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【特集No.605】ゆと森倶楽部(宮城県・遠刈田温泉) 生産性向上と連動して省エネ実現

2022年3月10日
編集部:木下 裕斗

2022年3月10日(木) 配信

 旅館・ホテルなど省エネに取り組み、大きな効果を得られた企業を取材するシリーズ「省エネへの挑戦!」の第2回は一の坊グループ「ゆと森倶楽部」(宮城県・遠刈田温泉)を取材した。グループの理念「お客様サービスの品質向上と社員の幸福化」実現へ、同館は2012年から生産性向上に取り組み、省エネにもつなげた。19年には大浴場の廃湯の熱を再利用する廃熱利用システムを導入し、20年7―9月の重油使用料は前年同期比で、約34%を削減した。三浦純ゼネラルマネージャーに話を聞いた。

【聞き手=増田 剛、構成=木下 裕斗】

 ――ゆと森倶楽部の歴史を教えてください。

 2009年4月に、厚生労働省が所有し、「ハイツ&いこいの村」として運営されていた施設を受け継ぎ、開業しました。建物は団体向けに設計されていました。

 団体客が年々減少し、原油価格は高騰するなか、コストは増加し、利益が思うように上がらない状況が続いていました。

 こうしたことから、一の坊グループの理念「お客様サービスの品質向上と社員の幸福化」の実現や「社会貢献(地球環境保全)」を目指し、グループ内では比較的規模の小さな「ゆと森倶楽部」から、省エネ活動に積極的に取り組んできました。

 ゆと森倶楽部の成功例から、一の坊グループは17年度に、「快適エコ活動計画」を策定し、各旅館の体質改善を実践することになりました。

 同計画は、グループ各宿の施設品質委員と社長などで構成する「快適エコ活動推進委員会」が、旅館の品質向上とエネルギーの効率化について計画の承認や予算化、評価などを行い、省エネ事業の最適化をはかっています。

 第1次計画(18―20年度)が終了し、成果として、グループ4館の19年の年間光熱費が同計画策定前の16年と比較して約4千万円の削減を達成しました。現在は、第2次計画(21―23年度)を実行中です。

 ――ゆと森倶楽部の個人化による省エネ効果は。

 空調設備はオープン当初、1カ所で館内すべてを賄うセントラル方式でした。使用されていない客室などにも、暖冷気を送ってしまい、客室や共用施設にあるスイッチはオンまたはオフの機能しか備わっていないことからも、常時フル稼働させる必要がありました。

 以前は、冬にお客様から「暖かすぎる」と言われれば、扇風機を出し、夏に「冷えすぎる」と告げられた際は、ヒーターを付けるなどし、ムダな光熱費が掛かっていました。

 今では、エアコンを個別化し、お客様の希望に合わせて温度を調節できるようになり、満足度が上がるとともに、細やかな調整により大幅にムダを削減することが可能になりました。

 さらに、浴場共用場所の冷房は21年、井戸水を使った冷房を導入し、電力消費量を80%抑えることができました。

 ――スタッフの業務量はどのように減らし、生産性を向上させましたか。

 団体客向けの宴会場などと、個人客のレストランとでスタッフのシフトを分けていましたが、個人化することで、宴会場の使用回数が減りました。スタッフは個人客向けレストランに集中させ、40人から20人に削減しました。これは、予約やフロント、事務などと役割を分けていましたが、ムダな業務を無くすことで、マルチ化した結果です。

 業務プロセスも簡素化し、労働時間も管理しやすくなりました。和室をベッド化して定員を5人から2人にしました。客室数は全50室であるため、最大100人までの収容となりました。

 また、電話予約をやめることで、今年1月の予約は、99%がインターネットから申し込まれました。ほかの月も、同水準となり、事務作業は大幅に削減されています。

 宿泊料金が事前決済のため、チェックアウト時の精算業務もなくなり、コロナ禍では取り消しも少なくなりました。

 ――レストランの生産性向上はどのように取り組んでいますか。

 ゆと森倶楽部のレストランのキッチンはホールの壁を挟んだ隣に位置し、調理人とホールスタッフが別々の仕事をしていました。現在は、ホールから見える場所に移設し、料理人がお客様の目の前で臨場感あふれる調理を行います。それだけでなく、ホール専門のスタッフを置かないため、料理人自らが食事を提供し、お客様に声を掛け、下膳もしています。

 洗う手間が掛かる箸を使用する料理は提供しないようにし、簡単に洗浄できるナイフとフォークを中心に提供しています。お客様からの要望があった場合のみ、割り箸をお渡ししています。

 また、バックヤードでは照明の間引きや、解凍する時間と水道代が掛かる冷凍品の仕入れを停止し、地元の新鮮な食材を利用することにしました。下膳した皿は付け置きするために、シンクに水を溜めていましたが、洗い場に下げてくると、溜めずにすぐに洗浄しています。

 これらの取り組みで水道代は約4割削減しました。さらに、従業員は閉店後、食器を洗うために夜遅くまで残っていましたが、現在は30分以内に帰っています。こうしたことで、残業代も減りました。

【全文は、本紙1864号または3月17日(金)以降日経テレコン21でお読みいただけます。】

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