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【特集No.520】べっぷの宿 ホテル白菊 不要な風俗営業の免許を返納

2019年4月11日
編集部:増田 剛

2019年4月11日(木) 配信

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客の強い支持を得て集客している宿の経営者と、工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が、その人気の秘訣を探っていく対談シリーズ「いい旅館にしよう! Ⅲ」が今号からスタートする。第1回は、大分県・別府温泉の「べっぷの宿 ホテル白菊」の西田陽一社長と、各部署の責任者が出席して座談会となった。風俗営業の免許が必要ない宿泊施設は免許を返納する動きや、人手不足が叫ばれるなか、「若いスタッフをいかに確保するか」などを探った。

【増田 剛】

 ――別府市旅館ホテル組合連合会(旅館組合)は風俗営業の免許が不要な宿泊施設については免許返上に向けて動かれています。

西田:昨秋から別府警察署とも相談しながら、「接待」をする宿泊施設は風俗営業の許可をしっかりと取って商売する。一方、「接客」に徹している施設は風俗営業の許可が必要ないので免許を返納する。曖昧だった部分を明確にしようと進めています。

内藤:接待と接客の違いはなんですか。

西田:2010年に定めた警察庁の解釈基準では、「接待は、特定少数の客の近くにはべり、継続して、談笑の相手になったり、酒等の飲食物を提供したりする行為」とあり、風俗営業許可が必要になります。「はべる」とは、お客様の横でしなだれかかるようなイメージです。

 これに対して、「お酌をしたり水割りを作るが速やかにその場を立ち去る行為」や、「客の後方で待機、またはカウンター内で単に客の注文に応じて酒類等を提供するだけの行為および、これらに付随して社交儀礼上のあいさつを交わしたり、若干の世間話をしたりする程度の行為」は接待に当たらないとの解釈で、「接客」になります。これらは客室係が食事の際に普通に提供しているサービスです。

内藤: 「旅館は接待をするから風俗営業の許可が必要だ」と当たり前のように思い込んでいましたが、多くの旅館がおもてなしでサービスしている行為は、「接待」ではなく「接客」ということですね。

西田:そうです。風営法をしっかりと勉強することによって、私たち旅館業界の多くの施設は、必要のない風俗営業の免許を保持していたことに気づきました。

 ――風俗営業の免許を取っていることで具体的に不利益を被ったことはありますか。

西田:16年に発生した熊本地震によって大きな被害を受けましたが、風俗営業の免許を持っていることで、雇用調整助成金の対象から外されました。国への陳情などを行い、ようやく対象業種となりました。

 グループ補助金や消費税増税のポイント還元制度も当初、対象外でした。観光は「基幹産業」と言われつつも、「補助制度が必要なときには対象外」という現実もこれまでありました。

 ――旅館組合は具体的にはどのようなことをしているのですか。

西田:別府料飲協同組合とは「従業員派遣業務協定書」を交わしました。地元の飲料店が宿泊施設にコンパニオンを派遣する際には、「接客」の行為のみの条件で飲食店と契約しました。警察署にも説明し、理解を得ています。

内藤:旅館業には若いスタッフが必要で、その多くが女性に支えられています。いい人材を採用するうえでも、イメージが悪い風俗営業の免許は返納した方がいいと感じていました。

西田:「従業員も誇りを持って働ける産業に育てていきたい」という思いと、「観光業、宿泊業が国の根幹を担う産業としてふさわしい地位や位置づけとして認めていただきたい」という思いから活動を始めました。

 ――別府には外国人の旅行者も多いですね。

西田:落し物などで外国人旅行者が訪ねていくケースも増え、警察署も多言語での対応に苦慮していました。そこで、旅館組合の会員施設のフロントに落し物を記載する英訳した用紙を置きました。外国人旅行者はあらかじめ記入して警察署に届けることで、作業の軽減にも貢献しています。

 さらに、観光案内を求めて警察署を訪れる外国人旅行者には、外国人専用の観光案内所を紹介しています。英語などで書かれた地図も、市内の警察署や派出所にも置くようにしました。

内藤:これまでは個別に動いていた警察と旅館組合が連携することで、外国人旅行者にも安心感を与え、素晴らしい取り組みだと思います。……

【全文は、本紙1751号または4月17日(水)以降日経テレコン21でお読みいただけます。】

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