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No.446 座談会「貸切バスの安全安心を」、業界の統一したコンセンサスへ

2016年11月11日
編集部

座談会「貸切バスの安全安心を」
業界の統一したコンセンサスへ

 2016年1月15日の軽井沢スキーバス事故を受け、利用者は貸切・高速バスに対する安全安心への関心を高めている。日本バス協会(上杉雅彦会長)は、11年から貸切バス事業者安全性評価認定制度を始め、協会会員に取得を促し、利用者に安全なバスの周知をはかってきた。一方で、認定制度が安全安心に資する制度として利用者に充分に浸透していない。これらを踏まえ、バス業界、国土交通省、旅行業界の各リーダーらが集まり、貸切・高速バスの安全安心、今後の展望について語り合った。

【司会進行=本紙社長・石井 貞德、構成=平綿 裕一】

 
 
 
【座談会参加者】
鶴田 浩久 氏 国土交通省自動車局旅客課長
富田 浩安 氏 日本バス協会貸切委員会委員長(日の丸自動車興業 代表取締役社長)
加藤 信貴 氏 日本バス協会貸切委員会副委員長(名鉄観光バス 代表取締役社長)
平野 利晃 氏 JTB国内旅行企画常務取締役事業部長

 ――貸切バス事業者安全性評価認定制度について、日本バス協会貸切委員会の富田委員長から説明をお願いします。

■富田:認定制度ができたきっかけに、2007年に大阪府吹田市で起きた貸切バスの重大事故がありました。それまではどこかで「どのバスに乗っても安全だ」と利用者も我われも思っていました。しかし、事故は実際に起きました。

 2000年の旅客自動車運送事業の規制緩和のあとで、かなり事業者が増えていました。当時は、事業者の間で安全の確保や認識についてばらつきがあったのです。利用者により安全なバスを選んでもらうため、認定制度は11年に始まりました。そのあと、12年に関越自動車道の高速ツアーバス事故が起きますと、運転者の過重労働防止のため、交替運転者の配置基準などがガイドラインで定められました。

 ――制度の基準や現状を教えてください。

■富田:我われは、(1)安全性に対して法令の遵守をきちんとしているか(2)事故や違反がないか③安全に積極的な取り組みをしているか――などを総合的に評価しています。基準を満たせば星の数(最高3つ)で認定、公表しています。有効期限は2年で、更新制となっています。認定事業者はその証である「SAFETY BUS」のシンボルマークを車両などに貼付できます。

 認定事業者は、16年10月現在では、全国1050事業者(日本バス協会会員の43・2%)、2万3588両(会員保有車両数の64・4%)となります。

 軽井沢スキーバス事故を受けて、旅行会社が認定事業者を使う流れが出ています。協会内の認定事業者は14年度から比べると、100%以上の増加をみせています。

 ――認定制度の課題を、行政と旅行会社の立場からお話いただけますか。まずは国土交通省自動車局の鶴田課長からお願いします。

■鶴田:軽井沢スキーバス事故を契機に、消費者庁が大々的に貸切バスに関する消費者の意識について調査を行いました。これによると、観光ツアーで貸切バスや高速バスを利用したことがある2500人のうち、およそ4分の3(74・1%)は「SAFETY BUS」マークや制度を知らないと答えました。マークと制度の両方を知っている消費者は、5・6%にとどまりました。

 一方で、9800円のツアーに参加しようした場合に、「同じ内容でより安全に留意したツアーに追加でいくら支払えますか」という質問がありました。1番多い回答は1千円(28・6%)でした。大事なところは、1千円以上追加で支払う人は、6割以上(63・6%)いたということです。

 つまり、消費者は1―2割追加で支払っても安全を確保する意向があるにも関わらず、4分の3は制度やマークを知らないということになります。このギャップを埋めることが必要だと思います。

 ――旅行会社からJTB国内旅行企画の平野常務はどのようにお考えでしょうか。

■平野:JTBは1千社強のバス事業者と契約していますが、昨年の時点で認定事業者は半数ほどでした。今年9月の認定によりさらに増えてはいますが、教育旅行も含めて、ピーク時に認定事業者のみでお客様のニーズを吸収しようとすれば、まだ一定の限界があると感じています。

 また、現状では保有車両の多い、複数の事業者が認定を失えば、認定事業者のみでの手配はかなり厳しい部分があります。

 1つの課題として、バスの安全やサービス面で、お客様は選択する基準を持ち合わせていないところだと思います。どうしたらお客様が選びやすいのかというかたちを、バス事業者と旅行会社の両業界で考えていかなければいけません。

 ――これらを踏まえて、協会として認定制度の課題や、対策などお話下さい。貸切委員会の加藤副委員長からお願いします。

■加藤:個々のお客様だけでなく自治体や学校関係者、旅行会社などに携わっている人の認知も少ないと感じます。周知活動をただ漠然と行うのではなく、ローラー式に自治体や学校関係者、旅行会社らに対して、再度周知をはかる必要があります。ここは、地道な努力をしていく以外に方法はないと考えています。…

 

※ 詳細は本紙1650号または11月17日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

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