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「トラベルスクエア」瓜田に履を納れず李下に冠を正さず

2021年8月23日(月) 配信

 「面倒くさい話、蒸し返すなよ」とか「余計なお世話、もういいよ」と顰蹙を買いそうだし、話題の注目度も下がっているとは思うのだが、やはり一言残しておきたい。

 例の文春砲に迫撃された外食企業トップ5人(うち1人は加工食品メーカー)の掟破りの会食事件である。

 7月8日、菅首相は4度目になる緊急事態宣言を発出。とくに、飲食店にまつわる規制が強化され、会食は同一グループ2名以内、滞在時間が90分と厳しい内容だった。それが午後7時のこと。

 それから2時間後の9時前後に品川のある料亭で、外食産業トップのミーティングが始められた。終わったのが3時間以上たったあと。会食人数も時間も政府の要請を破っている。この5人の中に現職の衆議院議員もいたというのだから、マスコミが一斉に喰らい付くのは無理もない。

 各トップが自らを減給処分にしたり、公式のお詫びを示すなどの後始末を行ったが、この5社のみならず、業界全体が「安いイメージ」と捉えられてしまう危険性もあった。ということで、「人の振り見て我が振り直せ」で、我らが宿泊業界の皆さんにも、改めて注意を促したい。

 コロナ対策、業界への助成問題、Go Toの行方、討議すべき事柄は山のようにあるから、業界横断的な会議はどうしても必要だし、不要不急と僕は微塵も思っていない。かなりの数の会議や打ち合わせがリモートになってはいると思うが、やはり会って話す方が早い案件も多いだろう。

 だからこそ、そういう集まりはぱっと開き、短時間に能率的に終わらせることが必要だろう。

 できるだけ、飲み会を兼ねてというのは避けたいが、どこかで誰かが、脇を甘くして、それがすっぱ抜かれたら、大事になる。いやな提案だが、喉元すぎて熱さ忘れる、「人の噂も七十五日」くらいに油断も起きる。

 大体、休業補償もGoToキャンペーンも財源は税金でしかない。

 今回の五輪騒動で唯一、僕が希望を持てたのは、広告代理店などへの丸投げ体質、手数料などの費目での莫大なお金の還流の仕組みに、国民が怒りを覚えたことだ。

 なんだか、国家的な事業の大半がタックスペイヤーとしての国民のためではなく、タックスイーターとしての中間業者のためだったとなれば、怒るよね。

 タックスの割り前が欲しいということに異議はないが、もらうにはタックスペイヤーたる国民に納得のいくビヘイビア(振る舞い)を期待したい。旅館、観光関連のトップ、幹部の皆さん、ここはひとつ「瓜田に履を納れず李下に冠を正さず」(本当はしていなくても、したように見えてしまうことも慎めなさい、の意)をお願いします。

 

コラムニスト紹介

松阪健氏

 

オフィス アト・ランダム 代表 松坂 健 氏=1949年東京・浅草生まれ。1971年、74年にそれぞれ慶應義塾大学の法学部・文学部を卒業。柴田書店入社、月刊食堂副編集長を経て、84年から93年まで月刊ホテル旅館編集長。01年~03年長崎国際大学、03年~15年西武文理大学教授。16年~19年3月まで跡見学園女子大学教授。著書に『ホスピタリティ進化論』など。ミステリ評論も継続中。

 

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