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「平和学習」は京都・舞鶴へ 舞鶴市が教育旅行に力 戦後80年、次世代による継承を

2025年9月3日
編集部:飯塚 小牧

2025年9月3日(水) 配信

中高生の語り部たち。(左から)原田昊征さん、石角晴花さん、池田実奈さん、池田莉奈さん

 1945(昭和20)年8月の終戦から80年が経過した。戦争経験者が少なくなるなか、戦後、海外からの引揚者を受け入れた京都府北部の港町、舞鶴市(鴨田秋津市長)は、平和の尊さを訴えようと「次世代への継承から、次世代による継承へ」に取り組んでいる。舞鶴は旧ソ連で強制労働を強いられた「シベリア抑留者」の引揚者が多かったことから、市は1988年にこれらを伝える「舞鶴引揚記念館」を開館。2015年には収蔵資料570点がユネスコ「世界の記憶」(世界記憶遺産)に登録され、「平和学習」のために訪れる学校も増えてきた。同館を中心に、市が近年誘致に力を入れている教育旅行の素材を紹介する。 【飯塚 小牧】

同世代交流も可能「舞鶴引揚記念館」

「舞鶴引揚記念館」

 第2次世界大戦の終結に伴い、海外に残された日本人約660万人を帰国させる国の事業「引き揚げ」により、軍港だった舞鶴港をはじめ、全国18港が引揚港として指定された。

 このうち、舞鶴港だけが13年間全期にわたり受け入れを行い、引揚船346隻、全引揚者の約1割に及ぶ約66万人が帰国。市民は戦後で生活が苦しいなか、茶や芋を振舞うなど、手弁当で引揚者を歓迎したという。

 舞鶴の引揚者の約7割を占める約46万人がシベリア抑留者だが、戦後40年を過ぎたころにはその記憶も薄れ始める。危機感を覚えた体験者や関係者の要望で、史実を継承するための施設として、「舞鶴引揚記念館」が開館した。総工費約2億4千万円のうち、7400万円は体験者や市民からの寄付によるもの。2012年からは運営を指定管理から市の直営施設に変更し、学芸員を配置するなど展示の質の向上をはかっている。

 14~17年度には全面改装を行い、18年に「次世代体験型施設」としてグランドオープンした。市の直営後、初代館長に就き、現在は館長補佐を務める山下美晴氏は改装時の想いについて、「戦争の悲劇だけではなく、平和への願いや希望が持てる施設にしたかった」と語り、明るい施設づくりに努めた。「教育旅行でも観光でも来館のきっかけは何でもいい。入口を広げて、多くの人に訪れてもらうことが大切だ」と力を込める。

教育旅行では実際の防寒着などに触れられる

 教育旅行での館内の基本プログラムは90~120分で、見学前の講話や、実際に当時の防寒着を試着する体験、語り部による館内説明などを用意する。学芸員による事前学習「出張講座」も実施しており、希望があれば後学習やオンライン講座なども行う。

 また、同館の大きな特徴は「学生語り部」の存在だ。館内では「語り部養成講座」を修了した語り部が展示の案内をしてくれるが、一般のほかに、中学生から大学生の学生が語り部として活躍している。25年度は中学生22人、高校生16人、大学生8人の計46人が所属し、自らの言葉で歴史を伝えている。

学生語り部による案内のようす

 長期休み期間中が中心となるが、教育旅行では学生語り部による館内の案内やワークショップ、リモート交流など同世代交流も対応可能だ。

 館内を案内してくれた語り部となって4年目、高校2年生の石角晴花さんは「少しでも平和に貢献できたら。同世代の人に話すことで、聞いた人が自分にとっての平和や、身近な幸せを考える機会になれば嬉しいです」と話していた。

近代史を体感  日本海側唯一の軍港

舞鶴赤れんがパーク1号棟の「赤れんが博物館」

 昭和以前に、舞鶴市はその稀有なリアス海岸の地形が見込まれ、1901(明治34)年に旧海軍の舞鶴鎮守府が置かれた。開庁以来、日本海側唯一の軍港都市として栄えてきた。

 鎮守府に合わせ、海軍倉庫として集中的に赤レンガ施設が建てられた。このエリアは「舞鶴赤れんがパーク」と呼ばれ、今でも12棟の赤レンガの建物が残されており、集積率は日本一。ほかの全国4カ所の鎮守府とともに日本遺産に認定されているほか、近代化遺産、国の重要文化財に指定されている赤レンガ倉庫もある。

 明治、大正の雰囲気が味わえる同エリアでは、さまざまな映画やドラマの撮影が行われており、ロケ地巡りを楽しむ人も多いという。

 現在、1~5まで番号がふられた棟はイベントホールや各種ショップなどが入居し、土産なども購入できる。

 このうち、1号棟は世界で唯一のレンガを専門とする博物館「赤れんが博物館」となっており、教育旅行にもおすすめ。「教科書にでてくるれんが」として、世界の遺跡で使われたレンガや、日本のレンガの歴史などが学べる。原爆ドームやアウシュビッツ強制収容所で使われた実際のレンガなど、貴重な展示も見ることができる。

海軍ゆかりの港めぐり

遊覧船から眺める迫力の護衛艦

 博物館の目の前には遊覧船の乗り場があり、「海軍ゆかりの港めぐり遊覧船」が運航されている。同クルーズでは、沿岸にある海上自衛隊舞鶴地方総監部の各種施設周辺を航路で巡る。その日により、艦艇の停泊状況は異なるが、運が良ければ人気の護衛艦などを間近で見ることができる。

 遊覧船のチケットは博物館内で購入できる。貸切運航も可能となっており、団体についての予約は海の京都DMOまたは舞鶴観光協会へ要相談。
新たなコンテンツ海上自衛隊と連携

 今年度から、舞鶴地方総監部の協力で、教育旅行で訪れる学校に対し、自衛隊の船内を公開するプログラムを開始した。自衛官が船内を案内してくれるもので、特別感があるのが魅力。今年度は2校の利用を予定する。

 舞鶴地方総監部は自衛隊の活動を広く発信するため定期的に一般向けのイベントを催しており、基地内や艦艇内を一般開放している。教育旅行の受け入れもその一環。

 舞鶴市産業振興部観光振興課の松岡恵美主幹は海上自衛隊との連携プログラムについて「年間10校の受け入れを目指したい」と意気込む。

 このほか、野原漁港での海洋プラスチック体験学習や干物作り体験、かまぼこづくり体験、地引網体験なども提供できる。松岡主幹は「オーダーメイド型で、要望によりさまざまな体験を用意できる。丁寧に対応するのが強み。舞鶴ならではのストーリーを感じてほしい」とアピールする。

 市内に大型の宿泊施設はないため、首都圏から京都への教育旅行2泊3日のうち、まずは日帰りで舞鶴に訪れてもらうことを狙う。

 群馬県からは、東京経由ではなく高崎から北陸新幹線を利用し、敦賀からバスに乗るという新たなルートも考えられるため、地域ごとに多様な選択肢を提案していく。

ランチは全国唯一の「あいがけカレー」で

「GOROSKYCAFEnanako」のカレー(手前があいがけカレー)

 舞鶴商工会議所は2017年から、舞鶴地方総監部と市と協力し、「まいづる海自カレー」を展開している。海上自衛隊では毎週金曜日の昼食にカレーが食べられていることにちなみ、市内の飲食店で舞鶴在籍の艦艇・部隊・学校が認定した16種類のカレーを販売している。各店舗がそれぞれ艦艇や部隊などの調理員から直接指導を受けており、店舗ごとに異なる種類を提供している。

 これに加えて、今春から新たに「まいづる海保カレー」がスタートした。第八管区海上保安本部や海上保安学校の協力を得て実現したもので、4種類のカレーが市内の4つの飲食店で味わえる。海保カレーの開始に伴い、全国でも海自と海保がある舞鶴にしかない取り組みとして「あいがけカレー」を開発。海保カレー提供の4店舗で食べられる。あいがけカレーの価格は1500~2300円。

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