旅行需要の平準化と休暇 ― 個人の融通性が必要

 小さなころから私は、みんなが真面目に勉強をしているときには無性に遊びたくなり、みんなが遊んでいるのを目にすると、不思議と勉強したくなるという、なんとも可愛げのない困った性格をしていたが、これが大人になっても、まったく変わらないのはどうしたことだろうか。仕事に関しても同じ傾向にある。平日は「釣りに行きたいなぁ」とか、「離れ小島で隠棲したい」などと妄想ばかり働かせているかと思えば、ゴールデンウイークのように、テレビで観光客が遊園地や景勝地でごった返している映像を見たりすると、やにわにムクムクと労働意欲が沸き、パソコンの前に座ってなにやら仕事を始めたりする。世の中にはこういう人間もいるのだ。だから、世間が勤勉に働いている平日にたまさか休暇を取って、レストランで食事をしたり、小さな旅を楽しんだりするのは、まさに天国である。ちょっとした“罪悪感”や“後ろめたさ”という適度なスパイスが精神に好影響を与えてくれる。混雑することも少ないし、場合によっては貸切状態という特権を味わうこともできる。もはや日曜日では“燃え上がり感”が少ないのである。

 人は基本的に他人の働く姿を見るのが好きである。一生懸命働く人を見ながら飲む酒は極上の味がするが、反対にチンタライチャイチャ働いている輩を見ながらの酒は不味い。繁盛店はきっとその心理を心得ていて“休み”の客に働く姿を効果的に魅せているのであろう。

 旅行需要の平準化と、休暇のあり方は、観光業界にとってさまざまな場で議論がなされてきたし、今後はもっと重要な問題になるだろう。数年前、観光庁は日本を幾つかの地域ブロックに分けて、春と秋に、少しまとまった休暇をずらして取得させる休暇改革案を出した。しかし、産業界や銀行、学校関係者などから大きな賛同を得ることができなかった。強制的に国から日にちを決められた休暇は、融通が利かず、多方面で軋みが生じることが予想された。休暇に最も必要なのは、個人の融通性であると思う。理想的な休暇のあり方は、労働者の権利である有給休暇の取得率の向上を除いては他にない。GWのように国民的な一斉休日も必要だが、それ以上に、個人が柔軟に休暇を取れる環境整備は避けられない。国は本腰を入れる時期にきている。

(編集長・増田 剛)

13年ヒット予測、第1位「日本流ロングトレイル」

渡辺敦美編集長
渡辺敦美編集長

 名鉄観光サービス(神應昭社長)は3月25日、愛知県犬山市の名鉄犬山ホテルで全国支店長会議を開き、記念講演に日経トレンディの渡辺敦美編集長による「2013年ヒット予測~ヒットを生み出す施策と今後のトレンド」を行った。13年ヒット予測第1位は「日本流ロングトレイル」で、欧米発の「歩く旅」が日本の文化と融合し、健康や食などを取り込み地域観光の起爆剤になると予測した。
【内川 久季】

 渡辺編集長は「近年、日本の登山人口は1千万人を超え、ピクニックやハイキング人口は3300万人以上にもなった。全体で、5千万人近い人が登山などを楽しんでおり、とても大きな市場に成長した。13年は、自然や歴史を楽しむ〝歩きながらの旅〟が求められる」と語った。さらに、「日本の場合は地場グルメ(地域グルメ)や名所、歴史などを加えてストーリーを作ることができる。単に〝歩きましょう〟では商品としてはダメ。パワースポットやエコ、健康、歴女、山ガールなどのトレンドも取り入れ、ストーリー性をいかに作るかが重要」と話した。

 日本のトレイル場所としては、(1)北根室ランチウェイ全長70キロ(2)とかちロングトレイル全長70キロ(3)スノーカントリートレイル全長280キロ超(4)信越トレイル全長80キロ(5)浅間ロングトレイル全長170キロ(6)塩の道トレイル全長120キロ(7)霧ケ峰―美ヶ原 中央分水嶺トレイル全長38キロ(8)八ヶ岳山麓スーパートレイル全長200キロ(9)高島トレイル全長80キロ――をあげた。

 13年のトレンド傾向は(1)健康の娯楽化(2)ボーダレス(3)小世帯を狙え――の3点。

 (1)の「健康の娯楽化」では、楽しみながら健康を目指すエンタメヘルスが注目されている。さらに、昨今は「飲むだけ」「履くだけ」など辛いことをしないで健康を手に入れたい人が多いこともポイントにあげた。厚生労働省では「メタボ」に変わり「ロコモ」の認知度を広める活動をしており、現在の認知度1割程度から、今年中に認知度8割を目指すという。ロコモとは、加齢による運動器の衰えで寝たきりや要介護になること、またそのリスクが高い状態のことで、日本人は40歳以上の男女の5人に4人がロコモ、およびロコモ予備軍と推定されている。「ロコモ」人口は予備軍含め約4700万人で、市場はメタボの2倍以上だ。「ロコモ」の知名度が上がれば、健康を盛り込んだ旅行商品を売り込むチャンスだろう。

 (2)「ボーダレス」は、マニアのために商品を作り、マニア以外にもウケる可能性があると示唆した。例にレノアハピネスのアロマジュエルをあげ「今までは、衣類に香りをつけるためだけの商品が売れると思われていなかったが、購入希望者は香りマニアだけではなく、一般人もいた」とマニアとマニア以外の境目、中間あたりを狙うことが新商品開発のポイントとした。

 (3)「小世帯を狙え」では、これまでサービスの基本と言われたファミリー層ではなく、子供が離れた親世代や、結婚をしていない人にターゲット層をシフトする必要性があるとした。渡辺編集長は「今後は、未婚者や小世帯が旅行業界でパワーを持ってくる。今までの概念を変えなくてはいけない」と強調した。

78件の取り組みを選定、官民協働の観光地強化事業(観光庁)

 観光庁はこのほど、「官民協働した魅力ある観光地の再建・強化事業」の78件の取り組みを選定した。

 同事業は、観光地の魅力的な資源を見直し、確実な旅行商品化と情報発信で魅力ある観光地づくりを推進する事業で、1月に閣議決定された第1次補正予算で15億7千万円を計上。2月4日から観光地の意欲的な取り組みを募集し、締め切りの3月1日までに、全国から計613件の応募があった。第三者委員会で、市場に対して訴求力が高く、旅行商品として定着し、その地域の持続的な活性化につながるとの観点から検討し、今回の78件の選定に至った。

 選定案件は次の通り。

 「北海道の地域資源を活用したサイクリング観光客の誘致促進事業」北海道商工会議所連合会(北海道内全域)▽「ロリィタファッションを核にした『ロリカワ観光ツーリズム事業』」ロリカワ観光ツーリズム推進協議会(北海道札幌市、小樽市)▽「食観光日本一を目指すフードツーリズム推進事業――親子ででかける修学旅行と日本最東端の別世界でカメラ女子ツアー」別海町観光協会(北海道野付郡別海町)▽「五感で楽しむプレミアムリゾート富良野――環境に優しいまちからのメッセージ」富良野市国際観光促進協議会(北海道富良野市)▽「ロングトレイルを活用した観光プラットフォームモデル創出事業」中標津町(北海道中標津町)▽「地元『和酒女子』と行く、豊かな水の恵みがもたらす『美』と『癒し』体感ツアー」十和田市観光協会(青森県十和田市)▽「都市型企業・大学と連携した『CSV(Creating Shared Value)ビジネス創出実践・体感型研修』の実証」弘前市観光局観光物産課、国際広域観光課(青森県弘前市、環白神エリア)▽「奥津軽文化のルーツ 青森ひば材と明治の豪商を探る旅」NPOかなぎ元気倶楽部(青森県五所川原市金木)▽「北限の海女が潜るまち海女的北三陸探訪」NPO久慈広域観光協会(岩手県久慈市、洋野町、野田村、普代村)▽「七時雨Run&Ownシステムによる地域活性化」八幡平・七時雨マウンテントレイルフェス実行委員会(岩手県八幡平市 七時雨山を中心とするエリア)▽「塩害の土地で新しい産業を生む『Tattonプロジェクト』応援ツアー」Tatton事務局(宮城県東松島市)▽「五感を癒す(温泉マーク)発酵ツーリズム――みやぎ大崎ふつふつ共和国」大崎市シティプロモーション推進協議会(宮城県大崎氏)▽「ふるさとの温もり・にかほット!島めぐり」にかほ市観光振興プロジェクトチーム(秋田県にかほ市)▽「旅館とワイナリー若旦那がご案内!ワインの似合う大人のまちプロジェクト」赤湯温泉旅館協同組合(山形県南陽市)▽「『長井線100周年記念!レールツーリズム事業』――線路は続くよ~どこまでも♪」山形鉄道(山形県白鷹町、長井市、川西市、南陽市)▽「温泉でサッカー・ツーリズム」飯坂温泉旅館協同組合(福島県福島市飯坂町)▽「約3千年前の文字に触れる漢字のまち 喜多方に来てみなんしょ!」喜多方観光協会(福島県喜多方市)▽「宙の旅『つくばセグウェイスペースツアー』」つくば観光コンベンション協会(茨城県つくば市)▽「魅力発掘・足利銘仙プロジェクト『足利道楽・楽ジュアリーツアー』」足利商工会議所(栃木県足利市)▽「地域の拠点施設開設にあわせた『八ッ場ふるさとエコツアー』の実施」八ッ場ふるさとエコツアー実行委員会(群馬県吾妻郡長野原町)▽「ブラジル文化を楽しめる観光地のPR」群馬県邑楽郡大泉町(群馬県大泉町)▽「都心から最も近い『人と自然が調和するオーガニックビレッジ神川』の形成を目指した観光地化推進事業」神泉の郷有機農業推進協議会(埼玉県児玉郡神川町)▽「小江戸川越『縁結び&行燈ウォーク』事業」小江戸川越観光協会(埼玉県川越市)▽「日本の空の玄関口で気分も晴れやか願いも叶う!『運気上昇のまち成田』で『運命を変えるロケ地』と『今すぐ食べたい』が満載のおもてなしツアー」千葉県成田市経済部観光プロモーション課成田空援隊(千葉県成田市)▽「移住・定住に向けた『いすみの生活文化観光』」いすみ市地域振興対策プロジェクト会議(千葉県いすみ市)▽「館山わかしおトライアスロンツアー(仮)」館山わかしおトライアスロン事務局(千葉県館山市)▽「本物を知る!!『お江戸満喫まち歩き』」中央区観光協会(東京都中央区)▽「伊豆大島『ネイチャー・テーマパーク化』構想(伊豆大島ジオパーク馬車プロジェクト)」東京都大島町観光商工課(東京都大島町)▽「小田原城下のなりわいと邸園を訪ねる上質な旅」小田原市経済部観光課(神奈川県小田原市)▽「美人工房 笛吹・石和春日温泉郷マクロビオティックスの活用による地域振興――『美と健康と癒しの郷』を目指して」「やまなしウェルネスツーリズム事業」やまなし観光推進機構、やまなし観光まちづくり機構(山梨県笛吹市と周辺地域、山梨県山梨市、北杜市増富地域)▽「世界文化遺産登録を目指す富士山を歩こう!――ノルディックウォーキングによる地域一丸となったまちづくりへの挑戦」富士山国際ノルディック協会(富士山、山梨県富士河口湖町)▽「エコメディカルヒーリングリゾート(環境型健康保養型観光地)事業」信州しなの町エコツーリズム観光協会(長野県信濃町)▽「食と文化の再発見『佐渡野外レストラン』島旅ワークショップ」佐渡市(新潟県佐渡市)▽「にいがた『夏の雪旅』」にいがたスキー100年委員会と新潟県観光協会(新潟県上越市、妙高市、十日町市、魚沼市と周辺地域)▽「スノーカントリートレイルを基軸とした産業・ヘルスツーリズムの創出」雪国観光圏(新潟県南魚沼郡湯沢町、群馬県利根郡みなかみ町)▽「『星に一番近い駅』もう一つの立山がそこにある!」立山町観光協会(富山県立山町立山黒部アルペンルート)▽「金沢プレミアム ほんものの工芸にふれる旅(仮)」金沢市経済局営業戦略部観光交流課(石川県金沢市)▽「ふるさと体験交流事業 『龍になろう――九頭竜川の自然と過ごす発見と感動の3日間』による九頭竜川の魅力強化事業」嶺北ふるさと創造観光協議会(福井県九頭竜川流域)▽「飛騨の地酒をまるごと満喫!――地酒で日本のふるさとを巡る旅」飛騨地酒ツーリズム協議会(岐阜県高山市・飛騨氏・下呂市・白川村)▽「海・河・山の恵みでアンチエイジング!――ココロもカラダもよみがえる河津ヒーリング旅」河津ヒーリング旅創造委員会(静岡県賀茂郡河津町)▽「知多半島 食と日本酒によるブランド化事業」半田商工会議所(愛知県半田市・常滑市、知多市、東浦市、阿久比町、武豊町)▽「リアル忍者育成ツーリズム――日本中の忍者ファンと創るみんなの忍者の町!」伊賀流忍者観光推進協議会(三重県伊賀市、名張市)▽「伊勢志摩地域を紡ぐ『人・自然・食・文化・暮らし』五感体験・感幸ツアー」伊勢志摩観光コンベンション機構(三重県伊勢市、鳥羽市、志摩市、南伊勢町)▽「ビワイチ!トレイルランニングプロジェクト」びわこビジターズビューロー(滋賀県内全域)▽「富裕層向け京都伝統文化お誂えツアー(GO ON Travel)」GO ONプロジェクト事務局(京都府京都市)▽「広域連携と地域ネットワークづくりによる京都南部域の新たな賑わい創出 京都伏見・宇治『悠久の時 酒茶づけの旅(仮)』」NPO伏見観光協会(京都府京都市伏見区宇治市)▽「富田林市寺内町の歴史に根差した暮らし文化と周辺農村との連携による観光集客交流事業」農と食と観光まちづくり推進協議会(大阪府富田林市寺内町と周辺農村)▽「神戸発・日本初『イルカたちと過ごす感動の二日間』」須磨観光協会(兵庫県神戸市須磨区)▽「はりま酒文化ツーリズム推進事業」播磨広域連携協議会(兵庫県姫路市、加古川市、たつの市、小野市、相生市、赤穂市、西脇市、三木市、高砂市、加西市、宍粟市、加東市、多可町、稲美町、播磨町、市川町、福崎町、神河町、太子町、上郡町、佐用町)▽「木と水の文化産業の源流を訪ねるニューツーリズム」吉野林材振興協議会(奈良県吉野町、川上村)▽「戦国武将・真田幸村が愛した中世の丘状都市・九度山の『まちなか』をめぐるゆるり旅」九度山町まちなか活性化協議会(和歌山県伊都郡九度山町)▽「LCCで行く!おさかなリゾート『紀州加太』――江戸時代から伝わる伝統漁法を守る漁港体験」和歌山市加太観光協会会長(和歌山県和歌山市)▽「文化の香りの城下町・口熊野田辺観光活性化事業」田辺観光協会(和歌山県田辺市街地とその周辺)▽「流域連携による『筏流し』の歴史探訪プロジェクト」和歌山県北山村(和歌山県北山村、新宮市、三重県熊野市、奈良県上北山村、下北山村)▽「オオサンショウウオの王国を守ろう 生物多様性ツーリズムin大山蒜山」グラウンドワーク大山蒜山(鳥取県日野郡江府町、日野郡日南町、日野郡日野町、西伯郡大山町、西伯郡伯耆町、西伯郡南部町、東伯郡琴浦町、東伯郡湯梨浜町、東伯郡三朝町、東伯郡北栄町、米子市、倉吉市、岡山県真庭市、真庭郡新庄村)▽「『住まうように旅する』元気再生大山物語――旅人を元気にするツアー」大山観光局(鳥取県大山山麓地域)▽「縁切りから始まる縁雫・酒と食がもてなす『リセットからの縁の旅』」松江観光協会(島根県松江市を中心とした周辺地区)▽「古事記を神楽で巡る神秘の旅」石見観光振興協議会、安芸高田市、北広島町(島根県浜田市、益田市、大田市、江津市、邑南町、広島県安芸高田市、北広島市)▽「島の民宿を、島素材アメニティの『室礼』で再生する『島宿』プロジェクト」海士町観光協会(島根県隠岐諸郡海士町)▽「おさふね『日本刀』のルーツと『備前福岡』歴史のたび」岡山県瀬戸内市(岡山県瀬戸内市)▽「『カメラ女子旅』メニュー開発を通じた、観光まちづくり事業」世羅高原農場(広島県世羅町とその周辺地域)▽「幸せますのまち防府『幸せ発見』ツアー」防府市観光資源活性化協議会(山口県防府市)▽「秘境『祖谷』の新しい観光ブランド戦略構築実証事業」徳島県三好市(徳島県三好市祖谷地域)▽「『頭と心と体を元気にする女子旅』瀬戸内アートクルーズ&小豆島坂手港周辺ショート・ツアー」小豆島坂手んごんごツーリズム協議会(香川県小豆郡小豆島町)▽「忽那諸島のしまみがきと瀬戸内海テーマクルーズ」瀬戸内・松山ツーリズム推進会議(瀬戸内海)▽「高知のベースボールツーリズム――地域交流がプロ野球選手を育てる」高知ファイティングドッグス球団(高知県高知市、越知町)▽「恋と黄金でつながる地域連携観光モデル」筑後七国商工連合会(福岡県福岡市、筑後市、八女市、柳川市、大川市、みやま市、大木町、広川町)▽「酒蔵を巡り、蔵人と触れ合い、彼の作る酒を味わう旅『鹿島酒蔵ツーリズム』」鹿島酒蔵ツーリズム推進協議会(佐賀県鹿島市)▽「『有田焼』ファンの夢をかなえるツアー――人間国宝ほか窯元に学ぶ有田の魅力」有田観光協会(佐賀県西松浦郡有田町)▽「世界遺産候補『長崎の教会群とキリスト教関連遺産』を訪れる『祈りと学びの旅』プログラム」長崎の教会群を訪れる祈りと学びの旅プログラム開発協議会(長崎県長崎市、佐世保市、平戸市、五島市、南島原市、小値賀町、新上五島町、熊本県天草市)▽「杖立流・Neo湯治スタイル『杖立・蒸し湯』確立事業」杖立流・Neo湯治プログラム研究委員会(熊本県阿蘇郡小国町)▽「佐伯『手塩にかけた食のもてなし』事業」佐伯市観光協会(大分県佐伯市)▽「ひむか日豊海岸『マリンスポーツと古代ロマン』――高速道路の開通を契機とした魅力ある観光商品づくり」ひむか日豊海岸観光推進協議会(宮崎県延岡市、門川町、日向市)▽「世界自然遺産登録を見据えた住民ネットワークが魅力を発信する観光コーディネート構築事業」鹿児島県奄美市(鹿児島県奄美市)▽「『心の健康を取り戻すヘルスツーリズムの検証』お洒落湯治場・いぶすき!心身ともに美人になる『美プロジェクト』=『IBUSUKI海洋浴』満喫ツアー」指宿市観光協会(鹿児島県指宿市と周辺地域)▽「石垣島子育て道場(田舎体験)」石垣島沿岸レジャー安全協議会(沖縄県石垣市)▽「草野球キャンプin宮古島」宮古島オリックス協力会(沖縄県宮古島市)▽「おおぎみまるごとシークワーサー体験 黄金の果実を味わおう」NPOおおぎみまるごとツーリズム協会(沖縄県国頭郡大宜味村)

手作りの参考書、女性経営者の会が作成(全旅連)

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の女性経営者の会(石橋利栄会長、会員47人、JKK)はこのほど、宿の女性経営者に読んでもらいたい「手作りの参考書」を作成した。

 同冊子は、「女性経営者がそばに置いておきたい本」を目指し、会員が2年間かけ作ったもの。女性経営者ならではの記事や情報が盛り込まれ、等身大の女性経営者から良きアドバイスがもらえる一冊だ。A4判82ページ。

 構成は3章に分かれており、第1章の「あなたは本当に経営ができますか?」では、社員教育や旅館でできる地域活性化、地域との連携についてなど、各会員が勉強会で学んだことがまとめられている。

 第2章の「ひとりで悩まないで!」では、虫のクレームや、VIP扱いを求めるお客様への対応など、女性経営者の体験談(事例)をもとに、〝いざ〟というときに役立つ対応方法を紹介。

 第3章は「JKKお役立ち情報集」。JKK知恵袋では、飲み物の持ち込みや、果物ナイフの貸出、盲導犬の受け入れについてなど、宿で発生したさまざまな問題点、疑問点がQ&A方式で書かれている。さらに、「宿の英会話集」や「今さら聞けないIT用語カタカナ用語」など多岐にわたって網羅している。

 石橋会長は、冊子冒頭で「女性経営者の多くは、好奇心旺盛で向上心も高いです。しかし、〝知りたい〟〝勉強したい〟という意識とは裏腹にその環境は厳しく、子育てや介護、家事や仕事に時間をとられ、外にでかけて勉強する機会を失いがちです」と女性経営者を取り巻く環境や苦悩を語っている。しかし、同冊子はそんな悩みを持った女性経営者の一助として活用できるツールであり、手軽に読める参考書となっている。

 問い合わせ=全旅連女性経営者の会 電話:03(3263)4428。 

沖縄リゾートウェディング2012、過去最高の9118組に

リゾートウェディングの風景
リゾートウェディングの風景

13年の目標は1万500組

 沖縄県はこのほど、家族や知人など比較的少人数で参加するリゾートウェディングの挙式数が2012年は9118組となったと発表した。県が1999年から挙式事業に取り組み始めて、過去最高の数字となった。

 目標の9600組は下回ったものの、前年比では2・8%(246組)増となった。このうち国内挙式組数が同0・2%(25組)増、海外挙式組数は同86%(221組)増と大幅に伸びた。海外カップルの半数以上は香港が占め、要望が高い「リーガルウェディング」も増えた。

 スタイルは「チャペル」が全体の8割を占め、沖縄の海や白い砂浜を背景にした「フォトウェディング」も増加しているという。国内の地域別では関東が約4割で近畿が2割と続く。

 平均参列者数は19人で、新郎新婦を合わせると1組当たり21人。挙式での訪問客は総計では19万1千人と推計している。

 また、挙式費用の約55万円と観光客1人の消費額6・8万円を元に推計した県内消費額は180億円とはじき出した。

 昨年、県ではマスメディアを活用した広報の強化や映像プロモーションツールの制作、東京、大阪での沖縄リゾートウェディングフェアの開催などを積極的に展開。

 2011年にはブライダル事業者を中心にした「沖縄リゾートウェディング協会」が設立され、毎月22日を「沖縄リゾートウェディングの日」と設定し、那覇空港での出迎え行事などを実施している。

 県では13年の挙式目標を1万500組と設定し、国内と海外では香港、上海、台湾を中心にプロモーションを強化する。

「ピンクリボンのお宿ネットワーク」鼎談、医療現場から観光業界への期待

鼎談は3月20日に行われた
鼎談は3月20日に行われた

「ピンクリボンのお宿ネットワーク」の会員施設の情報を掲載する冊子。問い合わせ=事務局・旅行新聞新社 ☎03(3834)2718。
「ピンクリボンのお宿ネットワーク」の会員施設の情報を
掲載する冊子 問い合わせ=
事務局・旅行新聞新社 ☎03(3834)2718。

 「ピンクリボンのお宿ネットワーク」(会長=畠ひで子・匠のこころ吉川屋女将)が昨年7月設立した。同ネットワーク副会長で医療機関との橋渡し役を務める池山メディカルジャパン社長の池山紀之氏と、乳がん患者さんの乳房再建の第一人者でもある市立四日市病院(三重県四日市市)形成外科部長の武石明精氏、総合病院土浦協同病院(茨城県土浦市)の乳がん看護認定看護師の関知子氏は3月20日、医療現場から見た観光業界への期待や課題などについて語り合った(本文の一部は3月31日付臨時増刊タブロイド版「第24回全国女将サミット2013福島特集号」で掲載)。
【増田 剛】

≪治療後の生活まで考える ― 武石氏≫
≪冊子で温泉旅行が現実味 ― 池山氏≫
≪観光と医療をつなぐ文化 ― 関氏≫

 

 

池山 紀之氏
池山 紀之氏

池山:「ピンクリボンのお宿ネットワーク」が昨年7月に発足しました。昨年12月には、会員施設の情報を掲載した冊子も発行し、会員のお宿や全国約550の主要病院、個人の希望者にも配布しています。医療機関では現在、約5万部が患者さんなどに配布されました。武石先生の市立四日市病院や、関さんの土浦協同病院にも置いています。
現場から見て、患者さんの冊子に対する反応はどうですか。

:実際、毎日接している患者さんたちの温泉に対する関心はすごく高いですね。

武石:四日市市民病院ではあっという間になくなりました。どんどん事務局に補充をお願いしています。

 
 

関 知子氏
関 知子氏

池山:乳がん患者さんを切り口に、「すべての人が旅や温泉を楽しんでもらえるように」と、ピンクリボンのお宿ネットワークが設立されたのですが、お二人は医療現場から見て、ピンクリボンのお宿ネットワークに一番期待されることはどのようなことでしょうか。

武石:実際に温泉に入浴できるということでは、患者さんに「癒し」が得られます。しかし、患者さんがそこに一歩踏み出す勇気を、「ピンクリボンのお宿」というネットワークの名前自体が与えてくれるのです。患者さんは身体的だけでなく、傍から見ている以上に、精神的なハンディを背負っています。
乳がんの患者さんは医療に関することは相談できますが、「温泉に行くことを病院の先生に相談してはいけないのではないか」と思われるケースも多く、我われから温泉に関する情報を提供することによって、患者さんが一歩踏み出す勇気を与えてあげることができるので、すごく素晴らしい取り組みだと思います。

武石 明精氏
武石 明精氏

池山:この冊子はネットワークの会員となっている旅館のガイド冊子なのですが、病院の先生が旅館のガイド冊子を患者さんに直接手渡すことに抵抗はありませんか。

武石:乳がんの患者さんにどこまで踏み込んでいるかによると思うのですが、乳がんを専門としている医師には抵抗はあまりないと思います。とくに乳腺や形成外科医は、乳房を再建したあと患者さんが温泉に入ることまでを考えますから、抵抗はないと思います。

池山:乳がんの患者さんにとっては、術後に以前と同じような生活を送ることができるかが大きな関心事で、看護師さんも患者さんから術後の生活について相談されることが多いですよね。

 

:退院指導のときに患者さんには、「温泉にも行けますよ」とお話をするのですが、「ウソでしょう」と本気にしてもらえないことが多々あります。「ピンクリボンのお宿が紹介されていますよ」と、冊子を配布するようになってから、「本当に温泉に行ってもいいんだな」と話される患者さんもいます。言葉だけでなく冊子をお渡しすることで患者さんはより現実的に実感できるみたいですね。もっとネットワークを広げてもらえたらいいなと思います。
患者さんからは「どういうサービスをしてくれるのでしょうか」と聞かれることが多いですね。冊子に割引クーポンなどを付けてもらえると、患者さんや、患者さんのご家族もすごく参加しやすくなるのではないでしょうか。

池山:掲載されている施設にも温度差があるのは事実で、これから横のネットワークを広げるだけでなく、旅館の意識の向上も重要な課題になってきます。会員旅館が増えてくれば、冊子も改訂版を出していく予定ですので、患者さんや医療現場の方々のさまざまな意見を反映していければと思っています。

武石:家族風呂や、貸切風呂がある施設もありますが、患者さんが口をそろえて希望するのは「以前と同じように大浴場に入りたい」ということです。患者さんは傷を人に見られることを非常に気にされるので、洗い場などに仕切りがあれば大浴場に入る時にすごく安心されます。脱衣所や洗い場が工夫されている会員旅館さんの状況を分かりやすく提示していただけると、とても喜ばれると思います。

:武石先生がおっしゃったように、患者さんは温泉に入っているときよりも脱衣所や洗い場の方が気になるので、さりげなく目隠しになっている配慮や工夫があるといいですね。乳がん患者さんだけでなく、さまざまな理由で目隠しがあることで大浴場に入りやすい人が多いと思います。

武石:大浴場が比較的空いている時間帯を冊子で案内したり、夕食時間をずらすことで対応するのも一つのアイデアではないでしょうか。

:昨日お会いした患者さんは「水着を着たまま入れる温泉しか行かない」と言っていました。でも、大部分の患者さんは「裸でそのまま大浴場に入りたい」というのが本音なのです。

池山:日本では現在、年間約5万人が乳がんの手術を受け、術後の生活をされている患者さんも数10万人います。その方々がなかなか温泉に行けない。私の妹のときもそうでしたが、家族や友人も温泉旅行に行けないのです。この現状を観光業界が真剣に受け止め、「温泉に行きたくなったら誰でも行ける」という環境を整備していくことが、需要拡大に向けてプラスに働くと思います。温泉は日本の文化であり、我われ医療という別の業界にいながら「もったいない」という思いを強く持っています。

:うちの病院では人工肛門を装着されている患者さんの会があって、年に1回、日帰り温泉旅行を20年近く実施しています。

池山:大腸がんの患者さんも乳がんの患者さんと同じ規模の年間約5万人ほどなのです。

武石:患者さんのツアーでは参加できる人は多いのですが、家族では行ったことがないという人が多い。一番行きたいのは家族との旅行なんです。

池山:毎年10月は「乳がん月間」ですが、愛知県の湯谷温泉は「ピンクリボン癒しの郷(さと)」として、今年10月1日を「ピンクリボンの日」として、同温泉地の全旅館が乳がん患者さんだけを受け入れることを決めました。

:患者さんは自分の体の傷を他人に見せることで驚かせてしまったり、不快にさせたくないという思いが強いですね。

武石:旅館は一般のお客さんにも「乳がん患者さんを受け入れています」というアナウンスがあればもっといいと思いますね。

池山:その意味も含めて各会員の施設に「ピンクリボンのお宿ネットワーク」のプレートや、冊子を置いています。

武石:脱衣所の照明を少し暗くしたり、洗い場の仕切りを作ることも大切ですが、それ以上に宿のスタッフ全員が「乳がん患者さんを受け入れる宿だ」という意識を共有することが大事だと思います。不安ながらも患者さんがお宿を訪れて、客室係のスタッフに相談したとき、「わかりません」と言われてしまっては「やっぱり駄目だった」と、がっかりすることになります。

池山:本格的な高齢化社会を迎え、乳がん患者さんに限らず、体の不自由な方、高齢者が旅館を訪れるケースはこれからますます増えていくなかで、社員教育の一環として医療現場の声を伝えることも必要になると思います。

 ピンクリボンのお宿ネットワークが昨年12月に新潟県瀬波温泉で実施した「第1回ピンクリボンのお宿セミナー」のような大規模なものではなくても、全国に187人いる認定看護師さんや、武石先生のような医師の方々にもセミナーや講習会にも参加していただいて、観光業界と医療業界の垣根をなくし、連携を強めていけたらいいなと思います。

 

武石:乳がん治療というのは手術だけではなく、その後も治療は継続されます。化学療法や放射線療法、ホルモン療法などさまざまな治療法があり、患者さんの症状もそれぞれ異なります。そのことを知るだけでも、お宿さんにとっては大きな前進だと思います。

:ホルモン治療をしている人は発汗量が多かったり、体温調整が難しかったりするので、タオルや浴衣を数枚使えるように用意してあげると、きっと喜ばれます。

武石:QOL(クオリティー・オブ・ライフ)という言葉が使われだしてから長い年月が経ちますが、医療現場として「患者の病気を治した」「命を救った」で終わりというのは、もう時代遅れです。患者さんの病気が治った後の生活が、病気になる前と比べてどこまで回復しているかに重点が置かれています。

 

 現在のQOLはまだ、「職場に復帰した」「普段の生活は大体できるようになった」というレベルですが、これからは、我われの意識をもっと上げていかなくてはならないと思っています。

 娯楽スポーツも含めて「遠くまで旅行にいけるようになった」「温泉に行けるようになった」「以前のようにスポーツやハイキングができるようになった」というレベルまで考えていく必要があると思います。そのためには我われ医療現場にいる人間はほかの業種の方々とも関わっていかなくてはならないし、その現場のことをもっと勉強していかなくてはならないのです。

池山:そうですね。「ピンクリボンのお宿ネットワーク」は日本の観光と医療をつなぐ新しい文化と歴史をつくっているのだと思います。

【18面に関連記事】

〈鼎談出席者

武石 明精氏:市立四日市病院(三重県四日市市)

 関 知子氏:総合病院土浦協同病院(茨城県土浦市)

池山 紀之氏:池山メディカルジャパン(愛知県名古屋市)

国内旅行は過去最高、景気回復ムードで前向き(JTB GW動向)

 JTBがこのほど発表した今年のゴールデンウイーク(4月25日―5月5日)の旅行動向によると、国内旅行が好調で、総旅行人数は過去最高の2279万6千人が見込まれる。景気回復ムードにより、旅行消費に前向きな傾向がうかがえる。国内旅行は、前年比1・0%増の2223万人で過去最高の見込みで、首都圏・関東方面が人気のほか、大河ドラマなどの影響で東北方面の旅行が増加する傾向だ。海外旅行は、同5・0%減の56万6千人で、過去最高だった昨年に次いで2番目の水準だが、連休が取りづらい曜日並びや、国際関係の影響で伸び悩んでいる。同旅行動向は、JTBグループの販売状況や予約状況、航空会社の予約状況、業界動向、1200人へのアンケート調査などから推計した。

 今年のGWは4月27―29日の3連休と、5月3―6日の4連休に分かれ、連休の間の平日が昨年より1日長く、前半と後半に分散する傾向が強い。国内旅行は、5月3、4日の宿泊が中心。海外旅行は、遠距離の欧州、米国、ハワイが4月27日、近隣アジアやグアム・サイパン方面は5月2、3日が出発のピークとなっている。

 国内旅行の平均費用は同2・9%増の3万5900円。海外旅行は同6・4%増の22万3400円といずれも増額の予想。旅行支出に対する意向は「支出を増やしたい」が25・1%で、前年比12・4ポイント増と大幅に増えた。

 国内旅行は、昨年5月に開業した東京スカイツリーや、東京ディズニーリゾートの30周年記念、今年3月にオープンした東京駅前の商業施設「KITTE」(旧東京中央郵便局舎を一部保存・再生)など、東京方面の人気が引き続き高い。また、大河ドラマ「八重の桜」の放映により会津や、NHK朝ドラマの「あまちゃん」の舞台である三陸など、東北方面の観光客増加が期待される。さらに今年は、伊勢神宮で20年に一度の「式年遷宮」、出雲大社で60年ぶりの「平成の大遷宮」が行われる。同年に伊勢神宮と出雲大社の遷宮が重なるのは史上初のできことで、伊勢志摩方面や山陰方面にも注目が集まっている。

 海外旅行は、昨年伸長した韓国、中国が国際関係の影響で、一部は国内や他国にシフトすると考えられる。方面別では、昨年に引き続きハワイ、シンガポール、タイ、台湾の人気が高く、昨年の同時期よりも1ドル10円以上の円安となるものの、影響は見られない。円安傾向や日並びの悪さに関わらず、欧州は堅調。ルックJTBの売れ筋コースは、イタリア、ドイツで、昨年ロンドン五輪で注目されたイギリスが例年以上に伸びている。なお、ヨーロッパの出発日は4月27日がピーク。 

国内も最低価格保証、国内宿泊1円CPを実施(エクスペディアジャパン)

三島健代表
三島健代表

 世界30カ国でオンライン旅行サイトを展開するエクスペディアジャパンはこのほど、海外ホテルに続き、取り扱うすべての国内ホテルでも最低価格保証を始めた。

 同一条件での比較で、他サイトよりもホテルの値段が高かった場合、予約後30日以内に申請すると、差額の返金に加え、エクスペディアで次回の海外ホテル、海外ツアー予約時に使える5千円分のクーポンがプレゼントされる。対象ホテルはエクスペディアジャパンのサイト上で予約可能なすべての国内ホテル。ただし、JTBとの提携で今夏から提供を始める宿泊施設7千軒については、別サイトを作る予定で、最低価格保証の対象外となる。価格比較の対象となるウェブサイトは日本円で料金を提供しているサイトで、即時予約が可能なホテル、部屋が対象。

 4月8日の会見で、エアアジアエクスペディアジャパンの三島健代表は、同社サイトを利用した国内宿泊旅行者は毎年2倍の勢いで伸びていることを報告。提供施設数については「数千軒」と言明を避けたが、「年々増えている」と自信をのぞかせた。価格勝負ができる理由に、「世界で3兆円を超える取扱量」と「スケールの大きさ」をあげた。また、ネットエージェントのシェアについては「まだまだシェアについて話せるほどまでには至っていない」としたが、「3―4年後には国内のプレイヤーの一角にはなりたい」と展望を語った。

 エアアジアエクスペディアジャパンマーケティングディレクター東アジアの木村奈津子氏は「これまでは、安いホテルをボトム価格で提供しているというイメージを持たれがちだったが、今回の最低価格保証制度で今まで手が届かなかった高級ホテルにも手ごろな最低価格で泊まってもらいたい」と語った。木村氏によると、提供施設は現在、シティホテルが中心で旅館は含まれていないというが、「今後は旅館なども含めて提供施設を拡大していきたい」と話す。

 なお、返金差額はホテル側ではなく同社が負担をするが、今後はその差額を考慮したうえでホテル側と料金設定の交渉をしていくという。

 同社では、国内最低価格保証を記念し、現在全国5都市・限定300室を対象とした「国内ホテル1円セール」を実施中だ。第1弾の東京、第2弾の京都・大阪に続き、第3弾の沖縄・札幌は4月22日の午前0時に発売を開始する。

“コード”を業界全体に、旅行会社が取り組むべきCSR

JATA・米谷氏
JATA・米谷氏

JATA CSRセミナー

 日本旅行業協会(JATA)は3月14日、東京都港区のユニセフハウスで、「持続的な企業発展のために旅行会社が取り組むべきCSRとは」をテーマにセミナーを開いた。国際連合児童基金(ユニセフ)などが観光地などでの子供買春を根絶するために推進する、旅行会社の取り組み「コードプロジェクト」に関連する講演などを実施し、実態を学んだ。日本では2005年からコードを開始し、現在はJATA会員を中心に約90社が参加しているが、今後、JATAは会員をはじめ、業界全体に取り組みを広げていきたい考えだ。
【飯塚 小牧】

 冒頭、JATAの米谷寛美総合企画部長(開催時役職)はコードの経緯などを説明。それによると、国際的な取り組みの始まりは、1996年にストックホルムで開かれた旅行・観光での性的搾取から子供を保護するための行動規範に関する国際会議。そのなかで、悪の根源はインターネットと旅行会社だという意見や、その最たる国は日本だという声もあったという。報告を受けたJATAは反論していたが、それだけではなく、積極的に根絶に向けた取り組みを行い、企業的責任を果たしたうえで、世界の観光の健全な発展に資するべきだと判断。2005年に世界のコード機関と合意書を取り交わし、日本でコードの取り組みを開始した。

 米谷部長は「世界的に子供の人身売買や児童ポルノの事件・ニュースは後を絶たない。海外の調査で日本は子供を人身売買から守る法的な枠組みや政策、国際基準が不十分で意識も低いと指摘されている」と社会全体の問題点を示した。旅行業にとっては旅先で顧客が知らない間に犯罪に関与するケースもあり、「無関心では企業イメージのダウンや損失につながる可能性がある」と言及。「ボランティア色の強かったCSRから一歩踏み込んだ活動だが、率先して旅行業全体で取り組み、子供の悲劇を少しでも減らしたい」と意気込みを語った。

原幸太郎氏
原幸太郎氏

 セミナーは3人の講師が登壇し、現状や取り組みについて講演した。1人目の講師は警察庁生活安全局少年課児童ポルノ対策官の原幸太郎氏。原氏は「児童ポルノ」に関する検挙件数が2002年の189件から10年後の2012年には1596件に増加し、そのうちインターネット関連事件が84・5%を占める現状などを報告。被害児童の約半数が13歳以下の低年齢児童で、その8割は強姦・強制わいせつのうえに画像を撮影されている悲惨な実態を示し、「ネットのなかの画像はコピーが世界中に渡ってしまうこともあり回収が困難で、長年にわたり精神的苦痛が続く」と語った。

 児童ポルノの取り締まりにおける日本の課題は単純所持の処罰化だ。国会でも度々議論されているが、現行の法律では個人的な所持は処罰の対象とはならない。一方、欧米諸国では単純所持も処罰化しているため、「例えば海外でツアー顧客のなかに所持している人がいた場合、旅行会社の皆さんの関与も確認される場合がある。海外はコンプライアンスを重視するので、『顧客の手荷物検査はできない』と訴えても、それが重なれば評価が下がることは否定できない」と注意を促した。

吉田奨氏
吉田奨氏

 2人目の講師、ヤフー政策企画本部ネットセーフティ企画室室長の吉田奨氏は青少年が安心して利用できるインターネット環境づくりに向けた取り組みを紹介。同社は広告やコミック、動画、オークションなどそれぞれのサービスで適正化と悪用防止対策を実施している。業界全体では、主要なプロバイダー企業やモバイル企業など87社が加盟する「インターネットコンテンツセーフティ協会」で取り組みを推進。吉田氏が事務局長を務める同協会は、児童ポルノ画像が掲載されたサイトのアドレスリスト作成・管理や提供などを行い、インターネット上の児童ポルノ画像の流通や閲覧防止対策を国などと連携して行っている。

 吉田氏はこのような取り組みに力を入れる理由について「日本でサービスを提供している以上、『児童ポルノ大国』という批判に対し、仮に国内サーバーにデータが蔵置されているのであれば地道に消すなど世界に誇れる対策で汚名を返上したい。また、ネットに対する批判は長期的に見てビジネスを阻害する要因になると考えている。CSRの観点でも、例えば植林よりも、本業領域で我われにしかできないことのほうが優先されるのではないか」と述べた。今後についても「業界内では積極的でないところもあるが、引きずってでも参画してもらわないと、ネット全体が批判を受ける。業界のリーディングカンパニーとして、積極的にイニシアティブを取っていく」と強調した。

佐伯摩耶氏
佐伯摩耶氏

 最後は、日本ユニセフ協会広報・アドボカシー推進室アドボカシー担当の佐伯摩耶氏が、世界の企業が子供の権利をどのように考え、企業活動を行っているかを語った。

 佐伯氏はコードの主旨を「加害者や特定の誰かを責めるものではない。大切なのはどうやって子供を守るのか。いくらでも止める機会はあるはずだ」と前置きしたうえで、コードの取り組みが進んでいるドイツの推進体制を紹介。政府をあげて取り組んでいるドイツは、3つの省庁が協力してバックアップしているほか、民間でも旅行会社の約80%がコードに参加している。その背景には国民の意識の高さがあり、顧客が旅行会社の窓口で「あなたの会社は、コードをしているか」と尋ねるほどだという。

 そのなかでも、ドイツの旅行会社で世界企業のTUIは熱心で、担当者のショーン・オーウェンズ氏が自社内の年次報告を世界中から集め、編集して世界のコード機関に提出している。「彼になぜそこまでするかを聞くと『私たちの大切なお客様が訪れようとする国や地域が“子供売春地”として有名だったら私たちが困る。私は世界の“風景”を変えたい』と答えが返ってきた」と印象的なエピソードを語った。

 講演を受け、米谷部長は「現状、広がりが見えていないので、活動をリセットし、日本の旅行業全体で契約を結び活動を進めたい。少なくともJATAの会員には意識を持ってもらい、参加してもらうように呼び掛けていく。厳しい情勢で意識が向かないという現実も分かるが、将来を考えれば積極的に推進するべきだ」と力を込めた。

旅行新聞創刊1500号あいさつ

業界のオピニオン紙として

旅行新聞新社代表取締役 石井 貞徳
旅行新聞新社代表取締役
石井 貞徳

 本紙は1975(昭和50)年の4月に創刊以来、2013年4月21日号をもちまして1500号を迎えることになりました。これも、ひとえに観光関係者のご支援ご鞭撻の賜物と深謝申し上げます。

 創刊時は国内・海外の情報を掲載する観光業界の週刊専門紙として発行致しました。この間、紆余曲折を経て、現在は“業界人のための業界専門紙”として月3回、旬刊「旅行新聞」を発行しており、多くの観光業界人に評価をいただけるようになりました。

 現在は韓国の「旅行新聞」、台湾の「トラベルリッチ・旅奇」など海外メディアとも連携しており、今後はワールドワイドの記事を提供していきたいと考えております。

 また、新聞発行の周知をはかるため、創刊翌年の76年1月に第1回「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」をスタートさせ、今年で38年目を迎えることができました。観光業界において長い歴史を刻むことができた「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」は、現在「プロが選ぶ観光・食事、土産物施設100選」や「プロが選ぶ優良観光バス30選」「選考審査委員特別賞 日本の小宿」そして「もてなしの達人」「優秀バスガイド」と幅広い賞を持つイベントとして育って参りました。

 このほかにも、「全国旅館おかみの集い(全国女将サミット)」や「売り場が変わるプロジェクト」「ピンクリボンのお宿ネットワーク」などを展開しており、今後もウェブへの取り組み強化など、事業を拡大し、観光業界発展のために努力していきたいと考えております。

 今、日本経済の活性化に必要不可欠なのは観光振興です。今後の国内の人口減少・高齢化を考えると、観光での交流人口拡大による地域活性化や諸外国への幅広い対応なくして成長は見込めません。我われはその一助となるべく、観光業界のオピニオン紙として、さまざまな情報や、動向、調査データを的確に報道し、識者などの意見を取り上げ、問題点を明らかにして業界発展のために寄与して参ります。

 1500号の節目にあたり、観光立国の実現に向けて、社員一同、今一度初心にかえり、皆様方のご期待にお応えできますよう邁進致す所存でございます。

 今後とも何卒倍旧のご高配を賜りますよう、伏してお願い申し上げます。