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「観光革命」地球規模の構造的変化(233)  コロナ禍と地方の頑張り

2021年4月3日
編集部:木下 裕斗

2021年4月3日(土) 配信

 東京五輪の聖火リレーが3月25日(木)に福島県からスタートした。五輪の象徴である聖火は121日かけて全国を巡り、7月23日(金)の開会式で東京・国立競技場の聖火台にともされる。聖火リレー開始はめでたいが、一方で東京五輪・パラリンピックで海外からの一般観客の受け入れ断念が既に正式決定されている。コロナウイルスは変異株出現などで厳しい感染状況が続いており、今夏に海外から日本への自由な入国は困難と判断された。

 菅政権は東京オリパラを契機に、訪日観光立国を軌道に乗せて経済再生をはかろうとしたため、海外観客見送りは大きな痛手だ。長引くコロナ禍に苦しむ旅行業・観光業・飲食業などへの影響は大きく、五輪特需が失われ、倒産・廃業に拍車が掛かり、失業者の増加が危惧されている。

 政府は感染拡大を危惧して「Go To トラベル」事業再開に及び腰であるが、地方の自治体は独自の施策で旅行・観光事業への支援を行っている。鳥取、島根の両県は共同キャンペーン「#WeLove山陰キャンペーン」を実施し、両県民が域内対象施設を利用する場合に費用を割り引く。新潟県は県民向けの「泊まっ得! にいがた県民割キャンペーン」を開始し、県内施設対象で宿泊割引を行う。

 高知県は県在住者を対象に「高知でお泊まりキャンペーン」を実施し、静岡県は県民対象の「バイ・シズオカ~今こそしずおか元気旅」を再開し、県内対象宿泊施設の予約を県内旅行業者店舗で行った場合に宿泊割引を適用する。北海道は「新しい旅のスタイル」モデル事業への助成を検討し、「黙食・黙浴」を守る同意書の提出を条件にして道内6圏域の在住者に限定しての宿泊割引実施を想定している。

 自治体による独自の旅行・観光事業助成は評価できるが、それらの原資は昨年4月に政府の緊急経済対策で創設された「地方創生臨時交付金」で2020年度の補正予算で総額4兆5千億円が計上されている。

 臨時交付金は使い道が多様で、地域の実情に合った政策実現に活用し易い点は評価できるが、将来世代に大きな増税負担を掛けるので、地域の課題解決に向けて最も効果的な財源の使い道かどうかの判断が重要になる。コロナ禍を契機にして中央から地方への財源・権限移譲の本格化が必要になる。

 

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

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