日観振と東観推が連携協定結ぶ 震災復興や地域活性化を

2021年3月29日(月) 配信

連携で地域活性化(イメージ)

 日本観光振興協会(山西健一郎会長)と、東北観光推進機構(松木茂会長)はこのほど、東北の観光振興と地域経済活性化をはかることを目的に、事業連携協定を結んだ。東日本大震災から 10 年が経過したが、連携による広域観光振興を通じて、震災やコロナ禍からのさらなる復興と活性化を狙う。

 具体的には 国内外における東北プロモーションや、観光人財育成における共同事業などを実施する。また、日観振の東北支部事務局を東観推の推進本部内に設置する。なお、いずれも 2021 年 4 月 1 日以降に行う。 

訪日再開へ道筋確認 管理型旅行の内容も共有 JATA経営フォーラム分科会C

2021年3月29日(月) 配信

(左から)磯康彦部長、蔵持京治室長、黒澤信也社長、緒方葉子執行役員、中山眞一部長

 日本旅行業協会(JATA、坂巻伸昭会長)は2月26日(金)、オンラインで「第29回JATA経営フォーラム2021」を開いた。分科会C会場では「訪日インバウンド復活へ向けたロードマップ」をテーマに、11月にビジネストラックとして来日したウィーンフィルハーモニー楽団の管理型旅行の具体的な内容を確認したほか、受入再開までに求められる考え方などを議論した。

 冒頭、JNTO企画総室の蔵持京治企画室長は現在の取り組みとして、海外に向けて日本の魅力を忘れないでもらうための情報発信や、再開後に日本を訪れてもらえるよう各国政府に働き掛けていることを報告した。

 蔵持室長は「とくに感染防止対策が求められる。アピールのための素材は完成間近」と伝えた。一方、受入側の考え方として「1カ国ごとの感染状況に合わせ、悪化した場合には、受け入れを中断するべき」との考えを示した。

 具体的な国として、2月現在では、これまで少なかったマレーシアの感染者数が増加したのに対し、ドイツは減少傾向にあることなどを挙げた。

ホテルと1週前交渉 チェックインは車内

 次にウィズコロナの訪日旅行に向けたワーキンググループ委員を務める東日観光営業第二部の中山眞一部長が管理型旅行の参考として、昨年11月にオーケストラの演奏会のために、ビジネストラックで来日したウィーンフィルハーモニー楽団の滞在のようすを伝えた。

 東日観光はホテルの1フロアを貸し切りにしたほか、ロビーで他の利用者との接触を避けるために、チェックインはバス車内で実施した。特別に許された新幹線での移動の際には、東日観光の社員20人が同楽団を取り囲みながら動いた。

 また、同楽団からは感染状況を間際まで見極めたい意向から、渡航の出発が正式に決定した日付は、1週間前だったという。

 ホテルとの交渉は「来日が確実になってから行えた」とし、今後のフロアや食事会場の貸し切りの交渉などについては、「通常より短い期間になるだろう」と強調した。

 JATAの訪日委員会副委員長を務め、JTBグローバルマーケティング&トラベルの黒澤信也社長は昨年10月に旅館・ホテルや観光施設など受入側を対象に実施したアンケート結果について話した。

 96%が国際的な往来再開に向けた運用ルールの下で、往来再開を望んだ。このほか、希望する旅行スタイルは旅程管理型旅行が最も多かった。

日本に安全求める声 〝感染しない対策を〟

 ディスカッションではこれまで登壇した蔵持室長と中山委員、黒澤副委員の3氏に加え、日本旅行の緒方葉子訪日旅行営業部長が登壇した。モデレーターはJATAの訪日旅行推進委員会で東武トップツアーズの磯康彦執行役員が務めた。

 黒沢氏は受入再開後の日本政府の方針として「陰性者のみを受け入れること」とし、「日本で感染しない対策の構築が訪日を促進する最も基本になる」との考えを示した。

 さらに、今後自由行動ができるまでは「コンビニの店員や路線バスの運転手など訪日客と関わるすべての人が、陰性であることを証明することが求められる」とした。

 中山氏はウィーンフィルハーモニー楽団員が入国の4カ月前から健康管理に気をつかったことを伝えた。そのうえで、「楽団員は旅行中に感染することを大変恐れていた。ホテルの従業員や移動中に接した駅員など受入側の健康管理について問う声もあった」と振り返った。

 緒方執行役員は旅行商品の営業について、日本には初めて来る人が多く人気の東京と京都を避けて販売することの難しさを話した。今後の販売には「(人気観光地は)混雑時間を避ける提案をする必要がある。観光の基本である人との触れ合いは、混雑が少ない地方で行うようにしたい」と話した。

 蔵持氏はニューヨーク(アメリカ)に住む妻が帰国した際の話として「電車での混雑に恐怖を覚えた」と紹介した。

 ソーシャルディスタンスへの意識が高い外国では、電車が混雑しないとし、「危険を冒してまで移動する人は少ない。日本は安全であることを発信する必要がある」と意見を述べた。

 磯氏は最後に「多くの訪日客向けのアンケートで、日本は訪れたい国とされている。一方で、安心・安全を求める声は癒しや快適さを抜いて最も多い。今後は感染防止策の発信が最も重要になるだろう」と総括した。

JATAの道プロジェクト、最終回に80人が参加 震災から10年の3月11日に実施

2021年3月29日(月) 配信

1日目のトレイルは海岸沿いのコースも

 日本旅行業協会(JATA、坂巻伸昭会長)は、東日本大震災の発生から10年の節目となる3月11、12日、「みちのく潮風トレイル」を活用した東北復興支援活動「第7回 JATAの道プロジェクト」を実施した。最終回となる今回の実地研修は、宮城県東松島市エリアを中心に巡り、JATA会員会社の経営層や国内旅行担当者をはじめ、地元自治体や環境省関係者など約80人が参加した。

 団長でJATAの坂巻会長は「東北復興という大事業を、皆さんと一緒に進めていく」と力強く語るとともに、コロナ禍における感染症対策に配慮した団体旅行のカタチを示した。【入江 千恵子】

 環境省が東日本大震災復興のシンボルとして整備している自然歩道「みちのく潮風トレイル」は、青森県八戸市と福島県相馬市の東北太平洋沿岸地域を結ぶロングトレイルで、全長約1千㌔におよぶ。

 「JATAの道プロジェクト」は、このトレイルを活用した観光交流の活性化と、地域経済の振興をはかるのを目的に、JATAが震災発生後の2014年に開始した。19年度までに6回実施し、参加者総数は400人を超える。

 今回は、東日本大震災から10年となる3月11日を出発日に設定し、JTBやKNT―CTホールディングスなど、JATA会員会社・役員、地元自治体・観光関係者、環境省関係者ら、77人が参加した。1泊2日の行程で、宮城県東松島市内のトレイルをウォーキングしたほか、東松島震災復興伝承館の見学、遊覧船から嵯峨渓と松島の景観を視察した。

 トレイルは、1日目に、野蒜海岸の砂浜、松島四大観の1つ「大高森」に登るルートを、2日目は松島航空自衛隊が一望できる矢本海浜周辺を歩き、復興のようすとともに、造成時のポイントなどを確認した。参加者の1人は「震災から10年で見聞きしたことを、社内で共有したい」と語った。

2日目はウォーキング中にブルーインパルスの訓練風景も見学した

 1日目夕方には、宿泊のホテル松島大観荘で、宮城県エリアの現状と取り組みを紹介するシンポジウムを開催。登壇した東松島市の渥美巌市長は「全国からの応援もあり、99%のハード事業は完成した」と報告。そのうえで「あとは『心の復興』。まだ時間はかかるが、被災者の方々に寄り添った政策が課題だ」と述べた。

 震災時、同市には最大約12㍍の津波が押し寄せ、市街地の65%が浸水。死者・行方不明者は1233人にのぼる。

今後のさらなる復興には観光資源を最大限に活用し、「東松島市はカキとノリが名産品。イチゴも宮城県有数の産地であり、日本酒の浦霞もある。自然と食を大事にしていきた」とPRした。

コロナ禍の団体旅行 アレンジの仕方示す

 今回の実地研修では、コロナ禍における団体旅行のアレンジの仕方を提案する役割もあった。参加者約80人に対し、大型バス3台に分乗し、バス座席は1人で2席を使用することとした。さらに乗車時には必ず手指消毒を義務付けた。飲食時は、1卓4人までとし、他人に飲み物を注ぐなど席を移動しないよう呼び掛けた。

 また、出発日4日前から体温と体調を記入する「健康チェックシート」の提出を義務付けたほか、各自のPCR検査受検を推奨。さらに、利用施設が実施している感染症対策をまとめた資料を配布、朝のバス乗車前の検温を実施した。

 これらの対策もあり、実施から2週間以上が過ぎた3月29日現在も、参加者の新型コロナウイルス感染症陽性者は確認されていない。

 20年度で「JATAの道プロジェクト」は終了するが、JATAでは今後も東北復興の支援活動を継続していく。

                  ◇

坂巻会長への一問一答は、次の通り。

 ――3月11日が誕生日の坂巻会長だが、10年前の震災当時をどのように記憶されているか。

 東武トラベルの社長をしており、都内の本社にいた。大きな揺れで、最初は東京近辺が震源地と思ったほどだった。発生から3日間は自宅に帰れなかった。

 ――震災から10年が経過した東北について思うことは。

 東松島市の渥美市長もおっしゃっていたが、ハード面の復興だけでなく、「心の復興」は大事なこと。アクションを起こしていかなければならない。だが、心は人によって捉え方が異なる。難しいかもしれないが、どのように寄り添うことができるかという部分まで考えていければと思っている。

 ――震災の復興、コロナ禍などの状況下において、今後の業界の方向性は。

 我われ業界として何ができるか、業界に関わる機関とともに何ができるのか。国に頼るばかりでなく、我われは何ができるか考えていく必要がある。お客様にも協力していただきながら、安全安心な世界を作っていかなければならない。

 今回の視察も実施するか悩んだ。だが、東松島市側から「震災10年の日だからこそ、実施してほしい」とおっしゃっていただき、そういう思いに応えることも必要だと思った。

 節目の場所にいてこそ、初めて考えることがある。旅行も同様に、行ってこそ感じること、現地で話すことで感じることがある。

多くの会員や関係者が参加いた

JTB、働き方の多様性を支援 「自己成長支援休職制度」など3制度制定

2021年3月29日(月) 配信

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  JTB(山北栄二郎社長)は4月から、自己成長に取り組む社員が休職を取得できる「自己成長支援休職制度」と、在宅勤務を実施した社員に月額2000円を支給する「在宅勤務手当」、通勤定期券代または通勤費実費を支払う「通勤手当の見直し」の3制度を実施する。

 急激な環境変化を鑑み、同社最大の経営資源である人財の多様な働き方を整備することで、「お客様に実感いただける新たな価値の創出」につなげていく。

 今回、新たに制定した「自己成長支援休職制度」は、「ビジネススキル向上や国家資格取得に向けた専門スクールへの通学」、「語学力向上に向けた海外留学」など、同社が指定する事由より3カ月以上最大2年間の休職期間を取得できる。

 また、今回新設した「在宅勤務手当」は、在宅勤務を月5日以上実施した社員を対象に1カ月当たり一定額を支給する。

 同社ではこれまで、ニューノーマル時代の働き方「新たなJTBワークスタイル」の実現に向け、働く時間や場所の柔軟性を高める「ふるさとワーク制度」や「勤務日数短縮制度の導入」、「副業ガイドライン」の制定、「テレワーク勤務」の拡大など、社員の自律的で多様な働き方を推進している。

熱海の魅力をアートで再発見「PROJECTATAMI」を立ち上げ ホテルニューアカオら

2021年3月29日(月) 配信

LOGO design by Ikki Kobayashi

 静岡県熱海温泉のホテルニューアカオ(赤尾宣長社長)と東方文化支援財団(中野善壽代表理事)はこのほど、熱海の魅力をアートで再発見する試み「PROJECTATAMI」を立ち上げた。

「PROJECTATAMI」とは、熱海の魅力をアートにより再発見し、目に見えるカタチにすることで、それを体験・楽しんでもらおうと生まれたプロジェクトだ。双方向の学び合い、自発的な発見があるような出来事をつくっていく。「五感で感じるリアルな体験が、記憶に残るようなプロジェクトになれば」(ホテルニューアカオ)という。

 具体的には滞在制作型プロジェクトである「AKAOARTRESIDENCE(アカオアートレジデンス)」と、アーティストをサポートする仕組み「ATAMI(ASIAN)ARTGRANT(アタミ(アジカン)アートグランド)」の2本柱を掲げた。「AKAOARTRESIDENCE」は、1ターム4人×5ターム、年間20人のアーティストに、ホテルニューアカオに滞在してもらい、創作活動の場を提供する。創作開始から発表まではおよそ1カ月。発表のカタチや場所はコーディネーターやホテルスタッフとコミュニケーションしながら決める。少しずつ何らかのカタチで作品を残し、ホテルの宿泊客にもマップを手に作品を体験してもらえるプログラムにする。

 「ATAMI(ASIAN)ARTGRANT」では、協賛や寄付、クラウドファンディングにより集まった資金を合計30人のアーティストに給付。今年11月、熱海に招待する。熱海では、市内各所に設置されるアートボードに壁画を描いてもらう。会期中、アーティストをたたえ、交流する機会も設ける。

家族の「きづな」を思い出に。 ハワイアンズで過去に撮った写真と同じ構図を再現した写真を募集中

2021年3月29日(月)配信

最優秀賞として選ばれると、上の例の場合左から順に20年間分、18年間分、14年間分の年間パスポートがプレゼントされる。

 福島県いわき市のスパリゾートハワイアンズは、「ハワイアンズ思い出トラベル」と題し、10年以上前にハワイアンズ施設内で撮影した写真と、同じ構図を再現した写真を募集するキャンペーンを2021年6月30日(水)まで行っている。

 東日本大震災から10年、そしてコロナ禍の今だからこそ、身近な人との「きづな」を大切にしてほしい、そんな思いをこめて企画した。家族や友人など、大切な人とハワイアンズに遊びに来た「あの頃」を思い出し、もう一度、思い出がよみがえるような写真を撮影してもらう企画だ。応募写真の中から、最も「きづな」が感じられる作品を選び、最優秀賞の作品には、写真に写っている人全員分の、過去に撮影した写真の年から現在までの年数分の年間パスポートを贈呈する。

 現在、公式SNSでは写真の見本として、現役フラガールが幼い頃ショーの体験コーナーに参加した時の写真と、20年後の現在、フラガールとなって舞台に立ち同じポーズ・同じ色のムームーとレイを装い再現した写真を公開している。

JCHA、創立50周年で名称変更 「全日本ホテル連盟」へ

2021年3月29日(月)配信

写真はイメージ

 全日本シティホテル連盟(JCHA、清水嗣能会長)は創立50周年を機に、4月1日付で「全日本ホテル連盟」(ANHA、同)に名称変更する。宿泊業の全国団体(準会員含む会員数1077軒)として業界の問題解決と発展に努め、交流人口拡大を通して、観光立国の実現と地域社会への貢献を目指すとした。

 名称変更に伴い、新名称のロゴマークを制作している。なお、連盟の住所などに変更はないが、同日付で連盟公式ウェブサイトとEメールアドレスが刷新する。

 新しい連盟公式ウェブサイト=http://www.anha.or.jp、同Eメールアドレス=honbu@anha.or.jp。

自社予約強化へ、宿研から無料でグーグルホテル検索上に掲載可能に 

2021年3月29日(月) 配信

宿研ホームページ予約システムの画面

 宿泊予約経営研究所(宿研、矢津達彦社長、神奈川県横浜市)はこのほど、グーグルが提供する「Free Booking Link」の掲載パートナーとなった。これにより、「宿研ホームページ予約システム」の部屋在庫・料金情報がグーグルホテル検索上に表示され、直リンクからの自社予約が可能となった。宿研ホームページ予約システムを使っている宿泊施設は、無料で掲載ができる。

 利用者が施設を検索したとき、宿研が作成する自社ホテル予約システムが他宿泊予約サイトと並んで料金情報が表示されるようになった。

 宿研ホームページ予約システムの情報は「Free Booking Link」に対応しているため、部屋在庫や料金情報が施設詳細画面にリアルタイムで反映される。

 料金表示の横にある「サイトを見る」リンクから自社予約ページへダイレクトアクセスできることで、自社予約率の向上をサポートする。

 

長野県千曲市 観光列車を貸切る、新型ワーケーション体験会を開催

2021年3月29日(月)配信

働き方ニューノーマルの時代に新しい鉄道資源の活用を

 長野県千曲市で2021年2月、列車移動をしながら仕事と観光を楽しむ「トレインワーケーション」の体験会が開かれた。

 2月24日(水)~26日(金)までの3日間、県内外から30人程の参加者が集い、集中作業や個室を使ったウェブ会議、参加者同士のコミュニケーションを楽しむなど、列車から望む景色と美食を体験しながら、それぞれのワーケーションを満喫した。「移動自体が特別な体験になっているので、そこで仕事をするだけでリフレッシュを伴うワーケーションが実現できています」(参加者)と言うように、働き方ニューノーマルの時代にあって鉄道資源の活用は、新たな市場を生む可能性を秘めている。

 多くの観光列車は、食事がとれるよう比較的大きなテーブルが備え付けられていることが多く、ワークスペースとして有効だ。今回乗車した、しなの鉄道「ろくもん」のように、「個室スペース」「カフェと展望スペース」「オープンスペース」など車内のデザインも多様で、働くスタイルに合わせて、スペースを選べることからABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)との親和性も高い。また観光列車は、基本的に週末・祝日を中心とした観光客向けの運行だが、トレインワーケーションでは、平日需要が見込め、鉄道会社の資産を有効活用することもできる。

 今回で5回目の開催となる千曲市ワーケーションは、ふろしきや(田村英彦代表、長野県千曲市)と、千曲市、信州千曲観光局、長野県、しなの鉄道が提携をして実現した。ふろしきやでは今後、全国の鉄道会社や自治体でも同様のイベント開催による売上創出に貢献すべく、千曲市ワーケーション体験会で行った実証実験の結果・ノウハウを公開していく。

「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~(194)」 ジャパンレッドのまちづくり(岡山県高梁市成羽町吹屋)

2021年3月28日(日) 配信

弁柄の赤が個性的な吹屋集落

 標高500㍍の山中に突如現れる「赤い町並み」。かつて国内屈指の弁柄(べんがら)と銅生産で栄えた鉱山町、岡山県高梁市成羽町吹屋の集落である。
 国内で唯一産出する赤色顔料の弁柄は、九谷焼や伊万里焼、輪島塗など、我が国を代表する陶磁器や漆器の“赤”を「ジャパンレッド」と表現し、昨年6月、日本遺産に認定された。

 この弁柄は、周辺の銅山から鉄鉱石とともに産出される硫化鉄鉱石から取り出した緑礬(ろうは)が原料。緑礬を窯で焼成、水槽に入れて不純物を取り除き、細かく粉成、脱酸し、天日乾燥させて赤い粉末状にしたものである。陶磁器や漆器だけでなく、建築材料や船舶の防腐塗料などとして重用され、「吹屋弁柄」として全国市場を独占した。

 弁柄で得た財をもとに、各商家などは石見(島根県西部)から宮大工や瓦職人などを招聘し、競うように優れた意匠の町家を建てた。これが他に例を見ない「赤い町並み」として、1977(昭和52)年に岡山県初の重要伝統的建造物群保存地区にも選定された。

 周辺には弁柄の製造に携わった「旧片山家住宅」(重要文化財)をはじめ、弁柄の製造工程を見学できる「ベンガラ館」、弁柄で財をなし豪壮な屋敷構えを誇る「旧広兼家住宅」や「西江家住宅主屋」、三菱鉱山本部跡地に建設された「旧吹屋小学校校舎」(県重要文化財)など、レトロ感あふれる建物群がこのまちの繁栄を象徴している。

町並みにも少しずつ時代の変化が(町家ステイ吹屋千枚)

 弁柄の原料になった銅は、この地域では807(大同2)年開坑と伝わる吉岡銅山を起源としている。銅は戦国武将たちの争奪戦の標的となったが、大きく展開したのは江戸中期、大坂泉屋(後の住友家)が経営に参画し、国内屈指の産銅量を誇った。一時衰退するものの、明治初年に岩崎弥太郎の三菱商会が買収し、巨大な資本力と海外技術の導入により近代経営を展開した。

 鉱山は1972(昭和47)年に閉山となったが、跡地には坑道・選鉱場・精錬所・沈殿槽・トロッコ用トンネルなどの遺構がみられる。吉岡鉱山の近代化は、我が国鉱山の最初期のモデルでもあり、西江家18代ご夫妻らが中心となり、一時期は世界遺産登録に向けた運動も盛り上がった。

 筆者も昨年視察させていただいたが、ある程度のまとまったエリアに銅の採掘から精錬までの一連のシステムがコンパクトにまとまり、そのわかりやすさという点では、大きな可能性を感じた。

 日本遺産認定を契機に、地元では赤い夜の町並みを映し出す「吹屋ベンガラ灯り」や弁柄衣装を着た「吹屋小唄踊り」、アートで地域魅力を演出する「吹屋ベンガラート展」なども開催されている。これらのイベントとともに、「ジャパンレッド」のブランドを生かした、この地域の新たな産業創造と雇用創出の息の長い取り組みを是非模索してほしい。

(東洋大学大学院国際観光学部 客員教授 丁野 朗)