11年度予算、当初額確保を、馬淵大臣も要望に理解

(左から)舩山会長、西田会長、馬淵大臣
(左から)舩山会長、西田会長、馬淵大臣

 日本観光協会の西田厚聰会長と日本ツーリズム産業団体連合会(TIJ)の舩山龍二会長は12月2日、国土交通省を訪れ馬淵澄夫国土交通大臣に、来年度の観光関連予算について、当初要求額(今年度予算3%増の130億8200万円)並みの確保を要望した。先日実施された事業仕分けで、2011年度の観光関連予算が大幅に削減されたことを受けたもので、馬淵大臣も「尽力する」と理解を示したという。

 提出した要望書では、観光は国の成長戦略の柱で、地方でも地域経済の活性化に極めて重要な政策だと位置づけられていることなどを示したうえで、今回の大幅な予算削減は「政策方針としての一貫性の観点から理解に苦しむ」と意見。具体的な額は記さなかったが、政策実行と官民一体の目標達成のための必要予算を確保するよう求めた。

 西田会長は要望書提出後に報道陣の前で「やっと観光が新成長戦略として位置づけられ、今年度の予算も126億円ついて期待をしていたところ、このような事態になった。これでは政策の完成も薄れてしまうので残念でもあり驚きもした」と率直な感想を語った。

 一方、馬淵大臣との話では、「産業立地がなかなか進まない現況で、地方での活性化にはまず観光。地方も大変な意気込みで国の支援を必要としている。馬淵大臣も理解し、尽力していただけるという力強い言葉をいただいた」と好感触を示した。舩山会長も「事業仕分けには失望感があったが、大臣は大変理解を示しておられた」と話し、財務大臣との交渉についても馬淵大臣から前向きな発言があったという。

東北新幹線が全線開業、「千載一遇の好機」(青森県三村知事)

青森県の三村知事が「開業をチャンスに」と述べた
青森県の三村知事が「開業をチャンスに」と述べた

 青森県と東日本旅客鉄道、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構は12月4日、青森市内のホテルで同日に八戸―新青森間が開業し、全線開業となった東北新幹線と、同日から新たなスタートを切った、並行在来線の青い森鉄道の全線開業の祝賀会を開いた。

 あいさつに立った三村申吾青森県知事は「今日から東京―青森が最速3時間20分で結ばれる。昭和47年の東北新幹線の盛岡以北の延伸計画から38年。紆余曲折があったが、待望の開業を迎えた。その間、さまざまな人たちのご苦労があったと思うと感慨深い」と述べた。さらに「新幹線の全線開業で航空路、高速道路と含めた高速交通網が整った。本日がゴールではなく、開業を千載一遇のチャンスととらえ、未来への挑戦を目指し青森の魅力作りに全力をあげていきたい」と結んだ。

 続いて、清野智東日本旅客鉄道社長は「東北新幹線は日本列島の背骨を担う重要な路線。安全、正確、快適さをさらに磨き上げ、大事に立派に育てていきたい」と述べるとともに、「青い森鉄道とも連携して、青森の新たな観光開発や商品作りを行っていきたい」と述べた。

 来賓の馬淵澄夫国土交通大臣は「今回の開業で日本の動脈としての鉄道網ができた。経済、文化、観光など青森の持つ潜在的ポテンシャルをより高めるスタートとしてほしい」と祝辞を述べた。

第36回「100選」決まる、発表は1月11日号の紙上

100選選考のようす

 旅行新聞新社・100選選考委員会は12月1日、東京都港区の浜松町東京會舘で「第36回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」の選考委員会を開き、総合100選と審査委員特別賞・日本の小宿(にっぽんのこやど)10施設を決定した。「第31回プロが選ぶ観光・食事、土産物施設100選」「第20回プロが選ぶ優良観光バス30選」などを加えた主なランキングは本紙2011年1月11日号の紙面で発表する。

 今回の総合100選には、新たに8施設が入選。表彰・発表式は1月21日、東京都新宿区の京王プラザホテルで開かれる。

 「第36回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」は、全国1万7250の旅行会社(支店や営業所含む)対象に専用ハガキによる投票を募り、集計した投票結果を後援団体の日本旅行業協会(JATA)、全国旅行業協会(ANTA)の関係者、旅行作家、旅行雑誌編集者で構成される選考審査委員会で審査し、決定する。

 また、1990年から始まった選考審査委員特別賞「小規模和風の宿」を今回から「日本の小宿(にっぽんのこやど)」に改称。「和風」という名称には馴染まないが、洋風や和風モダンなどさまざまな形式の宿まで選考の枠を広げた。

 「第36回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」の投票受付は10月1―31日まで。

 たくさんのご投票ありがとうございました。

No.267 みうらシティセールス・プロモーション - 営業開発課が市を“売る”

みうらシティセールス・プロモーション
営業開発課が市を“売る”

 神奈川三浦市は、行政では珍しい「営業開発課」を2004年に設置し、三浦市を“売る”ための「みうらシティセールス・プロモーション」を展開してきた。メディアでも多く取り上げられ、09年3月には日本観光協会の「優秀観光地づくり大賞」で金賞の総務大臣賞を受賞。今年11月には「第1回かながわ観光大賞」の「観光による地域活性化部門」で大賞を受賞した。取り組みや成果などを発足から同課に所属し、今は課長として取り仕切る大澤克也氏に聞いた。

【飯塚 小牧】

 ◆営業開発課とは

 神奈川県・三浦半島の最南端に位置する三浦市。漁業が盛んな地域で、マグロの水揚げ日本一を誇ったこともある。加えて肥沃な大地も広がっているため、野菜も多く栽培されている。昔からの主な観光地は、三浦海岸や城ヶ島、油壺など。1960年代の観光入込客数は763万人を数えていた。その後、94年の5万4339人をピークに市の人口は減少(現在は約4万8千人)。マグロの水揚げも交通面の発達から、静岡県の焼津港にシフトされるとともに、観光の多様化から観光客数も減少していた。

大澤 克也 課長

 こうしたなか、2000年に地方分権一括法が施行されると、同市は翌年「第4次三浦市総合計画」を策定。地域経済の衰退と定住意識の低下、一体感の喪失の3つの問題を指摘し、克服するための行政革命を行うことを決めた。計画では、人・企業・モノ・情報を歓迎する「もてなし政策」を大きな柱に据え、それを具現化する施策として「みうらシティセールス・プロモーション」を掲げた。同プロモーションは、対外的には地域コンテンツの開発と営業活動、また市民に対してはコンテンツ開発への協力と来訪者をもてなしてもらうことで、地元の魅力の再認識や誇りを持ってもらうという両面の役割がある。その実践部隊として04年4月、経済振興部に設置されたのが営業開発課(現在6人)だ。

 さらに、06年に吉田英男市長が「株式会社三浦市」のコンセプトを打ち出したことも大きな転機になる。横浜銀行出身の吉田市長は、民間の考えを市制に導入。営業開発課は新規性、独創性、発展性の高い事業を考案する部署として、“株式会社三浦市”の営業に「24時間、365日体制」の感覚で臨んでいる。 

 

※ 詳細は本紙1405号または日経テレコン21でお読みいただけます。

女将サミット 初の九州開催へ

おかみの集い運営委員会(有村政代運営委員長)はこのほど、来年22回目を迎える「全国旅館おかみの集い」(女将サミット)について、九州「福岡」で開催することを決めました。

過去21回、首都圏のほか関西地区で開きましたが、福岡で開くのは初めてです。有村運営委員長は「全国から九州へ来られる参加者が楽しんでもらえるような会を開きたい」と、初の九州開催に意欲を見せています。

同時に開催日は6月28日、基調講演講師には裏千家前家元の千玄室氏を迎えることも決めました。会場ホテルや開催テーマ、分科会(勉強会)内容については、今後の運営委委員会で話し合います。

■第22回 全国旅館おかみの集い 開催概要(速報)

開催日:平成23年6月28日(火)

開催場所:福岡県福岡市内のホテル

基調講演講師:裏千家前家元 千玄室 氏

訪日中国人1.8%減、尖閣事件の影響大

 日本政府観光局(JNTO、間宮忠敏理事長)がまとめた2010年10月の訪日外客数(推計値)は、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件の影響を受け、中国が前年同月比1・8%減の10万6400人、香港が同23・7%減の3万400人となった。

 全体では、羽田空港の国際線発着枠拡大、訪日旅行の広告・宣伝効果、景気の回復・好転などにより、同11・0%増の72万7600人と、09年11月以降前年同月比は12カ月連続で増加した。ただし、6月の同59・5%増など、大幅な増加を記録していた10年のなかでは増加率が鈍化。10月単月で過去最高だった07年(78万5207人)と比べると、約5万8千人少なかった。

 1月から10月の累計数では前年同期比30・9%増の732万8300人となった。9月までの累計ですでに、1―10月の累計の過去最高を記録する好調ぶり。主要15市場のうちタイ、フランス、ドイツ、インドは10月単月で過去最高を記録。

 間宮理事長は11月24日の会見で「尖閣諸島沖事件の影響で中国の高い伸びが止まったが、過去最高を記録した08年の835万人を超えるのは間違いない。1千万人に近づけるよう最後まで全力を尽くす」と語った。

 方面別にみると、韓国は同47・8%増の19万3900人と、09年11月以降12カ月連続で高い伸びを続けている。ドイツはユーロ安にも関わらず、国内の好景気などを受け5月以降6カ月連続で2ケタの伸びを記録。また、10年の重点地域であるインド、ロシアも前年同月比20%を超える増加を記録している。

「中国への期待変わらない」、JNTO 間宮理事長

 日本政府観光局(JNTO、間宮忠敏理事長)は11月24日、会見を開き、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件後の中国人訪日旅行の現状や10月の訪日外客数について説明し、中国人観光客への期待が変わらないことなどを話した。

 9月の中国人訪日客数は、前年同月比39・3%増と好調を維持し、尖閣諸島沖事件の影響は国慶節休暇期間中も限定的であったが、10月は同1・8%の減少となった。JNTO中国事務所の調べで、国慶節休暇明け以降、中国各地で観光団体旅行の申し込みが昨年と比べ、減少傾向にあることを明かした。また、9月20日に通達された中国当局から地方旅行会社への訪日旅行の自粛を促す口頭指導については、その後動きはないが、現在、中国の旅行会社では訪日旅行のチラシなどを作り、展示していることを報告した。

 間宮理事長は「尖閣諸島沖事件の影響はあるものの、上海万博での日本ブースの盛況ぶりなど、中国人の日本への関心は依然高い。中国が最も訪日外客の拡大を期待できる市場であることに変わりはない」と今後も中国をインバウンドの柱として期待する考えを話した。また、中国へ過度に依存するリスクについては「中国が再拡大を期待できるが、韓国・台湾・中国・香港の4大市場を柱とする15市場での外客誘致に力を入れている」と中国への過度な依存については否定した。

 なお、10―11月には、今後の訪日旅行ツアーの造成や販売促進のため、中国各地の旅行会社を日本へ招請し、スノーレジャー商談会や訪日旅行スペシャリスト育成研修を実施した。11月18―21日には中国最大の旅行博の日本ブースで訪日旅行のPRを展開。12月1日からは訪日旅行取扱旅行会社招請事業を行うことを報告した。

台湾で観光と農産物PR、やまがた女将の会も参加

吉村知事(左から4人目)と参加した女将たち
吉村知事(左から4人目)と参加した女将たち

 山形県(吉村美栄子知事)は11月18―21日まで、台湾からの観光客誘致と県産農産物の販路拡大をはかるため、吉村知事自らトップセールスを行う観光ミッションを展開した。やまがた女将会(会長・佐藤洋詩恵日本の宿古窯専務)からも10人が参加、山形の魅力を伝えた。

 ミッションは19日に台北市のホテルで旅行会社ら45人を集め、吉村知事が観光説明を行ったほか、交流会では吉村知事と女将らが花笠踊りを披露、会場を大いに盛り上げた。夜には台北市観光電播局の脱宗華局長の招待で、同市で開催されている花博会場を視察。翌20日には山形の物産展が開催されている大葉「高島屋」でラフランスやりんごなどの農産物の販売に参加、最後に北投温泉に12月オープンする「加賀屋北投分館」を視察した。

 今回のミッションは吉村知事と和服姿の女将という女性ならではの目線で誘客し、その姿は現地の新聞でも紹介された。

温度差発電を公開、「環境にやさしい熱海」へ

齊藤市長(右)と武藤教授
齊藤市長(右)と武藤教授

 静岡県熱海市は、地域活性化政策「温泉イノベーション」の一環として取り組んでいる温度差を利用した発電のデモンストレーションを行った。会場は「日航亭大湯」で行われ、発電装置を開発した慶応大学環境情報学部の武藤佳恭(たけふじよしやす)教授が実験を公開した。

  「温泉イノベーション」は今年度の事業で、熱海市の資源を活用するため産官学で9月から本格的な事業展開をしている。齊藤栄熱海市長は「熱海市の観光客数は最盛期の半減。地域を活性化させる新しい発展のモデルとして熱海の資源である温泉を有効活用していく。将来的には公共施設から民間まで広げて、環境にやさしい熱海を目指す」と事業の意気込みを話した。

  発電装置は温泉旅館などで捨てていた温泉の排水などを利用して発電させる。発電効率の高いゼーベック素子を使い、温泉と水道水の温度差を利用する。実験ではLED(発光ダイオード)を点灯させた。温度差100度で10ワット、200度で19ワットが発電可能とされる。温度差があるほど発電力も増す。

  武藤教授はJR東日本などで設置された床発電などの開発者としても知られており、「床発電は人がいないとだめだが、人がいなくても身近な所にある温泉を利用して発電を実用化させたい」と述べた。

旅館軒数4万8967軒、ホテルに客室数抜かれる

 厚生労働省がまとめた2009年度の「衛生行政報告」によると、10年3月末現在の宿泊施設軒数(簡易宿泊施設、下宿を含む)は前年度比1・7%減の8万2954軒と減少。なかでも旅館は同3・7%減の4万8967軒と、1年間に1879軒減少しついに5万軒の大台を割り込んだ。一方、ホテルは86軒増加し、9689軒となった。客室数は初めてホテルが旅館を上回った。

 旅館の営業軒数は4万8967軒と、5万軒の大台を割った。近年は毎年1500―2千軒程度減少しており、この1年間も1879軒と2千軒近い旅館が減少した。

 1980年代に8万3226軒でピークを迎えたが、その後減少傾向に歯止めはかからない。

 客室数は79万1907室と、前年度の80万7697室から1万5790室減少。こちらも80万室の大台を割り込み、ついにホテルの客室数79万8070室に抜かれ、初めて逆転した。ホテルの客室数は前年度から1万7565室増加しており、旅館減少、ホテル増加の構図は依然と続いている。

 山小屋やユースホステル、カプセルホテルなどの簡易宿所は2万3429軒と、前年度に比べ379軒増えた。また、下宿は869軒で43軒の減少となった。

 都道府県別にみた旅館軒数は、静岡県が3316軒でトップだった。(2)北海道(2788軒)(3)長野県(2715軒)(4)新潟県(2354軒)(5)三重県(1784軒)――と上位5道県の順位に変動はなかった。以下10位までは、(6)福島県(1646軒)(7)栃木県(1489軒)(8)山梨県(1421軒)(9)兵庫県(1389軒)(10)千葉県(1385軒)となった。

 一方、ホテル軒数が多い都道府県別のトップ10は、(1)東京都(694軒)(2)北海道(668軒)(3)長野県(523軒)(4)兵庫県(410軒)(5)静岡県(365軒)(6)福岡県(362軒)(7)大阪府(357軒)(8)沖縄県(347軒)(9)神奈川県(336軒)(10)愛知県(306軒)――の順となった。