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【特集No.555】アメニティホテルin博多 “事前カード決済のみ”で簡素化

2020年6月11日
編集部:増田 剛

2020年6月11日(木) 配信

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客の強い支持を得て集客している宿の経営者と、工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が、その人気の秘訣を探っていく対談シリーズ「いい旅館にしよう! Ⅲ」の4回目は、アメニティホテルin博多(福岡県福岡市)の秋吉智博社長が登場。電話予約を取らず、事前カード決済のみの予約システムは、煩雑な業務の簡素化に成功した。対談は2月12日に行われたが、秋吉社長の割り切った考え方は“アフターコロナ”の宿泊業界に大きなヒントを含んでいる。

【増田 剛】

 秋吉:当館は地場独立系のビジネスホテルで、開業は1999年4月です。宿泊特化型でシングルルームが72室、メインターゲットはビジネスマンを想定しています。天神、博多駅、福岡空港へのアクセスの良さが特徴です。
 コストパフォーマンスも追求しており、「朝食は無料」ですが、しっかりとしたものを提供しています。なかでも「明太子の食べ放題」が高い評価を得ています。厳しい経営環境のなか、この部分は当館の強みであり、訴求していく付加価値だと考えています。
 宿泊客は、地元福岡が13―14%、あとは関東や関西からのお客様が多いですね。

 ――社長に就任したのはいつですか。

 秋吉:先代の父が亡くなり、私が後を継いだのは2014年4月で、32歳でした。
 父はもともと焼鳥屋を経営していましたが、不動産業に進出し、99年にアメニティホテルin博多を建てました。
 私自身は上京して大学を卒業後は、中堅の不動産会社に就職しました。色々と勉強しようと考えていましたが、リーマン・ショックの影響を受けて、10年に会社が民事再生になりました。当時20代後半でした。
 その後、福岡のリース会社に転職しましたが、14年1月に父が急逝しました。ホテルのことは何も分からずに会社を継いで6年になります。
 私が戻る前年の年間平均稼働率は68%で、スタッフの年齢も高く、当たり前のこともできていない状況でした。
 まずはその部分から改善していきました。18年には稼働率98%を達成しました。客室単価は約7千円です。
 業界の常識を分かっていなかったがゆえに、常識に捉われない手法に着手することができました。16年から楽天トラベルアワードを受賞し、17年にはゴールドアワード(金賞)を受賞しました。最近ではさまざまなカンファレンスで登壇する機会も増えてきました。

 内藤:宿泊業界の経営に外側から足を踏み入れたときの印象は。

 秋吉:最初の2、3年はがむしゃらで「何も感じられなかった」というのが正直なところです。
 まずは人間関係の構築と、やれていない部分から正常化していくことに着手しました。それで、福岡市内の平均稼働率に少しずつ近づけていこうという考え方でした。
 初期の段階では、何かあったらすぐに私の携帯電話に連絡があり、クレーム処理などに関わっていましたが、なるべく現場で、支配人レベルで完結できるようにすることが課題でした。
 基本的に人の働くモチベーションは、給料しかないと思っています。もちろん社会保険を含めた福利厚生も含まれます。
 私は中堅の不動産会社に就職しましたが、学生時代の友人らは大手商社などに就職していました。そのときに、自分の給料の低さにすごく負い目を感じる時期がありました。
 この経験からまず働く人の待遇面から改善していきました。年代における東京の平均年収なども意識して、年収を決めています。賞与も夏と冬を合わせて4・5カ月ほどは出しています。

 内藤:「給料を上げれば人が集まる」というのは誰でも分かっています。多くの会社では「業績が上がれば給料を上げます。そのために頑張ろう」と言います。秋吉社長が先に労働条件を良くしていくことに着手したのは、稀有なケースです。
 理論的には正しいのですが、どうしてそのような逆の意思決定をされたのですか。

 秋吉:稼働率などはまだ伸び代があると思っていました。OTA(オンライン旅行会社)に6カ月前から売り出すといったルールがあったにせよ、それが全然更新されていませんでした。抜け落ちている部分がたくさんあったので、そこを改善すれば稼働率が上がる余地はあるだろうと判断し、「好待遇」の方へ舵を切っていきました。
 会社の理念は2―3年かけてまとめました。
 例えば結婚している社員の奥様が誕生日だったらホテルのディナー券をプレゼントしています。
 「従業員が会社に満足していないと、顧客満足など得られない」という考えが根底にあるので、まずは従業員が働きやすい環境を整えるところから着手して、良い方向につながっていったのだと思っています。
 チェーンホテルでもない、中小企業だからできる思い切った福利厚生なども考えています。近くに博多座という劇場があるので、1年間に1回、会社が負担して、「観劇してもいいですよ」という制度もあります。裏を返すと、「実際に自分で行って観ないと、お客様に説明できない」との考えから取り入れました。
 最近は働き方改革も進め、年末年始は9日間連続で休館しています。有給休暇の積極的な取得も促しています。…

【全文は、本紙1796号または6月17日(水)以降日経テレコン21でお読みいただけます。】

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