観光関連1%増の99億円、VJはJNTOが実施主体に(15年度予算)

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 政府は2015年度予算案を1月14日に閣議決定した。過去最大となる96兆3420億円のうち、観光関連は14年度予算(98億1100万円)比1%増の99億1千万円となった。観光庁が8月にまとめた概算要求では、14年度予算比84%増となる180億700万円を要求しており、厳しい財政状況を受け予算額を抑えられたが、前週に決まった過去最大となる14年度補正予算42億4600万円を合わせると、同44%増の141億5600万円となる。また、復興庁計上の「復興枠」は同12%減の4億8千万円で、観光関連の合計では前年並みの103億9千万円となった。
【伊集院 悟】

 項目別では「訪日2千万人時代に向けたインバウンド政策の推進」分野に同1%減の84億5100万円、「観光地域づくり支援」分野に同20%増の6億2800万円、「観光産業振興」分野に同3%増の6億2千万円、「観光統計の整備」に同7%増の4億6千万円。事業内容は、基本的に概算要求時通りとなった。復興枠は前年度と同じ「東北地域観光復興対策事業」と「福島県における観光関連復興支援事業」。観光庁の担当者は「財源が減っている厳しい状況のなか、なんとか前年超えを確保できた。過去最大の補正予算と合わせて考えれば、十分な予算を確保できたのではないか」と感触を語った。

 「訪日2千万人時代に向けたインバウンド政策の推進」のうち、訪日旅行促進事業(ビジット・ジャパン事業)と、国際会議(MICE)の誘致・開催の促進、日本政府観光局(JNTO)運営交付金は合わせて同5%減の80億2900万円。15年度からビジット・ジャパン(VJ)事業とMICE関連は、地方連携などの一部を除いてJNTOが事業の実施主体となることから、VJ事業とMICE事業は単独では減額となっているが、その分、これまではほぼ人件費だけであったJNTOの運営費交付金が、大幅な増加となっている。担当者は「JNTOが主な実施主体となることで、JNTO海外事務所で現地ニーズを踏まえ、直接契約できるようになり、効率的になる。より少ない額で同様の効果が出せるようになるはず」と語る。

 ビザ要件緩和を契機とした集中的なプロモーションや、航空路線・クルーズ船寄港拡大と連動したプロモーションなどを行っていく。なお、既存の重点14市場にフィリピン、ベトナム、インド、イタリア、ロシア、スペインの6市場が追加され、重点市場は20市場に拡大した。

 新規事業の「広域観光周遊ルート形成促進事業」に3億400万円、「ICTを活用した訪日外国人観光動態調査」に1億円。訪日外客の動態調査を実施し、新たな広域観光周遊ルート造成などに活かす。そのほか、「通訳ガイド制度の充実・強化」に同6%増の2千万円となった。

 「観光地域づくり支援」分野では、新規事業の「地域資源を活用した観光地魅力創造事業」に2億9千万円を計上。継続事業の「観光地域ブランド確立支援事業」に同6%減の2億5700万円、「観光地ビジネス創出の総合支援」に同39%減の4400万円、「観光地域動向調査事業」に同4%減の3800万円。

 「観光産業振興」分野では、新規事業の「旅館の経営改善・情報発信促進事業」に2700万円を計上。前近代的な経営からの改善を促すため、大学と連携し、旅館経営の専門家や行政など産学官のワーキンググループで「旅館経営モデルカリキュラム案」を作成・普及していく。また、認知度向上のため、外国人への情報発信に力を入れていく。継続事業の「ユニバーサルツーリズム促進事業」は同4%減の3500万円となった。

No.391 旅館経営教室(3)―「労働時間管理」 - 「稼働対応労働時間制」を提案

旅館経営教室(3)―「労働時間管理」
「稼働対応労働時間制」を提案

 社会の目が長時間労働や未払い賃金に対して厳しさが増すなか、宿泊業界も現場でサービスを提供するスタッフの「働き方」の問題が大事になっている。今回は「旅館経営教室」の第3弾として、「労働時間管理」をテーマに、工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が新たに「稼働対応労働時間制」を提案する。細かく変動する現場の稼働状況に機敏に対応でき、これまで以上にサービス産業の“現場の実態に合った”労働時間管理が可能になる画期的な方法だ。

【司会=本紙編集長・増田 剛】

 
 
 

 旅館やホテルでは、商品や単価、集客などについて、これまで数多くの議論が展開されてきました。しかし、今後の宿泊業界では、これらに加え、実際にサービスを現場で提供しているスタッフの「働き方」の議論をもっと蓄積していかなければ、会社はいずれ足元から淘汰されます。これは、宿泊業のほとんどのサービスが、結局のところ、現場で働いているスタッフたちの人手によって提供されているからです。

 同時に、昨今の若年労働力の深刻な不足から、仕事を求める人も、これまで以上にこの働く条件を厳格に見定めるようになっています。何か不安な情報がちょっとあるだけで、会社になかなか良い人材が集まらなくなるだけでなく、今いる有能なスタッフまでもがより良い労働条件を求めて離職していきます。つまり、より能力が高い人材で、より良い品質のサービスを、他社よりも効率的に提供していこうとすれば、会社はこの働く方法や環境、条件の整備により一層の努力をしていかなければなりません。…

 

※ 詳細は本紙1574号または1月27日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

過去最大の42・5億円、宿泊経営の改善にも着手(観光関係14年度補正)

 政府は1月9日、2014年度補正予算を閣議決定した。国土交通省全体の予算5451億円のうち、観光関連は「地方が直面する構造的課題等への実効ある取り組みを通じた地方の活性化」のなかの「観光の振興」に42億4600万円を計上し、過去最大の額となった。

 観光関連の内訳は、「地域観光振興緊急対策事業」に5億3千万円、「訪日2千万人に向けた新規インバウンド需要創出事業」に34億1600万円、「地域経済活性化に資する放送コンテンツ等海外展開支援事業」に3億円を計上した。

 「地域観光振興緊急対策事業」では、地域の観光振興をはかるため、(1)広域観光周遊ルートの形成に向けた取組体制の早期構築(2億7千万円)(2)観光分野における地域経済の「見える化」の推進(1億円)(3)「ふるさと休日」等の設定に向けた休暇取得促進に対する取組支援(1億円)(4)観光産業における人材の育成等(6千万円)――に取り組む。

 「広域観光周遊ルートの形成に向けた取組体制の早期構築」は、15年度の通し予算にも盛り込まれ、前倒しの実施となる。東京周辺やゴールデンルートに集中する訪日外国人が不便を感じずに地方を周遊・滞在できるように、ニーズ調査や、地域の課題把握などの基礎調査をはじめ、協議会の設立、計画策定、受入環境の整備・滞在コンテンツの充実、情報発信などを行う。

 「観光産業における人材の育成等」では、宿泊業経営者を対象に、経営に関する知識やノウハウ習得、意識啓発のための教材を作成。年度内の3月末までにそれらを活かしたセミナーやシンポジウムを地域ブロックごとに開催し、15年度以降につなげる。

 「観光分野における地域経済の『見える化』の推進」では、5―10のモデル地域を選定し、公的統計個票データと大学・地域金融機関などによる民間独自データの集計・分析を実施する連携プロジェクトを支援。先進事例の調査・分析手法の普及をはかる。

 「訪日2千万人に向けた新規インバウンド需要創出事業」では、年度予算による途切れを解消し、切れ目のない集中的なプロモーションを目指す。(1)桜のシーズンなどに向けた集中プロモーション(2)ビザ緩和と連動したプロモーション(3)航空路線の新規就航などと連動したプロモーション(4)中国沿岸部・内陸部の強化、重点市場追加の前倒し(5)日韓観光交流強化に向けた集中プロモーション――を行う。

 「地域経済活性化に資する放送コンテンツ等海外展開支援事業」は、総務省、経済産業省、外務省と連動して、放送コンテンツの海外展開支援とプロモーションを行う。地方局による海外と共同での旅番組の制作や、日本の映像コンテンツへの字幕づけなどを支援する。

北原茂樹氏が立候補、全旅連次期会長

北原茂樹氏
北原茂樹氏

2月17日、信任投票へ

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(佐藤信幸会長)は昨年12月1日に開いた選挙管理委員会(住友武秀委員長)で、次期全旅連会長に立候補の届け出のあった常務理事で、京都府旅館ホテル生活衛生同業組合理事長の北原茂樹氏(旅館こうろ)の届出書類の審査を行い、受理した。立候補者が1人のみのため、2月17日に東京都千代田区の砂防会館で開く理事会の席上で信任投票を行う。

 北原氏は所信表明で、佐藤体制8年間のなかでNHK受信料の取りまとめ委託業務の締結や、全国旅館会館の耐震補強工事によるテナント収入の安定的な確保など、財政基盤の立て直しへの取り組み、固定資産評価の見直しの前進、東日本大震災にともなう東京電力との損害賠償交渉の成果などを高く評価。そのうえで、今後小規模施設も対象とされる可能性のある耐震補修工事について、補助金による補填などを、日本旅館協会など関連団体や国会議員などと連携、協力しながら粘り強く闘い抜く覚悟を述べ、「国土強靭化」「防災大国日本」「世界一安全な観光立国の実現」を旗印に、旅館・ホテルが防災拠点であり、最適な避難所であることを訴え、国民の理解を得ていくことを最優先課題として上げた。

 重点事業としては、(1)地方創生(2)人材育成――を掲げる。また、組織強化として執行部の若返りや、事務局の効率的な運営にも取り組んでいく。

 北原氏の主な経歴は次の通り。

 1985年6月京都府旅館環境衛生同業組合理事、86年6月同青年部長、95年6月同会計理事、2001年京都府旅館生活衛生同業組合副理事長、03年6月全国旅館生活衛生同業組合連合会常務理事、07年6月同参与、09年6月同理事などを経て、11年6月から京都府旅館ホテル生活衛生同業組合理事長、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会常務理事を務める。

400年の時を越えて

 徳川家康公薨去400年を迎える2015年。生誕の地である岡崎から、出世を遂げた浜松、大御所となった静岡へ。節目の年である今年は各地でイベントも開かれ、ゆかりの地をめぐり、家康公の描いた軌跡を辿るのも面白い。

 家康公は都市計画や文化醸成でも功績を残した。江戸城を中心とした街並みは現在の東京の都市基盤となり、遺言により造営された日光東照宮は、世界遺産に認定された。その場所が今、世界各地から訪れる観光客でにぎわうようになるとは、まさか夢にも思わなかったかもしれない。

 はるか400年の時を越えて人々が集い、変わらぬはずの場所に、また新しい光を観る。歴史をめぐる旅は、今を見つめる旅でもある。時空を経たからこそ、出会える風景がそこには広がっている

【森山 聡子】

観光大国の元年に、全産業の総力結集へ(JATA・田川会長)

今年の抱負を語る田川会長
今年の抱負を語る田川会長

 日本旅行業協会(JATA)は1月7日、2015年初の定例会見を開き、田川博己会長が今年の市場動向の見通しやJATA活動の方向性について語った。田川会長は「観光大国」という大きな目標に向けて、今年は節目の元年になると言及。「ツーリズムだけではなく、全産業の総力を結集できるような流れを作るため、JATAとしても発信していきたい」と抱負を述べた。

 昨年の14年については、国内旅行が順調に推移したことを報告。「1年間の旅行需要を見て、旅行そのものに対する考え方が少し変わったと感じる。震災を経て、日本をもう一度見直そうという機運もあり、ライフスタイルのなかにしっかり旅行が入り込んだ印象がある。また、団塊の世代が65歳を超え、本格的に動き出したという感想を持った」と振り返った。一方、海外旅行は「円安が吹き荒れた年」と総括。取扱高はハワイや欧米が好調であまり影響はないが、中・韓国の不調などもあり、海外旅行者数は1700万人を割る可能性もあるとした。

 15年の市場動向は「インバウンド、アウトバウンド合わせて3千万人が現実のものとなり、3千万人双交流時代が到来する。将来、ターニングポイントだったといわれる年になると思う」と展望した。訪日旅行は引き続き数を伸ばすとともに、富裕層の旅行者が増加し、海外旅行は日韓・日中の政情が安定すれば旅行者数は回復するとみる。「円安は当面続くと思うが燃油は下がっているので、海外旅行の単価が上がる要素はあまりない」と述べた。国内旅行は3月14日の北陸新幹線の開業が大きなインパクトになると強調。「日本の真ん中を周遊する新しいルートができる。また、高野山開創1200年や姫路城の改築、秋の5連休など好材料がある」と期待した。

 JATAの15年の活動については、国内は「東北の復興なくして国内旅行の再生はない」とし、10年、15年のスパンで継続して東北の旅行需要回復に取り組んでいく。宿泊旅行の拡大は、外国人旅行者を地域へ送ることで数の増加を目指すとしたが、訪日旅行は質が大きな問題だと指摘。「JATAが展開するツアーオペレーター品質認証制度が世界にうまく伝わっていないので、しっかりと取り組みたい」と述べた。

 海外旅行は需要喚起と政策提言に注力する。「本格的に海外旅行者数2千万人達成の施策に取り組む必要がある。海外旅行の政策提言はJATAにしかできない。改めて、なぜ日本人は海外旅行をする必要があるのかを考えたい」とし、MICEやビジネス需要を中心に議論していく考えを示した。

24人が新成人、一足早いはとバス成人式

笑顔あふれる新成人のバスガイドたち
笑顔あふれる新成人のバスガイドたち

 はとバス(中村靖社長、東京都大田区)は1月9日、成人の日より一足早く、毎年恒例の成人式を本社で開き、バスガイド24人の成人を祝った。

 1962年から始まった恒例行事で、新春の風物詩としてすっかり定着。毎年、祝日にあたる成人の日が業務多忙のため、各自治体の式典に出席できない場合があることから、一足早く同社独自の成人式を行っている。

 今年の成人ガイドは山形、宮崎、鹿児島など16都道府県出身の24人。体調不良の1人を除く23人が参加し、寒空の下にも関わらず、新成人の元気な笑顔があふれた。本社車庫での記念撮影後、バスに乗車して明治神宮へ移動。本殿で参拝し、玉串奉納、絵馬記入を行った。

 鹿児島県鹿児島市出身の栗野亜美さんは現在、東京都内に加え、山梨県なども案内。「責任が重くなるので、大人として落ち着いて行動できるようにしたい」と抱負を語った。また、現在、都内に加え、千葉県の房総半島や日光なども案内する平泉絵理さんは福島県郡山市の出身。平泉さんは、原発事故の影響で引っ越しを余儀なくされた祖父母を、年に1回ははとバスに招待し、孫娘の立派に成長した姿を見せている。「福島を含め地方から東京に出て来た人に、元気を与えられるようなガイドになりたい」と熱い想いを語った。

11月の外客売上160%増、アジア圏に高額衣料人気(日本百貨店協会)

 日本百貨店協会がこのほど発表した、2014年11月の外国人観光客の売上高・来店動向によると、調査対象の外国人観光客誘致委員会委員店46店舗の外国人観光客の総売上高は約92億1千万円で、前年同月比156・4%増と大幅に増加した。冬物衣料を中心に、高額品衣料が好調で、アジア圏からの訪日観光客は、ハイエンドブランドを好んで買う傾向が続いていると分析する。

 昨年10月からの外国人向け消費税免税制度改正で新しく対象となった化粧品や食料品などの消耗品の売上総額は約11億1千万円で、全品目の総売上高の12・1%にあたる。新しく対象となった消耗品を除く、一般物品売上高は同125・4%増の約81億円。購買客数は同179・8%増の約11万8千人と大幅に増加した。一方、1人あたりの購買単価は、同8・4%減の約7万8千円と減少している。

 免税手続きカウンターの来店国別順位はトップが中国本土で、2位が台湾、3位が香港、4位が韓国、5位がタイ、6位がシンガポール、7位がマレーシアと続いた。

 外国人観光客に人気のあった商品は1位がハイエンドブランドで、婦人服飾雑貨、婦人服、化粧品、子供服・雑貨と続いた。

双方向の推進強調、“アウトバウンドに関心を”(OTOA)

大畑貴彦会長
大畑貴彦会長

 日本海外ツアーオペレーター協会(OTOA、大畑貴彦会長)は1月7日、東京都内で各国の駐日大使や業界関係者らを招き、2015年新年会を開いた。大畑会長は、海外旅行と訪日旅行の双方向の推進を強調し、「アウトバウンドに関心を」と訴えた。

 大畑会長は、14年の海外旅行市場はエボラ出血熱や円安などが影響し、厳しい事業環境だったと振り返った。一方、訪日旅行は新しいビジネスチャンスになり得る反面、「訪日外国人旅行者の増加で、優秀な日本語ガイドが日本への旅行の添乗業務を行うため、現地での日本人観光客のためのガイド不足と質の低下が叫ばれる国も出始めた」とし、「民間だけでは限界がある」と観光庁や各国の観光関係省庁への協力を求めた。

 来賓の観光庁の蝦名邦晴審議官は「OTOA会員の皆さんが海外の現地で培ってきた豊富なネットワークやアレンジ力が観光立国の大きな戦略になると期待している。ツーウェイツーリズムに向けて、皆さんの力が必要だ」とあいさつした。

 また、日本旅行業協会(JATA)の田川博己会長は「昨年は海外渡航自由化50周年だったが、もう一度、先達がほとんど日本人のマーケットがなかった時代にどう旅行者を増やそうかと考えた原点に戻る必要があるのでは」と述べ、「海外旅行者数2千万人に向け、JATAとOTOAが一緒に考える節目の年にしたい」と語った。

3月1日から全線開通へ、常磐道

 常磐自動車道の常磐富岡インターチェンジ(IC)―浪江IC間14・3キロが3月1日に開通する。今回の開通で同自動車道は全線開通し、いわき市内から仙台市内までの所要時間は約30分短縮され、約2時間で結ばれる。

 首都圏と仙台圏とを結ぶ常磐道と東北道の距離はほぼ同じ。ダブルネットワークの完成で、事故や災害、異常気象時の代替ルートとしての機能も期待できる。

 福島県内では震災以降、浜通りの通行は内陸部への迂回を余儀なくされていたが、全線開通で、相馬―いわき間が約1時間短縮される。