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「提言!これからの日本観光」 観光は「文化活動」

2021年3月6日(土) 配信

 「観光」はその語源から見ても、また、その展開効果からみても重要な文化活動であり、「経済」活動であると考えられる。なぜならば、まず観光は人的交流を促進して地域社会を活性化させる活動だからである。人的交流の積み重ねが「文化」を創生してきたことは歴史に照らして間違いがない。日本文化を形成した奈良時代の文化は大陸諸国との活発な人的交流で形成された史実もこのことを物語る。

 次に観光は「経済」活動としても大きい効果をもたらす。観光庁の推計によれば年間直接効果約26兆円、間接効果まで含むと約50兆円に及ぶと言われる。国が観光立国政策を国策として取り上げた動機も貿易収支の改善という経済効果に着目したからである。

 一方、観光は単なる「遊び」に過ぎないと考える人が依然、多いことも残念ながら事実だ。

 筆者が中部広域観光推進協議会の事務局を担当したころ、拠出金の募金行脚をした時のことである。中部を代表する経済団体に拠出金のお願いに行ったところ、事務局のナンバーツーに相当する方から「観光などに金は出せない」と言われた。

 また、ある有力財界人から「今忙しいから観光などやる暇はない。暇な人に取り組んでほしい」、国内有数の観光地に本社を置く国際的大企業から「当社は先端産業メーカーで観光とは何の関係もないから資金拠出には応じられない」と文書で回答され、門前払いとなった口惜しさを今でも忘れることができない。

 現在は、観光の経済的側面に主として注目してのことではあるが、国が「観光立国」を国策に掲げて努力を重ねたこともあって偏見も変わってきた。

 一方、最近のコロナ禍による外出自粛の際、一部に「観光のような不急不要の外出」という表現を見て、まだ観光への理解が充分でないことを知った。その反面、国が観光の経済効果に着目してGo Toキャンペーンを展開するなど観光への経済活動としての評価は逆に高まってきた面もあり、観光への評価が二分されてきた感覚を覚え、観光関係者の1人として複雑な心境である。

 しかも、ここへきて文化功労者に永年観光事業に功労のあった方々が選ばれた。筆者は政権よりの人選が国会で議論されて知ったが「個々の人選に関してはコメントを差し控えたい」と思う。しかし、観光事業者が文化功労者に選ばれたことに大きい意義を見出すのである。即ち観光が「文化」活動であることを国が認知したことの表れで、そのことを内外に示した今回の任命は観光事業者にとって画期的なことと考えるからである。

 観光はこれまでどちらかと言えばその経済的側面即ち「儲かる」仕事としての評価と、「遊び」の要素が人々を観光に誘引してきたと思う。もちろんこれも観光の重要な側面ではあるが、人的交流促進という「文化」活動として人々が観光に参加することが望ましい。その道を今回の授賞が拓いてくれたと考える時、観光関係者の一員として誠に感慨深い。

須田 寛

 

日本商工会議所 観光専門委員会 委員

 
須田 寬 氏
 
 
 
 

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