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〈旬刊旅行新聞2月21日号コラム〉御三家ホテルの総料理長が登壇―― 生産者や食品ロス、革新と伝統を語る

2022年2月19日
編集部:増田 剛

2022年2月19日(土) 配信

 2月15~18日まで、東京ビッグサイトで第50回国際ホテル・レストランショーが開催された。コロナ禍でさまざまなイベントが中止・延期されるなか、広い展示場に、宿泊業や飲食業などに向けた次世代の厨房設備機器などのブースが出展され、特設会場では、トレンドセミナーやシンポジウムも開かれた。大規模なイベントに足を運び、最新の情報を目にし、耳にする体験は、新聞記者にとっても、心躍るものがある。

 

 
 さて、今回は同イベント50回記念パネルディスカッション「御三家ホテル総料理長が語る! アフターコロナにおけるホテルでの飲食の価値とは」を聴講した。

 
 登壇者は、帝国ホテル東京料理長の杉本雄氏、ニュー・オータニ取締役調理部長の中島眞介氏、ホテルオークラ東京執行役員洋食調理総料理長の池田順之氏。料理業界では大変知名度の高い3氏の考え方を、一度に触れる好機は「この機を逃してはもうないだろう」と、多くの聴衆を集めた。

 
 コロナ禍での営業状況については、3氏とも口をそろえて「厳しい状況」を説明した。

 
 そのなかで、“バイキング発祥”を誇る帝国ホテルの杉本氏は、客席のタブレットで好きなものを何度でも注文できる「オーダーバイキング」の導入によって3密を回避できるだけでなく、お客の注文を受けて料理を作るため、「食品ロスが大幅に削減できた」とメリットを強調した。さらに、コロナ禍でお客が激減したことで、「生産者が作ってくださる食材が当たり前のようにあり続けることはありえないと感じた」と述べ、「生産者とともに歩むことも考え続けていきたい」と語った。

 
 ニュー・オータニの中島氏は同ホテルが「生ごみをコンポスト(堆肥)に戻すシステムを30年以上前から導入し、堆肥を使う生産者のお米や野菜を買う循環ができている」ことを紹介。また、ハンバーガーやナポリタンなどに大豆ミート(代替肉)を使用する商品開発にも着手しており、未来を見据え、「バランスを取りながら、世の中のためになる」メニュー開発にも取り組んでいると話した。

 
 ホテルオークラ東京の池田氏は「フードロスの問題は食文化がスタートした段階から始まっており、逃れられない」と語った。「どのホテルも努力している。単館では小さいが、各ホテルの努力が集まれば大きな削減になる」との考え方を示した。

 

 
 ホテルでの飲食の価値について、帝国ホテルの杉本氏は「安心・安全・信頼」を挙げ、ニュー・オータニの中島氏は「華麗なる劇場」にたとえた。中島氏は、婚礼などでは通常6―8皿のコースメニューを集約し、革新的な「4皿メニュー」を自ら考案。接客スタッフの負担軽減や、2時間でスムーズに進行している利点も説明した。そのうえで、「料理にはアイデアは重要」と述べた。ホテルオークラ東京の池田氏は44年間一貫して同ホテルで修業してきた経験から、「自分は各レストランの料理長には『好きなことをやってもいい』と言っている。ただ、ホテルの幹を変えてはいけないと思っている」と話し、「ホテルは伝統的な味を守っていくべきだ」と力を込めた。

 

 
 コロナ禍で飲食業は存亡の危機を迎えている。だが、食文化を創造する現場のクリエイティブな話はとても奥深く、豊かだった。

 

(編集長・増田 剛)

 

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