提言「ユニバーサルツーリズム促進に向けた一文字の変革」(竹内 敏彦氏)

2023年6月2日(金) 配信

竹内敏彦氏(日本国際観光学会福祉観光研究部会部会長、JTBトラベル&ホテルカレッジ講師、東洋大学・武蔵丘短期大学非常勤講師)

 ユニバーサルツーリズムとは、「すべての人が楽しめるよう創られた旅行であり、高齢や障害などの有無にかかわらず、誰もが気兼ねなく参加できる旅行(観光庁2014)」と定義されています。その進捗状況は各社さまざまですが、いよいよ実質的な概念を全社員が共有する時期が迫ってきました。それは2024年4月1日、改正障害者差別解消法が施行されることにあります。改正の主な内容は、民間事業者が努力義務とされていた合理的配慮が義務化されることです。

 

 本稿は、ユニバーサルツーリズムを全社員が実践的概念と得心することを目的として、業務における共通認識に置き換えて提言します。そしてユニバーサルツーリズムの更なる概念を実践することで、旅から社会を変革することを期待します。

 

① 「合理的配慮とは代案提示」

 

 義務化される合理的配慮とは何でしょうか。合理的配慮とは、障害のあるお客様からのご要望と捉えられます。そのご要望は叶えられるものもあれば、そうでないものもあると考えられます。

 

 ここで言明できることは、「個々の個性(お客様の要望)に対応することは、すべてが上手くできなくて当たり前」ということです。

 

 合理的配慮の義務化とは、「できるだけやってみる」ということです。よって必要なことは、あとちょっとの創意工夫です。言い換えれば、「代案提示」です。

 

 完璧を求め、構える必要はありません。大切なことは、Aが叶えられなくてもBを、つまり合理的配慮を「最適な代案提示」として提供していくことにあります。

 

② 「対話とはヒアリング」

 

 「建設的対話による相互理解を通じた個々の意向尊重」が合理的配慮です。そして障害のあるお客様に、障害の状況などを確認することは、不当な差別的取扱いには該当しません。精度の高い創意工夫を提供するための前提条件はヒアリングにあります。

 

③ 「ユニバーサルツーリズムとは、トラベルウィズの提案」

 

 22年8月スイスジュネーブ国連欧州本部は、日本政府に対して障害者権利条約に基づき「インクルーシブ教育の権利を保障するため障害児を分離した特別支援教育の中止を求める勧告」を発表しました。教育または旅においても、障害を理由に要望とは異なる「別の場を選ばされる、選ばざるを得ない」状態にあります。つまりこの勧告は、現況を解決すべく個々の障害に対して社会全体の中で配慮することを求めたのです。社会全体がインクルーシブの実践に移行しています。教育または旅においても社会的意識変革が必要なのです。

 

 そこで本稿ではユニバーサルツーリズムの定義を、「すべての人が」ではなく、「すべての人と楽しめるよう創られた旅行」と読み解き、認識することを提言します。障害のある人だけが旅にでるのではなく、障害のある人もすべての人と共に旅にでる定義への移行です。高齢や障害のある人を限定対象として旅行促進をはかるユニバーサルツーリズムの概念は必要です。そのうえで「すべての人が」ではなく「すべての人と」読み替え改めて意識するのです。この「が」から「と」への「一文字の変革」で、ユニバーサルツーリズムは更なる概念となります。

 

 障害者雇用促進法により、企業は障害のある人を雇用しなければなりません。オーガナイザーに「障害を事由に今イベントに参加できないお客様はいらっしゃいませんか?」と尋ねてみましょう。手配上の疑問点や必要な経費はお客様と相談します。仮に希望が叶わなくても、お伺いし提案をすることが第一歩です。障害のあるお客様だけの個人、団体旅行を促進することのみがユニバーサルツーリズムではありません。そして現状のツアーと障害のあるお客様のツアーは別物ではありません。現存するお客様とそのお客様との同行を願うお客様の存在を顕在化しようとする意識が大切です。

 

④ 「すべてのお客様のより良いご旅行のために」

 

 「事前準備の精度が高まれば、合理的配慮の精度も高まる。そして、個々に対する合理的配慮が徹底すれば合理的配慮の求めは減少する。逆に、事前準備の精度が低ければそれだけ合理的配慮の内容が多岐にわたる。そして提供された合理的配慮の実例は事前準備として蓄積され合理的配慮の精度はさらに高められる」、つまり先ずは事前準備である基礎力が必要です。高齢や障害のあるお客様へのコミュニケーションやサポートの仕方に関する基礎力は、「旅のユニバーサルデザインアドバイザー」などの資格を基にした学習が有益であると考えられます。基礎力を培うことで、個々の申し出に応じた合理的配慮の提供の精度は高まり、申し出は減少し、更なる基礎力として蓄えられていきます。

 

 上記4点のような実質的な概念を全社員が共有し実践していくこと。その継続が旅により世の中を変革させていくことにつながります。

 

 

プロフィール

竹内 敏彦(たけうち・としひこ)氏  

 東洋大学大学院国際地域学研究科国際観光学修士課程修了。(株)日本交通公社(現JTB)に入社し、企画造成・営業に携わる。日本国際観光学会・余暇ツーリズム学会正会員、旅行産業経営塾4期生、総合旅行業務取扱管理者、クルーズコンサルタント、サービス介助士、旅のユニバーサルデザインアドバイザー。著書に、「観光と福祉(共著)」「宿泊産業論(共著)」資格公式テキスト「旅のユニバーサルデザインアドバイザー(編著)」単著論文「ユニバーサルツーリズム促進に向けた考察―旅行業者の意識改革とその実践―」(日本国際観光学会論文集第26 号)「ユニバーサルデザイン、合理的配慮に関する一考察―障害のある人の結婚式を事例として―」(Kankokeizai.com2021年3月)「障害のある人の就労に関する一考察―バリアバリューによるホスピタリティー」(東洋大学観光学研究第21号)「ユニバーサルツーリズム促進に向けた考察―学校義務教育における合理的配慮からの検討―」(東洋大学観光学研究第22号)「インクルーシブツーリズムの概念を含む、ユニバーサルツーリズムの更なる概念提示」(日本国際観光学会論文集第30号)等。

 

「ONSEN・ガストロノミーツーリズム」最新情報を集約 専用ページ開設

2023年6月1日(木)配信

 「めぐる」「たべる」「つかる」 3つの視点で地域の宝探し。

 その土地ならではの食を楽しみ、歴史や文化を知る旅、「ガストロノミーツーリズム」。2016年、同ツーリズムに「温泉」を加えた新しい旅のカタチが誕生し、「ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構」が事務局となり、全国各地でイベントを開催しています。

 今年5月には、新型コロナウイルス感染症が5類に引き下げられ、旅行に対する精神的なハードルも下がり、各地の観光地も多くの人で賑わっています。このたび、同ツーリズムイベントの情報をより多くの人にお届けし、旅行の際の参考にしていただけるよう、関連記事を下に集約しました。

 旬刊 旅行新聞では、全国各地で行われてきたイベントのレポートや開催地の魅力などを月に1度発信していますが、今後は、紙面では掲載しきれていないも情報も含め、各地のイベントの開催告知などの発信を強化します。

 併せて、各地の食や絶景、温泉、イベントなどに精通した人によるコラムも掲載していますので、旅行やお出掛けの参考にご活用ください。

 

渋谷でしか体験できない渋谷型都市ライフの実現を目指す 東急らが渋谷のまちづくり戦略の最新情報を発表

2023年6月1日(木)配信

坂井洋一郎事業部長

 東急と東急不動産は5月30日(火)、渋谷ヒカリエで東京・渋谷のまちづくり戦略の最新情報を発信する発表会を開いた。

 現在渋谷では100年に1度とも言われる再開発が進んでいる。東急渋谷開発事業部の坂井洋一郎事業部長は冒頭、渋谷スクランブルスクエア第1期や渋谷フクラスなどが開業し再開発の第1段階がおおむね完了したことから、「再開発が第2段階に入った」と報告。

 まちづくりの新戦略として「Greater SHIBUYA 2.0」を策定したことに触れ、「渋谷でしか体験できない渋谷型都市ライフの実現を目指す」と宣言した。

 また坂井氏は、東急不動産が整備を進める渋谷サクラステージや渋谷スクランブルスクエア第二期が完成し、駅中心5街区の整備が完成すると東急と東急不動産による85万平方㍍のTODプロジェクトが完成すると説明。

 TODとは車に頼らず、公共交通機関の利用を前提に組み立てられた都市開発のことで坂井氏は「世界でも類を見ないほどの発展を遂げたTODプロジェクトと言える」と力を込めた。

 東急不動産は、広域渋谷圏で進める取り組みを発表した。

 広域渋谷圏(Greater SHIBUYA)とは、東急とともに定義する、渋谷駅から半径2.5㌔のエリアのこと。24年度までに、「フォレスト ゲート代官山」、「渋谷サクラステージ」、「東急プラザ原宿『ハラカド』」、「代々木公園 Park―PFI計画」が順次竣工。開業する予定だ。

2023年度「Living History(生きた歴史体感プログラム)促進事業」2次募集を開始 

2023年6月1日(木)配信

ロゴマーク

 文化庁はこのほど、2023年度「Living History(生きた歴史体感プログラム)促進事業」の2次募集を開始した。

 往時のくらしや祭事などの再現による生きた歴史の体験を通して、日本の文化を理解・体感できる訪日外国人をはじめとした国内外の観光客向けのコンテンツの造成を推進することが狙い。

 地方公共団体や民間団体、DMOらによって構成される協議会などが対象で、採択事業者には補助対象経費の1/2を限度として補助金を支給。

 「国指定等文化財を核としたものを対象とする」、「外国人観光客を含む参加者がわかりやすい解説を行う」、「対象となる文化財に、 文献や絵画等の史料や研究資料等に基づいた付加価値を付与すること」などを要件とする。応募書類の提出期限は、6月30日(金)(必着)。

 文化財を核として賑わいを創出し、増えた収益を文化財の修理・整備や新たな企画に再投資し、さらなる賑わいにつながる好循環の創出を目的とするLiving History(生きた歴史体感プログラム)促進事業」。

 文化財が必ずしも観光客(特に外国人観光客)にとって往時が分かりやすい形で公開されていない現状のなか、「LivingHistory」という欧米ではすでに確立されている歴史の楽しみ方を日本にも普及させ、文化財が観光の一つのテーマとなるよう体験プログラム事業を育て上げ、地域全体の魅力向上につなげたいとの考えを示す文化庁。

 同事業により、観光部局や民間事業者と連携し、文化財の所有者・管理団体等が自律的に文化財の修理・整備を行うモデル作りを支援する。

インバウンド拡大へ、アクションプランまとめる 3分野で約80の施策(観光立国推進閣僚会議)

2023年6月1日(木) 配信

観光立国推進閣僚会議はこのほど「新時代のインバウンド拡大アクションプラン」を決定した

 観光立国推進閣僚会議は5月30日(火)、第20回会合で「新時代のインバウンド拡大アクションプラン」を決定した。これまで外国人観光客を呼び込むという観点からさらに視野を広げ、「インバウンド需要をより大きく効果的に根付かせる」目的で方策を取りまとめた。

 同プランでは、「ビジネス分野」「教育・研究分野」「文化芸術・スポーツ・自然分野」の3つを柱とし、合計約80の施策を用意した。これにより、国際的な人的交流を伴う取り組みを深化・掘り起こしし、インバウンドの着実な拡大をはかる。

 ビジネス分野における目標として、ビジネス目的での訪日外国人旅行消費額を、コロナ前2019年の7200億円から、25年までに8600億円と2割増加させる。

 また、国際会議開催件数において、アジア最大の開催国となることや、アジアナンバーワンの開催国として不動の地位を築くことを目標とする。さらには、30年までに世界5位以内の開催国となることを目指す。

 展示会・見本市への外国人参加者数は、コロナ前の13万9000人から2割増の16万7000人に目標値を設定した。

 教育・研究分野では、海外からの研究者の受け入れ数をコロナ前から2割増の1万6000人にし、科学技術・自然・医療・社会分野などに係る国際会議への外国人参加者数を、同様に2割増の18万6000人まで増加させることを目標とした。

 文化芸術・スポーツ・自然分野における目標として、世界のアート市場における売上額シェアを7位(19年はランク外)まで引き上げることや、スポーツ目的の外客数をコロナ前2割増の270万人まで増加させることを目指す。

 政府は「各府省庁が連携して着実な推進をはかっていくことが重要」として、観光のみならず3分野での人的交流の拡大への取り組みが相乗効果を発揮して、新たな価値を創造・発信していくことを期待する。

 今後、MICE推進関係府省庁連絡会議も活用しながら、各府省庁の取り組みの具体化や、施策の連携、さらなる充実をはかっていく方針だ。

今こそ、タイへ! Klookがタイ国政府観光庁と共同キャンペーン

2023年6月1日(木) 配信

8月31日までCP展開

 旅行予約サイトのKlook(クルック)は6月1日(木)、タイ国政府観光庁と共同で「今こそ、タイヘ。この夏、タイが熱い」キャンペーンを開始した。同キャンペーンは、Klookのタイ旅行商品すべてに使える割引クーポンの配布と、目玉商品のフラッシュセールなどを、月替わりで行う。期間は8月31日(木)まで。
 
 6月は、タイ旅行商品すべてに使える最大2000円オフの特別クーポン配布のほか、30日間毎日挑戦できる最大100%オフクーポンが当たるルーレットなどを開催する。7月は、7月特別クーポン配布のほか、タイ現地で使えるWi-Fiのフラッシュセール、8月は特別クーポン配布と現地ツアーのフラッシュセールを開催予定。
 
 同社おすすめのタイツアー商品例は、Klook独自のデジタル観光周遊パス「Klookパス」のバンコク・パタヤ版。1枚で、マハナコンスカイウォークやサファリワールド、サンクチュアリーオブ トゥルース、チャオプラヤー川 プリンセス号クルーズなど、人気観光スポットやツアーから好きなアクティビティを2〜4つ選んで予約できる。最大45%オフとなり、お得だという。
 
 

成田国際空港第1ターミナルに「ルイ・ヴィトン」がオープン(7月1日)

2023年6月1日(木) 配信

「ⒸLOUIS VUITTON」 7月1日(土)にオープン予定

 成田国際空港第1ターミナル南ウイング3階narita nakamise(出国手続きエリア)に2023年7月1日(土)、ルイ・ヴィトンがオープンする。

 同空港内のブランドブティックとして最大規模となる。自然光が差し込む、明るく開放的な店内には、トラベルラゲージをはじめ、バッグや小物、プレタポルテ、シューズ、ファインジュエリー、フレグランス、書籍など最新アイテムをそろえる予定。

その場で電子マネー当たるSNS抽選キャンペーン実施 ビッグホリデー

2023年6月1日(木) 配信

公式LINEなどでキャンペーン

 ビッグホリデー(岩崎安利社長、東京都文京区)は年6月1日(木)午後4:00から6月7日(水)午後11:59まで、抽選でQUOカードPay1万円分または、1000円分がsその場で合計13人に当たるLINE・Instagramルーレットキャンペーンを実施する。
 
 ビッグホリデーLINE公式アカウント(ツアー・スキー&スノボ)の友だち登録か、Instagram公式アカウント「bigholiday_」のフォローおよびいいね、コメント欄へ「たびほり0601」のキーワード入力を行うと、抽選でQUOカードPayが当たるルーレットに参加できる。その場で当選結果が分かり、一度はずれてもLINEとInstagram合わせて最大3回挑戦できるという。
 
 

【北海道】アイヌ文化の2大拠点巡るバスツアー 今年も7月から 札幌観光バスで販売中

2023年6月1日(木)配信

今年のセタプクサ号は「金茶」色

 札幌観光バス(福村泰司社長、札幌市清田区)は2023年7~9月にかけて、札幌駅・新千歳空港発着で、アイヌ文化の2大拠点、平取(びらとり)町の「二風谷(にぶたに)コタン」と白老町の民族共生象徴空間「ウポポイ」を訪れるバスツアーを企画している。

 平取町からの委託を受けて実施する事業。4年目となる今年は、「びらとり温泉ゆから」での昼食や「ウポポイ」の入場料を含んだ、添乗員同行のバス旅行として実施する。自由散策の「二風谷コタン」では、地元有志の「町歩きガイド」が、自身の得意分野(アイヌの歴史や舞踊、アットゥシ織など)を語りながら案内してくれる。

 ツアーで使うバスは4代目「セタプクサ号」。車体カラーは初代のブルーからレッド、グリーンへと変遷し、今年は「金茶(きんちゃ)」色が登場する。毎年テーマを設けているデザインは、今年の「北海道アイヌ伝統工芸展」で最優秀賞・優秀賞を獲得した平取町内の若手クリエーター平村太幹氏、西山涼氏の2人が担当。「大地、受け継ぐ寶(たから)」をテーマに創作した。バスの愛称「セタプクサ」は、アイヌ語で「すずらん」の意味。平取町内に、北海道原種すずらんの日本一の群生地があることにちなんでいる。

 出発日は2023年7月1日(土)~9月10日(日)までの土日祝日および、月曜日を除く夏休み期間を中心とした、計42日設定した。旅行代金は大人・子供(3歳以上)とも6200円(7月9日出発までは全国旅行支援適用有)。ツアーの参加申し込みは、札幌観光バスの公式ホームページから。

T-LIFEホールディングス、「PayPay」決済 旅行予約サイトに追加へ

2023年6月1日(木) 配信 

写真はイメージ

 T-LIFEホールディングス(石川邦大社長、東京都練馬区)は6月1日(木)、自社が運用しているオンライン旅行予約サイト「旅っくす」「トラベルイン」の決済手段に、キャッシュレス決済サービス「PayPay」を追加した。

 今回、銀行振込やクレジットカード、コンビニ支払いに続いてキャッシュレス決済を導入することで、顧客の決済手段の選択肢が増え、より利便性を高めるのが狙いだ。

 PayPay社が提供する「PayPay」とは、日本全国の大型チェーンや中小規模の店舗でのQRコード決済のサービス。加えて、オンラインサービスでの商品購入や公共料金の請求書払いなど、さまざまなシーンで利用できる決済手段となっている。

 今後、T-LIFEホールディングスでは、PayPay社で行われる各種キャンペーンに参画も予定しているという。