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地域振興の具体策 行田おもてなし観光局設立 市と連携し県内第3の観光都市へ(行田市)

2023年5月3日
営業部:後藤 文昭

2023年5月3日(水) 配信

吉松良祐氏(左)と富山紀和事務局長

 市内の神社が設置した花手水がSNS(交流サイト)で話題となり、注目が集まる埼玉県行田市。21年には「観光」による地域振興の具体策として、行田おもてなし観光局(地域DMO)が設立され、市とDMOが連携し観光地形成に向けた取り組みを進めている。「行田市を川越市、秩父市に並ぶ県内第3の観光都市に」と意気込む行田市環境経済部商工観光課、観光グループの吉松良祐氏と、行田おもてなし観光局の富山紀和事務局長に展望を聞いた。

観光振興目指しDMO立ち上げ

 行田市は埼玉県名の発祥となった埼玉古墳群や忍城など多彩な観光資源はそろっていたが、観光地としての知名度が高い場所ではなかった。しかし2012年、忍城を舞台とした映画「のぼうの城」が話題となったのを皮切りに、「田んぼアート」が15年に絵柄の面積が世界最大であると認められギネス世界記録に認定、17年には市内でロケも行われたテレビドラマ「陸王」が放送されるなど、観光に関わるトピックスが次々と重なったことにより飛躍的に注目度が高まった。

 地域DMOの設立はこうした追い風が吹くなか、地域全体で「観光」を切り口とした地域振興の機運が高まったことが嚆矢となった。

 行田市環境経済部商工観光課、観光グループの吉松良祐氏は「地域DMOの立ち上げは、観光振興への具体策として最初に手掛けた事業です。観光の専門組織であるDMOが観光データの収集・分析をはじめとしたマーケティングや戦略的なプロモーション、観光関連施設の運営などを行い、観光行政の方針の決定や観光関連のハード整備などは行政が行う。役割分担を明確にすることで、観光振興を効率的、効果的に進めることが狙いでした」と当時を振り返る。

 説明会を開き市民への協力を要請するなど約2年の準備期間を経て21年1月、行田おもてなし観光局を設立、3月には、観光庁の観光地域づくり候補法人(地域DMO)として登録された。

 現在は市が観光行政の方針の決定や観光関連のハード整備、フィルムコミッション事業を実施。観光局は、観光データの収集・分析をはじめとしたマーケティングや戦略的なプロモーション、観光関連施設の運営、各種旅行事業の展開に努めている。

観光地を目指し土産物施設整備

物産館店内

 21年4月、「観光物産館ぶらっと♪ぎょうだ」がリニューアルオープンした。店内では、埼玉銘菓としても有名な十万石ふくさやの十万石まんじゅうや山本の奈良漬などの地元の名産品と、観光局が開発した商品を販売。なかでも大きな反響を呼んでいるのが市内の事業者と開発した「行田の餃子」で、年間約9千袋売れている。この餃子は皮には主にうどん粉として用いられる行田の地粉「あやひかり」が使われており、こしがありモチモチとした食感が楽しめるのが特徴。餃子はプレーンとチーズ、行田の在来の枝豆入り(期間限定)と水餃子の4種類で展開しており、22年12月にはJR行田駅前観光案内所に自動販売機も設置された。

 行田おもてなし観光局の富山紀和事務局長は「行田が観光地になるために重要なことの1つが、『お土産を買う場所が整備されていること』だと思っているので、売り場づくりでは観光客の期待に応えるという意識を大切にしました。同時に、これまで利用していただく機会が少なかった市民の方々に日常的に利用していただける場所にしたいという思いもありました。今では市民の方が餃子を買いにこの場所を訪れ、合わせて色々なものを購入してくださるので、売上も伸びています」と成果を語る。

 そのうえで、「観光物産館の売上が伸びることで、市民の協力と信用も得られ、新しいことにも挑戦ができる環境が整い始めています。また売上という目に見える成果を示せることは、DMO成功のカギだと感じているので、今後も観光地化に向けた新商品の開発にも力を入れていきます」と語る。

地域の回遊を生む約100カ所の花手水

市内の花手水

 20年4月、行田八幡神社が設置した花手水がSNS(交流サイト)で話題になった。この状況に対し市は訪れた人へのおもてなしとして花手水の数を増やそうと、近隣住民への声掛けを開始。その後、市民からも「設置したい」という声が上がり毎月2週間限定のイベント、「行田花手水week」へと発展。今では神社仏閣に加え商店、民家の軒先約100カ所に花手水が置かれるまでになり、中心市街地の回遊が生まれた。

 また、同イベント中、一夜限定で花手水をライトアップするイベント「希望の光」も行われており、開始した21年4月から23年3月までの18回でのべ5万2千人が来場し、約1億2千万円もの経済効果をもたらした。

 加えて、これらのイベントなどにより市内の主要観光施設の入込客数はコロナ前である19年の45万3808人から、22年には72万4931人へと大幅に増加、花手水を置く商店の売上増にもつながっている。「イベント期間を2週間に限定し、ライトアップを1日だけにしたこと、さらには暑さで長く花が持たない7~8月と、寒さが厳しく人があまり外出しない1月はイベントを中止したことなど、さまざまな要素がプラスに働き、参加する市民の皆様が負担に感じずに続けていただけていることもイベントが発展し続けている要因の1つ」(観光局・富山事務局長)。

 花手水を置く商店の関係者も、「取り組みを始めてから、中心市街地を歩く人が増え、なかには何回も足を運んでくださる人もいる。きれいな花を浮かべることで多くの人に足を止めてもらえ、写真も撮っていただけるので、励みになっています」とイベントの効果を語った。

 地域に賑わいを呼び込んだ同イベントは今年2月、地域資源を積極的に活用し、地域と協働で、知名度向上に貢献している点などが高く評価され、地域活性化センター主催の「第27回ふるさとイベント大賞」で「ふるさとキラリ賞(選考委員会表彰)」を受賞した。

 こうしたなか、市商工観光課の吉松氏は次の展開は「インバウンド誘致」と語り、「行田花手水をフックに、忍城や埼玉古墳群、足袋蔵など代々受け継いできた歴史的遺産を国外に対してもプロモーションをしていくことで、海外からの来訪につなげていきたい」との方向性を示す。

市と局が連携深めブランド形成へ

 行田市の観光地化に関し、「秩父市、川越市に並ぶ第3の観光都市にする」ことを目標に掲げる市商工観光課の吉松氏と観光局の富山事務局長。実現に向け吉松氏は「両者が連携を深めながら観光施策を推進することが、地域経済のさらなる発展と、埼玉県第3の観光地としてのブランドの形成、確立につながる」と強調。

 観光局の富山事務局長は、「観光でまちを活性化させるにはとにかく来ていただける人を増やすことが必要になります。そうしたなかで昨年度は、行田市の実施した貸切バスによる団体型旅行促進事業助成金事業により、1万5千人以上の方を呼び込むことができ、たくさんの方に行田を知っていただきました。これからも引き続き、我われの使命である市の観光地化の推進と県内外への情報発信の基盤整備を着実に進めていきます」と決意を語った。

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