訪日事業の執行機関に、海外企業と直接契約も可能(JNTO)

松山良一JNTO理事長(左)と山口由美観光庁次長
松山良一JNTO理事長(左)と山口由美観光庁次長

 日本政府観光局(JNTO、松山良一理事長)は4月1日、これまで観光庁が担ってきた訪日プロモーション事業の新たな執行機関としてスタートを切った。同日開いた会見で松山理事長は、JNTOが執行機関となる利点として、現地目線でのプロモーション実施や、現地ニーズに対応した迅速な意思決定をあげ、海外事務所でのこれまで蓄積してきたネットワークを最大限に生かした効果的なプロモーションに尽力していく。

 ビジット・ジャパン(VJ)事業はこれまで、観光庁が事業実施主体、JNTOが監督役として行ってきたが、今後はJNTOが事業実施主体も担い、海外の民間事業者との直接契約もできるようになる。14年度補正予算事業からすでにJNTOが執行機関を担っていたが、4月から正式に新体制となる。

 松山理事長は「JNTOが執行機関となることで、より外国人目線を重視したプロモーションや、現地ニーズに対応した迅速な意思決定が可能となる」と語り、人材育成の観点では「観光庁と比べ異動が少なく、現地で長期間業務に就けるので、よりノウハウの蓄積ができる」とした。観光庁の山口由美次長は、「JNTOにはインバウンドの牽引役としてさらなる期待をしている。観光庁とも適度な緊張感を持ちつつ連携してインバウンドを推進していきたい」と期待を述べた。

 JNTOは組織体制も改変し、内部統制や契約管理体制を整備するため監査室を設置。また、より戦略的に訪日プロモーション事業を実施するためインバウンド戦略部を新設し、データを重視したマーケティングのための調査・コンサルティンググループ、プロモーションの連携を担う誘致戦略グループ、受入環境の整備を促進する受入対策グループ、賛助団体への情報提供を行う会員サービスグループを置いた。4月から人員を13人補強し、海外事務所やインバウンド戦略部などへ重点配分した。

 なお、小堀守統括役が理事に昇格。新役員体制は次の通り。

 【理事長】松山良一【統括理事】加藤隆司(全体統括・経営管理部担当)
 【理事】山崎道徳(インバウンド戦略担当)▽小堀守(海外プロモーション部・コンベンション誘致部担当)
 【監事】久松完(常勤)▽大塚美智子(非常勤)

新たに6社を認定、ツアオペ品質認証制度

 日本旅行業協会(JATA)は4月1日、インバウンド事業に携わるツアーオペレーターの品質を認証するツアーオペレーター品質認証制度の第5期申請で、品質認証審査委員会(委員長=松本大学教授・佐藤博康氏)が新たに6社を認証したと発表した。現在の認証会社は計45社。

 今回認証を受けたのは、ワールド航空サービスとジャルパック、日本旅行東北、日本旅行沖縄、ティ・エ・エス、ポラリスジャパン。なお、4月1日付の東武トラベルとトップツアーの合併で、品質認証制度の登録会社は東武トップツアーズとなっている。

 同制度は年1回の申請制度で、次回6期の申請受け付けは2016年1月1―31日。審査結果は4月1日に発表予定。

わずか4分で完売、コンビニ販売のプレミアム宿泊券(鳥取県)

ポスターに「完売御礼」
ポスターに「完売御礼」

 鳥取県は4月1日、国の地方創生向け交付金を活用したプレミアム付き宿泊券を、全国展開する大手コンビニエンスストア(セブン―イレブン、ローソン、ファミリーマート、サークルK・サンクス、ミニストップ)の約4万9千店舗に設置している専用端末で売り出した。

 県によると、今回の交付金にともない、大手コンビニで宿泊券を発売したのは鳥取県発行分が全国第1号になる。

 県内宿泊施設(ホテル・旅館・民宿など計163軒)での宿泊代や土産物購入などに使える額面1万円のプレミアム宿泊券1万4千枚を半額の5千円で限定販売したところ、わずか4分で完売した。県担当者は「事前告知の段階から電話での問い合わせも多かったので、手応えはあったが4分で売り切れるとは想定外だった」(森谷邦彦文化観光スポーツ局長)と、うれしい悲鳴を上げた。鳥取の魅力に加え、高いプレミアム率も、瞬く間の売り切れにつながった。今後追加発行の予定はないという。

プレミアム宿泊券の見本
プレミアム宿泊券の見本

 プレミアム宿泊券の利用期間は4月13日チェックイン分から11月1日チェックアウト分まで。1泊につき、1人あたり2枚まで(額面2万円)を上限とし、連泊や複数名で利用することもできる。

 県は同日正午から、鳥取県出身で地元選出の石破茂衆議院議員に、実際にコンビニで体験購入してもらいPRする予定だったが、完売のため急きょ中止となった。

今年度2カ所認定へ、ふるさとオンリーワンのまち

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 NPO法人ふるさとオンリーワンのまち(津田令子理事長)の15年度総会が3月26日、東京都内で開かれ、今年度はふるさとの素晴らしさを再認識し、日本を元気にしていくための事業「ふるさとオンリーワンのまち」として2カ所程度認定するほか、セミナー事業などに取り組むことを確認した=写真。

 14年度の「ふるさとオンリーワンのまち」認定事業では、世界遺産“日光の社寺”の観光ガイドを350年以上継続している「堂者引き」日光殿堂案内協同組合を第3号、東京・向島や神田、浅草など全国の料亭や芸妓文化を保護・育成する「界隈を勝手に応援する協議会」連合会を第4号、「ふたつのアルプスが見えるまち」南信州・飯島町がもたらす自然の恵みを活かしたまちづくりに取り組む長野県・飯島町観光協会を第5号として認定した。

 津田理事長は「『ふるさとオンリーワンのまち』の認定も5つになった。もっと我われの活動が認知されるよう、ホームページの充実や、ラジオなどを活用したPR事業なども展開しながら、会員拡大にも積極的に取り組んでいきたい」と語った。

第2回科学的旅館・ホテル経営フォーラム、6月16、17日 東京・秋葉原で開催

サービス産業革新推進機構、旅行新聞新社が共催

 サービス産業革新推進機構(内藤耕代表理事)と旅行新聞新社(石井貞徳社長)は6月16、17日の2日間、東京・秋葉原の富士ソフトアキバプラザで第2回「科学的旅館・ホテル経営フォーラム~宿泊業のビジネスモデルの深化とIT化戦略」を開く。国土交通省観光庁が協力。

 旅館・ホテルのさらなる経営力強化に向け、(1)ビジネスモデルの新潮流(2)地域社会との相互連携(3)業務革新とIT活用――のあり方について、具体的な事例に基づいて議論していく。

 フォーラムは16日の午後1時30分からスタートし、2時からセッション(1)「宿泊業ビジネスモデルの新潮流」では、鹿児島県・南きりしま温泉「天空の森」の田島健夫氏が「“素”に戻れる宿」、スーパーホテルの山本健策氏が「“ぐっすり”眠れるホテル」をテーマに語る。

 午後5時30分からは、懇親会を予定している。

 17日午前9時からのセッション(2)「観光地のIT化戦略と地域活性化」では、石川県・和倉温泉の野原博氏が「IT活用で地域情報を結ぶ」、兵庫県・城崎温泉「山本屋」の高宮浩之氏が「IT活用で人・宿・街を結ぶ」をテーマに、議論を広げていく。午後1時からのセッション(3)「宿泊業のIT化戦略と生産性深耕」では、福岡県北九州市「千草ホテル」の小嶋亮氏が「CS向上に向けたIT活用」、新潟県・越後湯沢温泉「越後湯澤HATAGO井仙」の井口智裕氏が「社内活性化に向けたIT活用」について語る。

 参加料は1人5万円+消費税(交流会、昼食、資料の費用を含む。宿泊は各自で確保)、定員は60人程度。対象は旅館・ホテルの経営者、現場実務者限定。申込みは氏名、所属、住所、メールアドレスをEメールで事務局まで送信。事務局は、サービス産業革新推進機構 メールアドレス「ryokan.science@gmail.com」。

17年に観光学部構想、「文化理解・発信の人財を」(東洋大学)

竹村学長
竹村学長

 東洋大学(竹村牧男学長)は3月27日、東京都のホテルニューオータニで入試プレス発表会を開き、2017年に開設を予定する国際観光学部など3学部の構想を発表した。

 新設を検討しているのは「国際学部」「国際観光学部」「情報連携学部」(仮称)。グローバルリーダーが集うアジアのハブ大学を目指す「東洋グローバルダイヤモンド」構想の一環として設立を目指す。

 竹村学長は「語学堪能なだけではグローバル人財とは言えない。異国と自国の文化の理解と発信ができる人財が必要になる」と述べ、国際意識を高めた新たな教育体制に期待を込めた。

 現在の国際地域学部は国際学部の学科に変更され、国際地域学部下にある国際観光学科は独立し、国際観光学部となる予定。

【観光ポスコン】金沢が国交大臣賞、総務大臣賞には伊勢市

〈国土交通大臣賞〉金沢点描(石川県金沢市)
〈国土交通大臣賞〉金沢点描(石川県金沢市)

 日本観光振興協会はこのほど、第63回日本観光ポスターコンクールの優秀作品を発表した。国土交通大臣賞は、石川県金沢市の「金沢点描」、総務大臣賞には三重県伊勢市の「伊勢市観光ポスター」が選ばれた。

 今回は全国から197作品の応募があり、49作品が第1次審査を通過。作家の伊集院静氏と工業デザイナーの奥山清行氏、グラフィックデザイナーの左合ひとみ氏の専門審査委員らによる3月17日の審査会で各賞が決定した。また、2月9日―3月9日には一般人を対象にオンライン投票も実施した。投票人数は1万5177人、有効投票数は3万3351票。

 なお、表彰式は9月下旬に東京ビッグサイトで開く「ツーリズムEXPOジャパン」内で行う。

 各賞は次の通り。

【国土交通大臣賞】金沢点描(金沢市経済局営業戦略部プロモーション推進課/金沢美術工芸大学・博報堂)
【総務大臣賞】伊勢市観光ポスター(三重県伊勢市/アド近鉄)
【観光庁長官賞】レストラン旭へようこそ!!(愛知県豊田市 旭観光協会/グラフトデザイン事務所)
【日本観光振興協会会長賞】RALLY NIPPON FUKUOKA-KYOTO 2014(ラリーニッポン2014実行委員会/大川印刷)
【審査員特別賞】東京駅開業100周年(東日本旅客鉄道 東京支社/ジェイアール東日本企画)▽わたしの山形日和。広報ポスター(山形県/ケーブルテレビ山形)▽途切れた道が、教えてくれたこと。(若狭三方五湖観光協会〈福井県若狭町〉/同)
【入賞】上山市観光ポスター(山形県上山市/進和クリエイティブセンター)▽小松の秋(こまつ観光物産ネットワーク/同)▽山形デスティネーションキャンペーン(JRグループ/ジェイアール東日本企画)
【オンライン投票部門】1位 岩手県大槌町観光ポスター(岩手県大槌町/川口印刷工業)2位 伊勢市観光ポスター(三重県伊勢市/アド近鉄)3位 ふら~り冬さんぽ 北海道・美瑛絶景体感 スノーシューで歩こう(美瑛町観光協会/須田製版旭川支社)4位 富山で休もう。「北アルプス薬師岳」(富山市商工労働部観光振興課/電通西日本富山支社)5位 志賀高原の四季~真の魅力~(志賀高原観光協会/スタジオBE)6位 富山で休もう。「弥陀ヶ原」「『世界で最も美しい湾クラブ』加盟記念 富山湾」(富山県観光・地域振興局観光課、日本海政策課/電通西日本富山支社)

【5月6日まで】333匹の鯉のぼり、巨大なさんまのぼりも登場(東京都港区)

東京タワーと333匹の鯉のぼり
東京タワーと333匹の鯉のぼり

 東京タワーは「端午の節句」特別企画として、4月3日―5月6日まで、同タワーの高さ「333メートル」にちなんだ333匹の鯉のぼりと、サンマの形をした巨大なさんまのぼり1匹を飾る。毎年恒例で、333匹の鯉のぼりを飾るのは今年で7回目、さんまのぼりを飾るのは5回目。場所は東京タワー1階正面玄関前。雨天決行。

 333匹の鯉のぼりは、ワイヤーに吊るすミニ鯉のぼり328匹と、掲揚ポールに掲げる鯉のぼり5匹からなる。ミニ鯉のぼりは長さ約1・5メートルで、赤、青、緑、橙、紫、黒の6色。鯉のぼりは長さ約2・5メートル―6メートルで橙、緑、青、赤、黒の5色となっている。長さ約6メートルのさんまのぼりと大船渡から贈られた大漁旗1、2枚と一緒に飾られる。

 さんまのぼりは、毎年9月に開催する「三陸・大船渡 東京タワーさんまつり」を通じて友好関係にある岩手県大船渡市と、東日本大震災の被災者らに復興のエールとメッセージを込めて、震災直後の2011年4月に制作。同年の鯉のぼりイベントで初めて掲げて以来、大船渡から贈られた大漁旗と一緒に定期的に掲げている。

 「三陸・大船渡 東京タワーさんまつり」は2009年の開催以来、昨年まで6年連続で実施している秋の名物イベント。大船渡市は三陸海岸にあり、サンマの産(さん)地直送便の先駆けであること、また東京タワーが昭和33年に開業、高さ333メートルという「さん(3)つながり」の縁から実現した。

客室とパブリックスペース ― 旅館はもっと快適な空間になれる

 旅館とホテルの違いは何か。まず、ホテルでは客室は完全なるプライベート空間だが、旅館の場合、客室係が部屋に入り、さまざまなお世話をすることが多い。もう一つ、私が感じる両者の大きな違いは、パブリックスペースの在り方である。

 ホテルの場合、玄関やロビーは、外の街とつながっており、ビジネスマンがスーツと革靴を履いて、ロビーでコーヒーを飲んだり、誰かと商談をしたりする。高級ホテルになるほど、どこかピリリとした心地よい緊張感がある。一方、旅館もロビーなどは外からつながっているが、玄関で靴を脱ぐ宿もあり、外の世界から一歩足を踏み入れると、薄い膜で護られている感じを受ける。旅館のロビーには浴衣姿でこれから大浴場に行こうとはしゃぎながら歩くグループ客や、風呂上がりで、少しはだけた浴衣姿で涼みながら、地元紙やスポーツ紙を広げる老人がいたりする。全体的にのんびりとしており、こちらのユルさも心地よい。外海を航海していた船がおだやかな湾内に帰港する感覚に似ている。

 客室も大きな違いがある。ホテルは基本的にワンルームにベッドがあり、机、椅子またはソファが置かれ、入り口近くに浴室を配置するスタイルが多いが、旅館は3―4人を想定しているので、「こんなにたくさんの部屋はいらないのに」と思うほど、ゆったりとしている客室もある。私は贅沢な“空間の無駄遣い”こそ、旅館の醍醐味だと思っている。

 ホテルのサービススタイルは、ほぼ完成されている。フロントで鍵を渡されると、あとは快適なベッドと清潔な空間で誰にも邪魔されず自分の時間を楽しむことができる。名門ホテルなら、美味しいレストランも館内にあるし、何か必要があれば電話でフロントに頼めば満足のいくサービスを受けることができる。サービスのスタイルは、もうこれ以上進化することはないのではないかと思うほど、完成形に近い印象を受ける。一方、旅館の“おもてなし”のスタイルは、まだまだ試行錯誤が続き、新しいタイプの旅館が生まれる可能性を秘めている。

 旅館が抱える最も大きな悩みとしては、客室係が部屋に何度も入っていくべきか、ホテルのように求められるまで放っておくかという部分ではないか。

 神奈川県・箱根強羅温泉の「強羅花扇 円かの杜」では、客室係が一番手前の客室でさまざまなサービスを提供する。基本的に奥のベッドルームや、宿泊客がくつろぐ部屋には入らないようにレイアウトされている。宿泊客のプライベート空間を確保しながら、旅館は独自のおもてなしを発揮できる。これも宿泊客が心地よさを感じる新たな関係性だと思う。

 群馬県・水上温泉の「蛍雪の宿 尚文」では、パブリックスペースにはスタッフを置かない。誰かの目があると、人は完全にリラックスできないからという理由だ。フロントのベルを鳴らせば、スタッフが奥から出てくる。宿泊客はロビーで、宿のスタッフの視線を気にせず無料で据え置かれているお酒を飲んだり、本を読んだり、自由に過ごせる。実際、そのように過ごしてみると、すごく心地よかった。これも一つの旅館のスタイルだ。

 現代性とリンクしながら知恵を出せば、旅館はもっと快適な空間になれる可能性を秘めている。

(編集長・増田 剛)

No.398 旅館経営教室④―「生産管理」、リアルタイム・サービス法を提案

旅館経営教室④―「生産管理」
リアルタイム・サービス法を提案

 「旅館経営教室」の第4弾は、「生産管理」をテーマに、工学博士でサービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が、すべての作業プロセスにおいて、「時間」「位置」「情報」が、お客様がいる最終工程により近づくことを基本原則とする「リアルタイム・サービス法」を提案。「必要なサービスを提供するための作業プロセスを、いかに顧客接点の現場に近づけていくか」を追求することで、高品質のサービスをお客が求めるタイミングでムダなく提供することが可能になる。

【増田 剛】

 
 
 

 旅館が商品として日々生産しているのがサービスです。このサービスを突き詰めていくと、結局のところ、スタッフの手や足、口などの動きに行き着きます。つまり、サービスの内容や品質という視点から見ると、旅館経営にとって、現場で実際に動いているスタッフ一人ひとりの「働き方」がとても重要になります。

 これまで、ここで「就業規則」や「労働時間管理」、「管理会計」といった働き方の現場でのルールや評価方法といった企業が持つべき基本的な組織制度について説明してきました。しかし、現場で旅館を実際に運営していくには、当たり前のことですが、これら働き方の制度だけを整備しても不十分なのです。

 それは、たとえどんなに素晴らしい制度があっても、それだけでは経営に何ら影響しないからです。より高い品質のサービスをできるだけムダなく提供し、お客様の満足を上げ続けようとするのならば、これら制度を基礎に、スタッフの実際の動きである一つひとつの作業工程をしっかり構築し、現場できちんと管理できるようにしていかなければなりません。…

 

※ 詳細は本紙1581号または4月7日以降日経テレコン21でお読みいただけます。