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「女将のこえ209」山口 由紀さん、グランディア芳泉(福井県あわら温泉)

2018年4月22日(日) 配信

 

山口由紀さん グランディア芳泉

3世代が笑顔で活躍

 大女将の君子さん、女将の由紀さん、若女将の良子さん。3世代が活躍する旅館は意外と珍しい。3人そろって取材にお付き合いいただいたのだが、互いを敬う、世代を超えた人間関係の良さが伝わってきた。
 

 毎日、3世代家族そろって賑やかに夕食を取るそうだ。君子さんは、由紀さんを実の娘より可愛いと言い、良子さんを実の孫より可愛いと言う。目上の人間から先に人を可愛がるのは、伸びる組織の共通点である。
 

 グランディア芳泉は、初期の頃は町の中心部で営んでいたが、庭と駐車場のあるゆったりした宿にしたいと願い、1972年に少し離れた田んぼの真ん中に引っ越した。
 

 同時に、女性より男性風呂が広いのが当たり前の時代に、同じ大きさの大浴場を併設。後に、全国に先駆けて露天風呂付き客室を12室設け、連日満室にした(現在は同33室)。「まずやってみる」という柔軟性と先見性を持つ旅館だ。
  

 今では115の客室と、コンベンションホール、昨年リニューアルした大浴場「天上のSPA」、別邸「個止吹気(ことぶき)亭」、離れ「ゆとろぎ亭」などを有し、団体客、個人客、カジュアル、高級と、多様なニーズに対応する。
 

 由紀さんは旅行代理店で働いた後、22歳で嫁いだ。夜遅くまで働く定休日のない生活に驚くも、次第に由紀さんを訪ねて来館する顧客も増え、張り合いの一つになった。
 

 そして、息子の高澄(たかずみ)さんが望んで自館に入社し、数年後に嫁の良子さんを迎えたとき、さらには孫が生まれたとき、由紀さんのスイッチは明らかに切り替わったという。「それまではお嫁さん的な意識がどこかにありましたが、『よりよい形でバトンタッチを』と当事者意識になりました」。
 

 その一つとして、2年前から生産性向上活動にも力を入れている。例えば夕食時、レストランは2部制を止め、好きな時間に来てもらうようにした。派生して料理やシフトも見直す。これで毎日2時間を要したテーブルセッティングが不要となり、社員と顧客の満足が高まった。
 

 「新しい感覚に付いていくのは社員だけではなく私も大変でした。でも、社長である主人がみんなの意見を吸い上げる人なので活性化しますし、この半年で『今までと違う』と、成長を実感できるようになりました」。
 

 次世代の良子さんは、20代の若さで「この日本文化をつなげていきたい」と語る。由紀さんが将来目指す「よりよい形のバトンタッチ」は、やりがいと希望で縁取られているようだ。

(ジャーナリスト 瀬戸川 礼子)

山口 由紀さん

福井県
あわら温泉グランディア芳泉(ほうせん)

住所:福井県あわら市舟津43-26▽電話:0776-77-2555▽客室数:115室(700人収容)、一人利用可▽創業:1964(昭和39)年▽料金:1泊2食付1万8千円~(税別)▽温泉:ナトリウム泉▽由紀さんが会長を務める「あわら温泉女将会」のオリジナル日本酒「女将」は販売4年目。今月末にはyoutubeで動画もアップされる。

コラムニスト紹介

ジャーナリスト 瀬戸川 礼子 氏
ジャーナリスト・中小企業診断士。多様な業種の取材を通じ、「幸せのコツ」は同じと確信。働きがい、リーダーシップ、感動経営を軸に取材、講演、コンサルを行なう。著書『女将さんのこころ』、『いい会社のよきリーダーが大切にしている7つのこと」等。

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“「女将のこえ209」山口 由紀さん、グランディア芳泉(福井県あわら温泉)” への 1 件のフィードバック

  1. 昨年の秋妻とお伺いさせていただきました。あまりのお美しさに驚愕しました❤少しだけお話でき感激しました❗先日市ヶ谷の防衛省で福井県の物産展やってましたね、たくさん売れてましたよ。

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