7企業・団体が受賞、「三陸鉄道」や「くまモン」

受賞者と久保観光庁長官(中央左)

≪観光庁長官表彰≫

 観光庁は10月1日、魅力ある観光地づくりや訪日外国人旅行客の誘致など、観光の振興と発展に貢献した個人や団体を表彰する「第5回観光庁長官表彰」を行った。今年は37の団体・個人の候補から、外部有識者による選考を経た「三陸鉄道」や「くまモン」など7つの企業・団体が受賞した。

 表彰式では、久保成人観光庁長官は各団体の震災復興や観光立国実現に向けた活動に触れ「観光振興、発展にお力添えを願いたい」と祝辞を贈った。

 岩手県の「三陸鉄道」は、震災後にいち早く取り組んだ復興事業や、連続テレビ小説「あまちゃん」に登場するお座敷列車北三陸号の運行など、東北全体のシンボルとして震災復興や観光復興に貢献した点が評価された。

 熊本県のイメージキャラクター「くまモン」は、ゆるキャラグランプリ優勝など高い知名度を誇り、海外でもPR活動に参加するなど、国内外で行った九州への観光客誘致での活躍が受賞につながった。

 受賞者は次の通り。

 【国内観光振興】三陸鉄道▽巻機山景観保全ボランティア―ズ【国際観光振興】Apple Vacations&Conventions社(マレーシア)【国内・国際観光振興】阿波おどり振興協会・徳島県阿波踊り協会▽岸和田市(大阪府)▽くまモン(熊本県イメージキャラクター)

伊勢神宮・出雲大社、遷宮イヤーでにぎわい

伊勢神宮・内宮

≪伊勢・島根で観光客大幅増≫

 60年ぶりに平成の大遷宮を迎えた出雲大社、20年に一度の式年遷宮となる伊勢神宮。西日本では今年、2大神事が重なり、遷宮イヤーの盛り上がりを見せている。近年のパワースポットブームもあり、若い世代の関心も高まっているという両遷宮。周辺地域の状況を探った。

【伊勢神宮

≪参拝客1330万人に、過去最多の見込み≫

  今年、20年に一度の「式年遷宮」を迎える伊勢神宮。10月上旬に、クライマックスとなる神体を新宮へ移す「遷御の儀」が行われ、伊勢志摩地域は最高潮の盛り上がりを見せている。伊勢市は9月末、伊勢神宮の内宮・外宮を合わせた参拝客は当初1千万人としていたものを、1330万人に上方修正した。1896(明治29)年の統計以降、最多となる見込み。

 同市によると、今年1月から8月末までの伊勢神宮への参拝客数は、内宮が539万5727人、外宮が295万7883人で合わせて835万4610人。統計以降最多だった2010年の882万8851人に迫る勢いだ。10月頭に式年遷宮の最大行事「遷御の儀」が行われ、今後さらに参拝客増加に拍車がかかりそうだ。

 前回の式年遷宮があった1993年の参拝客数は、838万7124人。今回の式年遷宮で参拝客が急増している要因として、外宮の参道に飲食店や土産物店がここ数年で出店し、外宮の参拝客が増えたこと、メディアの露出などが考えられるという。

おかげ横丁

 伊勢神宮・内宮のお膝元にある、おはらい町内おかげ横丁(伊勢市)の今年1月から8月までの観光客は、前年同期比1・3倍の約410万人と好調。おかげ横丁を運営する伊勢福によると、今年の観光客数は、1993年のオープン以来最多の550万人を見込んでいるという。

 鳥羽市の宿泊施設や主要観光施設も、軒並み好調だ。鳥羽の温泉宿61施設で構成する「鳥羽温泉振興会」によると、今年1月から8月までの温泉利用者数は、前年同期比13%増の87万1千人。鳥羽市に訪れる観光客は、これまで中部・東海・関西圏が多かったが、今回の式年遷宮の特徴として、首都圏を中心とした関東の客が増えているという。鳥羽市のある宿の関係者は「関東からのお客様はこれまで2―3割だったのが半数を占めるようになった。テレビ番組などで伊勢志摩の特集を見たという話をよく聞きます」と話す。また、近年のパワースポットブームで、女性の願いを必ず一つ叶えるといわれる「石神神社」(鳥羽市相差)なども人気があり、20―30代の女性も増えているという。

 式年遷宮後の集客対策について、鳥羽市観光協会会長の吉川勝也氏(サン浦島代表取締役)は、「今年から、伊勢・鳥羽・志摩3市の観光協会が集まり、話し合いを行っている。伊勢志摩地域として地域のポテンシャルを上げ、最寄の市町の賛同を得ながら、持続的にできる具体策を考えていきたい」と話している。

 また、鳥羽水族館では、今年1月から8月までの入場者が前年同期比1・2倍の約64万6千人。同施設関係者は、「『変な生きもの研究所』など、新しいスペースもスタートしていることもあるが、例年より客は多い。式年遷宮の効果も考えられる」と話す。

 志摩市でも式年遷宮の集客効果が出ている。鳥羽や賢島のクルージングなどを運営する志摩マリンレジャーによると、賢島港から英虞(あご)湾などを巡る「賢島エスパーニャクルーズ」は、今年1月から8月までの乗客が5万9881人と前年同期比40・6%増。秋以降も、繁忙日は小型船(80人定員)運航の便を大型船(250人定員)に切り替えるなど対応するという。

多くの参拝客でにぎわう出雲大社

【出雲大社】

 島根県出雲市の出雲大社の60年に1度の遷宮効果で、県内の観光客数が大幅に増加している。経済波及効果は約300億円とみられている。

 出雲大社で5月10日、修造が完了した御本殿に大国主命がお還りになる「本殿遷座祭」が行われた。平成の大遷宮のメインとなる神事で、同日から6月9日までの1カ月間の参拝客数は75万2千人に上り、当初見込みの25%増となった。

 団体バスは本殿遷座祭から約1カ月間は毎日120―130台が押し寄せ、その後微減したものの現在でも1日平均70―80台に上る。島根県松江市と広島県三次市を結ぶ松江自動車道の3月開通で、広島方面からの個人客も増加し、マイカー用の駐車場は毎日のように渋滞の列が伸びる。連動するように神門通りは多くの観光客で溢れ、一部の食事施設などは前年比3―4倍の売り上げという。

 出雲大社の年間参拝客数は2011年が247万9千人、12年が348万3千人で、今年は倍増が期待される。

 出雲観光協会の小野篤彦事務局長は「おそらく650万人から700万人あたりになるだろう。近年のパワースポットブームなどもあり、女性客が目立つ。本殿遷座祭のときのようなピークは過ぎたが、現在も勢いは衰えていない」と話す。

ご縁横丁

 県内主要観光施設の入込みも伸びている。出雲大社に隣接する「古代出雲歴史博物館」は、本殿遷座祭に合わせた特別展「出雲大社展」を実施したことから、5月は前年同月比203・1%増の7万2546人、6月は同270・2%増の5万4949人を集めた。

 松江市内の観光施設では、松江城や堀川遊覧船などが好調。5月以降は毎月3―5割増で推移。なかでも、「鏡の池占い」で人気を集める八重垣神社の5月の参拝客数は前年同月比119・9%増の4万6132人。単月として松江城登閣者数(4万4864人)を抜き、パワースポットめぐりを楽しむ女性客の姿が鮮明になった。

 出雲大社から車で約30分の県内最大の温泉地、玉造温泉もにぎわっている。同温泉の5月の宿泊者数は6万2666人で前年比36・4%、6月は6万4500人で同73・4%とそれぞれ大幅に増加。夏場はさらに集客したとみられ、8月の1カ月間で1万人以上を集客した旅館もあったという。ある旅館関係者は「年内はどこもほぼ満室状態。毎日、予約を断るのに大変です」と嬉しい悲鳴を上げる。

 松江しんじ湖温泉も絶好調だ。4月の宿泊者数は1万9179人で前年比80・3%、5月は2万4908人で同91・7%、6月は2万2157人で同137・3%とそれぞれ増加した。予約で溢れた分は、隣接する鳥取県の皆生温泉やはわい温泉にまで波及しているという。

 日本銀行松江支店によると、13年の観光需要増加による県内への経済波及効果は300億円弱に達すると試算し、過去10年間のNHK大河ドラマの舞台となった各県の経済波及効果の平均(約200億円)を大きく上回るとしている。13年の県全体の宿泊者数は、前年実績を51万人上回る382万人と予想。日帰り客も303万人多い2890万人を見込む。

 県の12年観光客数は2918万1357人。県によると今年4―6月は前年同期比で既に3割以上アップしているという。

「100選」の中間集計 1回目

 「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」。39 回目の投票が今年も10月1日から始まった。締め切りは10月末日。全国の旅行会社からの投票に基づき、「ホテル・旅館100選」と「観光・食事、土産物施設100選」および「優良観光バス30選」をそれぞれ選出する。「ホテル・旅館100選」の中間集計の1回目を紹介する。
(順不同)

 【北海道】
あかん湖鶴雅リゾートスパ鶴雅ウィングス▽第一滝本館▽登別石水亭▽知床第一ホテル▽知床グランドホテル北こぶし▽十勝川温泉第一ホテル▽観月苑▽ニュー阿寒ホテル▽ホテル鹿の湯花もみじ▽知床プリンスホテル風なみ季

 【青森県】
浅虫観光ホテル▽ホテルグランメール山海荘▽星野リゾート青森屋

 【岩手県】
結びの宿愛隣館▽ホテル森の風鶯宿▽浄土ヶ浜パークホテル▽ホテル志戸平▽滝の湯いつくし園▽ホテル対滝閣▽愛真館▽南部湯守の宿大観

 【宮城県】
ホテル松島大観荘▽伝承千年の宿佐勘▽鷹泉閣岩松旅館▽松島ホテル一の坊▽篝火の宿緑水亭▽鳴子観光ホテル▽ホテルニュー水戸屋▽ホテルきよ水▽名湯の宿鳴子ホテル▽ゆづくしsalon一の坊

 【秋田県】
男鹿観光ホテル▽湯瀬ホテル▽男鹿グランドホテル▽秋田温泉さとみ▽妙の湯 

 【山形県】
日本の宿古窯▽萬国屋▽蔵王国際ホテル▽展望露天の湯有馬館▽たちばなや▽八乙女▽月岡ホテル▽上杉の御湯御殿守▽ほほえみの宿滝の湯▽葉山館▽河鹿荘▽仙峡の宿銀山荘▽游水亭いさごや▽蔵王四季のホテル▽深山荘高見屋▽いきかえりの宿瀧波▽おおみや旅館▽亀や

 【福島県】
ホテル華の湯▽匠のこころ吉川屋▽八幡屋▽丸峰観光ホテル▽大川荘▽庄助の宿瀧の湯▽風望天流太子の湯山水▽スパリゾートハワイアンズ▽四季彩一力▽旅館玉子湯

 【茨城県】
五浦観光ホテル別館大観荘▽思い出浪漫館▽筑波山江戸屋

 【栃木県】
あさや▽花の宿松や▽鬼怒川グランドホテル夢の季▽きぬ川ホテル三日月▽鬼怒川温泉ホテル▽日光千姫物語▽宿屋伝七▽ホテルエピナール那須▽ホテルニュー塩原▽小槌の宿鶴亀大吉▽湯ったりの宿松楓楼松屋

 【群馬県】
草津温泉ホテル櫻井▽四万やまぐち館▽源泉湯の宿松乃井▽舌切雀のお宿磯部ガーデン▽福一▽ホテル木暮▽旅館たにがわ▽万座温泉日進舘▽猿ヶ京ホテル▽別邸仙寿庵▽水上館

 【千葉県】
満ちてくる心の宿吉夢▽鴨川館▽鴨川ホテル三日月▽鴨川ヒルズリゾートホテル

 【東京都】
水月ホテル鴎外荘

 【神奈川県】
海石榴▽箱根吟遊▽強羅花壇▽ホテル河鹿荘

 【山梨県】
銘石の宿かげつ▽ホテル鐘山苑▽ホテルふじ▽若草の宿丸栄▽全館源泉かけ流しの宿慶雲館▽湖山亭うぶや▽秀峰閣湖月▽下部ホテル▽華やぎの章慶山▽富士野屋夕亭

 【長野県】 
ホテル翔峰▽明神館▽旅館花屋▽上林ホテル仙壽閣▽藤井荘▽街道浪漫おん宿蔦屋▽ホテル白樺荘▽立山プリンスホテル▽緑翠亭景水▽ホテル木曽路▽ホテルやまぶき▽一茶のこみち美湯の宿▽ぬのはん▽白樺リゾート池の平ホテル▽RAKO華乃井ホテル▽白船グランドホテル▽双泉の宿朱白▽ユルイの宿恵山▽別所観光ホテル

 【新潟県】 
白玉の湯泉慶・華鳳▽ホテル清風苑▽水が織りなす越後の宿双葉▽夕映えの宿汐美荘▽風雅の宿長生館▽四季を彩る湯沢グランドホテル▽ゆもとや▽四季の宿みのや▽ホテル小柳▽ホテル摩周▽赤倉ホテル▽岬ひとひら▽大観荘せなみの湯▽ホテル摩周

 【静岡県】
稲取銀水荘▽堂ヶ島ニュー銀水▽いなとり荘▽季一遊▽ホテル九重▽坐漁荘▽季一遊▽ホテルカターラ福島屋▽柳生の庄▽観音温泉▽稲取東海ホテル湯苑▽桂川▽ホテル伊豆急▽ホテルサンハトヤ▽堂ヶ島温泉ホテル▽ホテルアンビア松風閣▽ホテルウェルシーズン浜名湖

 【愛知県】
旬景浪漫銀波荘▽ホテル東海園▽ホテル竹島▽源氏香▽伊良湖シーパーク&スパ

 【三重県】
戸田家▽風待ちの湯福寿荘▽ホテル花水木▽サン浦島悠季の里▽鳥羽シーサイドホテル

 【岐阜県】
水明館▽高山グリーンホテル天領閣▽本陣平野屋花兆庵▽岐阜グランドホテル▽穂高荘山月▽ひだホテルプラザ▽ホテルくさかべアルメリア

 【富山県】
延楽▽金太郎温泉▽宇奈月国際ホテル▽ホテル立山▽延対寺荘▽宇奈月グランドホテル▽つるぎ恋月

 【石川県】
加賀屋▽瑠璃光▽ゆのくに天祥▽日本の宿のと楽▽法師▽辻のや花乃庄▽花紫▽お花見久兵衛▽茶寮の宿あえの風▽花つばき▽たちばな四季亭▽ゆ湯の宿白山菖蒲亭

 【福井県】
まつや千千▽グランディア芳泉

 【滋賀県】
暖灯館きくのや▽びわ湖花街道▽里湯昔話雄山荘▽湯元舘

 【京都府】
松園荘保津川亭▽おもてなしの宿渓山閣

 【兵庫県】
ホテルニューアワジ▽ホテル金波楼▽佳泉郷井づつや▽淡路インターナショナルホテルザ・サンプラザ▽西村屋ホテル招月庭▽有馬グランドホテル▽朝野家

 【奈良県】
さこや

 【和歌山県】
かつうら御苑▽ホテル中の島▽ホテル浦島▽白良荘グランドホテル

 【鳥取県】
皆生つるや▽華水亭▽三朝館▽依山楼岩崎▽皆生グランドホテル天水▽三朝薬師の湯万翆楼

 【島根県】
玉造グランドホテル長生閣▽曲水の庭ホテル玉泉▽佳翠苑皆美▽白石家

 【岡山県】
湯郷グランドホテル▽鷲羽ハイランドホテル▽八景▽清次郎の湯ゆのごう館

 【広島県】
ホテル鴎風亭▽景勝館漣亭▽みやじまの宿岩惣

 【山口県】
大谷山荘▽白木屋グランドホテル▽萩観光ホテル▽西の雅常盤▽錦帯橋温泉ホテルかんこう

 【香川県】
湯元こんぴら温泉華の湯紅梅亭▽琴平グランドホテル桜の抄▽ことひら温泉琴参閣▽喜代美山荘花樹海

 【徳島県】
和の宿ホテル祖谷温泉

 【愛媛県】
大和屋本店▽道後舘▽道後プリンスホテル

 【高知県】
土佐御苑▽城西館▽三翠園

 【佐賀県】
和多屋別荘▽萬象閣敷▽大正浪漫の宿京都屋

 【長崎県】
東園▽ゆやど雲仙新湯▽雲仙宮崎旅館▽雲仙福田屋

 【熊本県】
清流山水花あゆの里▽杖立観光ホテルひぜんや▽湯峡の響き優彩

 【大分県】
九重悠々亭▽杉乃井ホテル▽ホテル白菊▽由布院玉の湯▽花菱ホテル 

 【宮崎県】
酒泉の杜綾陽亭

 【鹿児島県】
ホテル秀水園▽指宿白水館▽霧島山上ホテル▽指宿海上ホテル▽霧島国際ホテル▽指宿フェニックスホテル▽霧島いわさきホテル▽城山観光ホテル 

2期で10社を認証、ツアオペ品質認証制度(JATA)

 日本旅行業協会(JATA)は10月1日、ツアーオぺレーター品質認証制度の第2期申請で、新たに10社を認証したと発表した。9月6日に開いた品質認証審査委員会(委員長=松本大学・佐藤博康教授)で決定した。

 同制度は、インバウンド事業に携わるツアーオペレーターの品質や旅行商品の質を上げ、訪日旅行者の拡大をはかることを目的に今年度から開始したもので、1期は23社を認証している。年2回の申請制度で、次回の3期申請受付は2014年1月6―31日まで。

 今回認証を受けたのは次の各社(登録順)。

 農協観光▽トッパントラベルサービス▽JTB北海道▽東武トラベル▽JTB東北▽アサヒホリディサービス▽ジャンボツアーズ▽エヌオーイー▽小田急トラベル▽日通旅行

8割増収、LCC3社は赤字、国内航空18社の経営調査(帝国データバンク)

2012年は“LCC元年”と言われ、Peach Aviation(ピーチ・アビエーション)やジェットスター・ジャパン、エアアジア・ジャパンが就航開始し、航空業界の競争は激化している。帝国データバンクはこのほど、国内中堅・新興航空会社18社の経営実態調査をまとめた。それによると、12年度の収入高が前期と比較可能な15社をみると、増収は12社で全体の80%を占めた。

また、12年度の損益が判明している17社を見ると、黒字が13社(構成比76・5%)。第3セクター方式の運営を行っている琉球エアーコミューターや、天草エアラインも黒字となっている。一方、赤字は4社(同23・5%)。11年3月に日本航空(JAL)グループから離脱した北海道エアシステムは、北海道を筆頭株主として再スタートを切ったが、重大事故などのトラブルが重なり2期連続の赤字となった。

なお、12年に就航を開始したLCC3社はいずれも赤字を計上し、損益面では厳しいスタートとなっているが、関西国際空港を拠点とするピーチ・アビエーションは収入高約143億8700万円と「価格面でシビアな関西圏の利用者を獲得」(帝国データバンク)したが、成田空港を拠点とする2社は苦戦している。なお、エア・アジアジャパンは11月からANAホールディングスのもと社名・ブランド名を「バニラ・エア」に一新、再スタートを切る。

【耐震問題】全旅連・前会長和多屋別荘社長 小原 健史氏に聞く

佐賀県・嬉野温泉 和多屋別荘社長
小原 健史氏

 1981(昭和56)年5月以前に建築され、5千平方メートル以上、3階建て以上の旅館・ホテルは、15年12月末までに耐震診断が義務付けられた。大型旅館は耐震診断にも数億円を要すため、“存亡の危機”となっている。耐震問題に対し、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の前会長・特別顧問として、業界のさまざまな活動を行っている小原健史氏に耐震問題について聞いた。小原氏は、自館のタワー館の解体も視野に入れ、小規模旅館を一から作り運営していく構想も語った。
【増田 剛】

≪タワー館解体も視野に、小規模旅館の“海外進出”構想≫

 ――改正耐震改修促進法の流れを見ていくと、今年2月21日に全旅連理事会で、国土交通省の若手官僚から初めて説明があり、その後、5月22日の参議院での法案可決までわずか3カ月という短期間での出来事でした。

 旅館・ホテル業界の意見聴取もなければ、パブリックコメントも今ごろ(8月19日―9月17日)募集しています。

 私も全旅連青年部時代から、全旅連会長時代を含め、特別地方消費税撤廃運動をはじめ、長年旅館業界が直面するさまざまな政治的な課題に対して活動を行ってきましたが、今回のような性急な法案の成立の仕方は初めてで、大変驚きもしました。

 しかし、後になって色々と調べてみると、悔やまれることもあります。1995年の阪神・淡路大震災を教訓に、同年12月25日に耐震改修促進法が施行されました。そのなかに学校や病院、旅館・ホテルなど不特定の人々が利用する施設で床面積1千平方㍍以上、3階建て以上で、1981(昭和56)年5月以前の建築物を対象に「新耐震基準に満たない場合は、改修につとめる努力義務がある」という一文が書かれていました。それにも関わらず、後に現状のようなかたちで耐震問題が再び現れると想定しなかったのは、私たち旅館業界の脇が甘かった部分だと反省しています。

 2011年3月11日の東日本大震災発生後、全旅連の佐藤信幸会長の依頼で私も本部に駐在し、1泊3食5千円で被災者を会員旅館が受け入れるなどの対応に追われていたのですが、今から考えると、あのときに、我われ旅館業界が耐震促進改修法の改正のことに気づき、何らかの政治運動をしておくべきだったのだろうと思います。

 今回の改正耐震改修促進法の対象規模が「5千平方㍍以上」となっているのは、国土交通省が予算計上した総額100億円の補助金を、病院や百貨店や旅館・ホテルの民間施設の件数などで割り戻した結果、はじき出された数字だと認識しています。

 仮に、来年度にも100億円規模の補助金がつけば、次は3千平方㍍以上、その次は1千平方㍍以上と対象施設の基準は広がっていくのは間違いありません。

 耐震改修促進法の根幹を成す「人命尊重」に規模の大小は関係なく、阪神・淡路大震災後の耐震改修促進法に1千平方㍍以上という数字が出ている以上、免責に関してはいずれこの水準までいくことが予想されます。

 ――耐震診断・改修に対する補助金が各都道府県、市町村によってまちまちの状態になっています。

 耐震診断と改修工事では、国、地方公共団体、事業者の負担率が数種類想定されますが、基本的に地方公共団体が補助金など支援策を整備しなければ、事業者負担は最大88・5%というとても厳しいものになります。

 「どうして国が県や市に補助金を出すように命令しないのか」と、全旅連の佐藤会長とともに自民党の石破茂幹事長と面談した際に問い質しましたが、「それはできない」と明言されました。その後、国交省の審議官にも「法律を作り、補助金制度も作っているのに、都道府県で補助金の出すところ、出さないところがあるのはなぜか」と尋ねると、「憲法に規定されているから国からは命令できない」と言われました。憲法にどのように規定されているのか、さまざまな勉強会を通じて調べていますが、 旅館の存立を揺るがすような「耐震問題」という大きな問題で、地域によって格差があるというのは、全旅連や日本旅館協会の業界活動が分断されかねない問題だと思っています。

 規模についても、たとえば耐震診断に数億円をかけた大規模旅館は対象外の小規模旅館と格差が生れ、地域でも、規模の大小でも業界活動が分断されることを恐れます。また、格安の全国チェーンのビジネスホテルなどはほとんどが新築なのでその施設の優位性は揺るがず、格差が広がると思います。

 さらに、2015年12月末まで耐震診断を完了しなければならず、「耐震非適格施設の公表」は消費者保護として国会の審議で重要な部分となっているので、その公表は避けられず、耐震適合マークをもらえなければ旅行会社やネットエージェントとの契約も難しく、修学旅行の受入れも困難となり、実際に営業ができなくなると思います。

 ――今できることは、各都道府県組合がそれぞれの知事や市長、議会などに理解を求める陳情を行うということですか。

 私の地元・佐賀県では、嬉野市議会が県知事への要望を決議してもらいました。

 しかし、人命尊重という錦の御旗には抗うことができません。災害時にはハードだけではダメで、ソフト面での減災対策も必要だと思います。旅館として、防災やレスキューのプロによる講習・訓練を受けることにより、現在補助金がつかない場合にも何らかのバックアップ措置が認められることを運動することも考えねばなりません。何もしないで陳情だけでは、なかなか政治は動きません。旅館業界も努力する姿勢を見せることが大事だと思います。

 ――和多屋別荘は耐震診断の対象施設ですか。

 12階建ての和多屋別荘タワー館は約9千平方メートルあり、施工が1977(昭和52)年なので、逃れようがないですね。おそらく耐震改修工事で3―4億円くらいはかかると思います。

 安倍政権の投資減税措置として耐震改修工事の固定資産税の軽減を行う方針と報道されていますが、「それでも耐震改修をやらない病院や旅館などの業種は業界を再編して強い国づくりを進める」とまで新聞記事には書いてありました。

 もしそれが国策であるとするならば、私はもともと「旅館の経営と資本の分離をしてもいい」と考えるので、耐震診断で“不適合”となれば、いっそ、12階建ての和多屋別荘のタワー館の解体を考えてもいいのかもしれません。

 佐賀県の古川康知事は県の旅館組合の陳情に対し「絆創膏を貼るような耐震問題の解決ではなく耐震など何の瑕疵もない温泉地づくりを行い、海外でもPRできる街づくりをしましょう」と言われました。

 このことは、例えば、佐賀県の観光連盟が近隣の韓国や中国、台湾、東南アジアなどに行ってPRする際、佐賀県を代表する嬉野温泉や、武雄温泉は耐震や温泉の集中管理だけでなく、エネルギーの問題なども総合的に対応したスマートシティ化したインフラの整備も完備しています」と胸を張り、そのうえで「情緒豊かな素晴らしいおもてなしの宿があります」と、アピールすべきではないかと考えるようになりました。

 国や都道府県、市町村の考え方の大きな流れもそのようになっていると思います。

 ――これからの旅館のあり方についてどのような考えをお持ちですか。

 定住人口が減るので旅館・ホテルが観光でリードし、交流人口を増やして地域を豊かにする方向に舵を切るべきだと私はまじめに考えています。国や地方と一緒になって、旅館のあり方を模索すべきだと思っています。

 旅館が農商工連携事業の国の予算を使うには、地元農家と組んで定期的に旅館が農産物を購入する取り組みなどは有効です。農林水産省の約1800億円の一部を取り込むことは可能だと思います。また、旅館の海外進出など、日本文化の輸出に絡めると経済産業省のクールジャパン事業の予算なども活用できます。

 現状をみると、団体旅行は減少しています。大型旅館は個人客への対応に一生懸命取り組んでいますが、口コミサイトの評価が満点に近づくのは難しい状況にあります。

 嬉野温泉は私が大学を卒業した約40年前は80軒ほどありましたが、今は約30軒に減っています。「お客様から本当に自分の宿が選ばれているのか」と考えると、忸怩たる思いもあります。

 これからの時代の主流は「小規模旅館」だと思います。やる気のある若い経営者たちは新しい経営スタイルを模索し、種々の金融機関やファンドなどと組んで、次々と事業を拡大していくべきだと思います。私にも、東アジアやヨーロッパの現地のファンドや日本の投資家から「一緒に旅館を一から作り、理想的な旅館の企画と運営をしてほしい」という打診があります。宝石のような小規模の日本旅館を、将来的にはアジアや欧州、そして九州各県でも運営したいという夢を持っています。そのためには人の教育が必要だと思います。私の旅館の女将が教育係として人材育成をしていくことも大切な構想の一つですね。

「ピンクリボンのお宿」新冊子、加盟宿のお風呂情報紹介

14年度版の新冊子

 旅行新聞新社が事務局を務める、ピンクリボンのお宿ネットワーク(会長=畠ひで子・匠のこころ吉川屋女将)は10月4日、加盟するお宿情報をまとめた冊子「ピンクリボンのお宿」2014年度版を発行した。

 冊子では加盟宿のお風呂や温泉情報を中心に、「洗い場の間仕切り」「貸し切り風呂の対応」「脱衣所の目隠しの有無」「入浴着の着用可能」などの特記事項や、ピンクリボンプラン、桜井なおみさんのコラム「旅館の楽しみ方」のほか、巻末にクーポンを掲載している。

 旅のガイドブックとして持ち運びが便利なA5判サイズの、カラー68ページで構成。全国の病院や加盟宿などでフリーペーパーとして配布し、一般の希望者にも送付を行う。詳細は同ネットワークホームページ(http://www.ryoko-net.co.jp/modules/pink_oyado )から。

今年訪日外客数1000万人達成へ、観光関係者250人が集い“一致団結”

菊間潤吾JATA会長が乾杯の音頭をとった

 観光庁は10月1日、国土交通省内のニコラスハウスで「訪日外国人旅行者1千万人に向けての集い」を開き、太田昭宏国土交通大臣をはじめ、歴代観光庁長官、観光業界を代表する団体トップら関係者約250人が一堂に会し、一致団結して今年の訪日外客数1千万人達成へ力を合わせていくことを確認した。

 今年はビジット・ジャパン事業がスタートし、観光立国の実現に向けた取り組みが本格化して10周年、また、観光庁発足5周年を迎える節目の年であり、悲願である1千万人達成へ関係省庁との連携のもと、ビジット・ジャパン事業を可能な限り年内に前倒しするほか、低迷する中国からの訪日客回復などに取り組んでいく。

 久保成人観光庁長官は「1千万人達成は999万人と違い、数字以上の重みがある」と話し、1千万人達成に向け、関係者に協力を求めた。

旅行業法見直しへ、旅行産業研究会が始動(観光庁)

第1回旅行産業研究会

 観光庁はこのほど、旅行産業研究会を立ち上げ、9月30日に第1回の研究会を開いた。同研究会は4月に取りまとめられた「観光産業政策検討会提言」を受け、今後の旅行産業の在り方や現行諸制度の見直しの方向性、旅行業の組織的な安全マネジメントの構築などについて、有識者による議論を行う。

 事務局の観光庁観光産業課の石原大課長は、「日本の観光産業への危機感から立ち上げた観光産業政策検討会で出た課題について、この先10年を見据えた処方箋になるよう取りまとめたい」と語った。同研究会では、旅行産業に特化した内容となるが、旅行産業に関わりの大きい宿泊産業や運輸業も対象となる。第1回研究会の詳細は次号以降で紹介予定。

 旅行産業研究会メンバーは次の各氏。

 【座長】山内弘隆(一橋大学大学院商学研究科教授)【委員】植竹孝史(全国旅行業協会試験研修実務小委員会委員長、関東観光社代表取締役)▽神山一彦(楽天トラベル事業戦略部副部長事業開発グループマネージャー)▽上山康博(百戦錬磨社長)▽神田泰寿(プリンスホテル営業部次長)▽小林天心(亜細亜大学経営学部ホスピタリティ・マネジメント学科教授、観光進化研究所代表)▽齊藤茂行(明神館代表取締役)▽佐々木優(ジェイティービー法務室長)▽佐々木幸孝(適格消費者団体・認定NPO法人消費者機構日本常任理事)▽立身政廣(アイディツアーズサウスパシフィック代表取締役、日本海外ツアーオペレーター協会代表理事)▽原優二(日本旅行業協会理事法制委員会委員長、風の旅行社代表取締役)▽増田悦子(適格消費者団体全国消費生活相談員協会専務理事▽三浦雅生(五木田・三浦法律事務所弁護士)

No.353 加速する自治体PR - 今年は「自治体PR元年」

加速する自治体PR
今年は「自治体PR元年」

 あらゆる地域間競争が激化するなか、全国の都道府県や市町村などの自治体はPRに力を入れる。自治体PRを数多く手掛けるオズマピーアール営業開発部地域ブランディングチーム部長の名和佳夫氏は今年を「自治体のPR元年」と位置付ける。また、8月には市町村や民間団体で構成する「シティプロモーション自治体等連絡協議会」(神保国男会長)が発足し、市町村単位での売り込みも目立ち始めた。加速する自治体PRについて紹介する。

【飯塚 小牧】

“もっと地域の自慢を”、中長期のPR計画が重要

 ■自治体のPR元年

 今年10月で50周年を迎えたオズマピーアール(境信幸社長)は、国内のパブリック・リレーションズ(PR)会社の先駆けといえる。そのなかで、2012年度から立ち上がったのが「地域ブランディングチーム」だ。部長の名和佳夫氏を中心に、15人のメンバーが在籍し、数々の自治体のPR活動を支える。

 

※ 詳細は本紙1520号または10月18日以降日経テレコン21でお読みいただけます。