2025年11月6日(木) 配信
和楽器演奏エンターテイメント いやさかプロジェクト
東京都は、江戸の歴史・文化の活用を東京の観光振興の大きな柱に位置付けている。今年度は「観光まちづくりにおける江戸の文化財等の活用促進事業」を新規事業として立ち上げるなど、観光資源化への取り組みを加速している。こうした施策の一環で11月5日から、観光関連事業者を対象に「江戸・東京の魅力を活用した観光周遊モニターツアー」を開始した。おもに訪日外国人観光客向けのツアーコンテンツ、モデルコースの紹介や魅力の発信が狙い。
モニターツアーは「浅草と屋形船で江戸文化体験三昧」「日野で新選組を体感」「日本橋で江戸の町人文化と伝統工芸を体感」の3コースを用意。11月~2026年1月にかけて各3回催行する。ツアー初日の11月5日は「浅草と屋形船で江戸文化体験三昧」コースを実施し、旅行会社の担当者やインフルエンサー、報道関係者ら約30人が参加した。コース内容を紹介する。
□「ブロードウェイ六区」で伝統芸能に触れる
麻生子八咫さんが活弁を英語で披露
同コースはまず浅草ビューホテルアネックス六区で、日本の伝統文化を体験。同ホテル1階のレストランに設置する檜の舞台「ブロードウェイ六区」では、定期的に伝統芸能を披露するイベントを開催しており、宿泊者は無料で楽しめる。各テーブルには翻訳タブレットを設置し、外国人も楽しめるよう工夫されている。今回はそのプログラムのなかから活弁(かつべん)士・麻生子八咫(あそうこやた)氏による「活弁」を観賞した。
活弁は、昭和初期ごろまでに制作された無声映画に語りをつける日本芸能で、現在活躍する活弁士は全国で約10人と貴重なものになっている。麻生子八咫氏は父の麻生八咫氏の舞台を見て育ち、10歳で舞台デビュー。現在は海外公演も数多くこなすという。今回は訪日客を想定し、英語での活弁を披露した。
また、伝統芸能の太鼓や神輿を160年以上にわたり制作している、宮本卯之助商店プロデュースの和楽器エンターテイメント「いやさかプロジェクト」が太鼓と尺八、三味線による迫力ある舞台演奏を行った。
□屋形船で江戸前御膳やお座敷文化体験
晴海屋の屋形船
後半はバスで吾妻橋乗船場へ移動し、屋形船に乗船した。屋形船は平安時代貴族の舟遊びを起源に、江戸時代17世紀中ごろには華美な大型船が登場したが、幕府の倹約令により次第に小型化し、質素なものになっていったようだ。
今回は晴海屋が運営する屋形船に乗り込み、同社のお台場周遊コースを巡りながら、ツアーのために食作家の園山真希絵氏が考案した「特別江戸前御膳」(料理制作は晴海屋)を堪能した。
幇間の八好さん(右)と芸者さんたち
船内では、宴席で接待をする男性「幇間(ほうかん)」の最若手である、松廼家八好(まつのやはちこう)さんや芸者さんたちによるお座敷芸が披露された。幇間は宴席を盛り上げ、客の話し相手にもなる、「男芸者」「たいこもち」などとも呼ばれる職業の男性で、とくに江戸時代から明治時代にかけ活躍したという。現在、見番(けんばん、芸者の所属事務所)に正式に所属している幇間は日本で6人のみ、それも浅草にしか残っていない存在だ。
松廼家八好さんは江戸川区生まれ。パントマイムなどで培った技術と座敷芸を融合させた唯一無二の芸風で、浅草をはじめ全国の花柳界、また舞台や寄席でも活躍しているほか、企業研修や講演にも対応するという。問い合わせは浅草見番へ。
なお、同ツアーはヒト・コミュニケーションズが東京都から江戸・東京の魅力を活用した観光周遊促進事業として受託し、実施している。