観光庁、旧家のツアー造成を促す 旅行会社などにガイドツアー

2024年3月25日(月) 配信

旅行会社やメディアを対象に行った

 旧家などが観光資源として活用されていないなか、付加価値の高い観光資源の活用事例を広く発信しツアー造成につなげようと、観光庁は3月21日(木)、旅行会社とメディアを対象に旧安田楠雄邸庭園(東京都文京区)でガイドツアーを行った。

 同庭園を所有する日本ナショナルトラスト(安富正文会長)の根岸悦子事務局長は「維持費は寄付や入館料で賄っている。より多くの人に訪れてもらうことで、次の世代に残していきたい」と話した。

根岸悦子事務局長

 日本ナショナルトラストは文化財を保全し、利活用しながら後世に承継していくことを目的に1968年、前身団体が設立した。現在は白川郷(岐阜県白川村)の合掌造り民家2軒を取得。SLと客車3両も所有し、一部を大井川鉄道で走行させている。

 同庭園は、遊園地「豊島園」の創始者である実業家藤田好三郎氏が1920年に建てた。邸宅と庭園で構成される。旧安田財閥の創始者・安田善次郎氏の女婿である安田善四郎氏が23年に買い取った。長男の楠雄氏が37年に相続した。関東大震災や太平洋戦争などの被災を免れ、台所を除いて創建当時のまま残されていることが特徴だという。

旧安田楠雄邸庭園の外観

 当日は、同庭園で実施される薩摩琵琶奏者の川嶋信子さんによる音楽公演からスタート。楽曲「平家物語」や「壇ノ浦の戦い」などを披露した。

 川嶋さんは「琵琶を叩いたり、弦を擦る音で当時のようすを表現していることが特徴」と説明した。

川嶋信子さんと琵琶

 建物内の風呂場には、結った髪を洗うための水槽や、金箔や銀箔を細かく粉状にした金銀砂子が用いられた襖、氷で冷やす冷蔵庫などが残されている。

髪を洗う水槽

 1923年に製造された蓄音機を用いて、毎月第3水、土曜日に当時のレコードを流している。大正時代の音色を当時のまま楽しめるという。

 戦時下の42年につくられた防空壕も現存。毎年4、8月に公開している。

防空壕の内部

 また、春にはシダレザクラ、秋には紅葉を観賞することができる。

純利益3・4%増の83億9300億円と増収増益に 日旅連結23年決算

2024年3月25日(月) 配信

日本旅行はこのほど、2023年度連結決算を報告した

 日本旅行(小谷野悦光社長)がこのほど発表した2023年度(23年1~12月)連結決算によると、売上高は前年同期比25・8%の2288億600万円を計上した。営業利益は、同41・3%の94億5700万円、経常利益は同35・3%増の101億700万円、当期純利益は同3・4%増の83億9300万円と、増収増益となった。

 中期経営計画2022~2025に基づき、ソリューションとツーリズムの両事業本部を両輪とした事業ポートフォリオ経営を本格化し、新たに設置した営業コンプライアンス推進部を旗振り役として、営業活動における法令遵守の強化をはかってきた。23年5月、11月にコンプライアンス問題などが発生し、ガバナンス推進部の設置や役員・監査役の体制強化、内部統制システムの基本方針を改定するなど、グループ全体でのリスクマネジメント強化に取り組んだ。

 また、JR西日本グループやアライアンスパートナーとの連携によって社会課題解決メニューの充実をはかり、教育事業や起業ソリューション事業との連携で、総合的提案の推進に取り組んできた。

 部門別にみると、国内旅は、JRセットプランのWeb販売の拡大に注力した。また、SDGsの取り組みの一環として「カーボン─ゼロ」の展開強化や、地方誘客事業拡大などに努めた。この結果、国内旅行の売上高は前年同期比29・5%増の1481億4800万円、売上総利益は同27・7%増の270億8400万円となった。

 海外旅行では、個人旅行で円安や不安定な国際情勢の影響を受けたものの、団体旅行や起業出張などの単品商品で需要が回復し、売上高が同436・8%増の140億8400万円、売上総利益が同269・2%増の24億8000万円となった。

 インバウンド部門は、コロナ禍からの回復や、円安をきっかけとした訪日外国人観光客の需要の取り込みに取り組み、売上高は同651・1%増の202億7600万円、売上総利益は同657・4%増の51億7400万円となった。

「観光人文学への遡航(45)」 ライドシェア導入に対する疑問③

2024年3月24日(日) 配信

 十分な議論もなしにあっという間に決まってきたライドシェアに関して、観光関連産業としても無関心ではいられない。むしろ、これは公共交通、観光事業にとどまらず、日本の今後のあり方を左右する大きな分岐点であるにも関わらず、政府は単なるデジタル化の一環のような扱いでいつの間にか導入しようとしている。

 

 私はライドシェア導入の政策決定過程に疑問を持ち、この問題を各方面にヒアリングをして掘り下げて来たが、そこまでして分かったことは、我が国では、公共交通の担い手としての矜持と覚悟を持ったタクシー会社がドライバーを正社員として雇用して、運行の結果は会社が責任を持つというかたちで発展してきたことで、世界で類を見ない安全安心なタクシー運行が実現できていたということだ。

 

 世界ではタクシーのぼったくりや犯罪が後を絶たないが、これは多くの場合、個人営業を基本としていてタクシー会社があっても配車をしたり、車両を貸与したりしているのにとどまっているためである。だから海外ではタクシードライバーへの信頼度が低かったことで、ライドシェアの登場で一気に市場を席巻することができたのである。

 

 2023年3月22日に行われた第211回国会、衆議院国土交通委員会にて、一谷勇一郎議員の質問に対する堀内丈太郎政府参考人の答弁によれば、日本のタクシーは、輸送回数が約5・5億回あったなかで、交通事故の死者数は16人、身体的暴行による死者数は0人、性的暴行の件数は19件である一方、米国のライドシェア(UBER)は、輸送回数が約6・5億回あったなかで、交通事故の死者数は42人、身体的暴行による死者数は11人、性的暴行の件数は998件にものぼる。

 

 ここまでの差があるということが議会で公的に明らかになっているにも関わらず、メディアではほとんど報道されず、議論ではライドシェアの問題点として見逃されている。

 

 ライドシェア業者は、乗客による評価システムがあるからこそ、犯罪を抑止することができ、ドライバーの質を担保できると言っているが、評価システムというのはあくまでも事後である。犯罪に遭ってしまった人が実際にこれだけいるということは、その犯罪被害者の視点がすっぽり抜けている。犯罪被害者を生んでからでは手遅れである。

 

 これだけの犯罪がライドシェアで実際に起こっているということは、評価システムは「やり逃げ」を抑止できていないと言っていい。また、ドライバーが事故を起こした際、タクシーであれば会社として責任を負う。だからこそ、会社は自社の評判を下げないために全力で事前に社員教育をする。一方、ライドシェアではその責任はすべて個人に帰す。それが、犯罪が抑止できていないことの最大の要因なのではなかろうか。

 

島川 崇 氏

神奈川大学国際日本学部・教授 島川 崇 氏

1970年愛媛県松山市生まれ。国際基督教大学卒。日本航空株式会社、財団法人松下政経塾、ロンドンメトロポリタン大学院MBA(Tourism & Hospitality)修了。韓国観光公社ソウル本社日本部客員研究員、株式会社日本総合研究所、東北福祉大学総合マネジメント学部、東洋大学国際観光学部国際観光学科長・教授を経て、神奈川大学国際日本学部教授。教員の傍ら、PHP総合研究所リサーチフェロー、藤沢市観光アドバイザー等を歴任。東京工業大学大学院情報理工学研究科博士後期課程満期退学。

いぶすき秀水園 湯通堂温社長、松尾亮史調理長インタビュー プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選「料理部門」40年連続1位

2024年3月23日(土) 配信

インタビューはいぶすき秀水園で行われた

 鹿児島県・指宿温泉の「いぶすき秀水園」(湯通堂温社長)は、旅行新聞新社主催のプロが選ぶ日本のホテル・旅館100選の「料理部門」で、1985年から40年連続で1位という偉業を続けている。3月1日には、同館で特別表彰式を開くとともに、湯通堂温社長と、松尾亮史調理長に、宿の歴史から、料理へのこだわり、未来への展望など、「いぶすき秀水園の料理」について語っていただいた。

【聞き手=本紙社長 石井 貞德】

新たな試みと研究で進化を 調理場の働き方改革に着手

 ――いぶすき秀水園の創業から現在までの歴史についてご紹介をお願いします。

湯通堂 温(ゆつどう・あたか)社長

 湯通堂:私の父であり、先代の保(たもつ)が1963(昭和38)年8月に、焼酎蔵元の別荘を和室8部屋の純和風旅館「喜楽(きらく)」として創業したのが始まりです。
 母方の家業として焼酎の造り酒屋を営んでいましたが、蔵元の代表銘柄が「喜楽」でした。
 焼酎も時代とともに大きく変わり、戦前は地元での消費が多かったのですが、次第に日本酒や洋酒、ビール、ワインなどに押された時期でもありました。
 旅館を始める当初、父は鹿児島市内の料理屋さんに相談に行っていたのですが、ことごとく「旅館はやめなさい」と言われたそうです。
 ただし、「料理の良い(美味しい)旅館だったら、成功するかもしれない」と言われたことで、食べることが好きだった父は、宿の創業を決意しました。
 その後、1977(昭和52)年に石井正治が調理長に就任したことで、秀水園の「味」を広めることになりました。
 85年には、旅行新聞新社主催のプロが選ぶ旅館・ホテル100選の「料理部門」で1位に入選いたしました。以来、40年連続で1位を続けて来られたことは、大変名誉なことだと感じています。
 現在は、調理長に松尾亮史を迎えています。松尾調理長は関西で働いていましたが、石井前調理長のもとで1年間働くなかで、調理技術、人間性ともに太鼓判を押され、6年前に調理長に就任しました。

 ――どのような努力によって“料理の秀水園”は確立されていったのでしょうか。

 湯通堂:81年に新館を増設し、特別室4室を作ったころから先代の保社長と石井調理長が二人三脚で料理の改革に取り組み始めました。基本的な考え方として、「温かいものは温かく、冷たいものは冷たく」召し上がっていただけるように実践していきました。
 なかでも、お客様に「嫌いなもの」をお伺いすることは、他の旅館に比べて早かったのではないでしょうか。
 直接お客様に電話をして料理のお好みを聞くというやり方で、今でも旅行会社からの宿泊客を含め、すべてのお客様に直接「嫌いな食べ物はございませんでしょうか」、「アレルギーはございませんでしょうか」と予約時に一度お聞きし、到着時に再度確認しております。
 このため、フロントと調理場とのコミュニケーションがとても大事になってきます。私たちは「イエローカード」と呼んでいますが、お客様の嫌いな食材を3枚綴りで複写して、それを調理場に持っていき、仲居さんにも渡すといった細かい作業を努めて継続してきました。このことがお客様のニーズに応えられたのかと思います。
 今でこそ、IT化により携帯端末を駆使していますが、当時はカードを使って情報共有に努めていました。
 調理場の現場は、「嫌いなもの」が多くなるほど混乱して大変でした。失敗してお叱りを受けたこともたくさんありましたが、次第に慣れてきて、今ではほぼ問題なく対応できています。
 最近はとくにお子様のアレルギーが多くなりましたので、細心の注意を払っています。

 ――とても柔軟に対応できるかたちになっているのですね。

 湯通堂:料理を召し上がっている途中であっても、その日の体調の変化などによって「特定の料理が食べられない」というケースも出てきます。その場合、接客スタッフが調理場に連絡をして、変更できるもので対応いたします。
 例えば、牡蠣が苦手なお客様には、「あわびは大丈夫ですか」とお聞きし、調理長に報告します。調理長が不在の場合には代わりのスタッフに伝え料理を変更します。魚料理全般が食べられないお客様には、お肉料理に変えるなど調理後でも柔軟に対応しています。
 事前の情報が正しく入ればいいのですが、完璧ではないので接客スタッフの協力をいただきながら、できるだけお客様にお食事を楽しんでいただけるような対応を心掛けています。嫌いなものを事前にお聞きしているために、食材のロスはほとんどなくなりました。

 ――なかなかそこまで徹底している宿は少ないのではないかと思いますが、取り組みのきっかけは。

 湯通堂:お出しした料理を残されることが一番辛いと感じます。
 毎日のミーティングでお客様が残された料理などを報告するのですが、先代の父の時代には指宿の名物であるウナギや豚骨などは、女性はあまり召し上がられない時代でした。
 このため、肉質を柔らかくする大豆を入れて、旨味を引き立てた豚の角煮など新たなメニュー開発も行いました。お客様が食べたいと要望されたものを何とかメニューにできないかと創意工夫してきました。 
 石井前調理長が創った料理の中では、「柿釜ふろふき焼き」や「黒豚やわらか煮」などは、今も松尾調理長が引き継いで提供しています。
 リピーターの方には幾つかの選択肢の中からお好みの料理をお伺いしてお出しすることもあります。

 ――経営者と調理場のコミュニケーションについて。

 湯通堂:刺身は一般的には、市場から鮮魚店経由で旅館に入ってきますが、知り合いの船頭さんから「大ぶりの星ガツオが揚がった」と連絡が入ると、南さつま市まで往復で約80㌔ありますが、現地まで行って松尾調理長と食材として使えるかを相談しながら仕入れています。
 そのほかにも指宿温泉でホテル・旅館の調理長とオーナーが一緒に参加する現地研修旅行を毎年実施しています。
 先日は、神戸のホテルと、淡路島の旅館に宿泊して料理の研修を実施しました。当館は松尾調理長と、息子の洋(ひろし)副総支配人も参加しました。料理に対する“想い”の強さは、先代のころから続く指宿温泉の大きな特徴だと思います。
 毎週火曜日の休館日には、松尾調理長が若手スタッフを人気の料理店などへ連れて料理の勉強をすることもあります。
 今は「調理場の働き方改革」を松尾調理長と共に着手しています。
 週1日を休館日にしている一番の理由は調理場のためでした。良い仕事をするにはしっかりと休みを確保することを重視しています。

 ――調理場は何人体制ですか。

松尾 亮史(まつお・りょうじ)調理長

 松尾:社員が6人、調理補助スタッフが4人で、このうち3人が女性です。今年4月に新入社員が2人入るので社員は8人になります。早番と遅番の2交代制への移行に向けて準備を進めている最中で、これによって残業がほぼなくなるのではないかと考えています。

 ――いぶすき秀水園の料理の特徴は。

 松尾:日本料理で一番大事なものは「季節感」だと思っています。石井前調理長の「あわび素味噌焼き」や「美味豆富」などは今も人気が高いメニューで、名物料理として必ず入れながら、地物の食材や、流行りの食材、旬の食材などをそれぞれの季節に合わせて、新しい調理法なども取り入れながらお出ししています。
 指宿港で揚がった魚について漁師さんから連絡があるので、極力地元の魚を使用しています。そら豆も生産者から直接買っています。湯通堂社長と一緒に現地に行って相談しながら、食材選びをしています。生産者の顔が見えるというのはとても大きいですね。
 加えて、お客様のニーズに合わせた「秀水園でなければ食べられない」や「また泊まりに来て食べたい」と思っていただけるような料理を提供できるように日々努めています。

いぶすき秀水園の料理(一例)

 湯通堂:当館の料理の基本姿勢は、「お出ししてすぐに召し上がっていただける料理」を心掛けています。
 例えば、自分で火をつけて召し上がっていただくのはしゃぶしゃぶくらいです。それ以外はお出ししたらすぐに箸を付けられる状態にして提供しています。これは石井調理長のころからずっと一貫しています。
 食事のスタイルは、部屋食と個室食事処、和食堂の3つの選択肢をそろえ、予約時にお客様に選んでいただいています。仲居さんと調理場が密に連絡を取りながらお出しするタイミングをはかっています。お肉も固形燃料を使用せず、焼いたものをスタッフがスピーディーに運んでいく“時間との闘い”です。
 これは調理場だけでなく、すべてのスタッフの協力がなければ成り立たちませんので、コミュニケーションをとても大事にしています。

 ――外国人旅行者も増えています。

 松尾:ハラール、ビーガンなどに対応できるように、調理場スタッフも背景となる宗教や国の文化などを、もっと勉強していくことが必要になると考えています。

 湯通堂:私たちは外国人旅行者にも日本の料理をお出しするしかできません。宗教上の理由などでお肉がダメな場合、湯葉や豆富を使った料理を提供したり、野菜のお寿司を握ったり、臨機応変にやりますが、松尾調理長はさまざまな勉強会にも積極的に参加していますので、着実に進化してきていると思います。
 指宿温泉の調理長が集まってさまざまな食材を研究して商品化していく郷土料理研究会もほぼ毎年継続して開催しています。

 ――これからの旅館の料理について。

 松尾:日本人の主食である米にこだわない食の多様化が進むなかで、パンやパスタ、麺類を懐石の中に取り入れることや、洋風のソースや綺麗な盛り付けなどを含めて、新しい食材を「探して、見つけて、追求していく」ことが非常に大事だと思っています。
 「この調理法だったら美味しく食べられる」といった新たな試みや開発に取り組んでいかなければ、時代の流れに取り残されてしまいます。真空パックといった新しい調理法なども研究しています。
 一方で、一汁三菜や、和食器、走り・旬・名残といった季節感など、本来の日本料理からかけ離れないように仕上げていくことも常に心掛けています。思考を柔軟にして取り入れられるものは何でもチャレンジしていこうと考えています。
 話題づくりとして、ウナギの刺身をかば焼きと並べて握りにしてお出ししても面白いと思います。最近は鰹節をふんだんに使った出汁を楽しんでいただけるメニュー作りにも力を入れています。

 湯通堂:これから昼食も再開しようと考えています。あまり人手を掛けずにやっていくには、真空調理法などの研究も進めていかなければならないと思っています。
 リピーターのお客様がとても多くいらっしゃいますのも当館の特徴であります。新しい時代にも対応しながら、いぶすき秀水園の料理をお客様に満足していただけますように精進して参りたいと思います。

 ――ありがとうございました。

特別表彰式後に記念撮影

「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~(230)」現代によみがえる「江戸料理」(東京都)

2024年3月23日(土) 配信

セミナー会場となった日本橋江戸料理「奈美路や」

 2月下旬、東京・日本橋の江戸料理「奈美路や」さんを舞台に、「江戸料理体験セミナーin日本橋」が開催され参加した。

 この事業は、関東運輸局が2022年から始めた「江戸街道プロジェクト」の一環である。江戸街道プロジェクトとは、徳川家康が江戸と全国各地を結ぶ街道として整備した、いわゆる五街道と脇往還などを「江戸街道」という統一テーマをもとにブランディングし、広域関東圏(1都10県)の魅力づくりと地域活性化につなげようというものである。

 江戸街道には、江戸時代から今日に至る、実にさまざまな資源が眠るが、本事業では「食(江戸料理)」と「泊」の2つの重点プロジェクトに集約して展開しようというものである。「泊」は意外かもしれないが、1635(寛永12)年、3代将軍徳川家光の時代に制度化された参勤交代を機に宿場には、本陣・脇本陣をはじめ、多くの宿が用意された。大大名になるとその行列は1千人をはるかに超え、3千人から4千人に達することもあった。本陣・脇本陣だけではとても賄えず、多くは宿場内の民家などでの分散型の宿泊となった。

 分散型宿泊と言えば、今ではイタリア発祥のアルベルゴディフューゾが人気だが、江戸時代の参勤交代がまさにこの先鞭ともなっていた。

 話をもとに戻して、当日のセミナーのテーマは、その一つ「江戸料理」である。

 「江戸料理」とは、簡単に言えば「江戸時代に江戸の地で発達し、またその流れをくむ東京の郷土料理」である。蕎麦、天ぷら、江戸前鮨、刺身、鰻、あなご、どぜう、田楽などなど現在私たちが口にするさまざまな和食のルーツである。

 当日は江戸料理研究家で大塚「なべ家」の元主人の福田浩さん、江戸東京・伝統野菜研究会代表の大竹道茂さん、料理研究家で大きな竈主宰の冬木れいさんという錚々たる方々にお集まりいただいた。文化庁100年フードなどに関わらせていただいているご縁で、私もコーディネーターとして参加させていただいた。

千住ねぎの花火揚げ

 セミナーでは、日光街道の旧千住宿にある地元料理「和食板垣」さんで開発された千住宿江戸料理のメニュー開発の事例や、江戸東京野菜の保存と再生の事例などが紹介され、セミナー終了後は、会場となった「奈美路や」さんが提供する「江戸料理」を堪能させていただいた。

 五街道や脇往還などの旧道は、そのほとんどが国道などとして整備され、また首都圏という開発の激しい地域ゆえに、宿場町の面影はもはや薄れつつある地域が多い。しかし、僅かに残ったエリアでも分散型宿泊の再整備と江戸料理の創作などによって、新たな地域再生・まちおこしは可能である。

 江戸東京には、全国から集まった地方の食の在来種なども少なくない。これら食を媒介とした、東京と地方の新たな交流も期待できよう。

(観光未来プランナー 丁野 朗)

「バス&レール どっちも乗り放題パス2デイ」 備北エリアの高速バスとJR芸備線が2日間乗り放題

2024年3月22日(金) 配信

路線図

 備北交通(山根英徳社長、広島県庄原市)、広島電鉄(椋田昌夫社長、広島県広島市)、西日本旅客鉄道(JR西日本)は4月1日(月)~2025年3月30日(日)まで、備北エリアの高速バスとJR芸備線が2日間乗り放題の企画乗車券「バス&レール どっちも乗り放題パス2デイ “三次⇔東城”」を売り出す。

 高速バス「三次駅前~東城駅前~帝釈(神龍湖)区間、庄原駅~庄原市街地循環~東城駅前区間」と、JR芸備線「三次駅~東城駅区間」が、利用期間内の連続した2日間乗り放題になる。

 利用日の1カ月前の午前10時から当日まで購入できる。

 料金は大人2000円、子供1000円。

 JR西日本観光ナビアプリ北陸・せとうち観光ナビ「tabiwa by WESTER」で発売する。

埼玉県旅行業協会、鬼怒川で業務懇談会開く 浅子会長「小グループ増加へ対応を」

2024年3月22日(金) 配信

埼旅協協定会員連盟や埼旅協特別協定会員連盟の会員も参加した

 埼玉県旅行業協会(浅子和世会長)は3月5日(火)、栃木県・鬼怒川温泉の「日光きぬ川スパホテル三日月」で業務懇談会を開いた。埼旅協協定会員連盟や埼旅協特別協定会員連盟の会員も参加した。

 浅子会長は「今後大きな団体は減り、小グループが増えるだろう。これに対応するため、(2人から旅館に宿泊できる㈱埼旅の商品)らくパックを活用してほしい」と呼び掛けた。

浅子和世会長

 さらに、ツアーの魅力を高めたうえで、「利益を確保してほしい」と話し、高付加価値化が可能な企画旅行に注力することを勧めた。

 埼旅協協定会員連盟には、「我われに合った商品を提供してもらい、今後も相思相愛で頑張っていきたい」と語った。

 埼旅協協定会員連盟の森田繁会長は「物価が上昇するなか、観光施設に我慢をしてでも利用するお客へ、もてなしをより磨かなければならない」との考えを示した。 

森田繁会長

 また、「旅は日々のストレスから解放され、明日への活力を蘇らせるには絶対に必要だ。今後も、埼旅協と一緒に頑張っていきたい」とした。

 埼旅協特別協定会員連盟の酒井禎一会長は「今後も業務のお手伝いに取り組んでいく。(会員には)今後も色々な指導をしてほしい」と話した。

酒井禎一会長

 講演では、「2024年旅行業界の動向」をテーマに旅行新聞新社の石井貞德社長が登壇。

石井貞德氏

 冒頭、石井氏は「埼玉県在住者の約93%が県内のみを巡っている」とし、そのうえで、「県外に出掛けてもらうには、お客の希望を一早く把握し、協定連盟の会員との商談会などを通じて、より魅力的な商品を造成することが最も大事」と語った。「今は観光地であれば、お客が来る時代ではない。旅行のプロとして、地域に訪れなければ体験できない楽しさを発掘し、紹介してほしい」と話した。

 また、埼玉県は県内旅行の比率が高いことから、「身近な魅力的な場所やお祭りを訪れることも集客につながる。大きなことを考えるのではなく、足元を見直すことが明日の活力となる」と語った。

 最後に「旅行会社はツアーでお客に喜んでもらい、受入施設にも好影響を与える。多くの人を幸せにする仕事であることを声高に主張したい」と締めくくった。

GWの海外旅行需要が36%増 人気旅行先はソウル・台北・バンコク(エクスペディア)

2024年3月22日(金) 配信 

エクスペディア調べ

 エクスペディアはこのほど、「2024年ゴールデンウイークの人気海外旅行先ランキング」を発表した。この結果、今年のGWの海外旅行の検索数は、前年比36%増だった。期間中の人気海外旅行先の検索ランキングは、1位ソウル、2位台北、3位バンコクとなった。

 ランキング上位10位のうち6カ所がアジア圏内だった一方で、7位ロサンゼルス、8位パリと、東京から飛行機で10時間以上かかる遠方の旅行先も選ばれた。

 前年と今年のGWの検索数を比較して検索数の伸びが大きかった「海外旅行先人気急上昇ランキング」では、1位香港、2位バリ島、3位グアム、4位ロサンゼルス、5位台北──となった。24年4月から直行便の増便が発表されているグアムなどがランクインした。

 また、「1人旅」で検索された海外旅行先ランキングでは、上位10位のうち8カ所が大都市だった。1位ソウル、2位台北、3位バンコクなど、近場のアジア圏の都市だけでなく、パリやロサンゼルス、ニューヨーク、ロンドンなどがランクインした。観光やエンタメ、グルメなど1人でも楽しめるアクティビティが豊富な大都市に人気が集まっている。

〈観光最前線〉鍋島100周年記念酒

2024年3月22日(金) 配信

富久千代酒造「鍋島」商品ラインナップ

 日本酒が好きで全国各地の地酒を取り寄せては自宅呑みを愉しんでいる。好きな銘柄は幾つもあるが飛び抜けて大好きなのが「鍋島」だ。その鍋島を醸す富久千代酒造が先ごろ創業100周年を記念して、山田錦を使用した純米大吟醸の記念酒を発売した。

 鍋島にはクラシックシリーズとモダンシリーズがあり、違いは酵母だ。クラシックは鍋島立ち上げ当初の酵母、モダンは現在使用している酵母で、今回の純米大吟醸はクラシックバージョンとなる。

鍋島 100周年記念酒 純米大吟醸 Classic

 100周年ということで、ラベルや箱のデザインは酒蔵4代目の飯盛日奈子さんが考案。富久千代酒造が以前に造っていた「富久千代」という銘柄のラベルをオマージュして作ったそうだ。第2弾ではモダンタイプも発売が予定されているので今からとても楽しみである。

【古沢 克昌】

「福岡・大分DC」PR 大分はアート作品展示など 大分県宣伝隊

2024年3月22日(金) 配信

河室幸一次長(右)と髙倉玲子主任

 大分県大阪事務所の河室幸一次長と髙倉玲子主任が3月8日、本紙関西支社を訪れ、同県とJRグループ、福岡県などと共同実施する大型観光キャンペーン「福岡・大分デスティネーションキャンペーン(DC)」をアピールした。

 福岡・大分DCは4月1日―6月30日までの開催。「至福の旅! 大吉の旅! 福岡・大分」をキャッチコピーに、両県の食や温泉、文化の魅力を打ち出し、全国から誘客をはかる。

 DC期間中、両県は「イチ推し」企画を設定。大分は「Oita Cultural Expo!’24」を開催する。国内外で活躍するアーティストの作品を県内各地で展示するほか、地域の食文化や歴史などを生かしたイベントを体験するカルチャーツアーを県内6地域で行う。

 JR九州は新しいD&S列車「かんぱち・いちろく」を4月26日から運行開始する。博多駅(福岡県博多市)から、ゆふ高原線(久大本線)を経由し、由布院駅(大分県由布市)と別府駅(同県別府市)を結ぶ。1日片道1便運行する(木曜日運休)。

 JR券と沿線のこだわりの食事がセットになった旅行商品として、専用ホームページと主な旅行会社で販売する。座席のみの販売は行わない。

 河室次長らは「大分の水族館うみたまごと福岡のマリンワールドのコラボによる、特別な魚朱印も売り出します。この機会にぜひ大分県にお越しください」と話していた。

【土橋 孝秀】