姿も多く、国際的にも徳川家康への関心の高さが伺えた。加えて、城がある(あった)都市は現在と過去の歴史が重層的に存在しており、時間旅行という別軸の旅も楽しめると感じた小旅行だった。

(編集長・増田 剛)

【特集 No.630】太田安曇野市長インタビュー 安曇野のブランド価値高めたい

2023年3月20日(月) 配信

 長野県安曇野市(太田寛市長)は、豊かな自然や田園風景を守りながら、「住みたい安曇野 住んでよかった安曇野」の実現に向けて、観光振興にも積極的に取り組んでいる。近年は移住者も増え、「滞在型観光地への転換」を目指している。「市民全体で安曇野のブランド価値を高めていきたい」と語る太田市長へのインタビューとともに、安曇野市との関わりが深い、トラベルキャスターで、NPO法人「ふるさとオンリーワンのまち」理事長を務める津田令子氏にメッセージをいただいた。

【聞き手=本紙社長・石井 貞德、構成=増田 剛】

滞在型観光地へ転換を

 ――安曇野市の特徴をお話しください。

 安曇野は5つの町村が合併し、2005年に誕生しました。人口は約9万7千人。少子高齢化の中で自然減はあるものの、大きくは減少していません。一方で、転出よりも転入の方が上回る社会増は毎年500人を超えています。長野県内77市町村で、最も社会増が多いのは安曇野市です。
 長野県の構造的な問題ですが、地元で通える大学のキャパシティが小さい。このため大学に進学される方の相当数は高校卒業後に県外に行ってしまいます。それを差し引いても年間500人程度、増加している状況です。

 ――社会増ということは移住される方が多いのですか。

 市の西部には、北アルプス連峰が聳え立つ、中部山岳国立公園を有しています。四季折々の自然美に加え、冬は雪の少ない気候、首都圏や名古屋からの交通利便性の良さなど、県内外からさまざまな理由によって、安曇野の自然を求めて移住されます。
 モノづくりやアート創作、さらにはゲストハウス経営や、山岳ガイドをされる方も多くいらっしゃいます。

 ――農業や産業はいかがですか。

 農業については、県内で耕作面積が最も多い水田が広がっています。雄大なアルプス連峰の絶景の手前に、水田や縦横に走る農業用水など「人の営み」が見えるところが、安曇野らしい景観の大きな特徴です。リンゴやブドウなどのブランド化にも取り組んでいます。
 製造業も県内で上位に位置し、年間5千億円規模の出荷額があり、市民の多くの方は製造業に従事しています。
 このようにバランスのとれた市なので、住みやすい街だと自負しています。

 ――市長が感じる安曇野の魅力とは。

 何と言っても山の美しさと、水がきれいなところです。安曇野市の水道水はすべて湧水を使っています。さまざまなアウトドアスポーツが楽しめます。
 文化的にも、安曇野のシンボルの1つである碌山美術館をはじめ、博物館や美術館がギャラリーなど小さいものを入れると、30を超えます。
 観光客は、コロナ禍前は年間延べ500万人が訪れていました。東京都心や名古屋から車で3時間程度という立地的な利便性の高さを感じていただいています。山小屋もたくさんありますので、夏は登山客も多く訪れます。
 また、安曇野はワサビが有名です。お蕎麦屋さんも観光で訪れたお客様がご利用されており、市内の消費額の中で、観光の占める割合はとても高いと認識しています。
 公民館活動も活発で、さまざまな文化や芸術活動も積極的に行われています。高齢者も定期的に公民館に集まり、文化芸術に親しむことで生きがいなどにもつながっています。
 「住みたい安曇野、住んでよかった安曇野」というキャッチフレーズも定着しているのかなと思います。以前は「あづみの」と読めない方も多くいらっしゃいましたが、全国的にも知名度も上がってきていることを実感しています。

 ――「安曇野」という響きがいいですね。 

 北海道には「富良野」、島根県には「津和野」、東京都には姉妹都市の「武蔵野」があります。野の前に2文字ある地名は語感や響きがとても良く感じます。
 また、近年は多くのガイドブックにも「安曇野・松本」の順番で名前がつけられております。松本市とは観光面での広域連携がこれまで以上に必要だと考えます。……

【全文は、本紙1897号または3月27日(月)以降日経テレコン21でお読みいただけます。】