21年1月の訪日外客数、前年同月比98.3%減の4万6500人 前月比では8カ月ぶりの減少

2021年2月19日(金) 配信

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 日本政府観光局(JNTO)が2月17日(水)に発表した2021年1月の訪日外客数(推計値)は、前年同月比98.3%減の4万6500人となり、16カ月連続で前年同月を下回った。

 新型コロナウイルス感染拡大で大幅な減少が続いていたなか、昨年6月に前月比で増加に転じ、回復傾向が続いていた。だが昨年12月下旬以降、新規入国の一時停止の措置などが取られ、今年1月中旬からはビジネストラックとレジデンストラックの運用も停止していることにより、前月の5万8700人から再び減少した。

 日本人の出国者数(推計値)は、同96.5%減の4万8700人だった。

〈観光最前線〉鞍ヶ池公園にアウトドア施設誕生

2021年2月19日(金) 配信

スノーピーク豊田鞍ヶ池(仮称)

 アウトドア製品メーカーの「スノーピーク」は今春、愛知県豊田市の鞍ヶ池公園にアウトドア体験施設「スノーピーク豊田鞍ヶ池(仮称)」をオープンする。

 ハイウェイオアシスに隣接する高台には、キャンプ用品やアパレルアイテムを豊富に取りそろえる直営店とレストラン「Snow Peak Eat」が誕生する。

 芝生に覆われた若草山には、宿泊できるモバイルハウス「住箱―JYUBAKO―」を、林間のエリアには、屋外の開放的な空間で仕事やミーティングができる「CAMPING OFFICE」を展開する。

 訪れる人それぞれに合わせた体験を提案することでアウトドアの入り口となり、緑豊かな公園内で、自然をより身近に感じられる施設を目指す。

【野田 雄】

〈旬刊旅行新聞2月11・21日合併号コラム〉店舗を訪れる理由 専門家の“ユーザー目線”からの助言

2021年2月18日(木) 配信 
 

 昨年末にホンダのハンターカブ125㏄を納車した三男坊が、今度は「ツーリングキャンプをやる」というので、近くのアウトドア用品専門店に出掛けていった。

 
 テントや寝袋、ナイフなど、“ぼっちツーリングキャンプ”に必要なものをそろえる買い物だがテント張りについては、まったく素人なので、店内に展示されたテントを眺めるだけでは、決め手がない。このため、店員に「どれが丈夫で、組み立てやすいのか」などの説明を受けた。

 
 我われが訪れたアウトドア用品専門店では、スタッフがテントの張り方を一から実演してくれた。

 
 ナイフの扱い方を説明してくれたスタッフも、「単に研修を受けただけ」といったレベルではなく、何度も自分で経験し、修羅場を潜り抜けたことで体得したノウハウをさりげなく教えてくれ、選ぶ際に大変役に立った。

 

 
 私は若いころから、買い物をするときに、店員にアドバイスしてもらうことを極端に避ける傾向があった。

 
 とくに、洋服屋さんでは、強引に試着させられ、どう見ても似合ってもいないのに「とても似合っています」などと“店側の経営的な目線”で言われ、断れなくなって買ってしまい、何度も後悔した経験があるからかもしれない。

 
 しかし、私も年齢と数々の失敗を重ね、大きな授業料を払い続けるうちに、自分が知らないことは専門分野に長けた人(プロフェッショナル)の助言を聞いた方が、結果失敗が少ないことに気づき始めた。

 

 
 近年は、店舗よりも、インターネットでの販売が主流になりつつある。この傾向はコロナ禍でさらに加速しているのだろう。自分が熟知している製品や、日ごろよく買うものはネット通販で購入する方がラクで、問題もない。だが、テントやナイフなどは、知識が少ないまま買ってしまってから後悔するのもいやだ。

 
 実際に訪れたアウトドア用品専門店の店員からは、テントやナイフのメンテナンスのやり方などを懇切丁寧に“ユーザー目線”で説明していただいた。

 
 こんな話をタダ(無料)で聞けるなんて素晴らしいと思い、さまざまな質問をしながら一生懸命に聞いた。

 

 
 最近は、旅先でもまず観光案内所を訪れて、本当に美味しい店をスタッフに聞くようにしている。最初はパンフレットを見ながら説明してくれるが、「地元の人がよく行く、安くて美味しい店はどこですかね」と小声で聞くと、そっと教えてくれることが多い。その土地の名物を味わうことを主目的に訪れているので、大失敗は避けたい。最終的には自分の勘が頼りなのだが、地元のことは、やはり地元の人が一番知っている。旅人は常に謙虚でなければならない。

 
 また、旅先の表通りではなく、裏通りにひっそりとある小料理屋を訪れることも増えた。地元の食文化などを、地酒を飲みながら話すことが楽しい年齢にもなってきた。

 
 日々の生活でも、商店街の小さな魚屋さん、肉屋さん、八百屋さんで買う方が豊かな気持ちになる。これもプロによるさまざまな知識やノウハウが得られる楽しみがあるからだ。

 
 今度、引っ越すとすれば、第一条件に「活気に満ちた商店街のある町にしたい」と思っている。

 

(編集長・増田 剛)

 

クラツー、氷の洞窟「サファイア・アイスケーブ」鑑賞のオンラインツアー販売 冬のアイスランドを満喫

2021年2月18日(木) 配信

サファイア・アイスケーブ(画像提供:ヴァイキング)

 クラブツーリズム(酒井博社長)はこのほど、アイスランドの氷の洞窟「サファイア・アイスケーブ」を鑑賞するオンラインツアーを売り出した。首都レイキャヴィーク在住の日本語ガイドと中継をつなぎ、現地カメラマンが撮影した「サファイア・アイスケーブ」をリアルタイムで解説する。

 「サファイア・アイスケーブ」は、ヨーロッパ最大の氷河・ヴァトナヨークトル氷河下に出現する天然の氷の洞窟で、年によって造形具合が異なる。現地の情報によると、今年はここ数年の間でもっとも美しと言われ、天候など条件の良い日に撮影した最新映像を紹介する。また、オーロラの映像も用意し、冬のアイスランドの大自然を満喫できる内容となっている。

 サファイア・アイスケーブ鑑賞のオンラインツアーは日本初の企画とされ、ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」を使って展開する。ツアー名は「お茶の間で楽しめる大自然!サファイア・アイスケーブを訪れる冬のアイスランド」。設定日は、2月27日(土)午後7時30分~8時30分の60分間で、参加費は1人3000円となる。

東日本大震災から10年 3.11新しいショーをスタート スパリゾートハワイアンズ 

2021年2月18日(木)配信

 福島県いわき市のスパリゾートハワイアンズは、震災から10年となる今年3月11日(木)、「絆」をタイトルに掲げた新しいショーをスタートする。

 新しいショーのタイトルは「絆~Holo I Mua~」。Holo I Mua(ホロイムア)は、ハワイ語で、「前に進め!いつでも前向きに行こう」という意味だ。東日本大震災から10年を迎える2021年。新型コロナウイルスの収束も見えない困難のなかでも、観客、スタッフ同士の「絆」を守り抜き、前進していくという強い思いをタイトルに込めた。

 新しいショーは全18曲の構成で、おなじみのテーマ曲「フラガール~虹を~」のほか、東日本大震災から10年のメモリアルソングとして「花は咲く」が初登場する。加えて、力強いタヒチアンダンス、そしてファイヤーナイフダンスチーム「シバオラ」による迫力満点のファイヤーナイフダンスなど、優雅でダイナミックなステージをお届けする30分の構成となっている。また、生演奏ならではの迫力あるポリネシアン音楽、そしてプロジェクションマッピングなどの舞台演出も活用し、ステージをさらに彩り鮮やかに盛り上げる。

オンラインで軽井沢の食文化学ぶ セミナー後は現地へ ハイブリッド型ツーリズム企画

2021年2月17日(水) 配信

軽井沢の歩き方学ぶ(イメージ)

 長野県・軽井沢の着地型旅行会社、軽井沢トラベル&コンサルティング(河野岳代表)はこのほど、オンラインセミナーと現地での旅行を組み合わせた、「軽井沢の歩き方 食文化編」を企画した。コロナ禍のハイブリッド型ツーリズムとして実施する。

 セミナーは、軽井沢出身で各メディア出演も豊富な「軽井沢ヴィネット」編集長の広川美愛さんが案内する。スライドや映像を用い、「軽井沢の食文化」をテーマに歩き方を指南。ZoomやYouTube、また配信会場の「軽井沢書店内カフェスペース」での現地参加もできる。3月のオリエンテーションのほか、4~10月に計3回実施する。参加者には毎回、紹介した「軽井沢の歩き方マップ」をプレゼント。セミナー後は現地散策を楽しめるほか、セミナー参加者限定のスピンオフ企画「軽井沢ツアー」も行う。

 さらに、全3回のセミナーに参加し、各回のテーマに沿った作文を提出した人には「軽井沢の歩き方 マイスター」の免状が贈られる。

 セミナーの日程は、オリエンテーションが3月16日(火)午後7時から。第1回は4月20日(火)、第2回は7月13日(火)、第3回は10月19日(火)でいずれも開始時間は午後7時から。なお、当日の参加ができなくても開催後2週間はYouTubeで視聴が可能だ。

 同社は昨年、「軽井沢の歩き方 歴史編」を企画し、7~9月にオンラインセミナーを全3回実施。全国から112人がオンラインで参加した。22年以降もテーマを変えて開催する予定という。

“行きたい”まちのつくり方 ロケツーリズムで地域が盛り上がる

2021年2月17日(水) 配信

 地域に人を呼び込む手段として、また地域が交流人口を増やし、地域経済を循環させるための手段としてロケツーリズムが注目されている。

 コロナ禍で家で過ごす時間が増え、メディアでの露出が大きな宣伝効果を生み出している地域もある。

 ロケ実績はうまく活用すれば、新たな観光資源を生み出すことや、企業価値の向上にもつながる。

 静岡県・西伊豆町と長崎県島原市に、ロケツーリズムの役割や地域に及ぼす効果などをきいた。

西伊豆町

『ゆるキャン△』モデル地 堂ヶ島のトンボロ

 日本一の夕陽が自慢の静岡県・西伊豆町。一方で、同町は人口減少や少子高齢化が課題となっており、観光客数は年々減少傾向にある。こうした状況を打開するため、2020年ロケツーリズムの取り組みを始めた。

 同町ではロケツーリズムを、「無料でできる地域情報の広告」と定義。「景勝地や観光施設ではないスポットが観光地になるのでは」と考えている。ロケ実績は、ロケ地マップやDVDの作成、ロケハンツアーなどに活用。昨年11月に公開された映画「たぶん」のロケ後には、特別試写会を開催した。今後は、町民や地元企業中心のロケ受入体制を構築する。

ロケ誘致のホンネ ~星野淨晋町長~

 ――町長の目から見た地域の変化は。

 今までは「ここには何もない」と言い続けてきた地元の人たちも、町が全国ネットに出ることで、「うちの町も捨てたものじゃない」という感じに変わりつつあるように感じます。

 ――ロケツーリズムを実施しての手応えは。

 町民の意識が少しずつではあるが変わり始めたという点と、SNS(交流サイト)で夕陽の風景が発信され、夕陽日本一の町と自称している西伊豆町や、伊豆西海岸の認知度が上がっています。
 観光地ですが、西伊豆町といってもすぐに解る人は少ないため、メディア露出増によるロケツーリズムにはとても期待しています。最近では漫画『ゆるキャン△』のモデル地巡りで訪れる食堂もあるようですし、モデル地巡りをした人がSNSに投稿し、それを見た人が来るという好循環も生まれています。

島原市

市のおすすめロケ地島原鉄道「大三東駅」

 長崎県島原市がロケツーリズムに着目したのは、「ロケ地が観光資源となることで、ロケを誘致するたびに新たな観光資源が生まれ、別の層の観光客を得られる」と考えたから。ドラマ、アニメなどは若者向けのものも多く、ロケ地やテーマとなったまちを巡りたい彼らをターゲットにすることで、若い層の旅行需要も喚起したいという。

 19年度からロケツーリズム協議会に本格加入し、映像制作者とのトップ会談には、欠かさず市長が参加しトップセールスを行ってきた同市。20年度は新型コロナウイルス感染症の影響もあり東京での活動ができないなか、映像制作者との連絡調整をウェブ会議中心で行い、最小限の人数でロケハンを実施。21年に放送されたフジテレビ新春特番「有吉くんの正直さんぽ新春スペシャル~長崎・島原」の誘致に成功した。広告換算効果は、市独自の試算で6億3千万円。

 担当者は、「20年度は、テレビ関係13件のロケを受け入れた。各番組を見た人から、『あの店のおばちゃん元気そうで良かった』、『コロナが落ち着いたら島原に行きたい』というコメントをいただいている。コロナ禍で観光での来訪や帰省が難しいなか、今の島原の姿を伝えることができた」と振り返る。

ロケ誘致のホンネ ~古川隆三郎市長~

 ――市長の目から見た地域の変化は。

 新春特番の放送翌日には、番組で取り上げられた小さな中華料理屋に行列ができているのを目の当たりにしました。市民からも、島原の魅力を再発見できたということを多く聞いています。

 ――ロケ誘致の難しさはどうでしょうか。

 島原市は日本の西の端にあるので、映像制作者が気軽に撮影に行ける場所ではないと思います。一方、まちなみ、海、ローカル鉄道などのさまざまなロケーションがコンパクトにまとまっており、域内の移動時間が短い町でもあります。豊富なロケーションで多くのシーンの撮影に対応できるまちとしてPRしていきます。

 ――ロケツーリズムを実施しての手応えは。

 ロケ誘致は、魅力的なロケーションも必要ですが、「人」と「人」とのつながりも重要です。19年5月にロケツーリズム担当者をロケーションジャパン編集部にインターン派遣し、ノウハウを学び、人脈作りを行ってきた成果が、今回の新春特番の誘致のように実を結んでいます。

 私も人脈づくりを意識し、ロケツーリズムの推進をはかっていきます。また、映像制作者から、「火山」や「島原鉄道」を基にした脚本も作れるとの意見もいただいたので、脚本作りも意識し情報を発信していきます。

ロケ実績を観光資源に 人を呼び込む仕掛けとは

2021年2月17日(水) 配信

 地域に人を呼び込む手段として、また地域が交流人口を増やし、地域経済を循環させるための手段としてロケツーリズムが注目されている。

 コロナ禍で家で過ごす時間が増え、メディアでの露出が大きな宣伝効果を生み出している地域もある。

 ロケ実績はうまく活用すれば、新たな観光資源を生み出すことや、企業価値の向上にもつながる。

 ロケツーリズム協議会で版権処理などのノウハウを学び、活用している千葉県茂原市と神奈川県綾瀬市、リーガロイヤルホテル東京のロケ実績の生かし方に注目し、ウィズコロナ時代の観光地づくりも考えた。

茂原市

ロケ地マップとパネルでおもてなし

 千葉県茂原市は2月9日、市内のロケ地を巡るモニターツアーを行った。シーン写真やロケ当時の裏話とともに市内を巡ったほか、21年春以降に全国公開予定の映画「今はちょっと、ついてないだけ」の撮影現場も公開。案内には市が整備した「音声ガイド」も併用した。

 同ガイドは、映画監督の柴山健次氏がシナリオを書き、アイドルの佐武宇綺さんがナレーションを担当。GPSと連動しており、ロケ地に着くと、そこで撮影された作品の情報や裏話などを聞くことができる。

 ツアーは榎町商店街、市役所、旧西陵中学校、旧新治分館、茂原公園を巡った。

 映画「浅田家!」などの撮影が行われた榎町商店街には、ドラマ「あなたには帰る家がある」のロケ地「大和屋旅館」や、ドラマ「パパがも一度恋をした」のロケ地「河野写真館」などが密集。

 市役所1階ロビーには、撮影に訪れた俳優のサインなどを飾るコーナーが設置されている。飾られるサインなどは作品の放送、放映に合わせて変更し、可能な場合は放送日なども公開。展示の変更時には、SNS(交流サイト)を通じ情報を発信している。

 市内でも人気の撮影スポット「旧西陵中学校」では、特別に内部見学を実施した。ドラマ「青のSP(スクールポリス)―学校内警察・嶋田隆平―」(毎週火曜午後9時、カンテレ・フジテレビ系 全国ネットで放送中)などの撮影に使われており、ドラマ「チア☆ダン」撮影時のまま保存されている部屋もある。

青のSP シーン写真

 ツアーの昼食は、「古民家居酒屋もんしち」のロケ弁を用意。栄養士が監修した弁当は、千葉の食材をふんだんに使用し、彩も鮮やか。

 参加者からは、「ロケ地として巡ると、普段とは違う発見がある」、「ロケ地が集積されてきていることが実感できた。来た人をもてなすグルメも早急に開発したい」、「一度作品の舞台になった場所を見てから作品を見返すと、より作品への愛着が湧くので良いツアーだと感じた」などの声が上がった。

なりきりを楽しむ参加者

 ツアーを実施した茂原市は、ロケ地パネルの設置やロケ地マップの提供など、魅力的なロケ地周遊ルートを提案する。既存の観光資源や地元商店を組み込むことで、ロケを入口に茂原市の魅力を発信している。

 市は、今回実施したツアーで得た意見なども踏まえプレミアムなツアーの企画も検討する。さらに地元タクシー会社も、ロケ地を巡るツアー造成の考えを示している。

ロケ誘致のホンネ ~田中豊彦市長~

 ――市長の目から見た地域の変化は。

 ロケ地となることで、日常の風景が魅力的なものになる。多くの人に訪れてもらい、地域が活性化していくことに加え、市民と一体となって受け入れ、協力していくことで地域のにぎわいが生まれています。

 未来を担う子供たちが、好きな俳優が茂原に来たことや、テレビに知っている景色が映ることを喜び、地域への愛着が高まっていることも感じます。

 ――ロケツーリズムを実施しての手応えは。

 市民にもこの取り組みが徐々に認知されており、地域のにぎわいにつながってきていると感じます。また、映画のワンシーンなども権利処理をしっかり行うことで地域資源として活用することができ、地域の魅力の向上につながっています。引き続き、積極的なロケ誘致で「ロケの聖地 茂原」として実績を積み重ね、行きたいまち、住みたいまちとなるよう取り組みます。

綾瀬市

ロケ地ツアーの一コマ

 観光地ではないまちに市外から人を呼び込み、魅力に触れてもらい、地域活性化につなげていく手段の1つとして、ロケツーリズムを採用した神奈川県綾瀬市。2014年に、「市」と市民団体「あやせ市ブタッコリ~ロケ隊(ブタロケ隊)」が「綾瀬ロケーションサービス」を立ち上げ、ロケ誘致に取り組んでいる。

 さらに、ロケ地巡りで綾瀬を訪れた人がグルメも堪能できるよう、ブタロケ隊と商工会、市が3年の歳月を費やし、ご当地グルメ「あやせとんすきメンチ」を開発。綾瀬産の豚肉を贅沢に使った、綾瀬の郷土料理「豚すき」を具材にしたオリジナルメンチカツで、差し入れた撮影隊からも好評という。16年度からは市内店舗で販売し、4年で約7万3千食を販売した。 

 昨年12月までに136作品のロケを受け入れた綾瀬市は、ロケ誘致の取り組みを「市民に知ってもらい、ロケ誘致に協力してほしい」、「市外に発信し、本市の魅力を知るきっかけにしてもらいたい」と、市ホームページなどで撮影実績の公表、市役所1階でのサイン色紙やポスターの展示などを行いPRした。

 17年度からは、全国で初めてシーン写真入りロケ地パネルの設置を進め、現在までに17基を設置。シーン写真の使用許可はさまざまな権利が絡むためハードルが高く、交渉の定石もないため、都度、作品PRなど最大限の協力を誠実に行うことで、利用協力を打診している。

 これまでに4回実施した「綾瀬市ロケ地ツアー」は、延べ151人が参加、毎回定員の2―3倍の申し込みがある人気企画だ。市役所や市内のロケ地、ロケ地パネルを巡るツアーで、昼食時には実際にロケで提供されたロケ弁を味わえる。

 参加者からは「普段入れない所にも行け、撮影の裏話も聞けた」、「身近な綾瀬が有名になりうれしい」、「ロケ地を巡るだけでなくスタッフの方々が色々な趣向を凝らした演出を見せてくれ、とても楽しかった」などの声が寄せられている。

ロケ誘致のホンネ ~古塩政由市長~

 ――市長の目から見た地域の変化は。

 作品のクレジットに「綾瀬市」の名が掲載されることで、誇りを感じる市民が増えていると感じています。ロケ誘致により、「住んでいて良かった」との声も聞かれ、市民の綾瀬市に対する愛着が着実に高まっていると感じています。

 ――ロケ誘致の難しさは。

 東京都内からの交通の便の良さが売りですが、近年では近隣市もロケ誘致に積極的に取り組むようになっており、ロケ誘致のライバルが増えていると感じています。そのようななかで本市を選んでいただくには、事前調整の細やかさから、当日の撮影を円滑に進める支援まで撮影しやすい環境を整えることが大変重要だと認識しています。

 ――ロケツーリズムを実施しての手応えは。

 他の自治体の皆さんは観光名所などがあり、ロケ誘致が直接ツーリズムにつながりますが、本市では有名な観光地が少ないために、ロケ地を観光地とすることで誘客を目指しています。今後もさまざまな観光事業と連携し、新たな観光を創出しながら、他市にはない綾瀬市ならではのロケツーリズムを推進し、ファンを増やしていきたいと考えています。

リーガロイヤルホテル東京

セラーバー

 リーガロイヤルホテル東京(中川智子総支配人、東京都新宿区)は、1994年に開業した。リーガロイヤルホテルグループは関西を中心に展開しており、開業当時は東日本での知名度は高くなかった。このことから同ホテルは知名度アップの方策としてロケ誘致に乗り出し、今では年間で約120件のロケを受け入れ、経済効果は2千万円を超えるという。

 ロケの受け入れに際しては、宿泊客やレストランの利用客に迷惑をかけないよう、「ガーデンラウンジ」などのレストランは営業時間外としている。今では利用者も撮影を楽しみにしており、「今日は何を撮影しているの」などと声を掛けられることも多いという。

 ロケ誘致の実績は、知名度を上げる以外にもさまざまな利益をホテルにもたらしている。

 修学旅行で利用した子供たちがロケ現場を目にして喜ばれることが多く、「御校が宿泊されているときに、ロケが行われるかもしれませんよ」が教育旅行の誘致の際にウリになっている。

 また、ホテルのホームページにロケ実績を掲載しているため、ホテル業界に就職を希望する学生が「○○が撮影されたホテルで働きたい」と志望動機を語ることも多い。さらに職場がロケ地として使われることで、「好きな俳優と同じ空間で働ける」など、従業員のモチベーションを上げる効果も生み出している。

 新型コロナウイルス感染症の流行拡大によって一時ドラマ制作は止まったが、現在はロケも再開。ホテルでは、「半沢直樹」や「大恋愛〜僕を忘れる君と」などの撮影に使われた「セラーバー」が休業中であることから、より積極的にロケ誘致を展開。客室の撮影時に稼働率が下がっていることもあり、周りの客室との調整などにかかる時間が大幅に減少し、ロケの決定率が上がった。

 一方でシーン写真の使用など権利処理の問題があり、ロケ実績を今後どのように活用していくかがこれからの課題。ロケで使用したレストランにそのシーン写真を飾り、同じ席で同じ料理を楽しむなどの体験型商品を生み出すことで、ホテルに来る楽しみをさらに膨らませていきたい考えだ。

ロケ地巡りの醍醐味 見つけた時の感動はひとしお

2021年2月17日(水) 配信

 地域に人を呼び込む手段として、また地域が交流人口を増やし、地域経済を循環させるための手段としてロケツーリズムが注目されている。

 コロナ禍で家で過ごす時間が増え、メディアでの露出が大きな宣伝効果を生み出している地域もある。

 今回は、ロケ地巡りの楽しみ方や、魅力などを「ロケーションジャパン」編集長・山田実希氏が語る。

「ロケーションジャパン」編集長・山田実希氏が語る

ロケ地での一コマ

 映画「ローマの休日」を観て、イタリアのローマで真実の口に手を入れてみる。こんな名シーンを真似ることで、物語の追体験や、特別な思い出の写真が残せることがロケ地巡りの醍醐味。ときには、ガイドブックに載っていないような穴場スポットが見つかることもあります。

 観ていない人にとっては「何もない場所」でも、観た人にとっては特別な場所になるので、そこで“なりきり写真”を撮ると楽しいです。

 また、役者や制作者が通ったというお店で料理を味わうのも、楽しみ方の一つ。こういったお店の多くは地元の人に愛されるおいしいお店。お店の店主に、撮影時の話を聞いてみると、語り部のように当時のことを語ってくれるので、作品のファンにとって非常に貴重な時間になります。

 ファンは「物語の追体験」をするためにロケ地に足を運びます。そこには、好きな役者が居た特別な場所を押さえておきたいというファン心理も働きます。アニメの場合だと、リアルに存在するものを確かめたいという探求心も。いずれにしても、ロケ地が見つかった時の感動はひとしおなので、SNS(交流サイト)などで発信している人が多いです。

 私も映画、ドラマ、旅番組など、年間200タイトル以上(新旧作)のロケ地に行くことがありますが、旅行や出張の際には、必ずロケ地を調べてから行きます。驚くのは、ロケ地に選ばれた場所には、納得の風景が待っているということ。

 なかでもお気に入りは、どのまちも絵になり、食べ物もおいしい北海道。映画「鉄道員」のメインロケ地、幾寅駅(北海道・南富良野町)の景色は忘れられません。グルメのなかでおすすめなのは、富山県黒部市で食べた名水カツサンド。映画「RAILWAYS」の撮影の際、スタッフやプロデューサーが絶賛された一品で、おいしさにビックリしました。

綾瀬市のロケ地看板

 このほかにも、おもてなしや環境整備などが素晴らしいと感じるロケ地は全国にたくさんあります。神奈川県綾瀬市には、ロケ地パネルが設置されていて、誰でも何のロケが行われたのかが分かる工夫がされています。NHKの朝ドラ「あまちゃん」のロケ地、岩手県久慈市には“なりきり”用の衣装の貸し出しがあったり、〝海女絵〟のシャッターアートがあったり、世界感を楽しめる場所があちらこちらに残っています。

 1月からの新ドラマや新アニメでは、アニメ「ゆるキャン△ SEASON2」のポスターに描かれている西伊豆町に注目です。

山田 実希

 

山田 実希 氏

ロケ地情報誌「ロケーションジャパン」 編集長

日本唯一のロケ地情報誌「ロケーションジャパン」の編集長として全国を取材。各地で発足するロケ支援組織や地域産品を活用した物産開発チームの設立にも立ち会う。

ロケツーリズムに注目 地域を盛り上げ人を呼び込む仕掛けづくりとは

2021年2月17日(水) 配信

ロケ地巡りツアーなどにロケ実績を活用する自治体も

 地域に人を呼び込む手段として、また地域が交流人口を増やし、地域経済を循環させるための手段としてロケツーリズムが注目されている。

 コロナ禍で家で過ごす時間が増え、メディアでの露出が大きな宣伝効果を生み出している地域もある。

 ロケ実績はうまく活用すれば、新たな観光資源を生み出すことや、企業価値の向上にもつながる。

 静岡県・西伊豆町と長崎県島原市に、ロケツーリズムの役割や地域に及ぼす効果などをきいた。併せて、ロケツーリズム協議会で版権処理などのノウハウを学び、活用している千葉県茂原市と神奈川県綾瀬市、リーガロイヤルホテル東京のロケ実績の生かし方に注目し、ウィズコロナ時代の観光地づくりも考えた。

ロケツーリズムとは

 2008年から活動を続けるロケツーリズム協議会(藤崎慎一会長)は、ロケツーリズムを「映画・ドラマのロケ地を訪ね風景と食を堪能し、人々のおもてなしに触れ、その地域のファンになってもらうこと」と定義する。目指すのは、実績を活用し、観光客や移住者を増やすとともに、経済効果を上げること。同協議会には、自治体、企業合わせ延べ523団体(20年現在)が参加。年5回東京都内で開く会合では、会員と映像制作者が効果的なロケ誘致をしようと情報を交換し、これまでに多くのロケが決定している。

 自治体関係者は、「ロケ地になることで新しい観光資源ができる」、「宣伝効果の大きさを感じる」などと語る。また、制作者とのやり取りを通じ地域の良さが再発見できたり、撮影された作品を通じ地域住民が郷土愛を高めたりと、さまざまな効果を地域にもたらしているという。

 ロケ地情報誌「ロケーションジャパン」の山田実希編集長は、「観光につなげるにはロケを誘致してからが肝心。地域側の準備、活用がものを言う」と強調する。

西伊豆町・島原市の事例↓

茂原市・綾瀬市・リーガロイヤルホテル東京の事例↓

ロケツーリズムの楽しみ方↓