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ジャルパック人事総務部・宮野氏に聞く~働き方改革は経営戦略

2018年7月23日
編集部:飯塚 小牧

2018年7月23日(月) 配信

近年、国を挙げて働き方改革が進められている。6月29日には「働き方改革」関連法案が参議院本会議で成立した。観光業界内でも動きは加速している。日本旅行業協会(JATA)は今年度から、「働き方・休み方改革、ダイバーシティ推進」に対する会長表彰を設置。優れた会員の取り組みを広く周知することで、普及啓発をはかる。同表彰で審査員特別賞を受賞し、旅行業のなかでも先進的な取り組みを行っている、ジャルパック人事総務部人事総務グループの宮野浩臣マネージャーに話を聞いた。               【飯塚 小牧】

宮野浩臣マネージャー(リニューアルし、打ち合わせ場所を増やしたオフィス)

 

 日本航空(JAL)が2015年4月から働き方改革を開始したことを受け、ジャルパックは15年8月、「ワークスタイル変革推進プロジェクト」を発足。全社員が生産性高くやりがいを持って働ける環境を整備し、変革への意識を高めてより付加価値の高い成果を創出することを目的にした。

 ゴールは「高収益体質への変革を目指す」と見据える。宮野マネージャーは働き方改革を「福利厚生の充実ではなく、飛躍的で持続的成長を実現する経営戦略」と言及。「働き方や休み方改革はビジネスチャンスとして取り組むべき」と強調する。働き方の選択肢を増やすことで、従業員の満足度や幸福度を上げ、それが企業の業績向上へつながると考える。

 同社はプロジェクト発足に対し、社内を国内や海外など4つのチームに分け、各チームから3人ずつメンバーを任命。業務システムや仕事の特性から課題を摘出した。また就業原則として、午後8時の退社や8時以降の電話・メールの禁止などルールを決めた。

  制度と環境整備

 制度改革では、16年4月に時間単位年休(有給休暇)の導入や5つだった勤務時間帯を15へ拡大。17年4月に在宅勤務を本格導入し、18年4月からは自宅に囚われないテレワークを本格導入している。在宅勤務は半休や外出、半日出社と組み合わせて実施できる。テレワークは、図書館やカフェなどを就業場所として認める。制度を整え、「時間と場所に捉われない働き方」の実現をはかる。

 「コワーキングスペースの契約も視野に入れている。あとはフレックスを導入すると制度はそろう。オフィスではなく、社員を中心に、働く時間や場所に柔軟性を持たせたい」という。

 制度を支えるハード面の環境整備としては、ノートパソコンへの更新を実施。社員約500人中、手配部門を除く440台がノートPCへ切り替わっている。固定電話の撤廃も進め、必要な部署以外、330台のスマートフォンを導入し、社員一人ひとりが所有している。

 セキュリティーは、仮想デスクトップ(VDI)を整備。サーバーに仮想のPC環境を作り、デバイスに画面転送することで、情報漏洩のリスクを軽減する。業務システムのアプリケーションも適宜VDIへ接続できるように改修を行い、オフィス以外で可能な業務範囲を拡大している。また、オンラインWeb会議ソリューションを導入し、社外でも会議に参加できる仕組みを整えた。

 オフィス内も今年の3~5月までに大幅なリニューアルを行った。社内アンケートに基づき、簡単な打ち合わせができるスペースの確保や集中作業エリアを設けた。併せて固定席をもたない「フリーアドレス」を導入し、執務デスクサイズを縮小。毎日異なる席の利用を義務付けている。在宅勤務やテレワークが進むことで全員分は不要と判断し、在籍者の9割の座席数を用意。ペーパーレス化も進め、文章量はこれまでの44・5%と大幅に減少した。 

意識改革

 社員への意識改革では17年9月の「ツーリズムEXPOジャパン」内で会議室を借り、テレワークのセミナーを開催。セミナーの学びをもとに10月、社内でワークショップを実施した。プロジェクトメンバーが講師を担い、計268人が参加した。「人事総務など管理側からではなく、同じ社員の目線から伝え、上からの指示という印象を回避した」と工夫を語る。

 こうした取り組みで、年休取得率は15年の実績15・3日から、17年は17・0日と11%増加している。年間時間外労働時間数は同188・4時間から132・2時間へ減少。年間の総労働時間は同1978時間から1916時間へ減少し、成果が上がっている。

 「数字の成果もあるが、テレワーク導入を始めとした改革の進行とともに社員が自発的に業務の棚卸を行い、プロセスの見直しをするようになったことが大きな副産物だ」と自負する。システムのVDI対応がまだ不十分の国内旅行部門でもテレワークの実績は上がっており、好調だという。

 一方、旅行業界では働き方改革は始まったばかり。旅行業特有の業務システムの制約や固定電話への依存といった要素から、まだオフィスを基点とした働き方が根強いのも事実だ。宿泊業なども含め、広く観光産業全体で取り組む必要もある。

 「価値創造型産業へと言われるが、実際には事務作業に費やしている時間が多い。原価計算やパンフレット作成は、今後AI(人工知能)などにシフトしていくのだろうが、感動や多様な価値を生みだすことはできない。旅行はまさに感動や多様な価値を売っているが、この付加価値に掛ける時間のアンバランスさが特徴だと思う」と指摘する。

 「旅行業だけに捉われない視野の拡大も必要。外へ出て異業種との交流をはかることが重要だ。当社では、テレワークなどを導入することでフットワークを軽くし、こうした機会を創出したい」。感動を生む創造的な仕事をするため、働き方を柔軟にして、社内外の“フェイストゥーフェイス”の交流を促す考えだ。

テレワーク・  ツーリズム

 今後は、JALグループ独自の仕事と休暇を組み合わせた「ワーケーション」を推進していく。ワーケーションは家族旅行を予定していたのに会議が入ってしまった場合などに、旅行を断念することなく、休暇先から会議に出席する場合などに使う。昨夏は、同社利用は4人に留まったが、今年の夏から徐々に増やしていく予定。

 ワーケーションを旅行産業の観点からビジネスチャンスと捉え、「テレワーク・ツーリズム」という概念も打ち出した。キャッチフレーズは「仕事も休みもあきらめない」。今年は一般向けに家族旅行商品を販売。ワーケーションを推進している和歌山県と連携し、政府が提唱する7月23~27日のテレワークデイズに南紀白浜へのツアーを企画した。

 「地方で仕事をするふるさとテレワークは、自治体にとっても新たな流動が生めるチャンス。テレワーク・ツーリズムは『お客様』『自治体』『事業者』の3者が笑顔になれる“三方よし”の取り組みだ。今後も推進する自治体があれば、一緒に新たな価値観を提案していく」と意気込む。

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