外客へのおもてなし学ぶ、原氏が講演、地元・旅館など(福山市)

原祥隆氏
原祥隆氏

 広島県・福山観光キャンペーン実行委員会(委員長=羽田皓・福山市長)は1月20日、同市鞆の浦で観光地域づくり・人材育成研修事業として「外国人観光客おもてなし研修会」を開いた。会場には鞆の浦の旅館関係者や福山市内の飲食店、ボランティアガイド、土産物施設の経営者ら約40人が参加。講師には、国際観光サービスセンター常務理事の原祥隆氏が登壇し、近年急増している訪日外国人観光客への接し方など、さまざまな事例をあげながら、参加者らと意見交換を行った。

 原氏は、東京・浅草の蕎麦店のご主人がスペイン人のグループ客に写真入りのメニューを手渡し、日本語でも何の問題もなく注文を受けていた例などを紹介し、「楽しく接客するのが大事。堅苦しく考えず、自分から話しかけ、気楽に楽しみましょう」とアドバイスした。

 また、多言語化への対応についてさまざまな議論も起こるなか、原氏は「地図などに多くの言語を併記しても見づらく、地域性を壊す恐れもある」とし、多言語化表記よりもピクトグラムの積極的な活用を薦めた。

 また、英国政府観光庁が英国を訪れる外国人旅行者にホテルスタッフがどのように対応すべきか、旅行者の国・地域、文化別にアドバイスしている事例も紹介しながら、日本を訪れる主要国の文化や国民性、気質などを説明し、接し方の一例を示していった。講演後にも、参加者らは日々感じていた疑問を講師の原氏に投げかけては、熱心に耳を傾けていた。

観光の責任とは?、被災地観光シンポ開く(東洋大学)

登壇者は(左から)山田氏、赤沼氏、八重樫氏、島川氏
登壇者は(左から)山田氏、赤沼氏、八重樫氏、島川氏

 東洋大学国際地域学部国際観光学科は1月15日、東京海上日動銀座トラベルラウンジ(東京都中央区)で、産官学連携被災地観光シンポジウム「これからの観光2016―座談会」を開いた。同イベントは、経済産業省産学連携サービス経営人材育成事業支援プログラムの一環で、講師には、三陸鉄道営業部課長の赤沼喜典氏、岩手県北バス東京営業所所長の八重樫眞氏、岩手県沿岸広域振興局の山田恵氏の3氏が登壇。コーディネーターは東洋大学国際観光学科准教授の島川崇氏が務めた。

 島川氏は冒頭、サービス産業が日本のGDPの約7割を占めているなか、現状の人材育成はモノづくりなどに偏り、サービス産業の人材育成は取り組めていない現状を指摘。そのうえで、「経済産業省は全国の大学に対して人材育成のカリキュラムや専門の学部・学科の新設など、ムーブメントを起こしていこうと助成事業に取り組んでいる。そこに東洋大学の国際観光学科も応募し見事17大学の中に選ばれた」と述べ、同大学では17年度から国際観光学部に昇格させる計画も報告し、「近視眼的にならず、子や孫の世代までを見据えた観光の産業育成を考えていかなければならない」と語った。さらに、「昨年、東洋大学にUNWTO(国連世界観光機関)の理事を招いたときに一番大事なのは、レスポンシブル・ツーリズム(責任ある観光)だと言われた。では、観光の責任とは何かを考えていったときに、被災地を支援する枠組みも一つのかたちではないか。多くの方々が犠牲になり、それに対して共感、共鳴しながら被災地の復興へ一緒になって支えて行ける枠組みを観光で築けないかと思った」と述べた。

 また、同シンポジウムには、リーダーシップの理論開発などの面でパートナーを組む松下政経塾塾長の佐野尚見氏も出席した。

 座談会では、岩手県職員の山田氏は「岩手県の観光入込客数は震災前の2010年度は延べ2787万1千人回から14年度には2919万7千人回と着実に回復に向かっているものの、沿岸局管内でみると、14年度の観光入込客数は10年度の83・4%と、完全な回復を遂げていない」と述べた。一方、教育旅行客の入込みについては、「震災以降、被災地ガイドを活用した被災地訪問が増加しており、震災前の水準に比べ約1・5倍も上回っている」状況を説明した。

 三陸鉄道の赤沼氏は「震災から5日後に電車を動かした時に家を流された沿線の住民が車両に向って手を大きく振ってくれた」と振り返り、「三陸鉄道は普段は空気のような存在だが、未曾有の震災の非日常のなかに空気の一部が戻って来たのがうれしかったのではないかと思う。その風景を見て車両の中のスタッフはみんな泣いていた。震災からまもなく5年になるが、風化が進まないように足掻いていきたい」と語った。

 岩手県北バスの八重樫氏は「震災後から語り部たちが自らの経験による教訓を伝え続ける“復興ツーリズム”に取り組んでいる。その大きな成果として、忘れられていた三陸を全国の方々に広く知ってもらえた」と強調。今後については「震災経験を伝えるだけでなく、被災者と訪れた人が共に“学び合う旅”へと発展させる空間づくりが必要」と未来を見据えて語った。

【増田 剛】

福島で若旦那サミット、参加者全員で今後探る

盛り上がった意見交換
盛り上がった意見交換

 ふくしま若旦那プロジェクト実行委員会(会長=渡邉利生・山水荘常務)は1月26日、第3回若旦那サミットを、穴原温泉の匠のこころ吉川屋で開き、「若旦那」をキーワードにした地域活性化の今後について意見交換した。催しには宿泊施設や旅行会社などから約80人が出席した。

 1月18日に発刊したばかりの無料冊子「若旦那図鑑ditt’s(ディッツ)」も会場で配布し、お披露目した。ブームの火付け役となった土湯温泉の「若旦那図鑑」を県北4温泉地(岳、飯坂、土湯、高湯)に拡大し、16人の若旦那を紹介している。

 第1部の講演では「アニメコンテンツにおける地域活性化の取り組み」と題して、アニメ制作会社・福島ガイナックスの浅尾芳宣社長が登壇。県下には200以上のアニメやドラマの舞台があると報告した。アニメを生かした観光地の取り組みは、失敗例も交えて紹介。11月には日本最大級の文化祭「マジカル福島2016」を開く計画も明かした。

 第2部は、福島学院大学情報ビジネス科の木村信綱准教授がコーディネーターを務め、若旦那に期待する活動や全国に広めるアイデアを、来場者全員がグループに分かれ意見交換した。発表では若旦那「女装コンテスト」や若旦那がジョッキーを務める「若旦那杯」など奇抜な意見も飛び出した。飯坂温泉観光協会の畠隆章会長は「(JR東日本のフルーティアふくしまを活用し)走る若旦那カフェをぜひ実現してほしい」と、若手の取り組みにエールを送った。

 多くのアイデアに渡邉会長は「恋愛シミュレーションのアプリなど早速開発できそう」と手応えを感じていた。

再発防止対策など検討、自民党員が前日に申入れ、スキーバス事故

対応する石井国交大臣
対応する石井国交大臣

 1月15日に発生した長野県軽井沢市のスキーバス事故を受け、1月29日から「軽井沢スキーバス事故対策検討委員会」が開かれている。開催前日の28日、自由民主党政務調査会国土交通部会の秋元司会長や交通安全対策特別委員の江崎鐡磨委員長をはじめ役員らが、石井啓一国土交通大臣に緊急申入れを行った。

 申入項目は(1)軽井沢スキーバス事故の原因究明について、早急に結論を得ること(2)運転手不足の下で、運転技術の未熟な運転手が運転を行うことを防止する対策を早急に検討すること(3)今回の事故の背景には、旅行会社とバス事業者の関係や監査要員体制など構造的な問題があると考えられることから、このような点についても踏み込んだ検討を行うこと(4)再発防止策の検討にあたっては、安全・安心の確保に意を払わない事業者の安易な事業継続を絶対に許さない仕組みを構築するとともに、法令を遵守し、創意工夫を凝らしながらバス事業を行っている中小の会社の意欲と活力を削ぐことのないよう、十分配慮すること(5)再発防止策については、法改正の必要性も含め、ハード・ソフト両面からあらゆる検討を行い、早急に実施すること(6)再発防止策のフォローアップを継続的に実施し、その結果を公表するなどして、再発防止策の実行性を担保すること――の6点。

“新国内旅行宣言”、2%増の3200億円目指す(エースJTB)

大谷恭久社長
大谷恭久社長

 JTB国内旅行企画(大谷恭久社長)は1月19日、東京都内で主力商品の1つである国内パッケージツアー「エースJTB」の2016年上期商品発表会を開き、今期は「新国内旅行宣言」をキーワードに、企画提案型プランと地域の魅力的な観光素材を活かし、新たな価値と旅行需要を創造し、地方創生に貢献する。15年度のエースJTB販売実績は、前年同期比7・0%増の3100億円になる見込みで、同商品としては過去最高となる。なお、16年度の年間販売額は、同2・0%増の3200億円を目指す。

 大谷社長は、16年の同商品の商品戦略として「新たな旅のスタイルの提案」を掲げ、ポイントとして(1)新商品・新ルートの開発(2)既存商品のリニューアル・ブラッシュアップ(3)着地型・体験型コンテンツの開発強化(4)商品化・情報発信による地方分散の推進(5)積極的なイベント・キャンペーンなどのプロモーション展開――の5つを挙げた。

 多様化する顧客ニーズ、旅行目的に対応した商品展開として、16年度は北海道・東北・九州・沖縄などで設定している現地添乗員同行ツアーを、プライベート重視のハーフオーダーメイド型ツアー「今までにない旅」に新装する。添乗員同行ツアーでありながら、個人旅行のテイストを楽しめるよう、ツアー行程の一部をプライベートな観光プランにアレンジすることが可能。また、個人旅行で人気の高い宿を選択することもでき、添乗員付きの安心・便利さと個人旅行のプライベート感の双方を実現することができる。さらに「赤パンフレットのお約束」として、顧客からのアンケート調査、客室の広さ、眺望、食事など独自の基準を設け、品質と満足度の向上に努めていく。

 新商品「個性光る宿」は、旅行者のこだわりと、宿泊施設の秀でた魅力のマッチングをはかる新しい宿泊商品として導入。(1)個性光る宿「湯」(2)個性光る宿「食」(3)個性光る宿(その他)――の3つのカテゴリーに分け、赤パンフレットのなかで取り上げていく。

 地域の魅力を活かした商品として、地域における優れた魅力を「旅の過ごし方」として提案。今年度は旅の過ごし方を同11・0%増の331プランまで拡大し、パンフレット内で紹介していく。「感動の瞬間(とき)」では、とくに心を動かされた日本の絶景のなかから100種類の絶景を選りすぐり、「感動の瞬間100選」と題し国内旅行の魅力の再発見として、顧客に向け発信していく。

 16年上期の注目方面は「京都・びわ湖・奈良」と「東北」。日本の旬キャンペーンでは「ぶらり、ぐるり、ゆるり、古きよきこと、新しく。」をテーマに、「京都・びわ湖・奈良」の知られざる場所をPRしていく。

 さらに、今年震災から5年目を迎える東北のさらなる復興を支援する取り組みの一環として同社グループ全社で「東北 絆キャンペーン」(3月11日―9月30日)を実施する。オフシーズンである新緑時期にスポットを当て、「東北新緑10選」など、新緑の東北を楽しむプランを展開していく。

訪日会社を設立へ、欧州中心に営業開始(ミキ・トラベル)

檀原徹典社長
檀原徹典社長

 トラベルロードホールディングス(守屋昌史社長)とミキ・ツーリスト(檀原徹典社長)の持ち株会社グループミキホールディングスは1月15日付で訪日事業を取り扱う合弁会社ミキ・トラベル(守屋昌史代表取締役CEO)を設立した。

 これに先立ち、1月13日に会見を行った。檀原社長は、今後の訪日営業について「今後、欧州メインに訪日営業の取り組みを開始する」と報告した。同社は日本に仕入拠点がなく、さらに海外の営業拠点がそれぞれ独立した法人だったため、個々で情報管理を行っていたが、今回の合弁会社設立にあたり、手配をすべて「ミキ・トラベル」に集中させる。同時に自社で開発した販売・手配システム「オスカー」を使って、手配ルートや現地情報の一元化をはかっていく。

 今回ともに合弁会社を設立するトラベルロードホールディングスは、新会社設立にあたり1月15日付で社名をネクストマネジメントホールディングスに変更。傘下にはトラベルロード、CBS(サークルバックアップシステム)、JOINT ONE(ジョイントワン)を抱えている。なかでもトラベルロードは、スキーツアーや伊豆旅行、富士登山などのバスツアー商品を取り扱っており、訪日向けにバス手配を行っていたこともあり、今回の新会社設立につながった。

守屋昌史代表取締役CEO
守屋昌史代表取締役CEO

 新会社はトラベルロードの代理店として、訪日旅行素材の仕入れや手配を行い、ヨーロッパを中心にB to B事業を展開していく。

 今後は、日本旅行業協会(JATA)が行っているツアーオペレーター品質認証制度にも取り組んでいく予定。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

1月20日-3月31日開催 、「雛のつるし飾りまつり」をPR(静岡県東伊豆町)

「雛のつるし飾りまつり」や物産品をPRした
「雛のつるし飾りまつり」や物産品をPRした

 静岡県の東伊豆町は2月4-5日、静岡県東京案内所(東京・千代田区)にて、3月31日まで開かれている伊豆稲取地区が発祥の「第19回雛のつるし飾りまつり」のPRと、地産のいちごやみかん、菓子等の物産品の販売を行った。会場には雛のつるし飾りが展示され、観光パンフレットの配布や、雛のつるし飾りのミニ飾りや根付などの販売も行った。

 雛のつるし飾りは江戸時代より伊豆稲取に伝わる風習で、当時高価であった雛段の代わりに、端布等で作った“つるし飾り”を飾り、桃の節句に子の成長を願ったことに由来する。まつり期間中はメイン会場「文化公園雛の館」をはじめ、各所で華やかかつ個性豊かなつるし飾りを見学できるほか、「雛の茶会」「雛スタンプラリー」などのイベントも充実する。神社の石段に雛人形を飾る「素盞鳴神社雛段飾り」も見どころだ。

 同町観光商工課の担当者は、「今年は海をテーマにしたつるし飾りも新たに登場する。無料の休憩所もあるのでつるし飾りをめぐり、気軽にまち歩きを楽しんでいただきたい」とアピール。メイン会場の夜間ライトアップや、周辺の飲食店や商店、旅館でお得にグルメなどのマルシェメニューが楽しめる「イルミ☆マルシェチケット」の販売もあり、夜までゆっくりと散策を楽しみたい。

東京で修旅セミナー、講演や学校の事例発表(和歌山県)

申込みFAX用紙(2月10日締切)
申込みFAX用紙(2月10日締切)

 和歌山県は2月17日、東京・秋葉原で首都圏の旅行会社や学校教員、教育関係者を対象に和歌山修学旅行の魅力を伝えるセミナーを開く。参加費無料で定員は100人。実際に修学旅行で和歌山に来県した学校の教員らが体験談を語る事例発表や、和歌山県世界遺産センターの講演も開催する。プログラム終了後は、修学旅行受入地域との相談会を開催する。和歌山県の体験型修学旅行の詳細については県の観光HP(http://www.wakayama-kanko.or.jp/)の「体験」ページを参考。

 「2016 体験・学び・感動の修学旅行セミナー」【日時】2月17日午後3時―5時30分【場所】AP秋葉原(東京都台東区秋葉原1―1)【問い合わせ】和歌山県庁観光交流課 電話:073(441)2785【申込み締切】2月10日

申し込み用紙はこちらから。(リンクをクリックするとPDFファイルが開きます)

第41回「100選」表彰式開く、 もてなしの達人と同時開催

第41回「100選」表彰式開く
もてなしの達人と同時開催

 旅行新聞新社が主催する新春恒例のイベント「第41回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」「第36回プロが選ぶ観光・食事、土産物施設100選」「第25回プロが選ぶ優良観光バス100選」の表彰式と祝賀パーティーが1月22日、東京都新宿区の京王プラザホテルで開かれた。特別部門として従業員を対象とした「もてなしの達人」「優秀バスガイド」「優秀バスドライバー」の表彰式も同時開催した。後援団体は観光庁と全国旅行業協会(ANTA)、日本旅行業協会(JATA)。

 受賞者や関係者など総勢380人が参列した表彰式の冒頭で、旅行新聞新社の石井貞徳社長は「おかげさまで、100選は41年目という観光業界でも最も歴史あるイベントに育った。この活動は観光業界のみならず、一般消費者から海外にまで広まっており、とても嬉しく思う」と感謝の言葉を述べた。
 これまで別日程で開催していた、従業員を対象とした100選の特別部門「もてなしの達人」「優秀バスガイド」「優秀バスドライバー」を同時表彰したことについては「100選に投票していただいた皆様に併せて推薦いただくものなので、やはりこの場でご紹介させていただく方が良いのではないかということから、今回から表彰式を併催することを決めた」と語った。…

あいさつする旅行新聞新社の石井貞徳社長
あいさつする旅行新聞新社の石井貞徳社長

 

※ 詳細は本紙1617号または2月5日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

健全で適正な市場へ ― 今こそ「安心・安全への原点回帰」

 私は九州で生まれ育ったため、雪は生活に密着した存在ではなかったが、それでも、たまに大雪が降ることがあった。

 幼少時のこと。父が運転するクルマに乗っていた夕刻、粉雪が降り始めたかと思うと、辺りは次第に白銀の世界へと変化していった。父は注意深くハンドルを握りながら、後ろから追突されることも恐れ、バックミラー越しに大型トラックが迫って来ると車線を変えた。不安できょろきょろしていた私は突如背後に迫る大きな影に怯え、「あっ、大型バス!」と叫んだ。父はバックミラーを覗きながら「バスの前だと安心だよ」と呟いた。「バスはどんなクルマより安全」という認識が、当時は一般的だったように思う。

 やがて自分も運転免許を取り、全国の高速道路を昼夜なく走ったりもするが、大型バスの前を走っているがための安心感は残念ながら無い。実際、猛スピードで車線変更を繰り返し、追い越していく無謀な運転をする貸切バスを何度も目撃したこともある。 

 法令を無視したバス会社が転落事故を起こし、その後もバスの事故が続いたせいもあり、バス業界全体の社会的な信頼感は大きく損なわれてしまった。

 1月22日に、旅行新聞新社主催の第25回「プロが選ぶ優良バス30選」の表彰式が行われた。今回の上位10社は(1)はとバス(2)名鉄観光バス(3)名阪近鉄バス(4)日の丸自動車興業(5)アルピコ交通(6)札幌観光バス(7)山交バス(8)新潟交通観光バス(9)三重交通(10)関鉄観光バス――の順だ。「プロ」である全国の旅行会社の投票によって選ばれた結果であり、パートナーの旅行会社からの信頼を勝ち得たことは大きな誇りだろう。一般消費者にもアピールにしてほしいと思う。

 あわせて、第14回「優秀バスガイド」、第3回「優秀バスドライバー」もそれぞれ10人ずつ表彰されたが、今年は例年以上に受賞者の表情が引き締まって映った。その表彰式会場で最も重んじられた言葉はやはり、「『安心・安全』への原点回帰」だった。

 旅行は形の無い商品なので、消費者は信頼によってツアーを購入する。けれど、安全性よりも価格重視で選ぶこともある。とくに学生は安全性に危険性を感じながらも、やむなく激安ツアーを選んでしまうことも多い。規制緩和によって市場の競争激化と価格破壊が起こり、これによって安全が脅かされる事態は、誰も幸せにしない。優秀な人材が流出し、現場が荒廃してしまう――。現在のバス業界はまさにそのような悪循環に陥ってはいないか。監督官庁は現状をしっかりと調査し、法令が遵守され、健全で適正な市場へと導く努力を求めたい。

 1月25日、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会が記者会見を開き、民泊問題について全旅連の考え方を伝えた。北原茂樹会長は「滞在型の民泊という新たな需要が大きくある」ことを認めつつも、違法な取引が行われる現状を指摘し、「生命・財産を預かる宿泊業として旅館業法の遵守は絶対」と、新たなルールができるまでは現行法の遵守を強く要求した。当然の話である。外国人観光客数が増えたとしても、地域の信頼やまとまり、協力を失うことは日本が観光立国を推進していくうえで大きなマイナスである。「安心・安全への原点回帰」という言葉を今こそもう一度見つめ直す時期だ。

(編集長・増田 剛)