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国際化する国内観光地に変化 ― 日本のおもてなし文化が通用するか

2015年9月1日
編集部

 今年の9月のカレンダーを見ると、いつもの年と少し違う。19―23日は6年ぶりの5連休となり、シルバーウイークが真ん中に鎮座する。旅行業界も夏休みが終わったあとに、もう一つの大きな需要の山ができ、さまざまな旅行動向調査を見ても、好調な予約状況が発表されている。楽天トラベルがまとめたシルバーウイーク期間中の旅行動向では、海外旅行は東南アジアのリゾートが人気を集めているという。5連休という日程を考慮すると妙に納得する。

 一方、「この5日間を国内旅行で」と考えると、海外旅行と比較して金額的に、あるいは魅力度で競争力を保持できるだろうかと少し心配にもなる。現状では、日帰り旅行や、1泊2日が主流の国内旅行だが、シルバーウイーク期間中は高速道路の大渋滞が予想されるし、人気観光地はどこも混雑し、大型連休によって逆に旅行意欲が減退してしまう人も多くいるだろう。

 日本の休暇制度について、またの機会に述べたいと思うが、日本の観光地が海外の都市やリゾートと比較しても、遜色ないほど魅力的であってほしいと思う。そうでなければ、一見、インバウンド旅行客でにぎやかに映っている観光産業だが、やはり日本人自らが国内観光地に魅力を感じなければ、国内の観光産業は衰退してしまう。

 さて、インバウンド旅行客が増えて、日本の大都市圏や有名観光地も少しずつ変化が表れているようだ。国際化によって当然プラス面が大きいが、残念ながら悪い面も出てきてしまう。

 例えば、海外旅行先で買い物をしてクレジットカードで精算する際に、金額を1ケタ多く書かれたり、使用されていない紙幣や硬貨をお釣りで渡されたりすることがよくあると聞く。以前は「どうして海外から訪れてくれた“お客様”である旅行者を騙すようなことが平気でできるのだろう。日本人なら海外から来てくれた外国人旅行者を大切にして、騙すようなことはしないだろう」と思っていた。

 しかし、この1、2年で日本にも外国人観光客が急増し、これまであまり外国人観光客が来なかった店などにも足を踏み入れるようになった。“異邦人”の来客の想定をしていなかった裏通りの食堂などでは、日本人の店員が外国人の旅行者に店のシステムを説明しても言葉が通じないため、繁忙時間帯などでは、露骨に嫌な顔をするようなシーンにも幾つか出会った。

 日本は今後、観光地の国際化をさらに進めていかなくてはならないが、一方で、外国人旅行客が増えると、日本独自の奥ゆかしい“おもてなし”は、文化の違いもあって外国人にはまったく通じず、どうしてもサービスの現場が荒れてくる。世界のどこにでもある国際的な観光地のように、表面的にはきれいに飾った店で、その実、“ボッタクリ”のような店も現れてきて、もう二度と来ないだろうと思われる言葉の通じない外国人観光客へのサービスが荒れ、さらにあってはならないことだが、「どうせ日本の料理の味もわからないだろう」と、古くから通っていた日本人のお客には出さない、“最良でないもの”を出すことを許す心が芽生えないとも限らない。日本人は、「一期一会」という言葉を古くから大切にしてきたが、国際化するなかで、これまで日本人同士で交わされていたおもてなし文化がどの程度世界に通用するかが試される。

(編集長・増田 剛)

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