東京で観光魅力発信、沖縄ナイトに1500人集う

仲井眞知事
仲井眞知事

 沖縄県と沖縄観光コンベンションビューローは1月29日、東京都内のホテルで、沖縄観光キックオフ・プロジェクト2013「沖縄ナイト」を開き、旅行会社など約1500人の出席者に一層の沖縄観光への協力を呼びかけた。

 仲井眞弘多知事は「昨年は復帰40年の節目。今年3月には新石垣空港の開港がある。さらに政府閣議で那覇空港の第2滑走路増設が決定した。工期も予定より短縮され、5年程度でもう1本滑走路が供用開始となる。沖縄にとって観光リゾートは大きな産業でありもっと飛躍する予感がある。沖縄の新しい魅力を発見してもらい、さらに発展させたい」と述べた。

 続いて山本一太沖縄担当大臣、岸田文雄外務大臣が登壇し「沖縄振興予算や那覇空港新滑走路の工期短縮など安倍首相の沖縄への思いを感じとってもらったのではないか。沖縄には大きな可能性がある。日本を引っ張っていくような沖縄にしていくため政府も振興に向け頑張りたい」(山本大臣)「何度も沖縄を訪れているが、幾度に魅力を感じている。沖縄ナイトのひと時で盛り上がり沖縄の元気を感じてほしい」(岸田大臣)と祝辞を述べた。

 さらに送客側代表として植木義晴日本航空社長、伊東信一郎全日本空輸社長も「沖縄には人々のホスピタリティあふれるもてなし精神がある。沖縄のさらなる魅力アップの手伝いをしていく」(植木社長)、「全日空は18の支店から那覇空港、3つの支店から石垣空港に路線を持っている。今後も沖縄の発展に少しでも寄与できればうれしい」(伊東社長)と語った。

 会場には観光や物産、農産物を紹介するコーナーが設けられたほか、琉球舞踊のアトラクションも披露された。

昼に行われた大博覧会
昼に行われた大博覧会

 同日午後には「沖縄観光&MICEコンテンツフェア~オールおきなわ大博覧会~」も開かれ、沖縄の自治体や観光協会、宿泊施設、運輸、ブライダル関連企業などがブースを出展、旅行会社との商談に臨んだ。

食文化で外客増加を、KANSAI国際観光YEAR2013(近畿6府県)

説明会のようす
説明会のようす

 近畿6府県首都圏観光連絡協議会は1月30日、東京都千代田区の都道府県会館で観光情報交換会を開き、旅行会社や報道関係者に最新の情報を紹介した。関西全体の話題は、関西広域連合を中心に、今年1年間展開する「KANSAI国際観光YEAR2013」。関西の食文化をテーマに世界に発信し、外国人観光客の増加をはかる。

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 「KANSAI国際観光YEAR2013」は、プロモーション事業として関西広域連合や各自治体、経済団体などが行う海外プロモーションやファムトリップで関西の食をキーワードにした海外観光客誘致活動を実施。また、キャンペーン事業は共通ロゴマークで関西への誘致につながるキャンペーンを実施するほか、空港や駅、ホームページを活用して、食文化や体験できる場の情報を発信する。

 イベントは4月26日―5月6日の「’13食博覧会・大阪」をコア事業に、期間中に関西で実施される食関連イベントを結集し、1年を通じて体験の場を提供する。

 各府県別の情報は、兵庫県が大河ドラマ「八重の桜」の話題で、新島八重の最初の夫・川崎尚之助の故郷を旅するモデルコースを提案。また、神戸市・湊川神社の神幸「楠公武者行列」が5月26日、6年ぶりに開催されることを紹介した。南北朝時代の歴史絵巻を再現するもので、参加者を一般募集している。

 大阪府は南泉州地域を中心に紹介した。とくに、泉佐野市は観光庁が全国で14カ所を選定している訪日外国人旅行者の受入環境整備に係わる地方拠点の1つ。地域全体の魅力は体育の日を中心に、だんじりなど各種の祭が行われることや、海と山の両方を楽しめることをアピールした。

 京都府は、新島八重の夫・新島襄が設立した同志社や夫妻が暮らした旧邸があることなどゆかりが深い。そのゆかり地のなかでも、国の重要文化財に指定されている府庁などを紹介した。

 滋賀県は、3月21日に開館する「ヤンマーミュージアム」を売り込んだ。ヤンマー創業100周年を記念し、創業者・山岡孫吉の出身地の長浜市に設立するもので、建機を動かす体験から船の操縦シュミレーション、自然環境体験のビオトープ、足湯までさまざまな体験ができる施設。教育旅行にも最適だという。

 和歌山県は15年に開創1200年を迎える世界遺産・高野山をPR。2月16日は、港区の高野山東京別院で「高野山カフェ・プチ修行in東京別院」が開かれ、阿字観瞑想などが体験できる。

 さらに奈良県は十一面観音を8体巡り、人生の厄災から救われるという信仰の「八十八面観音巡礼」を紹介。全国に7体ある国宝の十一面観音像のうち、県内にある3体と、重要文化財の十一面観音像5体を巡る。長谷寺東京出張所の小林観秀主事は「十一面観音は、さまざまな表情があり、人間に最も近く、気持ちを汲んでくれる仏様として慕われている。8カ寺が連携し、1泊2日で満足感や達成感を味わっていただくとともに、奈良のコアな部分に自然と入っていけるようにと考えた」と今回の取り組みを説明した。

「スマホ」に注力、専用ページ拡充へ(楽天トラベル)

楽天トラベル・岡武社長
楽天トラベル・岡武社長

 楽天トラベル(岡武公士社長)は2月4日、東京都内で新春カンファレンス2013を開いた。岡武社長はモバイル経由の流通が順調に伸張しているとし、スマートフォン専用のモバイルページを充実させ注力していく方針を示した。

 岡武社長は、「モバイル経由の流通は、スマートフォン(スマホ)の比率が70%を超えている。今後、スマホやiPadなどを使用した旅行予約が重要になってくる」と述べた。同社では、パソコンとスマホの利用者を別に考え、スマホ専用の宿泊施設などの主要ページ作成、操作画面などのカスタマイズ編集、最適化の必要性をポイントとした。同編集機能は、1月末に発表され、施設側が編集を始めている。マーケティング強化は、楽天市場と楽天トラベルの2つのサービスを使い、検索エンジン対策とアプリのダウンロード数の促進をはかる。

 岡武社長は13年のキーワードとして、(1)モバイル(2)オンラインカード決済(3)ダイナミックパッケージ(4)ユーザビリティの向上(5)システム連携の強化(6)チャンネルの拡大(7)インバウンド(8)海外展開――の8点を挙げた。

 楽天市場のモバイル・タブレットシェア流通総額は、2013年末に42%以上になると予測。各店舗のスマホページの編集は96%が編集済みとし、1店舗あたりの平均売上高は、編集したパーツ数に比例したかたちで上がっている。

楽天・三木谷会長
楽天・三木谷会長

 楽天代表取締役会長の三木谷浩史氏は、「日本の携帯電話が、スマートフォン、タブレット化してきた」と話し、「今後は、スマホ機能の向上を目指し、GPSやアクティビティ情報、グーグルMAPなどの充実をはかる。パソコンで実現できなかったものを『いつでもどこでも』の利点をもったスマホでかたちにしていく」と述べた。

 インテル社の共同創業者であるゴードン・ムーア氏の「ムーアの法則(18カ月ごとに倍になる)」を引き合いに出し、「スマホの計算力は1・5年で2倍になり、10年後には100倍になる。近い将来、手の中にスーパーコンピューターを持つ時代になる」と語った。

 

創立60周年盛大に、茨旅協

木村進会長があいさつ
木村進会長があいさつ

木村会長「さらに前進」

茨城県旅行業協会(会長=木村進・木村トラベル社長)は1月24日、群馬県・草津温泉の草津白根観光ホテル櫻井で、創立60周年記念式典を開いた。会員や賛助会員、協会関係者約200人が参加した。記念講演は鈴木宗男新党大地代表が「わが道・天国と地獄を見た男」と題した講演を行った。

 

 式典に先立ち、木村会長は「60年という長い歴史を振り返り、会員も増え、発展できたのも諸先輩や、会員、賛助会員の協力のおかげであり、感慨ひとしお」と述べた。さらに、「創立60周年を契機に今まで支えてくれたお客様、関係者に感謝の気持ちを忘れることなく、さらに前進していきたい」と誓った。

 来賓として、二階俊博全国旅行業協会会長の代理として鈴木明治副会長をはじめ、國谷一男全国旅行業協会関東地方協議会議長・栃木県旅行業協会会長、武田将次郎茨城県旅行業協会賛助会会長、武井哲郎群馬県旅行業協会会長がそれぞれの立場で祝辞を述べた。

 このほか、木村茂男全国旅行業協会参与、浅子和世埼玉県旅行業協会会長、斎藤忠義千葉県旅行業協会会長、玉川明茨城県空港対策副参事、黒岩信忠草津町長、山田寅幸草津温泉観光協会会長らが来賓として出席した。

 式典では協会創立60周年を期して、会員、賛助会員の特別功労表彰も行われた。

会長賞はNOEに、東北の企画コンテスト(JATA復興支援プロジェクト)

吉川委員長(右)とエヌオーイーの林田社長(中央)
吉川委員長(右)とエヌオーイーの林田社長(中央)

 日本旅行業協会(JATA)は1月30日、昨年12月に実施した「JATA東北復興支援プロジェクト」に参加した会員が、東北の企画を競う商品企画コンテストの結果を発表した。132コースの応募のなかからJATA会長賞にはエヌオーイーの岩手県の商品が、国内旅行推進委員長賞にはジャルパックの山形県の商品が選ばれた。

 昨年12月3、4日の1泊2日で実施したJATA東北復興支援プロジェクト「行こうよ!東北」は、会員会社の社員など約1千人が東北の各県に分かれて視察を行い、震災以降の変化や新しい観光スポットについて情報収集を行った。コンテストはこの成果として、具体的に東北への旅行需要拡大をはかるために実施するもので、優秀企画の12コースは実際に商品化される。

ジャルパックの二宮社長(右から2人目)
ジャルパックの二宮社長(右から2人目)

 選考は(1)企画内容が斬新で、東北の新たな魅力を引き出しているか(2)円滑な旅程スケジュールか(3)代金設定がリーズナブルか――の3点を中心に、全132コースのうち各県2コースずつ、計12コースを各県賞に選出。そのなかから、JATA会長賞としてエヌオーイーの「いわて・みやこソウルフード&B級グルメ満喫!コンパクトでも内容ギッシリ1泊2日」と、国内旅行推進委員長賞としてジャルパックの「高畠・楢下宿と50年に一度の御開帳『山寺』を専門家と巡る旅」を表彰した。

 発表同日に開いた表彰式で、JATA副会長で国内旅行推進委員会の吉川勝久委員長は「これを契機に我われJATAの旅行会社それぞれが、しっかりと東北地方へ送客をしていきたい。今後、どのようなことができるかは検討中だが、旅の力での東北復興は継続していかなければならない」と東北支援に今後も注力することを語った。

 また、表彰を受けたエヌオーイーの林田建夫社長は、「JATAがこれほど大きなプロジェクトを行ったことはこれまで記憶になく、それだけ東北に懸ける想いが我われに伝わってくる。大災害から2年近くが経とうとしているが、東北はまだまだ復興途上だ。この企画を商品化して、さらに復興の一助となればと思っている」と述べた。ジャルパックの二宮秀生社長は「この企画を含めてしっかりと商品化し、送客をすることで本業である旅の力で復興支援の後押しをさせていただきたい」と語った。

 表彰式に出席していた岩手県東京事務所の大久保立氏に企画について聞いたところ「被災地に加え、B級グルメもあり岩手のディープな魅力を盛り込んでいただいた」とコメント。山形県東京事務所の須藤英克氏は「山寺は50年に一度の御開帳なのでアピールできてうれしい。期間は4月27日―5月31日と短いが、多くの人に訪ねてもらいたい」と話した。

 2社以外の優秀賞は次の各社。

 【青森県賞】ユーラシア旅行社▽びゅうトラベルサービス【秋田県賞】近畿日本ツーリスト▽イーホリデーズ【岩手県賞】毎日企画サービス【宮城県賞】京王観光▽ユーラシア旅行社【山形県賞】風の旅行社【福島県賞】クラブツーリズム▽日本旅行

前橋ドームに5千人、地旅大賞の表彰式も(ANTA国内観光活性化フォーラム)

二階俊博会長があいさつ
二階俊博会長があいさつ

 全国旅行業協会(ANTA、二階俊博会長)が主催する「国内観光活性化フォーラムin群馬」が1月23日、グリーンドーム前橋(前橋市)で開かれ、全国の旅行会社など約2千人と一般客約3千人の合計5千人が集まった。今年は初めて観光・物産のPRブースを一般開放し、地元紙への折り込みチラシなどでPRした結果、一般客が大勢来場した。

 開会式で二階会長は「ようやく東北を中心とする東日本の観光復興の兆しが見えてきたところ。このフォーラムを全国津々浦々で開き、観光の輪を広げていきたい」と語り、開催都市群馬について「群馬は観光資源がたくさんあり、発展させることができる。このフォーラム後に群馬の観光がより活性化するよう、皆で群馬に送客をしよう」と呼びかけた。

福田康夫元首相
福田康夫元首相

 群馬が地盤の大会名誉実行委員長の福田康夫元内閣総理大臣は「群馬は東京から1時間強と近く、ここ前橋から車で30、40分も行けば、たくさんの温泉地がある。全国から集まっている会員の皆さんはぜひ全国で群馬をPRしてほしい」と呼びかけ、「二階会長は、9・11の際はブッシュ大統領の依頼でニューヨークへ2千人の訪問団を連れ、靖国問題で日中関係が揺れたときには6千人を北京へ連れていった。外国からの信頼も厚く、観光業界で果たしてきた役割は大変大きい」と二階会長を讃えた。そのほか、来賓の井手憲文観光庁長官や大澤正明群馬県知事、山本龍前橋市長があいさつをした。

 シンポジウムでは、井手長官が「国内観光旅行の推進」について講演し、東北観光推進機構の長谷川博樹国内事業部長が「東北の観光の現状」について報告した。

地旅大賞を受賞した日本海トラベルの後藤紀社長
地旅大賞を受賞した日本海トラベルの後藤紀社長

 第3回地旅大賞の表彰式では、大賞を受賞した日本海トラベルの後藤紀代表らへ株式会社全旅の池田孝昭社長から賞状が手渡され、後藤社長は「『地旅』は本当に小さな旅。今後も地元のボランティアガイドと一緒になって楽しい旅を作っていきたい」と喜びを語った。

パネリスト
パネリスト

 続いて、コーディネーターにまちづくり観光研究所の奥坊一広所長、コメンテーターに全旅の池田社長を迎え、青森地域社会研究所の末永洋一特別顧問、井門観光研究所の井門隆夫代表、五木田・三浦法律事務所の三浦雅生弁護士、群馬女将の会の塚越裕子会長の4人がパネリストとして「『地旅』と地域活性化の方向性」についてディスカッションした。末永氏は、「地元の人しか知らない体験・物語をどう商品化していくのか。地旅は地元に密着した旅行会社じゃないと作れない」とANTAが地旅に取り組む意義を語った。井門氏は「これからの日本経済・観光を支えるのは中小企業。大手旅行会社は2、3年で転勤する人ばかりで、その土地の良さを売る企画力はない。ずっと地元にいる中小の旅行会社なら地元の良さを知りつくし、企画力がある」と強調。「観光協会が着地型旅行に取り組み始めているが、2次交通の手配ノウハウがなく、店終いも早く、最少催行人数も高くてなかなか良いものができず、(1)そば打ち(2)農業体験(3)まち歩き――のありきたりな3つしかできない」と現状を指摘し、「その点旅行会社なら手配力もある。もっともっと着地型商品に積極的に取り組んでほしい」と語った。

 翌日には、富岡製糸場や城下町小幡、ブラジル町大泉など県内各地をめぐる7コースのエクスカーションが実施された。

 次回の「第10回国内観光活性化フォーラムin和歌山」は14年2月11日に和歌山ビッグホエールで開かれる。

 第3回地旅大賞の各受賞商品は次の通り。

 【大賞】「古代ロマンが漂う田舎でボランティアガイドが活躍!歴史人に触れ合い古代の自然に触れ合う旅」日本海トラベル(山形県)

 【優秀賞】「郷土愛深い『語り部』がご案内――町家で食す郷土料理と華麗な犬山祭屑山」ツアー・ステーション(愛知県)▽「四季折々の美しい景観と村人との触れ合いを何度も楽しむシリーズの旅――南阿蘇村7不思議の旅」アースランド観光(熊本県)

 【特別賞】「お祝い膳にて還暦祝い――廃校利用同級会プラン」アールエイチ企画(福島県)▽「役者がご案内する浅草ガイドツアー全3コース」セグラスツーリズムエージェンシー(東京都)▽「三嶋大社正式参拝ツアー」三島市観光協会(静岡県)▽「環境船めぐみで行く『冬の湖北・余呉の食と暮らし』を訪ねる旅」地域観光プロデュースセンター(滋賀県)

13年訪日1千万人へ、在外公館との連携強化も、井手憲文観光庁長官

 観光庁の井手憲文長官は1月25日に会見を開き、2013年の訪日外客数目標を1千万人とすることを発表した。

 井手長官は12年の訪日外客数が過去最高値の2010年に次ぐ837万人となったことを受け、「目標の900万人には届かなかったが、震災前のレベルまで回復した」と語った。13年は「回復から飛躍へ」と1千万人を目標に掲げる。1千万人に向け「東アジアと東南アジアを大幅に伸ばさないといけない」と力を込めた。

 韓国市場については「原発の風評被害が減り、ウォン安の悪影響も落ちつき、だいぶ回復に向かってきたところ。今年は本格回復を目指す」と述べた。先般策定した「日韓地方観光交流促進計画」にのっとり、地方への訪日客誘客をはかっていく。

 中国市場は「すぐに団体客が本格回復するのは難しい」との見方を示しつつも、「個人旅行客と、インセンティブ旅行客やビジネス客を増やしていきたい」と語った。今までは沿岸部へのプロモーションが多かったが、今後は内陸部へもプロモーションを拡大していくという。また、先刻、北京を訪問し邵キ偉中国国家旅游局長と会談したことを報告。「2国間で問題はあるが、観光交流を伸ばすことで他の問題の解決へつなげる」という共通認識を確認し、邵局長も「民間交流の大切さ」をあげたという。

 今年とくに力を入れるという東南アジア市場については「12年に急成長したので、今年はさらに注力し増やしていく」と強調した。1月21日にラオスで開かれた「第12回ASEAN+3観光大臣会合」には鶴保庸介国交副大臣とともに井手長官も出席。ASEAN10カ国すべての国と個別会談を行ったことを報告し、「すべての国と個別会談をしたのは日本だけではないか」と手ごたえをのぞかせた。1月29日に閣議決定された13年度予算案では「東南アジア・訪日100万人プラン」として5億9900万円を計上し、オールジャパンによる訪日促進プロモーションも展開予定だ。

 欧米市場については、「成熟した感がある」とし、「これまで通りのやり方ではなく工夫が必要。欧米市場はクオリティを高めて、顧客満足度をあげる必要がある」と指摘した。

 また、13年は在外公館や日系企業などとの連携強化を目指す。「取り組みの弱い大使館には活を入れる」とインバウンドにおける在外公館の重要性の認識を示した。さらに、訪日ブランドの確立と発信強化を目指し、今春までを目途に、メンバーに外国人を入れた日本ブランド確立への勉強会を立ち上げることを明かした。 

観光関連に102億円、復興枠5・8億円で福島支援も(13年度予算)

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 2013年度政府予算案が1月29日に閣議決定され、復興枠を含む13年度の観光関連予算は12年度予算(103億3900万円)比1%減の102億3200万円となった。厳しい財政状況を受けた予算編成となったが、何とか100億円の大台は確保。このうち、観光庁計上分は同3%減の96億5500万円で、復興庁計上の復興枠は同73%増の5億7700万円となった。9月にまとめた概算要求では、12年度予算の8%増となる111億7700万円を要求していた。

【伊集院 悟】

 予算項目は(1)訪日外国人3000万人プログラム(2)観光を核とした地域の再生・活性化(3)観光産業の再生・活性化(4)ワークライフバランスの実現に資する休暇取得の促進(5)観光統計の整備――の5本柱と、復興枠の(1)東北地域観光復興対策事業(2)福島県における観光関連復興支援事業――の2事業。

 事業別にみると、「訪日外国人3000万人プログラム」は、前年度比1%減の82億800万円。このうち、中核となる訪日旅行促進事業(ビジット・ジャパン事業)は、同11%増となる54億9100万円となった。「16年インバウンド1800万人」達成へ向け、訪日個人旅行の促進と国際会議などのMICE推進、送客元の多様化をはかり、震災や外交関係などの外的要因の影響を受けにくい訪日外客構造への転換を目指す。また、現地旅行会社と連携する現地旅行会社向け事業、在外公館などと連携する海外現地オールジャパン連携事業、自治体や経済界と連携する地方連携事業を柱に、質が高く裾野の広い誘客をはかるためオールジャパンによる連携を強化していく。あわせて、現地消費者向けの情報発信と観光客目線での風評被害対策で震災により傷ついたイメージの改善と競合国と差別化された訪日ブランドの強化を狙う。

 新規事業「東南アジア・訪日100万人プラン」には5億9900万円を計上。震災後も高い伸びを示し、2012年訪日客78万人の東南アジアに対し、オールジャパンによる訪日促進プロモーションで、13年の訪日客100万人を目指す。

 訪日外国人旅行者の受入環境整備事業は同67%減の2億8千万円。日本政府観光局(JNTO)の運営費交付金は同3%減の18億3700万円となった。

 「観光を核とした地域の再生・活性化」分野は同45%増の4億3千万円と大幅増となった。新規事業の「観光地域ブランド確立支援事業」には9月の概算要求時よりも1億円ほど多い3億4300万円を計上。国際競争力の高い魅力ある観光地域づくりを促進するために、観光地域づくりプラットフォームを有する観光圏が地域独自の「ブランド」確立に向けて取り組むのを支援する。GPS機能なども活用し、観光客の行動・動態などの調査・分析を実施しマーケティングに力を入れる。

 4900万円を計上した新規事業「観光地域評価事業」では、観光地域づくりに取り組む地域での課題や改善点などを明確にするため、多面的かつ客観的な指標による評価制度を構築し、恒常的な評価・分析にもとづくコンサルティングを行う。

 「観光産業の再生・活性化」分野では同17%増の1億9900万円を計上。このうち「ユニバーサルツーリズム促進事業」は前年度比4・36倍の3900万円、滞在交流型観光の推進をはかる「地域観光環境改善事業」は同6・58倍の9900万円となり、13年度に力を入れていく事業であることがうかがえる。

 概算要求より3千万円少ない2千万円の計上となった新規事業「地域宿泊産業再生支援事業」では、経営悪化などに直面した地域の宿泊産業と、観光経営や地域づくりの知見を蓄積した、意欲ある地域・近隣の大学を結びつけ、地域全体の力を結集し、宿泊産業が自立して継続的に再生できる仕組みづくりを目指す。また、安全管理体制の構築・充実に向けた調査・検討を行う新規事業「旅行の安全確保・向上方策検討調査」は2500万円となった。

 7千万円を要求していた「地域観光イノベーション促進事業」は予算計上を見送られた。

 「ワークライフバランスの実現に資する休暇取得の促進」分野は同80%減の1600万円。家族旅行の需要喚起のための「柔軟な学校休業の設定に関する調査事業」は1千万円を要求していたが、今回見送られた。

 12年度に調査を終えた「観光統計の整備」は同42%減の5億1800万円となった。

 また、復興庁計上の「復興枠」では、復興基盤が整いつつある太平洋沿岸エリアの旅行需要回復と、東北観光博の仕組みを踏まえた滞在交流型観光を支援する「東北地域観光復興対策事業」に1億9900万円、福島県が実施する風評被害対策と震災復興に取り組む観光関連事業に補助する「福島県における観光関連復興支援事業」に3億7800万円を計上した。

No.331 鶴雅グループ - 地域に根差した“開拓精神”

鶴雅グループ
地域に根差した“開拓精神”

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客様の強い支持を得て集客している旅館がある。なぜ支持されるのか、その理由を探っていく「いい旅館にしよう!」プロジェクトのシリーズ第9弾は、鶴雅グループの大西雅之代表取締役社長が登場。産業技術総合研究所の工学博士・内藤耕氏との対談で、大西社長は多店舗展開のメリットや、(1)ひとり旅(2)ペット同伴(3)長期滞在(4)海外のFIT旅行をしっかりと取り込み、新たな北海道滞在型リゾートを目指す構想を語った。

【増田 剛】

 

 

 

≪「いい旅館にしよう!」プロジェクト≫ シリーズ(9)
鶴雅グループ

【対談者】

大西 雅之(おおにし・まさゆき)氏
鶴雅グループ 代表取締役
×
内藤 耕(ないとう・こう)氏
産業技術総合研究所サービス工学研究センター副研究センター長(工学博士)

 

■大西:釧路で小さな商人宿を営んでいましたが、父が阿寒湖温泉で旅館を始めたのが1955年。私は旅館としては4代目、観光旅館では2代目となります。

 26歳で私が旅館に戻った1981年のころは8畳間中心の136室。客室と宴会場しかなく、大浴場もそれほど力を入れていない状態で、最初に父から命じられたのは越冬資金を銀行から借りて来ることでした。木造から初めて鉄筋の建物にしたのが1970年で、その後少しずつ客室を増やし193室になったときに念願の1日に1千人宿泊を達成させました。つまり、8畳一間に5人を詰め込んでいた計算です。当時は「顧客満足」とか「品質向上」というような言葉は会社にはなく、「どうしたら満館にできるか」ということばかりを考えていました。

 

 

 

 

※ 詳細は本紙1492号または2月15日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

出張のひとり旅 ― 温泉旅館に泊まりたい

 先日、岡山県倉敷市に出張で訪れ、翌日に兵庫県・城崎温泉に出向くスケジュールだったので、その途中にある大阪や京都のビジネスホテルではなく、有馬温泉で宿を取ろうと思い、インターネットで検索してみたのだが、有馬温泉には出張族が素泊まりできるようなプランが見つからず、諦めてしまった。実際にはビジネスマン向けの出張プランはあるのかもしれないが、私の探し方が悪かったのか、思うような宿に巡り合うことができなかった。

 出張宿泊費はたかが知れているので、有馬の名門旅館に泊まろうなどとはハナから思ってもいない。小さくて、古くてもいいから安い宿に泊まらせてもらい、共同湯「金の湯」で「有馬温泉のありがたい湯に私も少しだけ浸からせていただきたい」などと考えていたのである。

 業界内外のいろいろな人から、「出張ついでに温泉地の宿に泊まりたい」という声を聞く。しかし、温泉地の宿の方で、受入れを閉ざしてしまっている印象を受ける。

 宮城県仙台市に近い作並温泉の「鷹泉閣 岩松旅館」では、早くから女性のひとり旅を受け入れている宿だ。「平日の出張ついでに温泉に入りたいという女性たちの潜在需要は大きく、もったいない」と岩松廣行社長は話す。

 今回の1面でも登場する北海道の鶴雅グループの大西雅之社長も「(旅館が)これまで取りこぼしてきたひとり旅や、ペット同伴の旅行者を受け入れなければ、国内旅行市場はますます縮小するし、成熟もしない」と語っている。

 人気旅館だから頑張っているのではなく、頑張っているからこそ人気旅館なんだと改めて感じた。

 結局、その夜は有馬温泉ではなく、姫路駅前のビジネスホテルに宿泊した。姫路には以前から行ってみたいと思っていたので、ちょうど良かった。工事中にも関わらず、ライトアップされた姫路城は異様に美しかった。

 夜の姫路城見学後、アーケード内の居酒屋に入り、ビールやサワーを飲みながら、焼き鳥やら串カツやらを注文して、結構へべれけになるまで呑んでしまった。料理は旅館より上か。最後に注文した焼きおにぎりとお新香がすごく美味しかったので、帰り際に支配人にそう告げると、うれしそうな顔をしていた。

(編集長・増田 剛)