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「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(108)お客様に覚えてもらいたいからまずは自分から「選んでもらったお礼の想い」

2019年1月5日(日) 配信

「分かってくれる人がいる」(画像はイメージ)

 冷たい雨の降る日、東京駅のタクシー乗り場は長蛇の列でした。待ち合わせの時間を気にしながら、最後尾に並びましたが、一向に列は動きません。そこで、携帯電話のアプリからタクシー配車を依頼しましたが、到着したタクシーを見つけられませんでした。

 東京ステーションホテルの入り口前と配車場所を記入して、再度配車をお願いしました。東京駅に到着してから40分後、ようやく目的のホテルに到着しました。ホテルに着くとスタッフが出迎え、タクシーからフロントまで案内しながら「雨の中ありがとうございます」「タクシーはつかまりましたか」と案じてくれました。

 「分かってくれる人がいる」。その言葉がどれほどうれしかったか。ホテルに限らずレストランや旅行会社の店舗でも、お迎えの言葉をかけられる機会は多くあります。しかし、その機会を十分に活かせていないところが多いように思います。

 研修などで身に付けた接客力を披露するのが、サービス業の仕事ではありません。「ここに来てよかった」と、思ってもらえるような仕事が大切なのです。空調の効いた室内で仕事をしていると、お客様の心理を理解するのが難しくなります。

 来店されるお客様は、たまたまの来店かもしれません。しかし、間違いなく同業他社ではなく、自社を選んでいただいたのですから、最幸のサービスを実行するのは当たり前です。もし足りないものがあるならば、選んでもらったお客様へのお礼の想いです。

 タクシーの降車時に出迎えたホテルスタッフの言葉に、その想いが感じられます。雨の日はタクシーを捕まえることが難しいということを分かっているから、「そんな中を来ていただいた」ということへの感謝の想いです。

 チェックインを済ますと、スタッフが声をかけ「西川様、明日の朝にも雨は残ると思いますが、タクシーは利用されますか」と、翌日の心配までしてくれました。

 さらに翌朝にも、チェックアウトをする私に気づいて前日のスタッフが駆け寄り「西川様、おはようございます。昨夜はゆっくりとお休みいただけましたか」「今の時間なら、タクシーがたくさん待機していますので、ご安心ください」と気遣ってくれました。

 チェックアウト後に私の名前を呼んだのは、前日のフロントでの会話を聞いていたのだと思います。翌朝まで覚えていたことに感動しました。

 聞いてみると「お客様に私を覚えていただきたい。そのためにはまず私からお名前を覚えるようにしています。翌朝、お会いできないことも多いですが、お顔を見つけると思わず駆け寄ってしまいます」。こんなスタッフに迎えられたら、ファンになってしまいます。

コラムニスト紹介

西川丈次氏

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。

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