10月の訪中予約70%減

中・韓との軋轢に触れる二階会長
中・韓との
軋轢に触れる二階会長

ANTA二階会長、「交流積み重ね、活路を」

 全国旅行業協会(ANTA)の二階俊博会長は、10月16日に開かれた第151回理事会の冒頭で、中国・韓国との軋轢による旅行業への影響について言及し、「交流を積み重ねて活路を開いていかなくてはいけない」と語った。

 二階会長は、中国・韓国へのパックツアーの9月の結果と10月の予約状況について「観光庁や日本旅行業協会(JATA)に問い合わせ、ANTA会員の状況を確認したところ、正確なデータはまだだが、中国行きのパックツアーは9月が前年同月比45%減、10月の予約状況が同70%減。韓国行きのパックツアーは9月が同15%減、10月の予約状況が同45%減」と述べた。

 株式会社全旅の40周年記念式典に、ANTAとして麗水博覧会へ送客した際に交流のあった関係者を招待することを報告。「旅行業と関係のないところから影響を受けて頭を悩ませているが、交流を積み重ねて活路を開いていくしかない」と話した。また、中国の旅行関係者と連絡を取り合った際、現状について憂慮していたことも報告。「会員全員心を1つにしてこの難局を乗り切ろう」と鼓舞した。

“産業観光の輪を”

産業観光まちづくり大賞の受賞者と主催者
産業観光まちづくり大賞の受賞者と主催者

酒田市がまちづくり大賞(全国産業観光 フォーラム岡谷)

 全国産業観光フォーラムinおかやが10月11・12日、長野県岡谷市のカノラホール(岡谷市文化会館)で開かれた。テーマは「made in Nagano」。

 開会式の冒頭、副実行委員長の林新一郎岡谷商工会議所会頭は「長野県で産業文化の先進地である岡谷を堪能してほしい」と話した。

 主催者あいさつで全国産業観光推進協議会の須田寛副会長は「この会合は今年で12回目だが、過去最高の人が来ている。岡谷市は古くから発達している製糸やから精密工業など伝統・近代が合わさった非常に貴重な産業地域。産業観光は連携が必要だが、この会合で各地と情報を共有し、産業観光の輪を広げていってほしい」と述べた。

岡谷市の今井竜吾市長
岡谷市の今井竜吾市長

 開催地を代表して、実行委員長の今井竜吾岡谷市長は「岡谷は昔から製糸業が栄え、〝シルク岡谷”の名を世界にはせ、日本の近代化を支えてきた。製糸産業で培ったものづくりの精神・技術を活かし、時計・カメラなどの精密機械工業も発展。“東洋のスイス”と称されてきた」と話し、「明治から“ものづくり”の街として栄えてきたが、このDNAは若者にも着実に継承されている。今回ものづくりの魅力を全国の地域に発信できるチャンスをいただいた。産業集積地ならではの産業観光の魅力を十分に感じていただきたい」と語った。

 続いて全国産業観光推進協議会が、産業観光まちづくり大賞表彰式を行い、山形県の酒田市・酒田観光物産協会・酒田商工会議所が金賞を受賞した。評価の視点は顧客価値・対象資源・編集視点・商品力・事業性・国際性の7項目。

 多摩大学大学院の望月照彦教授は金賞に選んだ理由について(1)古い施設を残し、活用している(2)地域の産業を風土産業として未来につなげている(3)各団体が産業観光を協力して支えている――ことを評価し、「産業観光は、沈みがちな地域経済や文化に大きなインパクトを与えるもので、地域を見直して、地域の誇りを再生する役割がある。日本の中に次々に産業観光を通して新しい文化や技術が生み出されていると感じた」と述べた。

 受賞団体は以下の通り。

 【金賞】酒田市・酒田観光物産協会・酒田商工会議所【銀賞】天草市(熊本県)【特別賞】みたけ華ずしの会(岐阜県)

 記念講演は、宇宙飛行士の山崎直子氏が「宇宙への夢と旅―宇宙、人、夢をつなぐ―」をテーマに講演を行った。

 次に分科会が行われ、第1分科会は「歴史と伝統を受け継ぐ産業観光の魅力と可能性!」、第2分科会は「産業観光から次世代へ“ものづくり”の継承!」をテーマにパネラーが意見を出し合った。総括では、分科会報告及び総評があり、産業観光の重要さについて再確認した。

 また12日は、エクスカーションが行われ、出席者はうなぎツアーやかりんツアーなど7つのコースで産業観光の現場を巡るツアーを楽しんだ。

 次回は石川県小松市を会場に、13年11月21・22日に「全国産業観光フォーラムinこまつ」が開催予定になっている。

ものづくりのDNA、2つの分科会で探る

 全国産業観光フォーラムで行われた分科会は、2部構成に分かれ、第1分科会は「歴史と伝統を受け継ぐ産業観光の魅力と可能性!」、第2分科会は「産業観光から次世代へ“ものづくり”の継承!」をテーマに行われた。

第1分科会のようす
第1分科会のようす

 第1分科会は、日本観光振興協会常務理事・総合研究所長で法政大学キャリアデザイン学部講師の丁野朗氏をコーディネーターに起用。パネラーは、宮坂製糸所代表で岡谷ふるさと産業研究会会長の宮坂照彦氏、サラダ野菜の生産と販売、人工植物栽培システムを開発するラプランタ社長の五味文誠氏、「ニッポン工場の鳥肌技術」編集者の萩原淳氏の3人。

 テーマをさらに諏訪エリアのDNAが持っているポテンシャルについて、資源を産業観光のなかでどのように活かしていくかの2つに分け、議論した。

 DNAのポテンシャルについて宮坂氏は「岡谷は製糸開発に成功し、技術を“諏訪式”として世に広めた。これは岡谷のDNAの賜物であり、若い女性と蚕の改良で、より盛んになった」と説明した。

 また、資源を産業観光にどう活かしていくかについて五味氏は「器用さ、勤勉さ、恵まれた環境、ものの品質に対する意識が高い点から、高付加価値商品を開発し、ゆくゆくは病院や介護施設への提供できるような機能性に優れた健康野菜を作りたい」と話した。

 また、荻原氏は「メディアに見つけてもらうためには魅力的なコンテンツが大事。お土産やビジュアルが目を引くものなど工夫を凝らすようにしてほしい」と語った。

 まとめで丁野氏は「諏訪地域の産業だけではなく、祭りやアートなどさまざまなもののなかにある技を全体として編集することが産業観光の編集視点になっていくと思う」と話し、「地域継承として人づくりは大変重要になってくる。さらにビジネスとしての産業観光を事業のコラボレーションなどを通してより進めてほしい」と話した。

 第2分科会のコーディネーターは、信州大学総合工学系研究科博士課程専門職コース特任教授の宮澤伸一氏。信州の名工でサンメディカル技術研究所の小尾治一氏、技術五輪全国大会金賞を獲得したセイコーエプソンの小松郁清氏、イデアシステムの小林睦巳氏がパネラーとして出席した。

 第2分科会ではテーマをさらに(1)ものづくりのDNAはどこに宿るか(2)子供たちへの伝承方法(3)日本経済復興へのヒント――の3つに分け、会場の質疑応答と交えながら議論した。

 ものづくりのDNAは、人に宿り、若い人に継承していくべきという結論になったが、会場の声のなかには、ものにもDNAが宿っているという意見もあった。

 また、子供たちの伝承手段としてインターンシップが挙げられた。岡谷市ではものづくりフェアや工業メッセなど地方では規模の大きいイベントを通年行うなどして技術を伝えている。

 それに加えて、一人っ子の家庭が増え、両親以外の大人と関わる機会が少なくなってきている現代に、インターンシップを通して世間と接し、社会全体で一人前の技術者に育てていくことが必要だということで意見がまとまった。

 日本経済復興へのヒントでは、フォーラムをきっかけに継続的に議論し、プランニングして実現させようと決意を新たにした。また、行政を中枢に連携して解決していくことも大切であると強調した。

 ほかにも、山崎直子氏の記念講演を参考に、宇宙ステーション内での実験を子供たちに命題して提案させるコンペや郷愁をそそるようなディスプレイにし、集客をはかるなどさまざまな意見が出された。

総括する須田寛氏
総括する須田寛氏

 最後に総括が行われ、全国産業観光推進協議会の須田寛副会長は「2つの分科会に共通する大きなテーマは〝DNA〟だった。岡谷市のDNAの形成は立地条件、進取の気性、勤勉の3つにあったと感じている。それがあったからこそ、現在は製糸業DNAをベースにした精密工業や農業工場など、さらに発展させることができた」と話し、「このフォーラムでぜひ全国の方々に岡谷のDNAを発信してほしい。岡谷の観光は全国あげて伝承していかなければならない」とまとめた。

 
 
 
 

【特集No.324】網元の宿 ろくや リピーターは「人」につく

2012年10月21日(日) 配信

 「いい旅館にしよう!」プロジェクトのシリーズ第7弾は、千葉県・岩井湯元温泉「網元の宿 ろくや」と、南房総の鏡ヶ浦温泉「rokuza(ロクザ)」を経営する渡邉丈宏社長が登場。臨海学校の学生相手にしていた民宿「ろくや」は今や稼働率95%、じゃらんネットの口コミはほぼ5点満点。若き渡邉社長と、産業技術総合研究所の工学博士・内藤耕氏との対談で、厳しい経営環境のなか、高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客様の強い支持を得ている理由を探る。

【増田 剛】

 渡邉:「網元の宿 ろくや」の創業は祖父の代です。本業が別にあったのですが、岩井海岸が臨海学校のメッカと言われた時代に、田舎で家が広かったために「部屋貸ししよう」というところから民宿業が始まりました。私自身も中学・高校時代に臨海学校のお客様の皿洗いなどを手伝っていました。

 大学のサークル活動が全盛だったバブル期に、木造の建物から、父親が新しく建て替えをしました。7・5畳の客室が30部屋ほどになりました。当時は1部屋に学生8人くらいを収容していましたからいい時代でした。しかし、バブルがはじけると、サークル活動も下火になり、60―70人で貸切にしていたのが、30人程度まで激減し同じ客室稼働率でも売上げは半減しました。さらに、父が本業で経営していた海運業の親会社がおかしくなり、「実質破綻先」となりました。そのころ私は東京にいたのですが、どうも家がおかしいということで24―25歳のとき、千葉に帰ったのです。  帳簿を見ながら「何がいけないのか」「借金がどのくらいあるのか」と調べ始めたのが数字の勉強のスタートでした。30歳までの間、「大変な時期だから」との理由で給料は月10万円程度でしたが、自分の給料から会計士との相談料を捻出しながら「債務圧縮をどうするか」など、銀行との折衝を行っていきました。  さまざまな交渉のなかで、初めて明確な目標ができたのは、銀行から「2億円を融資をするから、あなたが宿を買いなさい」と言われ、2億円を返済するために売上目標を設定されてからです。年間約8千万円の売り上げを、2年間で1億5千万円に倍増しなければなりませんでした。
 施設には特徴的なものは何もありませんでしたが、父が趣味の延長で定置網をやっていたので、これを宿の唯一の武器としました。自分のところで獲れた魚なので仕入費がタダなんです。7・5畳の狭い客室でしたが、東京から新鮮な魚を求めてお客様が来るようになりました。何も投資ができないなか、食の部分から改善していきました。伊勢エビ、アワビ、船盛り、焼き魚など獲れたての魚介類を中心に提供し、1泊2食8600円で売りました。  テレビの旅番組でも紹介してもらえるように、「定置網の宿」を前面に出した広告をじゃらんなどに出稿しました。その戦略が当たり、テレビ取材で半年間、予約で埋まりました。  従業員のいない家族経営の民宿でしたから、30室を満室にして疲れ果てるよりも、1日最大20人しか受けず、余裕を持ってお客様に対応できるようにしました。「満室」というと、お客様は先の空いている日に予約を入れてくれるようになりました。すべての予約を受け入れていれば、きっと文句を言われ、不満足のままお客様は宿を去っていったと思います。テレビ番組は10数回出ており、宣伝についてはテレビを上手く利用しました。毎日20人のお客様をきっちり満足させることに集中したことでリピーターがついてきました。  その後、2つあった1階のユニットバスを、壁をぶち抜いて貸切風呂を2つ作り、これで平日も平均20人のお客様を迎え入れることができるようになりました。リピーターも増えていき、仲良くなると会話の中で、「料理はいいけど、ここがダメ」といったように、宿に何が必要かを教えていただきました。お客様の声を参考にしながら、学生向けの食堂のような食事処を「個室ダイニング」のスタイルに、自分でデザインし改装しました。1階の雰囲気のある食事処で提供すると、リピーターがさらに増えていきました。銀行に内緒で2階の改装も行いました。今は16室と、リビング+4ベットルームという部屋があり、この部屋は6人以上の団体しか受けません。大体12人以上の予約が多いので、最大20室というような感じです。

 内藤:30室だったものを、現在の17室まで減らしたのは、目的を「満足度を上げるため」と徹底したためですか。

 渡邉:2階の15部屋を2部屋で1部屋にし、8部屋にしました。狭い民宿の名残のある3階は土曜日しか使わずに、平日は確実に満足してもらうために、売れない部屋は完全に切ってしまい、1階と2階だけで宿を完結しようと考えました。そのうち平日にも平均20人のお客様がどんどん増えてきたので、3階部分の改修に取り掛かったのです。1年半前に南房総・館山の姉妹館「rokuza(ロクザ)」を手がけたのも、ろくやのお客様が一杯になり、お断りをするお客様がもう1軒分あると判断したときに、ある企業の保養所を買いました。

     ◇

 ――じゃらんのクチコミ評価も高いですが、社員の接客の教育はどのようにされているのですか。

 渡邉:接客の基本的なコンセプトは何一つ変わっていません。「常識人であれ」というのが唯一の方針です。「このお皿をこのように置きなさい」というような指示はしたことがありません。「こうしてあげた方が親切でしょう」というのが世の中の常識だと思うのですが、これさえしっかりしていれば、絶対に上手くいくと思っています。ソフトはそれなりに考え尽くしたものがありましたので、宿が提供する部分に関しては、お客様に評価していただいているという自負はあります。今は社員が35人います。平均年齢は30歳くらいと若く、最近は新卒の入社も増えています。

 会社なので従業員や経営者にも不満が出てきますが、「どのような不満があるのか」と聞いたところ、たとえば料理は板前がこだわってでき立てを出したい。サービス係はお客様を待たせたくない。ここでぶつかるわけですが、これは双方がお客様の方を見ている前向きな衝突なのです。「あいつがサボっている」というようなものではない。この最高のぶつかり合いがあるなかでは、社長が陣頭指揮を取っても空気を汚しますので静観しています。

 従業員には何度も言っていますが、「髪の毛が1本でも料理に入っていたら全額無料だ」という、“ろくやイズム”が浸透しているのだと思います。宿は料理や従業員の笑顔など、施設の中でできあがった空気感をお客様に買っていただく商売だと思っています。“パッケージ売り”であるのに、1つの部品に不備があったから、その部品の料金を値引きしますという姿勢でお客様が納得するとは思っていません。
 気持ち良く「すべての旅行を台無しにしました」と謝罪すべき、というのがろくやの基本的なスタンスです。これを会社の縛りとして持っていないと、常識的な従業員が育たない。「30円のひじきに髪の毛が入っていたので100円引いとけ」というような姿勢を経営者が見せると、そのような社員しか育ちません。

 内藤:そこにプロとしての責任感が育つわけですね。

 渡邉:そうですね。社員にどんどん責任を背負わせています。宿のコンセプトをしっかりと理解している社員には、歯ブラシの質が同等で1円でも安ければ、本人の決済で納入業者を変えさせています。

 内藤:ろくやの接客は人付きではなく、チームでやるのが特徴ですが、食事を提供するときも、1人のスタッフが1つのテーブルを担当するというスタイルではないですよね。

 渡邉:基本的にはそうですね。そのなかで、お客様とのフィーリングというものもあります。日本酒の好きなお客様には日本酒に詳しいスタッフが行き、情報共有し、自分のお客様にしていく。アンケートに書かれたスタッフの名前をグラフにしていますし、充分でない場合は、何が足りないのかをスタッフに考えさせています。接客係は単なるお皿を運ぶ人ではないのです。

 宿が提供できる限界点は、じゃらんネットにしても4点まで。それ以上の評価の上積みは、「人がどのように介在するか」にかかっているのです。料理も季節のものは当然考えますが、「お客様との接点が増える料理」や、「お客様が心を開いてくれやすい料理」といったところまで考えています。ろくやには従業員を育ててくれる常連のお客様がたくさんいるので、常識を身に付けるまでの研修施設とも考えています。rokuzaは、ろくやで経験を積んだスタッフで運営しています。

 内藤:リピーターへの対応は予約が入った時点で考えるのですか。

 渡邉:リピーターはパソコンに情報が入っています。その人に合わせた料理をお出しすることを心掛け、コースを変更してでも「前回食べて美味しかった」と言ってくれたものを用意します。一番気にしているのは2回目のリピーターのお客様です。1回目は料理や施設の雰囲気で来てくれるのですが、小さな宿ですから2回目には大体宿のすべてをわかり、それほど大きな驚きはありません。「それぞれのお客様にとって特別な宿になるにはどうすればいいか」と考えます。ここで、どれだけ人が介在できるかが勝負になります。ろくやのリピーターにとって料理は、「確実に新鮮なお刺身が食べられる」という程度です。「宿に来たときに従業員とのやりとりが楽しい」といった部分で多くの常連さんは来てくれています。ろくやの場合、リピーターは「料理」よりも「人」に付くと思っています。2回目のお客様に「特別なお客様です」というオーラをどれほど出せるかが重要になってきます。

 内藤:以前、rokuzaに泊まったときに、バスの出発時間を聞くと、別のスタッフが教えに来てくれました。そのようなことが何度もありました。バックヤードで情報共有がしっかりとされている印象を受けました。

 渡邉:従業員はインカムを付けているので、誰かが情報を流せば全員に伝わるようになっています。宿の滞在中にお客様が感動する場面はたくさんあるのです。たとえば、右利きに用意されていたものが、翌朝には左利きにすべてセットされていたり。ろくやの従業員は左利きのお客様を発見するのがものすごく早いです。些細なことですがこんなことでもお客様は「サービスがいい」と感動してくれるのです。

 内藤:常にお客様を見ているのですね。

 渡邉:インカムを導入するときに、他の宿の経営者は「旅館業なのにインカムはどうなの?」ということを言われましたが、私は何でもありの民宿からスタートしましたから別に気になりませんでした。実際、お客様もそんなに気になっていないようです。もしインカムを入れていなければ情報共有は今よりずっと難しいでしょうし、今のレベルを保つにはスタッフも1・5倍ほど必要になると思います。

 内藤:料理はこだわっているようにも見えますし、割り切っているようにも感じます。

 渡邉:スタッフと「ろくやってどんな宿?」と議論すると、「食のエンターテイメント」で来たから「エンターテイメント性を貫こう」ということで一致しました。料理は「ろくや」という全体の構成の中で、クセのようなもので、その他がしっかりとしていれば、そのクセがより引き立ち、「オンリーワン」になると考えています。

 rokuzaを作るときも、全国の素晴らしい宿をたくさん見てきましたので、いい旅館にするのは、それほど難しくなくできると思いました。ただ、人にも、宿にも「愛されるクセ」というものがあります。「愛されるクセ付けをどこでするのか」という部分ですごく悩みました。ろくやの「愛されるクセ」は田舎臭さであったり、近所の顔見知りの居酒屋のようなイメージだと思います。  一方、「雰囲気のあるレストラン」をイメージしたrokuzaは「愛されるクセ」がなかなか思いつかなかったのですが、妻が以前、「旅館のデザートはいつも残念」と漏らした言葉を思い出し、パティシエを入れました。和食の料理人がデザートにこだわればこだわるほど若い女性には受けない。宿の愛されるクセはデザートで付けようということにしました。

 ――じゃらんの評価でほぼ5点満点で、事前期待が高いことへの怖さはありますか。

 渡邉:もちろん怖さはいつもありますが、仮に口コミでヘンなことを書かれたとしても、そのことによって多くのリピーターが逃げることはないと思っています。今やリピーターの売上げは5割強を占めています。

 内藤:渡邉社長に感じるのは「徹底力」です。そして、すべての面でバランスよく「徹底」されています。サービスや数字の管理も徹底的にやられていますね。

 渡邉:やる必要のないサービスは徹底してやりません。ろくやは客室まで案内せずに、1階のエレベーターでお客様に階数を告げています。今のスタイルで客室まで案内しなくても評価は変わらないという判断からです。

 ピークの時間に人手がたくさん必要なのが旅館業。このピークを緩和させるために布団を早めに敷いたり、ステージベッドを導入したりと工夫しています。土曜日はプラスアルファの料金に設定しているため、スタッフをいくら入れても利益は出るのですが、平日はどれだけ人を減らすかが問題になります。夕食事には、「部屋の中に入って清掃してください」という表示の札をドアの前に出してもらっている客室だけに、ゴミ箱やトイレ、シーツをきれいにしているのですが、実は、なるべく清掃に入らないでいいようなニュアンスの言葉を選びました。こうすると、民宿であっても「夕食時に綺麗に部屋の清掃をやってくれる」という、いいイメージを残すことができるのです。土曜日に1部屋6人の場合は、清掃の人を雇えますが平日の2人利用で埋まった場合はそうはいきません。しかし、実際部屋の清掃を希望されるお客様は2―3組なので、十分対応できます。  数字は全従業員がその日の売上や仕入が見られるように、部署ごとにパソコンを置いて公開しています。7、8年分の予約状況を見ながら、たとえば「10月の第1週は1週間前からしか予約が入らない」といったこれまでのデータが指標になります。このため、1週間前まで空室があったとしても、広告に頼ったり、予約サイトに部屋を提供することなしに自館で対応できるのです。  従業員の責任者には、それぞの1人当たりの人件費と、その日の売上との人件費率を計算させ、シフトを考えさせています。板前にはコスト意識を植え付けさせるために仕入の1品1品をパソコンにデータ入力させています。売上に対する原価率が毎日出ますので、1カ月単位で原価率がオーバーすることは絶対に許しません。

 光熱費削減も経営者が「節減しろ!」といくら言っても無理で、社員に数字をすべて公開し、経営に参加させることが大切です。「数字がわからないと、うちでは給料がいつまでも安いぞ!」と社員には言っています。数字がわからないかぎり、実際に何もできないと思うんです。
 旅館と従業員の関係はWIN―WINの関係でなければ長続きしないので、やってくれた分に関してはしっかりと還元していくという考え方です。旅館業でありながら決算時ボーナスで120万円をもらっている社員が4、5人います。

 内藤:旅館は月次の試算表ではなく、週次の試算表が必要だと思います。8月の決算を9月の中旬に出してそこから対策を考えると、10月になってしまう。今年の8月の課題は、10月には別の問題なので、翌年の指標としてしか活用できない。また、月次だと土日の数で大きく数値が変動してしまいますが、週次だとほとんど変わらない。今年の2月は最高益の企業が多いという。それは「うるう年」で通常よりも1日多いためであって、本当の実力とは違う要素が大きく影響してしまう弊害もあります。週次の試算表を出せると、月の上旬の課題に対して中旬、下旬でアクションを起こすことが可能になります。週次で試算表を管理できると、正確性が増し、後手ではなく、先手を打つために早めの経営判断が可能になります。これによって、本来やるべきことに集中ができるというメリットがあるのです。管理品質を上げる方法はいくらでもあるのです。最近は日次管理をする企業も増えてきています。

 渡邉:後手後手に回ることが一番いけないですからね。旅館業は、その日の仕入と人経費をしっかりと抑えていれば利益が出るものと基本的な部分で認識しています。

 内藤:約30%が人件費としたら、半分の15%が契約ベース。ここの流動性を30%上げると、5%の利益が出る計算になる。利益が出ないというのは現場が見えていないだけ。現場を科学的に見ていけば利益体質になるのですが、それをやるかやらないかの違いだと思います。

 渡邉:そうですね。その部分ではまだまだ足りない部分がありますね。

 内藤:渡邉社長が人件費率を従業員に公表し、管理させるというのは、幹部社員の評価のためではなく、現場の管理品質を上げることが目的になっていることがいいと思います。多くの旅館ではマネージャーがちゃんと管理しているかという評価のためにしがちですが、予算を達成できるようなシフトを組んだ人件費率が社員に理解されないと意味がない。そのためにすべてのデータを公開するということは素晴らしいと思いますね。

※ 詳細は本紙1480号または10月25日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

国の文化力と表裏一体 ― 観光の成長は「国益」

 おそらくこの先、日本にはいくら税収があっても足りないだろう。超高齢化社会への福祉対応、子育て世代の支援、道路整備、防災対策など、歳出項目は数え上げると切りがない。消費税を数パーセント上げたくらいでは、膨らみ続ける歳出に見合う税収を得られない。ものづくりに強い日本だが、今後は、製造業に頼ったままでは、経済成長を続けるのは難しい。労働人口も減っていくのだ。そう考えると、「伸び代」が期待できる観光で世界から外貨を獲得し、自国の税収に組み入れていくしかないように思える。

 しかし、その観光産業の発展の歩みが遅い。地方の観光地の疲弊状況を見ると、むしろ後退しているのではないかという印象を受ける。観光庁が設立して4年が経つが、日本の観光が今後10年、20年先にどのような姿を目指していこうとしているのか、国もイメージを明確に描き出せていない気がする。

 原発事故の影響などさまざまな外的な要因があるが、外国人観光客が伸び悩む理由は、本質の部分にあるのではないか。寂れた観光地などを歩くと、本当にここは観光客に来てほしいのかと疑問に思うことがある。

 かつては、「日本は物価が高いから」「陸続きではないため大陸に比べて不利」というような声もあった。しかし、今や世界中の富裕層は、「日本が物価が高いから行かない」のではなく、行くだけの価値を見いだせないというのが本当の理由だろう。また、LCCが世界中に飛び交う時代に「島国だから」というのは、もう言い訳にならなくなった。

 世界観光機関が発表した2011年の外国人観光客受入人数を国別でみると、(1)フランス(2)アメリカ(3)スペイン(4)中国(5)イタリア(6)トルコ(7)イギリス(8)ドイツ(9)マレーシア(10)メキシコが上位にランクされている。経済力が衰退気味の国もあるが、どの国にも共通するのは、文化力の強さ。世界文化力ランキングといっても過言ではない。

 日本には魅力的な文化がたくさんあると自分たちは思っている。しかし、世界における現実は、日本文化は未だ「通好み」のマイナーな文化なのである。

 日本の恃みとする経済力は今後相対的に落ちて行くだろう。これに比例して文化力も衰退していくのか。文化力と表裏一体の観光産業の成長は「国益」である。

(編集長・増田 剛)

今秋は毎日運行、女将が案内する周遊バス(湯田中渋温泉郷)

 長野県・山ノ内町の湯田中渋温泉郷自慢のスポットを女将自らが案内する、話題の周遊バス「湯の郷まるごてら号」が、この秋は10月7日―11月4日まで毎日運行する。

 温泉街、紅葉が目にまぶしい里景色、くだもの狩りなど、どこへ向かうのか、なにが待っているのかはすべてその日の女将任せ。山ノ内町の魅力がたっぷり味わえる半日バスツアーだ。

 ピックアップ便がまず午前10時に角間温泉を出発して、上林温泉 地獄谷野猿公苑→渋温泉渋湯橋→湯田中温泉大湯前→湯田中駅→穂波温泉栄橋→道の駅北信州やまのうちと移動し、午前10時45分から女将便がスタート。帰りは午前11時50分に湯田中駅、正午―12時15分ごろに道の駅北信州やまのうち着で現地解散となる。

 参加料金は大人(中学生以上)500円、小学生以下は無料だが、子供だけでの参加はできない。

 完全予約制で定員20人(定員になり次第締め切り)。発券所は山ノ内町観光連盟、湯田中駅観光ガイドセンター。

 問い合わせ=湯の郷まるごてら号事務局(山ノ内町観光連盟内) 電話:0269(33)2138。 

「100選」の中間集計 1回目

 「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」。38回目の投票が今年も10月1日から始まった。締め切りは10月末日。全国の旅行会社からの投票に基づき、「ホテル・旅館100選」と「観光・食事、土産物施設100選」および「優良観光バス30選」をそれぞれ選出する。「ホテル・旅館100選」の中間集計の1回目を紹介する。

(順不同)

 【北海道】
第一滝本館▽登別石水亭▽あかん湖鶴雅リゾートスパ鶴雅ウィングス▽知床第一ホテル▽知床グランドホテル北こぶし▽十勝川温泉第一ホテル▽観月苑▽ニュー阿寒ホテル▽ホテル鹿の湯花もみじ

 【青森県】
浅虫観光ホテル▽奥入瀬渓流ホテル▽ホテルグランメール山海荘▽古牧温泉青森屋▽海扇閣

 【岩手県】
佳松園▽浄土ヶ浜パークホテル▽ホテル志度平▽ホテル紫苑▽結びの宿愛隣館▽長栄館▽滝の湯いつくし園▽山水閣▽ホテル対滝閣▽ホテル森の風鶯宿▽愛真館

 【宮城県】
松島ホテル一の坊▽篝火の宿緑水亭▽鳴子観光ホテル▽ホテル壮観▽伝承千年の宿佐勘▽ホテル松島大観荘▽遠刈田ホテルさんさ亭▽ホテルニュー水戸屋▽鷹泉閣岩松旅館▽ホテルきよ水▽名湯の宿鳴子ホテル▽ゆづくしsalon一の坊

 【秋田県】
海と入り陽の宿帝水▽男鹿観光ホテル▽湯瀬ホテル▽姫の湯ホテル▽セイコーグランドホテル▽男鹿グランドホテル▽さとみ▽妙の湯▽雄山閣

 【山形県】
たちばなや▽八乙女▽日本の宿古窯▽萬国屋▽月岡ホテル▽上杉の御湯御殿守▽展望露天の湯有馬館▽ほほえみの宿滝の湯▽蔵王国際ホテル▽葉山館▽河鹿荘▽仙峡の宿銀山荘▽游水亭いさごや▽蔵王四季のホテル▽深山荘高見屋▽いきかえりの宿瀧波▽おおみや旅館▽海辺のお宿一久

 【福島県】
匠のこころ吉川屋▽八幡屋▽ホテル華の湯▽大川荘▽庄助の宿瀧の湯▽丸峰観光ホテル▽風望天流太子の湯山水▽スパリゾートハワイアンズ▽四季彩一力▽ホテルグランデコ

 【茨城県】
五浦観光ホテル別館大観荘▽思い出浪漫館▽筑波山江戸屋

 【栃木県】
あさや▽宿屋伝七▽花の宿松や▽鬼怒川グランドホテル夢の季▽きぬ川ホテル三日月▽鬼怒川温泉ホテル▽日光千姫物語▽ホテルニュー塩原▽小槌の宿鶴亀大吉▽ホテルサンシャイン益子館▽ホテルエピナール那須

 【群馬県】
四万やまぐち館▽源泉湯の宿松乃井▽福一▽草津温泉ホテル櫻井▽ホテル木暮▽旅館たにがわ▽万座温泉日進舘▽舌切雀のお宿磯部ガーデン▽望雲▽猿ヶ京ホテル▽別邸仙寿庵

 【千葉県】
満ちてくる心の宿吉夢▽鴨川館▽鴨川ホテル三日月

 【東京都】
水月ホテル鴎外荘

 【神奈川県】
海石榴▽箱根吟遊▽強羅花壇▽強羅花扇

 【山梨県】
銘石の宿かげつ▽ホテル鐘山苑▽若草の宿丸栄▽全館源泉かけ流しの宿慶雲館▽ホテルふじ▽湖山亭うぶや▽秀峰閣湖月▽下部ホテル▽華やぎの章慶山

 【長野県】 
ホテル翔峰▽明神館▽上林ホテル仙壽閣▽旅館花屋▽藤井荘▽街道浪漫おん宿蔦屋▽ホテル白樺荘▽緑翠亭景水▽ホテル木曽路▽ホテルやまぶき▽立山プリンスホテル▽一茶のこみち美湯の宿▽ぬのはん▽白樺リゾート池の平ホテル▽RAKO華乃井ホテル▽あぶらや燈千

 【新潟県】 
白玉の湯泉慶・華鳳▽四季を彩る湯沢グランドホテル▽水が織りなす越後の宿双葉▽ホテル清風苑▽ゆもとや▽四季の宿みのや▽ホテル小柳▽ホテル摩周▽夕映えの宿汐美荘▽風雅の宿長生館▽赤倉ホテル▽岬ひとひら▽大観荘せなみの湯▽ホテル摩周▽ホテル吾妻▽ひなの宿千歳▽ホテル秀山▽ホテル大佐渡

 【静岡県】
いなとり荘▽ホテル九重▽坐漁荘▽稲取銀水荘▽下田セントラルホテル▽季一遊▽ホテルカターラ福島屋▽柳生の庄▽観音温泉▽堂ヶ島ニュー銀水▽稲取東海ホテル湯苑▽桂川▽ホテル伊豆急▽ホテルサンハトヤ▽堂ヶ島温泉ホテル 

 【愛知県】
ホテル東海園▽ホテル竹島▽ひがきホテル▽源氏香

 【三重県】
戸田家▽風待ちの湯福寿荘▽ホテル花水木▽鳥羽シーサイドホテル▽サン浦島悠季の里

 【岐阜県】
本陣平野屋花兆庵▽岐阜グランドホテル▽水明館▽高山グリーンホテル天領閣▽穂高荘山月▽ひだホテルプラザ▽ホテルくさかべアルメリア

 【富山県】
金太郎温泉▽宇奈月国際ホテル▽延楽▽ホテル立山▽延対寺荘▽宇奈月グランドホテル

 【石川県】
加賀屋▽瑠璃光▽法師▽ゆのくに天祥▽辻のや花乃庄▽日本の宿のと楽▽花紫▽茶寮の宿あえの風▽花つばき▽たちばな四季亭▽お花見久兵衛

 【福井県】
まつや千千▽グランディア芳泉▽清風荘

 【滋賀県】
びわ湖花街道▽暖灯館きくのや▽里湯昔話雄山荘

 【京都府】
松園荘保津川亭▽嵐山辨慶▽柊家▽旅庵花月

 【兵庫県】
淡路インターナショナルホテルザ・サンプラザ▽佳泉郷井づつや▽ホテル金波楼▽西村屋ホテル招月庭▽有馬グランドホテル▽朝野家

 【奈良県】
さこや

 【和歌山県】
ホテル中の島▽かつうら御苑▽ホテル浦島▽白良荘グランドホテル

 【鳥取県】
華水亭▽皆生つるや▽三朝館▽依山楼岩崎▽皆生グランドホテル天水

 【島根県】
曲水の庭ホテル玉泉▽佳翠苑皆美▽玉造グランドホテル長生閣▽白石家

 【岡山県】
湯郷グランドホテル▽鷲羽ハイランドホテル▽八景▽清次郎の湯ゆのごう館▽せとうち児島ホテル

 【広島県】
宮島グランドホテル有もと▽石亭▽ホテル鴎風亭▽みやじまの宿岩惣

 【山口県】
大谷山荘▽白木屋グランドホテル▽萩観光ホテル▽北門屋敷▽西の雅常盤▽錦帯橋温泉ホテルかんこう

 【香川県】
湯元こんぴら温泉華の湯紅梅亭▽琴平グランドホテル桜の抄▽石灯りの館花樹海▽湯元ことひら温泉琴参閣

 【愛媛県】
ふなや▽大和屋本店▽
道後舘▽道後プリンスホテル 

 【高知県】
城西館▽三翠園▽土佐御苑

 【佐賀県】
萬象閣敷島▽和多屋別荘▽

 【長崎県】
ゆやど雲仙新湯▽雲仙宮崎旅館▽東園▽雲仙福田屋

 【熊本県】
清流山水花あゆの里▽三愛高原ホテル▽杖立観光ホテルひぜんや▽黒川荘

 【大分県】
由布院玉の湯▽ホテル白菊▽杉乃井ホテル▽花菱ホテル▽亀の井別荘

 【宮崎県】
酒泉の杜綾陽亭

 【鹿児島県】
ホテル秀水園▽指宿白水館▽霧島山上ホテル▽霧島国際ホテル▽指宿フェニックスホテル▽旅館吟松▽霧島いわさきホテル▽指宿海上ホテル▽城山観光ホテル 

中国PR予定通り実施

観光庁 井手長官“中長期で影響ない”

 観光庁の井手憲文長官は9月27日の会見で、尖閣問題の影響で落ち込みが懸念される中国人訪日客数の動向について、「中長期的にみて大きな影響はない」という見解を示した。

 中国との間で起こっている尖閣問題での軋轢により懸念される中国人の訪日客数への影響について、井手長官は「団体旅行のキャンセルは出ているが、FITは順調に伸びている」との現状を報告。「航空機の減便やクルーズ船のキャンセル、交流イベントの中止など短期的な影響は出ているが、中長期的な視点でみた場合に大きな影響はないだろう」と語った。

 ビジット・ジャパン事業関連のプロモーションについては、ようす見などすることなく、予定通りキャンペーンを展開していくことを明かした。上海や大連などで多くのイベントに参加・PRするほか、11月20日から横浜で始まるトラベルマートや、在外公館と連携した「ALL JAPAN」での取り組みなどを予定。在外公館との連携では、年度計画で61件を計画しており、10月以降年度末までに36件を予定する。

 東南アジアも重点地域 MICEに注力

 また、先日発表された2013年度概算要求に触れ、とくに重視したポイントについて、重点要求で6億円弱を要求した「東南アジア・訪日100万人プラン」をあげ、「ASEANは中国と同等以上の成長の可能性がある将来性のあるマーケット。今のうちからきちんと取り組んでおく」と語った。そのほか、「観光庁・日本政府観光局(JNTO)・各自治体とも今まであまり力を入れていなかった」と反省するMICEや、2億5千万円弱を要求した新規事業「観光地域ブランド確立支援事業」をあげた。

 JNTO海外事務所 経費増やさずに増設

 国際交流基金との連携強化をすすめ、14年4月をめどに本部事務所の共用化を目指す方針が発表されたJNTOについては、13年度中に同基金のジャカルタ事務所スペース内にJNTO事務所を開設する方針に触れ、「インドネシアの人口や経済力を考えた場合に、ジャカルタは重要な拠点」と話し、「経費が増えないかたちでの事務所増設」になったことを報告した。

 今後も「経費が増えないかたちでの事務所増設」を検討していく方針で、うまくいけば以前より指摘のあった海外事務所の少なさを今後改善できるかもしれない。また、現在半数以上が本部に所属するJNTOの人員を、海外事務所へシフトしている方針を紹介し「本部の方が人数が多いのは組織の役割を考えるといびつ」とした。

 観光産業政策検討会 内的要因の議論へ

 9月に行われた第1回観光産業政策検討会では、国のプロモーションなどの外的要因と、企業経営などの産業自体の内的要因の課題が出された。「ALL JAPAN」での取り組みが弱いという指摘があがったことについて井手長官は「すでに観光庁で取り組んでいることを知らない委員の発言も多かった。活動のPRが足りなかったのは反省点」とし、「この検討会では外的要因ではなく、産業自体が強くなれるよう内的要因に的を絞った議論にしていきたい」と今後の方向性を示した。 

反日の影響に言及(JATA)

中・韓ツアー日程の変更も

 日本旅行業協会(JATA、菊間潤吾会長)の長谷川和芳事務局長は、9月26日の定例会見で、反日気運で揺れる中国・韓国へのアウトバウンド状況について、「ツアー日程の変更を余儀なくされるところも出ている」と触れた。

 長谷川事務局長は、「具体的な数字は把握していない」としたうえで、修学旅行・交流事業・公式行事の取消、キャンセルが出ていることを報告した。

 パッケージツアーの予約に関しては「長期化すれば先の旅行の手控えや、訪問国の変更など影響が大きくなる」と懸念を示し、「非常に残念。1日も早く通常通りに戻ってほしい」と話した。

 また、「各社、現地オペレーターと連絡を密にツアーを続けているが、日程に支障出ているところもあると聞いている」と報告した。なお、大きな災害や世界情勢の変化などの際は、観光庁で数字発表などを一元化することになっており、JATAでは今後もキャンセル数の把握・発表の予定はないという。

グランプリは宮崎朗子さん(ツアー・コンダクター・オブ・ザ・イヤー2012)

受賞者と選考委員会
受賞者と選考委員会

事故に迅速な対応

 日本添乗サービス協会(TCSA)は9月21日、JATA旅博2012(東京ビッグサイト)で、「〝ツアー・コンダクターオブ・ザ・イヤー〟2012」を開き、グランプリの国土交通大臣賞にTEI所属の宮崎朗子さんが選ばれた。

 宮崎さんは、12年1月に起こったイタリア中部トスカーナ沖の大型クルーズ座礁事故の際、乗船客約4200人のうち28人を当人が添乗していた。事故当時、日本へ緊急連絡を入れると同時に避難経路を確保しながらお客様の安否を確認。帰国の手続きやさまざまなケアを行いながら4日後にお客様全員と無事帰国した。ツアー参加のお客様や企画旅行会社役員、伊日本大使館からの感謝状や礼状も届いている。

 早稲田大学名誉教授の吉村作治選考委員長は講評で「今回は皆さん優秀で選ぶのが大変だった。お客様はツアーコンダクターに命を託しているが、信頼と安全性を保っていることに深く感動した」と話した。

 グランプリ以外の受賞者は次の各氏。

 【準グランプリ(観光庁長官賞)】天倉昌絵(ツーリストエキスパーツ所属)【委員長賞】山田浩子(JTBサポート中部所属)【会長賞】中塚淳さん(ジャッツ所属)【会長特別賞】篠原恵理子さん(フォーラムジャパン所属)【優秀賞】勝澤正人(ツーリストエキスパーツ所属)▽安井浩和(フォーラムジャパン所属)▽品川志保(ジャッツ所属)▽齋木勝久(JTBワールドバケーションズ所属)【奨励賞】樫村衣子(ANAセールス所属)▽村岡拓郎(ツーリストエキスパーツ所属)▽新井里江子(同)▽堀田美樹(JTBサポートプラザ所属)▽西口晴雄(JTBサポートプラザ所属)▽久連松圭子(阪急トラベルサポート所属)▽齋藤恵(旅行綜研所属)本多利衣(トップ・スタッフ所属)▽松下朋子(同)▽伊藤かおり(エスティーエス所属)▽森廣隆志(TEI所属)

観光庁長官表彰、レディー・カガも受賞

第4回観光庁長官表彰の受賞者
第4回観光庁長官表彰の受賞者

「大阪あそ歩」など6件

 観光庁は10月1日、第4回観光庁長官表彰を国土交通省内で行い、大阪コミュニティ・ツーリズム推進連絡協議会や石川県加賀温泉郷のレディー・カガなどが、井手憲文長官から表彰を受けた。4回目となる今回は、50件の選考対象のなかから、国内外6件の個人・団体が選ばれた。

 大阪コミュニティ・ツーリズム推進連絡協議会は、市民が観光客を案内する大阪観光の新しいスタイルとして、市民全体のまち歩きイベント「大阪あそ歩」を定着させるなど、観光振興と地域の活性化に貢献したことが高く評価された。

 この日代表して表彰を受けた同協議会幹事で大阪あそ歩委員会代表理事の茶谷幸治氏は、「まち歩きの取り組みは今までの観光の仕組みや取り組みとは違う、非常にベーシックなもの。派手さのない地道な取り組みが国に評価されてうれしい。今回の大阪の受賞はまち歩きを行う全国の取り組みを代表しての受賞だと思う。大阪は全国の取り組みのモデルの1つになったのではないか」と喜びを語った。

 「レディー・カガ」は、石川県加賀温泉郷で働く女性たちが、温泉郷の情報発信とおもてなしの向上を目指し、発想力豊かなアイデアで結束した観光PRプロジェクトチーム。現在220人の女性が登録され、会員番号を持っている。山代・山中・片山津・栗津の4温泉地が連携し、一体となった取り組みで地域の観光振興に貢献したことが高く評価された。

 会員番号1番の代表、甘池英子さん(山代温泉 瑠璃光・女将代理)は「北陸新幹線が通る金沢だけでなく、加賀もあることをアピールするために始まった」と経緯を話し、「加賀の最大の魅力はおもてなし。北陸のおもてなしはきめ細かい。付かず離れず、かゆいところに手が届くおもてなしにぜひ触れてほしい」とPRした。また、会員番号8番の岸田沙織さん(ゆの宿 白山菖蒲亭・若女将)は4温泉地での連携に関して、「車で10、15分と近い距離なのに、今まで一緒に活動することがほとんどなかった。今回『加賀』として連携し、一緒に活動することで横のつながりができたこともうれしい」と語った。

 そのほかの受賞者(個人・団体)は次の通り。
【国内観光振興】東北六魂祭実行委員会
【国際観光振興】高山市▽シン・チャンヨン▽チャルン・ワンアナノン