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〈旬刊旅行新聞11月21日号コラム〉――安宿 宿への「期待の低さ」が何とも好ましい

2023年11月21日
編集部:増田 剛

2023年11月21日(火) 配信

 人気観光地よりも無名の観光地、県庁所在地よりも、第2、第3番手の街に泊まるように意識している。そのような少しマイナーな旅先の宿に着いて、案内された客室でビールを飲むのは、旅の楽しみの1つである。だけど、少し飲み過ぎて夕食があまり食べられないことが多々あり、その反省点から最近は少々控えめにしている。

 

 宿との出会いは一期一会。当たりもあれば、ハズレもある。私の場合、宿泊料金を低く見積もっているため「面白い案件」と遭遇することが多い。ユニットバスが異様に薄暗かったり、壁紙が堂々と破れていたり、テレビに100円玉を入れて観る昭和を引きずるスタイルだったり。でも、安宿なので、何の不服もない。

 

 

 子供たちが小さかったころは、夕食のビュッフェのテーブルも賑やかだった。最近は1人でビュッフェを利用する機会が増えた。ビュッフェは好きなものを自由に食べられるからいい。酒をちびちびやりながら、刺身やチーズなど適当に皿に盛る。浴衣姿なので心身ともリラックスして旅の夜を楽しめる。

 

 夕食後は大浴場に行って、温泉に浸かる。そうすると喉が渇くので、宿の売店で売っている埃をかぶったピーナツ菓子などを購入し、自動販売機の缶ビールを2本ほど買い込む。客室でゆっくりと飲みながら、ぼんやりと眠くなるのを待つ。華やかさも、何もない旅で、他人が見ると何が楽しいのだろうと思うかもしれないが、そんな素の旅がいいのだと感じてしまう。

 

 

 旅館やシティホテルと比べて、ビジネスホテルの朝食会場は限られた空間を有効活用しているため、概して広くはない。このため、ビジネスホテルに宿泊して朝食に大きな期待を抱くことは少ない。だが、その「期待の低さ」が何とも言えず好ましい。寝ぐせがついた髪のまま、おにぎり2つを鞄に入れて慌ててホテルをチェックアウトする若いビジネスマンの姿などもしばしば見てきた。

 

 先日、泊まった福岡県久留米市のビジネスホテルは、朝食のパンとコーヒーが無料だった。JR久留米駅前には思ったほど飲食店が多くなく、その日は朝から雨が降っていたので、無料のパンを食べるために、ノコノコと朝食会場に向かった。

 

 すると、意外にも朝食会場は広く、パンもクロワッサンや食パン、丸パンなど種類が多かった。朝食会場にはなぜか、蝶ネクタイをしたベテランの給仕もいた。バターやマーマレード、イチゴジャムなども備えていた。寝起きで、そこまで空腹を感じていなかったものの、パンが想像以上に美味しくて、コーヒーもお代わりをして雨の久留米の街を眺めながら、パンのみのシンプルな朝食に満足した。旅の満足なんてそんなものだ。

 

 

 隣の席には若い夫婦と幼い男の子がいた。幼い男の子はイチゴジャムの小さな容器を見て、父親に「これ、ゼリー?」と聞いた。父親と母親は笑って「それはゼリーじゃないよ。パンにつけるジャムだよ」と教えてあげていた。男の子はコーヒーが飲めないことに気づいたベテランの給仕が近寄って、「ボクにはミルクを持ってきてあげるね」と言って、コップに牛乳を入れて男の子に渡した。若い両親は「ありがとうございます」と給仕にお礼を言い、パンだけを食べていた男の子は夢中でストローに口を付け牛乳を飲み始めた。

(編集長・増田 剛)

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