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人材ニーズは81・5万人、サービス業の人材調達困難に(リクルート)

2014年7月21日
編集部

東京五輪がもたらす雇用インパクト

 リクルートホールディングスがこのほど発表した「東京オリンピックがもたらす雇用インパクト――人材難が2020年までに迫る構造改革」によると、東京五輪によって全国で生まれる人材ニーズは81・5万人。この数値は、12年の就業者数全体の1・3%、12年の失業者数285万人の約3分の1にあたり、決して少なくない数値だ。産業別にみると、飲食・宿泊業では3・6万人と試算。サービス業は慢性的な人材不足を抱え、人材調達は容易ではないと指摘する。
【伊集院 悟】

 発展途上国での五輪開催は、インフラ整備や観光誘客、新しい文化の創造など経済成長の起爆剤に例えられることが多い。一方、成熟都市で行われた12年のロンドン五輪は、経済成長が多大に期待できないなかで、失業者の就労支援や社会的弱者の雇用促進、最貧地域であった東部に主要会場の五輪パークを建設したことによる最貧地区の再開発など、成熟都市における社会課題の解決機会とした。

 ロンドン五輪の特徴を分析すると、BBC調査によれば、7割弱の人が経済効果に影響がなかったと答えたが、五輪に税金を投資する価値があったかについては7割が価値があったと答えている。

 ロンドン五輪がおよぼす04―20年の雇用創出効果は75・6万人と試算される。「卸売・小売業」で12万人、「観光・警備・事務などサービス」で9万人。経済効果はロンドンが35・9%、その他地域が64・1%。雇用誘発数の割合はロンドンが25・9%、その他地域が74・1%と波及効果は全国に及んでいる。4月17日に開かれたメディア向けのセミナーで、リクルートワークス研究所の中村天江主任研究員は「波及効果はロンドン地区だけの限定的なものではないので、東京五輪も関東圏はもちろん、北海道や九州などへも間接的に波及していく可能性が高い」と説明した。

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 東京五輪により全国で生まれる人材ニーズを81・5万人と算出。12年の失業者数が285万人なので、失業者数の約3分に1にあたる。産業別にみると、建設業とサービス業が2大ニーズで、それぞれ33・5万人と、16・8万人。そのほか、卸売・小売業が8・5万人、飲食・宿泊業が3・6万人など。

 東京五輪開催の20年の最多人材ニーズは25・8万人に上り、建設業以外は20年にピークを迎える一過性が強い人材ニーズだ。中村主任研究員は「ピークでの人の取り合いになり、人材ニーズがあっても調達できる保証はない」と指摘。マッチングの質まで考慮すると、人材調達は容易ではなく、現状ですでに人材獲得が難しい建設業や販売・サービス業はさらに困難になり、五輪に向けて人材が逼迫するという。

 ロンドン五輪は08年のリーマンショックにより雇用状況が悪化し失業者が増加しているなかでの人材ニーズの急騰だったが、日本の場合は人材難の状況からのさらなる人材ニーズ急騰が起こるため、人材不足の影響はロンドン五輪よりも重大になるとみられる。

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 サービス業は、製造業、建設業の就業者数が減少し始めた90年代にも成長し、00年代初頭まで就業者数が増加。近年は横ばいであるが労働人口が減少し始めているため、すでに慢性的な人材難に陥っている。13年のサービス業全体の有効求人の倍率は1・74。全職種平均の0・83と比べて高く、前年の1・68から上昇し、供給が需要に追い付かない状態が続いている。

 サービス業の特徴は(1)不規則な勤務時間と休日(2)知識や技術を必要としないことも多く「誰にでもできる仕事」と認知されている(3)非正規雇用の比率が高い(4)人材の入れ替わりが激しい――。宿泊・飲食サービス業の非正規雇用率は58・9%と、全産業平均の30・2%と比べて圧倒的に高い。また、入職・離職率をみると、製造業と建設業が10%前後なのに比べ、宿泊・飲食サービス業が入職率28・7%、離職率27・0%と突出している。

 パート以外で高齢者や主婦の活用が進まない理由には、時間などの成約がない社員を前提にした業務オペレーションになっていることと、責任や負担が集中している現場責任者に人材活用法を変える余裕や裁量がないことが挙げられる。

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 リクルートホールディングスは、人材ニーズの逼迫により企業・個人・労働市場でポジティブ・ネガティブな影響が発生すると分析。企業が外部から人材を調達しようとすると、採用基準の緩和、賃金など採用条件の引き上げ、求人広告の募集費など採用方法の見直しにより人材マネジメントコストの拡大が起こり、企業コストが増える。また非合法的な人材調達により人材調達のアンダーグラウンド化が起きる。

 人手不足を内部の人材で賄おうとすれば、社員の労働時間の増加や業務範囲の拡大など労働条件・環境の悪化と、五輪商機の見送りによる企業の機会損失も考えられる。一方、人手不足に対処するため、社内の人材配置の見直しや業務の効率性・生産性の向上なども期待できる。

 成熟した日本での五輪開催に向けた構造改革ビジョンとして、「一過性の人材ニーズ」と「構造的人材難」の2つの特徴を前提とした対策が必要になると指摘。(1)今働いている人の労働移動ではなく、高齢者や主婦、失業者、若年ニートなどの潜在的な労働力の就労を促すこと(2)一時的に集中して発生する人材ニーズに機動的に対応するための仕組み構築と、人材マーケットの安全性を同時に実現(3)国内広域労働移動の仕組みを構築・強化(4)外国人労働力の先駆的な活用スキームの構築――などが求められる。

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