知事の会、「温泉文化」5年かけ広く共有を 無形文化遺産候補選定後の会合開く

2026年1月5日(月) 配信

オンライン会合のようす

 「温泉文化」ユネスコ無形文化遺産登録を応援する知事の会(会長=平井伸治鳥取県知事)は昨年12月23日(火)、オンラインで会合を開いた。11月に文化庁の文化審議会無形文化遺産部会が神楽と共に温泉文化を新規の提案候補に選定してから初の会となり、平井会長は「たくさんの方に応援していただいた成果が現れた」と述べ、喜びを分かち合った。順調にいけば、2030年12月ごろに「温泉文化」がユネスコ無形文化遺産に登録される見込み。

 無形文化遺産部会の答申では、「ユネスコ審議までの期間を生かして国内でその中身についてより幅広い層と共有していくことが期待される」と記載されたことから、平井会長は「旅館ホテル、観光関係、47都道府県や温泉所在の市町村の皆様と一緒になり、『温泉文化』を広く共有できるよう、これから5年かけてやっていく」とし、「何らかのキャッチフレーズやスローガンを立てながら、温泉の発展も兼ねて『温泉文化』を共有し、盛り上げていきたい」とした。

 事務局長の山本一太群馬県知事は「注目すべきは、今回、『文化財保護法以外により国の保護措置がはかられているもの』も、提案候補の検討対象とすると、方針変更があったこと。この方針転換は、知事の会をはじめ、温泉関係者や議員連盟など『温泉文化』の登録を後押した多くの皆様の力が国を動かした結果であると捉えている」と評価した。

 意見交換では、山本事務局長が群馬県で開いた「温けむりフォーラム」で、青柳正規元文化庁長官から「世界サミット」の開催提案を受けたことなどを紹介し、今後の5年間で協力して国内外に「温泉文化」の価値、魅力を発信していくことを確認した。

 最後に平井会長は「我われは今ようやくスタートポイントに立ったのだと思う。これから5年という長いレースになる。ぜひこの5年間に、『やっぱり登録されたな』『しっかりと成果を上げられたな』ということを、みんなで作っていきたい」と意気込んだ。

【2026年年頭所感・金子恭之国土交通大臣】 次期観光計画は3つの施策柱に

2026年1月5日(月) 配信

金子恭之国土交通大臣

 国土交通省の金子恭之大臣は1月1日(木)、2026年の年頭所感を発表した。内容は以下の通り(抜粋)。

                 ◇

 能登半島地震の発生から2年、そして、復興中の奥能登を襲った豪雨から約1年3カ月が経ちました。先月も、青森県において最大震度6強を記録する大規模地震が発生したところです。被災された方々におかれましては、心よりお見舞い申し上げるとともに、震災や豪雨によって亡くなられた方々の御冥福を改めてお祈りいたします。国土交通大臣就任後、直ちに能登半島の被災地へ視察に行って参りました。能登半島地震、東日本大震災をはじめとする被災地の賑わいと笑顔を1日も早く取り戻し、被災された方々の生活やなりわいの再建が叶うよう、国土交通省を挙げて、復旧・復興を、急いで参ります。

 本年も、引き続き、「国民の安全・安心の確保」、「力強い経済成長の実現」、「個性をいかした地域づくりと持続可能で活力ある国づくり」を重点的に取り組む3本の柱として、全力で取り組んで参る所存です。

□個性をいかした地域づくりと持続可能で活力ある国づくり

持続可能な観光の推進

 観光は、人口減少が進む我が国にとって成長戦略の柱、地域活性化の切り札です。昨年は、堅調な訪日需要と航空便の回復などに加え、持続可能な観光立国の実現に向けて官民一体となって取り組んだ結果、訪日外国人旅行者数や消費額は好調な状況です。一方で、インバウンドの観光客が都市部を中心とした一部地域に偏在する傾向も見られるほか、観光客が集中する一部の地域や時間帯等によっては、過度の混雑やマナー違反による地域住民の生活への影響などへの懸念も生じております。

 本年3月には次期観光立国推進基本計画を策定する方向で検討を進めておりますが、観光客の受入れと住民生活の質の確保との両立のための施策により重点を置くべきであると考えております。また、地方誘客の促進のための交通ネットワークの基盤強化や観光まちづくりなどとも相まって、観光が地域住民に裨益し、観光地が持続的に発展していく姿を国民の皆様に示していくべきであると考えております。そのような考えのもと、次期観光立国推進基本計画では、3つの施策の柱を設定する方向で検討を進めております。

 第1に、「インバウンドの受入れと住民生活の質の確保との両立」です。インバウンドの受入れと住民生活の質の両立をはかるために、局所的・地域的に生じているオーバーツーリズムへの効果的な対策の強化をはかって参ります。また、地方誘客を進めるための広域的な体制、観光コンテンツ等の整備、そしてリピーターの拡大、未訪日層等も含めたさまざまな国・地域からの誘客を強化して参ります。さらに、地方空港、クルーズ船、空港アクセス、国内航空、新幹線利用などの交通ネットワークの機能の強化にも強力に取り組んで参ります。

 第2に、「国内交流・アウトバウンドの拡大」です。国内旅行の促進に向けて、ワーケーション・ラーケーションの促進等を通じた休暇の分散・平準化の促進、第2のふるさとづくりプロジェクトを通じた新たな交流市場の開拓に取り組んで参ります。また、海外旅行の促進に向けて、海外教育旅行を通じた若者のアウトバウンド促進や、地方空港を活用した双方向交流の拡大に取り組んで参ります。

 第3に、「観光地・観光産業の強靱化」です。観光産業における生産性向上のための観光DXの推進や、業務の効率化・省力化に資する設備投資への支援、民泊(住宅宿泊事業法)の適切な運営等の健全な競争環境の整備、ユニバーサルツーリズムなど多様なニーズへの対応に取り組んで参ります。

 また、こうした観光施策をより充実・強化するための財源に充てるため、国際観光旅客税の拡充をしていくことが、政府の税制改正の大綱に盛り込まれたところです。

 国土交通省としては、2030年訪日外国人旅行者数6000万人、消費額15兆円などの政府目標の達成、そして、観光によって日本の魅力・活力が持続的に継承・発展されていく姿を国民一人ひとりが実感でき、観光によって我が国が豊かになっていくことこそがまさに観光立国である、との気概のもと、官民一体・関係省庁一丸となって取組を進めて参ります。

各分野における観光関係施策

 昨年、我が国へのクルーズ船の寄港回数は、前年比で約2割増加しており、コロナ後のクルーズの回復が着実に進んでいます。また、寄港するクルーズ船の大型化が進む一方で、小型のクルーズ船が全国のあらゆる地域へ寄港するなど、船型や寄港地が多様化してまいりました。この流れをさらに加速させ、「2030年訪日外国人旅客数6,000万人・消費額15兆円」や「日本人クルーズ人口100万人」の目標達成に向け、各地域の皆様と連携し、多様なクルーズ船の受入環境整備や寄港促進に向けた取組、地域経済効果を最大化させるための取り組み、地方誘客促進に向けた取り組み、クルーズ旅客の裾野拡大等の取り組みを推進し、全国津々浦々に賑わいを創出して参ります。

 各地域に存する個性ある歴史資源を有効に生かした魅力的なまちづくりが全国で展開されるよう、歴史まちづくり計画作成の対象を拡大する制度の拡充や支援の強化に向けた検討を進めて参ります。また、地域の老朽化した建物群を官民連携で連鎖的にリノベーションし、エリア一帯で景観再生と活性化をはかる制度創設に向けた検討を進めます。こうした新たな景観・歴史まちづくりの取り組みによって、地方都市に投資を呼びこむとともに、街並みの再生をはかり、増加する訪日客をはじめ地方への誘客を強力に推進して参ります。

 「道の駅」は、地方創生や観光の拠点を目指す「第3ステージ」に入り、「まち」と「道の駅」が一体となって発展する「まちぐるみ」の取り組みや、災害時に防災の拠点となる防災機能強化の取り組みを進めて参ります。

 地方の誘客促進に向け、「観光の足」を担う交通機関において、多様な輸送手段を用いた二次交通手段の確保、交通手段に関する情報提供の充実、多言語による案内表示・案内放送の充実、キャッシュレス決済への対応、モビリティポートの設置、MaaSの推進等の取組を進めて参ります。

さいごに

 本年も国土交通省の組織が持つ「現場力」・「総合力」を最大限生かし、国民の皆様の命と暮らしを守り、我が国の経済成長や地域の生活・なりわいを支えるという重要な任務に全力を尽くして参ります。国民の皆様の一層の御理解、御協力をお願いするとともに、本年が皆様方にとりまして希望に満ちた、発展の年になりますことを心から祈念いたします。

【国土交通省】人事異動(1月1日付)

2026年1月5日(月) 配信

 国土交通省は1月1日付の人事異動を発令した。

 大臣官房付・派遣〈公益社団法人2027年国際園芸博覧会協会業務執行理事・事務次長〉(大臣官房総括審議官〈併〉大臣官房地方室長)千葉信義

 大臣官房総括審議官〈併〉大臣官房地方室長(大臣官房付)甲川壽浩

 港湾局付・即日辞職(近畿地方整備局副局長)小林知宏

 近畿地方整備局副局長(近畿地方整備局神戸港湾事務所長)石原洋

 港湾局付・即日辞職(公益社団法人2025年日本国際博覧会協会運営統括室担当室長兼会場運営局長)福西謙

 大臣官房付(公益社団法人2025年日本国際博覧会協会交通局長兼会場運営局担当局長)淡中泰雄

 大臣官房付(佐賀県県土整備部長)永松義敬

 大臣官房付・派遣〈公益社団法人2027年国際園芸博覧会協会国際出展工事推進部長〉(中日本高速道路本社経営企画本部経営企画部担当部長)坂井康一

 物流・自動車局付・即日辞職(独立行政法人自動車技術総合機構交通安全環境研究所リコール技術検証部長)真下一則

レストラン運営「三好観光」(徳島県)破産手続き開始へ(帝国データバンク調べ)

2026年1月5日(月) 配信

 三好観光(谷藤洋平代表、徳島県三好市)は2025年12月8日(月)に徳島地裁から破産手続き開始決定を受けた。帝国データバンクによると、負債は約1億8000万円。

 同社は1977(昭和52)年6月に設立されたレストランの運営業者。「レストハウスウエノ」の店名で、団体観光客や個人客を対象に多様なメニューを提供していたほか、仕出し弁当の販売も行っていた。

 しかし、徳島自動車道の開通などで集客力は徐々に低下。近年はコロナ禍の影響もあって業況は好転せず、厳しい資金繰りが続くなか、「25年12月1日までに事業を停止、事後処理を弁護士に一任し、翌2日に自己破産を申請していた」(帝国データバンク)という。

Loco Partners、中国のホールセラーDida Travelと連携 世界各国の旅行会社へ流通拡大

2026年1月5日(月) 配信

 ホテル・旅館の宿泊予約サービス「Relux(リラックス)」の運営会社Loco Partners(鷲野宏治社長、東京都港区)はこのほど、香港や韓国、アメリカ、ヨーロッパを含む200以上の国・地域にネットワークを保有する中国のホールセラーDida Travel(ダリル・リーCEO、中国・深圳)と連携し、同社のネットワークを通じた宿泊商品の販売を始めた。

 今回の連携により、Reluxに掲載されている宿泊施設は、Dida Travelのネットワークを通じて、宿泊商品を世界各国の旅行会社やOTAへ一括配信できるようになった。従来は直接つながることが難しかった訪日客に対し、海外の旅行会社を通じて宿泊体験を届けることができる。

 訪日客数が最多となるなか、Loco Partnersはこれまで、海外OTAとの連携を通じてグローバル販売を展開。Dida Travelと連携し、より多くの旅行会社やOTAに宿泊商品を提供できる体制を構築する。

ホテルルートイン大牟田が開業 福岡県内12軒目のルートイン

2026年1月5日(月) 配信

ホテルルートイン大牟田

 ルートインジャパン(永山泰樹社長、長野県上田市)は2025年12月26日(金)、福岡県大牟田市に「ホテルルートイン大牟田」(福岡県大牟田市岬町6-67)を開業した。県内で12軒目、ルートインホテルズ365号店目となる。

 西鉄天神大牟田線・JR鹿児島本線大牟田駅から車で約5分、有明沿岸道・大牟田ICから車で約2分の好立地。客室数は328室・総収容人数は467人。平面駐車場は234台用意する。

 大浴場「天然地下水 有明海の塩湯『旅人の湯』」は午後3時~午前2時、午前5~10時まで営業しており、男女それぞれ露天風呂とサウナも備える。無料朝食は午前6:30~9時まで、「Restaurant NAGOMI」で用意している。

 また、同日に別棟の「海鮮ダイニング九州美蔵(びくら)・焼肉華蔵(かぐら)」をオープン。夕食に利用できる。

 なお、ルートインホテルズ公式アプリでは新規ホテルオープン記念として、宿泊代が1000円割引になるクーポンを配信している。対象宿泊期間は3月31日(火)まで。

【阪急交通社・酒井敦社長 年頭所感】 時流を捉えた商品、サービス開発を

2026年1月5日(月) 配信

酒井敦社長

 阪急交通社の酒井淳社長は1月5日(月)、新年にあたり2026年の年頭所感を発表した。内容は以下の通り。

                   ◇

 旧年は、継続する物価上昇が、暮らしの負担となったほか、旅行商品への消費マインドに影響を及ぼしました。訪日旅行は、記録的な伸長を遂げた年となった一方で、海外旅行では、円安や燃油の高止まりによる厳しい環境が継続しました。日本人の旅行市場においては、旅行業界として、工夫や対策が必要な年であったと言えます。

 こうしたなかで開催された大阪・関西万博は、日本経済や旅行業界に大きな追い風となり、当社においても旅行商品の創意工夫や研鑽の機会となりました。国内旅行のほか、各事業部門における万博への取り組みが順調に進み、当社全体に好影響を及ぼす結果となりました。

 2026 年は、新内閣の経済政策が具体的に実施される年となり、事業環境も変化することが予想されます。物価高や円安のみならず、日中関係の影響を受けた両国間の国際線減便など新たな課題も生じつつあります。また、消費においては節約志向が進む一方で、価値を重視する消費行動もあり、二極化傾向が見られます。市場の見通しが難しい年になりますが、時流を捉えた新しい商品やサービスの開発に注力し、それぞれの品質を一層高めることで、顧客満足度の向上につなげていきます。

 国内旅行は、祭りや花火をはじめ、話題のイベントと観光を組み合わせた商品企画を全国各地発着で推進するほか、テーマ型商品の拡充をさらに進めます。海外旅行は、全国各地の空港から発着する高付加価値商品の開発を今後も継続します。訪日旅行は、今後も旺盛な需要が継続することが予想され、事業基盤の増強をはかります。また、引き続き重要なテーマである地域創生や、自治体の課題解決に向けたソリューション事業に取り組んでいきます。

 このように、2026 年は国内経済の動向や国際情勢など、日本を取り巻く環境は変動要因も多く、対応力が問われる年になりそうです。こうしたときこそ、ポジティブに変化をチャンスと捉え、社会に必要とされる企業を目指して邁進して参ります。

 本年は、冬季オリンピックや FIFAワールドカップなど、世界的なスポーツイベントが開催される年でもあります。このようなイベントが、旅行業界に新たな活気をもたらすことを期待しつつ、新年のごあいさつとさせていただきます。

【伊豆・坐漁荘オーナー 葉 信村総裁インタビュー】人材育成、「温泉旅館文化」継承を

2026年1月4日(日)配信

台湾・CIVIL-GROUP-総裁 葉–信村(Ye-Shintsun)氏

 静岡県・浮山温泉郷の「ABBA RESORTS IZU―坐漁荘」は現在、春の南館新築開業に向け、急ピッチで工事が進んでいる。施設オーナーは「CIVIL GROUP」(本社=台湾台中市)の総裁・葉信村氏。同グループでリゾートホテル事業を手掛ける「ABBA RESORTS」が運営を担い、24年には10周年を迎えた。本紙はこのほど、葉総裁の来日に合わせインタビューを実施。話題は坐漁荘の運営から新しい施設に託す思い、さらには人材育成、温泉旅館文化の継承に及んだ。

【聞き手=石井 貞德本紙社長、構成=鈴木 克範】

 ――一昨年開業10周年を迎え、良い方向に進化を遂げられています。

 企業経営には「理念」と「利益」、2つの要素が不可欠だと考えています。これは私が(台湾で)CIVIL GROUPを創業して30年間、常に抱いてきた信条でもあります。日々の経営の中で、常にこの2つを大切にしてきました。

 もしどちらかを捨てなければならないとしたら、私は利益を捨てて理念を残します。なぜなら、100年続く企業や宗教、国の多くは、理念があるからこそ永続的に存続できるのです。利益だけでは、企業は長くは続きません。理念の実現を信じるなら、人は迷わずその道を進むはずです。

 「ラストサムライ」という映画があります。トム・クルーズ演じるオールグレン大尉は、南北戦争で活躍した英雄です。映画の中で、(明治)天皇がオールグレン大尉に「武士のリーダーである勝元(盛次)がどのように死んだかを教えてくれ」と尋ねる場面があります。大尉はこう答えます。「どのように死んだかではなく、どう生きたかをお話ししましょう」と。この言葉に深い意味があると思います。理念を貫くためにどう生き抜いたか。これこそ私たちが考えるべきことです。

 坐漁荘を引き継いでからの10年間を振り返るよりも、実際に何が起こり、それをどう乗り越えてきたかを話したいと思います。これは私の性格でもあり、強いこだわりです。坐漁荘を引き継ぐきっかけは、1枚の浴衣から始まる美しい物語です。私は日本文化が好きで、その美しい誤解の中で坐漁荘を引き継ぐことを決意し、日本のおもてなし、温泉旅館文化を永続的に継承していくことを決めました。

 ――温泉旅館、日本文化の継承はどのように進めましたか。

 よく坐漁荘の管理職や旅行業者に、「温泉旅館に泊まらなければ日本に来たとは言えない」と話します。日本の魅力は温泉旅館文化にあります。これが失われたら、日本には何が残るのでしょうか。世界中を見渡せば、日本にあるものは他国にもあります。高層ビルや風景、街並みなど、どの国にも独自の魅力があります。日本にしかないもの、それが温泉旅館文化です。

 坐漁荘を引き継いでから、刀や着物を集め、茶道を広めることを通じて、温泉旅館文化の継承に力を注いできました。これを坐漁荘に根付かせ、外国人や日本人観光客が日本固有の文化を再認識できるようにすることが私たちの目標です。

 多くの日本人従業員から「あなたは日本人以上に日本人らしい」と言われます。しかし、先ほども言ったように、温泉旅館文化を失えば、日本には何が残るのでしょうか。その継承こそ私たちの目標です。この過程には、称賛もあれば無関心もあります。企業経営において、理念は利益よりも遥かに重要です。利益ばかりを追求することは意味がありません。

 ――課題はありますか。

 坐漁荘を引き継いでから、日本人が自国の文化を忘れつつあることに気づきました。これは非常に残念なことです。私たちが外国人に刀や着物を紹介すると、驚き、感動してくれます。一方、日本人にはそれがありません。非常に不思議で、悲しいことです。

 温泉旅館のソフト面も保存、継承されていません。坐漁荘を引き継いだ当初、従業員から「坐漁荘は旅館なのか、それともホテルなのか」と聞かれました。この質問には違和感を覚えました。外国では「ホテル」という言葉は旅館も含まれていて、規模が違うだけです。私の答えは明確です。「旅館もホテルも同じです」。なぜなら、顧客へのサービス、さらに期待を超えるおもてなしの精神は、名称に関係なく共通だからです。

 この10年、成果もあれば、多くの挫折も経験しました。なぜ温泉旅館の従業員は自分たちのことをホテルの従業員よりも劣っていると感じるのでしょうか。私たちはこの問題を深く掘り下げ、さまざまなことに気づきました。

 伝統的な温泉旅館では女将が「軸」であるという考えが根強いです。ほかの従業員は自分の意志を持たずに、女将の指示に従い、動いているだけです。これでは「お客様第一」ではなく、「女将第一」のサービスです。

 ただ、私は女将を否定しているわけではありません。女将は非常に大変で、尊敬される仕事です。しかし、企業が女将を中心に据え、他の従業員がロボットのように指示通りに動くだけでは、顧客のニーズを満たすことはできません。

 ――問題を乗り越えるために取り組むべきことは。

 日本の伝統文化、さらにはマネジメントの知見をもった人材の育成が必要です。

 私は大学にホテルマネジメント学科があるのに、なぜ「温泉旅館学科」がないのかが疑問です。世界中のさまざまなホテルに宿泊してきましたが、日本の温泉旅館は特別です。家族のような温かいおもてなしを提供し、心の安らぎを与えてくれます。一般的なホテルでは、チェックイン/アウトのときしか従業員に会いません。だからこそ、ここで強く訴えたいのです。温泉旅館の人材を育成する団体や第三者機関が必要です。

 育成機関で温泉旅館文化を支え、継承することで、持続的な発展が期待できます。1つの企業が永続的に経営できるのは、ハードではなくソフトに支えられているからです。

 今ならまだ間に合います。育成機関を設立し、温泉旅館の従業員がホテルマネジメント学科の卒業生と同等の評価を受けられるようにすべきです。育成機関の課程を修了すれば、「文化師」や「日本文化継承者」などといった資格を取得できるようにします。これこそが、激しいブランド競争や多店舗展開競争の中で生き残るための重要な法則です。

 経営が厳しくなっていく宿も多いなか、資源を共有し、その独自性をアピールしないと存続は難しいでしょう。今こそ、温泉旅館の皆さんが一致団結してほしいと思います。温泉旅館文化の継承は、我われ世代にかかっています。その協力は惜しみません。 

 ――温泉旅館の本質は。

 坐漁荘の従業員は非常に忠実に職務を果たしてくれています。とくに調理部門は、和食文化や創作料理を通じて、坐漁荘のこだわりを表しています。しかしながら、温泉旅館は食文化だけではありません。館内施設や庭園の紹介も重要です。これは世界中を見渡しても、ほかには見られない、特別な意味とスタイルを持っています。

 温泉旅館の従業員は、「四季折々の庭園の美しさを紹介できますか?」「料理人が和食に込めた思いや、おもてなしの心を料理で表現していることを説明できますか?」。

 これは私が最も痛切に感じる部分です。今回のインタビューを通じて、旅館業界全体に提案をしたいと思います。旧態依然とした考え方に縛られるべきではなく、現状を打破するのです。

 国際化やAI時代の到来に対応しながらも、人と人との触れ合いの中で感じる温かさや熱意を伝えることができるのが、テクノロジーではなく、温泉旅館です。これこそが温泉旅館の本質です。

 ――今春には南館が新装開業します。

 南館は築50年以上が経過し、老朽化が進んでいました。坐漁荘の規模を考慮し、より多くの子供たちが文化に触れられるよう、家族向けにメゾネット客室(4部屋)と露天風呂付きヴィラ棟(2棟)を新築します。

南館 外観(イメージ)

 「知は力なり」という言葉があります。私は台湾で子供たちにたくさん本を読んでもらいたいという思いから、図書館を設置しました。幼いときから、さまざまな知識を得ることは、人の成長に大いに役立ちます。南館での宿泊体験が、より多くの子供たちに、日本の温泉旅館文化を理解してもらうきっかけになればと願っています。

 さらに、日本の若者たちにも、祖先や両親がどのように歩んできたかを知ってもらいたいです。温泉旅館でスローライフを体験し、文化の雰囲気を感じてほしいのです。

 新しい南館は、日本の古典文学である「和歌」に着目し、宿泊客に単なる滞在以上の、奥深い日本文化の体験を提供します。コンセプトは「和歌に誘われる日本文化の旅」です。

 館内デザインは万葉集の世界観を取り入れます。6つの客室はそれぞれ異なる和歌の世界を表現し、宿泊客の五感に訴えかけます。泊まること自体が、豊かな日本文化に触れる旅となるでしょう。

南館客室リビング(イメージ)

 ――コンセプトがどのようなカタチになるか楽しみです。ありがとうございました。

 2014年設立。台湾をはじめ、中国や日本で事業を展開。傘下企業の事業分野は、旅行業、ホテル運営のほか、投資や電子商取引など幅広い。

■ABBA RESORTS
 2014年設立。台湾をはじめ、中国や日本で事業を展開。傘下企業の事業分野は、旅行業、ホテル運営のほか、投資や電子商取引など幅広い。

〈観光最前線〉プレミアムステイ静龍

2026年1月3日(土)配信

「プレミアムステイ静龍」和モダンツインベッドルーム

 栃木県の「鬼怒川グランドホテル夢の季」で昨年秋リニューアルオープンした「プレミアムステイ静龍」に宿泊してきた。「泊食分離型」のルームチャージ制を導入した、和モダンベッドルームの館内別旅館として誕生したもの。

 静龍フロアには専用カードキーを持つ宿泊客だけが出入り可能となった。客室は3タイプで和モダンベッドルーム(ツイン、ダブル)のほか、同館唯一の露天風呂付きスイート「翠嶺」も完成した。

静龍フロア宿泊者限定露天風呂「竜宮」

 新設された専用プレミアムラウンジでは、ワインやビール、ソフトドリンク、菓子類などが自由に楽しめる。静龍フロア宿泊者限定で露天風呂「龍宮・小槌」が利用可。プライベートサウナは大谷石で造られており、サウナが苦手な人でも大丈夫な、栃木県ならではの「癒しのサウナ」が堪能できる。

【古沢 克昌】

【精神性の高い旅~巡礼・あなただけの心の旅〈道〉100選】-その57- 銚子の飯沼観音巡礼(千葉県銚子市) 十一面観音のお力に触れる旅 日本百観音の最東端の寺院

2026年1月2日(金) 配信

 東京からみて、一番東になる千葉県銚子市には、鉄道ファンのみならず、多くの人たちに愛されている銚子鉄道があります。銚子駅から終点の外川駅の間には「観音駅」があり、その駅の近くには、「銚子の観音様」と親しまれている、今回の精神性の高い旅先である「飯沼観音」がいらっしゃいます。

 東京駅から、特急しおさいで銚子までは、1時間50分程度で到着。JR総武本線「銚子駅」から徒歩約15分であり、銚子電鉄「観音駅」からだと徒歩5分程度とアクセスが良く、思い立ったが吉日でお参りできます。海辺の近くにありますので、磯の香りを味わいながら、十一面観音菩薩様と静かに心の対話ができて、充足感が深くなるでしょう。心の中に溜まっている不安や悩みを、そっと十一面観音菩薩様に打ち明けてみたら、心身ともに楽になれるかもしれません。

 

 

 飯沼観音は、正式名称は「飯沼山圓福寺」。坂東三十三観音霊場の第27番札所としても知られ、古くから信仰を集めてきました。坂東三十三観音霊場とは、神奈川県、埼玉県、東京都、群馬県、栃木県、茨城県、千葉県にまたがる観音霊場で、祈願の成就を願って巡礼するものです。また、西国三十三観音・坂東三十三観音・秩父三十四観音を総称して「日本百観音」と呼ばれています。

 さて飯沼観音は、約1300年前の神亀5年、観音様のお告げにより、漁夫の清六と長蔵が観音様を引き揚げたことが縁起といわれています。圓福寺にお祀りされているのは「十一面観音菩薩」と呼ばれる頭部に11の顔を持つ観音様です。

 そして、十一面観音菩薩様は病気平癒、財福授与、勝利、延命などの現世利益と、地獄に落ちず極楽浄土へ行けるといった来世の功徳をもたらすとのこと。頭上の11の顔であらゆる方向を見渡し、人々を苦しみから救い、願いを叶える観音様。

 信仰の歴史と広がりとしましては、十一面観音菩薩様は、奈良時代から広く信仰され、延命や病気治療などを願って多くの場所で祀られてきました。千手観音菩薩様と並んで人気の高い観音様であり、六観音の一つとして修羅道に迷う人々を救うとされています。

 

飯沼観音本堂

 圓福寺は、観音様がいる「本堂・飯沼観音」と、歴史的に貴重な寺宝を展示する「本坊・大師堂」の2つのエリアに分かれています。戦後の区画整備の影響で現在は道路で分断されていますが、かつては一つの広い敷地でした。

 本堂は参拝や祈願・祈祷をする場所で、本坊は、納経や御朱印集めを目的に訪れる場所。順序としては、まず本堂・飯沼観音を参拝してから本坊に立ち寄るのが良いとのことです。

 本堂の前には、1711年に造立された約5・4㍍の銚子大仏(阿弥陀如来坐像)がいらっしゃいます。ご本尊の飯沼観音がいらっしゃる本堂にある、賽銭箱の頭上から下がる五色の紐を握ることで、観音様とつながることができます。

 

飯沼観音銚子大仏

 また、賽銭箱の脇にはお釈迦様の弟子の一人「おびんずる様」が鎮座。おびんずる様は「なでると病気が回復し健康になれる」といわれていて、参拝に来た人たちは自身の不調な部分をなでていくようです。

 本堂は自由に見学することができ、中に入ると、圧巻の広間にある天井図をご覧ください。美しく凛とした「坂東三十三観音」のすべての彩り豊かなお姿を鑑賞することができます。反対側の天井には、「四国八十八ヶ所」のすべてのご本尊が描かれています。心機一転、銚子の観音様パワーで新年を迎えてみませんか。

 毎月8の付く日(8日、18日、28日)、土日に加えて、年末年始の12月下旬―翌1月3日は、飯沼観音本堂と五重塔がライトアップされます。

 

旅人・執筆 石井 亜由美
カラーセラピスト&心の旅研究家。和歌山大学、東洋大学国際観光学部講師を歴任。グリーフセラピー(悲しみのケア)や巡礼、色彩心理学などを研究。