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「街のデッサン(231)」ホテル、ホスピタルとトラベル 旅の社会インフラが未来を支えている

2020年7月5日
編集部:長谷川 貴人

2020年7月5日(日) 配信

かつての神学校がホテルに(イタリア・アルベロベッロ)

 港町である小さな地方都市に、私は子供のころに移り住んだ。港は半島に囲われた湾奧に位置していたが、漁港だけでなく交易や外国からの観光客を乗せた商船の着く埠頭もあって、私の住まいの近くには彼らの宿泊できるホテルも構えていた。

 地方都市には、旅で泊まるのは旅館や宿屋しかない時代である。小さなホテルであったが、その名前も「港ホテル」といっていた。円柱のあるポーチから玄関の奥には、フロントが正面に見えて身仕舞を正した黒服の男が、ときに外国人を相手ににこやかに対応していた。

 子供の私は、フロントの左奥にある2階の客室に登る飾り階段や、右側のベランダに面した洒落たレストランが望めるだけで、気持ちが高まった。レストランの道を挟む対面に「川口珈琲」というコーヒー専門店もあり、その一角がまるで外国のように思えるのだ。こんな風景があるだけで、私は街がすっかり気に入ってしまった。ホテルのある街が誇りだった。

 コロナウイルス旋風にすっかり蹂躙されている昨今、ホテルの役割が見直され、社会にとってより重要な意味を持ってくるのではないか。降って湧いたような不条理なコロナ感染を克服できるかどうかの要諦は、差し当たっては2つ。集団の社会感染を完全に遮断し、医療崩壊を未然に防ぐことであるが、社会インフラとしてのホテルの存在が鍵になるように私には思える。

 かつての中世の旅の始まりには、西欧中世史の泰斗・木村尚三郎先生の言説によればキリスト教の教義が大きく係わっているように思える。キリスト教では、罪びとに遠くの教会への贖罪の旅を課したのだという。なぜなら、当時の旅は困難を極め途上で食べることも、宿泊することも、疫病による病の治療もままならず、生死を掛けた旅が罪の償いになったからである。旅をトラベルというのはトラブル(困難)を重ねることであり、フランス語のトラバーユ(労働・仕事)もそれに類する。ホテルとは旅に病んだ人々を収容し治療した修道院などから始まり、それらがホスピタル(病院)に進展していくのだという。

 コロナ感染者を3段階に分けて、軽微な人をホテルに、発症者を専門病院(ホスピタル)へ、重篤患者をエクモ(ECMO)などの整備した集中治療室に、という体制は医療崩壊を防ぐ基本布陣であるが、まさに中世の旅の体験がそのまま、現代社会の礎になっていることを、コロナ後の自由化した旅の学びの中心テーマにする時代がそこまで来ている。

コラムニスト紹介

望月 照彦 氏

エッセイスト 望月 照彦 氏

若き時代、童話創作とコピーライターで糊口を凌ぎ、ベンチャー企業を複数起業した。その数奇な経験を評価され、先達・中村秀一郎先生に多摩大学教授に推薦される。現在、鎌倉極楽寺に、人類の未来を俯瞰する『構想博物館』を創設し運営する。人間と社会を見据える旅を重ね『旅と構想』など複数著す。

 

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