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人手不足が最大の課題 トップ集い観光立国推進協議会開く 災害復興には観光が力に

2024年1月17日
編集部:飯塚 小牧

2024年1月17日(水) 配信

約80委員が集った

 観光関係団体のトップらで組織する観光立国推進協議会(100委員、山西健一郎委員長=日本観光振興協会会長)は1月16日(火)、東京プリンスホテルで「第10回観光立国推進協議会」を開いた。代理含め約80人の委員が出席し、今回の議題である「観光の価値向上と持続可能な観光産業に向けて」への課題や考え方について意見を出し合った。どの業種でも人手不足が最大の課題となっており、対策が急がれる。また今回は、令和6年能登半島地震についても活発な意見が挙がり、観光が災害復興に果たす役割が大きいことを再確認した。

観光のトップの顔ぶれが並んだ(中央であいさつする山西委員長)

 冒頭、山西委員長は「観光立国推進協議会は今回で10回目を迎えた。継続的な活動を通じて業界内や政府との連携、協力をはかり観光を取り巻く課題について意見交換を行い、日本の観光のプレゼンスをさらに高めたい」と協議会の意義を語った。また、従来の課題解決とともに「能登半島地震からの復旧・復興に向けてできることから速やかに行っていきたい」と意気込んだ。

 来賓の観光庁の髙橋一郎長官はあいさつの冒頭、能登半島地震で観光業界が2次避難所や交通輸送などに協力していることに謝意を述べた。コロナ禍からは堅調に回復しており、今年は飛躍に向けた取り組みの重要な局面を迎えていることの認識を示した。一方、「課題は山積している」とし、深刻な人手不足や生産性や収益の低さなど、構造的な問題が改めて顕在化していることに言及。観光そのものの価値を高めて付加価値を増すことや、地域の持続可能な観光に向けて地域の利益が還元されることが重要だとした。「観光は時代遅れやほかに取って代われるものではない。観光の底力を信じている。観光産業や地域が次世代に向け発展的なカタチで成長でき、皆様がさらなる希望と誇りを持って取り組めるよう全力で支援する」と力を込めた。

「観光の価値向上と持続可能な観光産業に向けて」各委員が意見交換

 協議会では、議題の「観光の価値向上と持続可能な観光産業に向けて」の議論用資料として、事前に主要委員や地域などから寄せられた意見をもとに課題や考え方をまとめたものを紹介した。挙げられたのは①観光地・観光産業の人手不足への取り組み強化②地域における観光地域づくり体制の整備・強化③旅行需要分散化・平準化への支援強化④観光DXへの取り組み強化⑤観光客の地方誘客への取り組み強化⑥双方向交流拡大への取り組み促進(アウトバウンド・国際相互交流の促進)⑦観光による「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)をはじめとした大規模イベントの支援に向けた官民一体となった取り組み強化⑧地域の安定的な財政運営に必要な財源の確保・充実――。

 これを踏まえ、各委員からそれぞれの業種や団体、企業の現状や課題感、提案などがなされた。このなかで、東京商工会議所の田川博己副会頭は能登半島地震について「復旧のあと、観光が復興にどう関わっていくか。マスコミ含め風評被害にどう対策を練るかこのメンバーで確認したい」と語気を強めた。このほか、観光の確固たる産業化や日本のブランド力の向上、広域観光の強化など取り組むべき事案に触れた。

 宿泊業界を代表して発言した日本旅館協会の大西雅之会長は「能登半島地震で被災した地域には核となる施設が多い。仲間の現状に言葉がない」とし、現地の切実な声として「金融支援」を訴えた。「自分たちの力だけでは再起できない。個別の対応では間に合わない。地域一括でスピード感を持って支援してほしい」とした。一方で、被害が軽微ですでに営業を再開している地域では「風評や旅行控えが大きなダメージになる」とし、段階的な支援など産業全体で改めて危機管理対策を整備すべきだと提言した。

 人材不足については外国人材とのマッチングなどさまざまな施策を講じているが、「最も重要なのは夢のある宿泊業を取り戻すこと。あらゆる人に選んでもらえるような業界になっていかなければならない。その先には、観光業界全体がすべての人に夢を与えられる存在になっていかなければならず、観光産業の地位の向上が求められている。有事にこそ団結を深められるチャンスだ」とより一層の協力を呼び掛けた。

 日本旅行業協会(JATA)の髙橋広行会長は、能登半島地震の対応は2段階のフェーズがあるとし、まず能登半島や避難地域の金沢市周辺以外への比較的被害が軽微な北陸4県地域への早期の回復を挙げた。「風評や予約のキャンセルなどが相次ぎ、地元から懸念の声が挙がっている。正確な情報発信と需要喚起策が不可欠。来る3月16日の北陸新幹線敦賀延伸は観光の回復と拡大をはかる絶好のチャンス。全国旅行支援のスキームが各地域にあるので、北陸応援を具現化すべきだ」と述べた。

 第2フェーズは被災地の観光復興。「ただ元に戻すのではなく、能登半島を中心に北陸地域をカバーする新しい時代にふさわしい創造的な観光復興を目指すべき」とし、「北陸観光スマートゾーン構想」を提案した。北陸地域を面でつなぎ、レジリエンスや観光DX、SDGsなどの要素を取り入れたさまざまな観光コンテンツを整備し、国内外の観光客に提供できるデジタルベースの仕組みを構築して利用者の利便性向上や事業者の生産性の向上につなげたい考え。「モデルケースとなる取り組みで国内や訪日客の地方誘客を促し、地方活性化とオーバーツーリズムの解消にもつなげられるのではないか」と期待を述べた。

 協議会は、今回の意見も含めて精査したものを提言としてまとめ、後日関係省庁に提出する予定という。

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