訪日、23日早い1千万人、ビザ緩和“東北の伸び”期待(田村観光庁長官)

 田村明比古観光庁長官は5月19日に行った会見で、5月13日時点で訪日外客数が1千万人を突破したことを報告。昨年の1千万人突破は6月5日だったが、昨年より23日早い1千万人突破となった。4月の訪日外客数は単月として過去最高となり、13市場で単月として過去最高を記録。また、全市場で4月として過去最高値となった。

 田村長官は単月で250万人を突破した要因について、「昨年3月末だったイースター休暇が、今年は4月に移動したことが大きいと感じている。加えて、大型クルーズ船の寄港回数の増加なども寄与している」とコメント。そのうえで、引き続きこの勢いを継続できるように、〝できることはすべてやる〟という姿勢で、さまざまな策を講じていく旨を報告した。

 ■日帰り消費額増加、 要因は“休日減”

 2017年度1―3月期の日本人国内旅行消費額は、前年同期比0・1%増の4兆4154億円とほぼ前年並みだったが、日帰り旅行消費額は、同5・7%増の1兆758億円と大きく増加。1人1回当たりの旅行単価で見ても、同8・3%増の1万5828円と昨年よりも1208円増加となった。

 日帰り旅行の消費額が増加したことについて、田村長官は「昨年はうるう年だったということもあり、休日が多かった。今年は1―2月の休日が少なかったため、宿泊よりも日帰りを選択しやすかった」とし、休日減の波が旅行消費額に大きな影響を与えていることを言及した。

■中国人向けビザ緩和、「東北への訪日に期待」 

 5月8日に中国人に対するビザの発給要件が緩和。東北3県(岩手県、宮城県、福島県)の数次ビザの対象訪問地が、東北6県(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県)まで拡大され、これまで一定の経済力を有する人に課されていた「過去3年以内の日本への渡航歴要件」も廃止となった。

 中国は近年、団体旅行から個人旅行へと旅行スタイルが変化する傾向が強まっており、中国からのリピーター数も増加している。今回、東北3県から6県へと適用範囲が拡大されたことを受け、「震災以降、訪日の伸びが鈍化している東北に、これを機に多くの中国人観光客が訪れてほしい」と、ビザ緩和の効果を期待した。

 中国からの訪日者数は、ここ2カ月ほど1ケタの伸びが続いており、かつて「爆買い」が流行語となった15年などと比較すると、伸び率は徐々に落ち着いてきている状態だ。

 このことに関し「転換点に差し掛かっている」と述べ、市場ニーズに的確に対応していくことが今後のカギとなるとした。

■地方の免税店数、「目標達成さらに努力」 

 観光庁は、今年3月28日に閣議決定された「観光立国推進基本計画」のなかで、18年に地方の免税店数を2万店規模へと増加させることを目標に掲げている。しかし、現状の伸びではこの1年でかなりの積み上げをしなければ、目標達成は難しい。

 田村長官は「目標達成にはさらなる努力が必要」と捉えたうえで、今年10月から施行される酒税に関する免税制度が、全国の酒蔵に適用されることで、免税店数の増加に一定の効果が得られると語った。

 観光庁では引き続き、コンビニエンスストアなど、免税店数の増加に意欲を持っている商店などに対し、積極的に働きかけを行っていく。

No.462 風望天流太子の湯 山水荘、“働き方”を変えて単価アップへ

風望天流太子の湯 山水荘
“働き方”を変えて単価アップへ

 高品質のおもてなしサービスを提供することで、お客様の強い支持を得て集客している宿の経営者と、工学博士で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が、その理由を探っていく人気シリーズ「いい旅館にしよう!Ⅱ」の第13回は、福島県・土湯温泉「風望天流太子の湯 山水荘」の渡邉和裕社長が登場。いづみ専務(女将)、利生常務も出席して、働き方を変えるだけで単価を上げ、残業を減らしていく取り組みついて、内藤氏と語り合った。

【増田 剛】

 
 

〈「いい旅館にしよう!」プロジェクトⅡシリーズ(13)〉
風望天流太子の湯 山水荘

渡邉(社長):もともと渡邉家は土湯温泉の真ん中で「いますや旅館」を営業していました。1953年10月に、新たな宿「山水荘」を造りました。祖父には2人の息子がおり、長男(父)が山の方にある山水荘を経営し、温泉街のいますや旅館を身体が弱かった弟が継いだのです。しかし、翌54年2月の大火で土湯温泉全体が焼けてしまいました。幸い、山水荘は温泉街から少し離れていたため、焼けずに残されたのです。私は渡邉家の20代目で、山水荘は祖父、父を継いで3代目になります。

内藤:いますや旅館の規模はどのくらいでしたか。

渡邉(社長):20室ほどだと思います。山水荘を53年に建てたときは木造の9部屋でした。

内藤:その後、どのように部屋を増やしていかれたのですか。

渡邉(社長):大火の後、父は大火への反省から、60年に木造の建物をすべて壊し、鉄筋コンクリートに切り替えました。5年も経たないうちに部屋をどんどん増築し、これまで7回ほど設備投資しました。その間にプールを造ったり、護岸工事や橋を架けたりもしています。最後に増築したのは97年で、現在は71室です。

 面積は1万平方メートル以上ありますが、客室数は中規模旅館です。地形的に三方を崖に囲まれており、先代は庭に池を造ったり、ニワトリやハクビシン、クジャクを飼ったりしていました。私自身も建物と、池のある庭が自然なかたちで溶け合う、そのような空間がある旅館を理想としています。

内藤:3代目を引き継いだのはいつですか。

渡邉(社長):48歳のときです。

 23歳で土湯温泉に戻ったとき、若い人たちの集まりがありませんでした。そこで、飲食店や他の業種と連携して青年団のようなものを組織し、“まちづくり”を主体に動いてきました。旅館の経営も大事ですが、地域をどうするかということを第一に考えてきました。

 土湯の今の若い世代は、「若旦那カフェ」などに取り組んでいますが、私たちのころは、荒川の清掃活動や、ジャズフェスティバルを企画したり、毎晩お酒を飲みながら熱く語り合っていました。

内藤:土湯温泉のように、他業種を含めてまとまりがあるのは珍しいと思います。

渡邉(社長):当時、多くの温泉地では、旅館の経営者がワンマン化する傾向がみられ、なかなか地域ぐるみの取り組みができていませんでした。土湯は大型旅館もなく、小さい温泉地なので、あらゆる業種がまとまって一緒に取り組まないと生きていけないのですが、親の世代も同様の傾向がみられました。そういうのが嫌だったので、40代になったとき、観光協会や旅館組合のトップを若い世代が奪い取りました。いわゆる「下剋上」によって、自分たちの世代が中心となって土湯温泉を動かしていきました。…

 

※ 詳細は本紙1671号または6月7日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

仏誌「ZOOM JAPON」の情報も発信 ― 海外メディアと提携、世界とつながる

 フランスでは、紙媒体に書かれた記事は、ネット情報に比べて高い信頼性を勝ち得ているという。また、日本ではそれほど根づいてはいないが、フリーペーパーが市民権を得ており、有力なジャーナリストや高名な作家も記事を寄稿する。

 パリを歩くと、日本人が立ち寄りそうなレストランや公共の場所に「Ovni(オブニー)」というフランス在住、あるいは同国を観光する日本人向けの新聞に出会う。私も2年前に同紙を手にして大変興味を持ち、スーツケースに入れて日本に持ち帰った。

 本紙は間もなく、フランスの日本専門情報誌「ZOOM JAPON(ズーム・ジャポン)」の最新情報や翻訳記事を掲載する予定だ。実はズーム・ジャポンはオブニー紙から派生した雑誌なのだ。編集長のクロード・ルブラン氏はフランスでも著名な編集長で、日本好きが高じてフランスをはじめ、英国やイタリア、スペインでも日本専門情報誌を発行している。

 現在、本紙は台湾の旅行専門誌「旅奇(TRAVEL RICH)」と提携し、毎月11日号で翻訳記事を紹介している。今度は、欧州で最も日本への関心が高い・フランス人の視点から、日本に関する情報も翻訳して紹介する。「欧州各国にPRしたい」と考える自治体や、旅館・ホテルなども少なくない。日本とフランスの“橋渡し役”の一端を担えたら、うれしい。

 先日、北陸に在住の観光関係者と話をしていたときのことだ。「東京の地下鉄や電車に乗ると、みんなスマートフォンばかりを見て、新聞や雑誌を読んでいる人がほとんどいないことに驚きました。私は電車で本を読んでいたのですが、なんだか時代遅れのような、少し恥ずかしい感じがしました」と言うのだ。そこにいたのは、私を含め、

旅行ガイドブックなど紙媒体を発行する編集者3人。捉え方の違いに驚いてしまった。

 私など編集者3人の一致した意見は、「電車の中でスマートフォンを眺め続けることは少なからず恥ずかしい感覚を持っている」ということだった。

 逆に、本を読む方が断然知的なのだ、と強調した。

 ありとあらゆる情報や知識が、手のひらに握るスマートフォンからほぼ無料で得られる。わざわざ書店に行って、書籍を購入するよりも、ネットで検索した方が早いし、お金もかからない。数千円もする「ハイエンド」な専門書籍を読むことは、知の分野への貪欲な投資と冒険(旅)に外ならない。

 本社は現在、紙媒体の「旬刊旅行新聞」に加え、フェイスブック、そしてこの1カ月の間に、新たな試みとして、ツイッターやインスタグラム、ブログなどSNS(交流サイト)での情報を積極的に発信し始めた。 国内だけではなく、世界中の読者とつながるには、「新たな発信手段が必要だ」と判断したためだ。現在、ホームページのリニューアルに向けても動き出している。

 私たちは日々、観光業界の方々と接している。伝えなければならないことがたくさんある。より多くの人たちに有益と感じてもらえる情報を発信したいと思う。旅行・観光業界の専門紙ではあるが、より広く情報発信ができる仕組みづくりが急務となった。だが、そのためにはまず、観光業界で一番愛される新聞を目指して、頑張っていきたい。

(編集長・増田 剛)

増加率が伸び悩む、消費税免税店数、18年までに残り4千店

 観光庁がこのほど発表した2017年4月1日時点の都道府県別消費税免税店数によると、前回調査(2016年10月1日)から地方部は774店増えて1万5601店だった。政府は18年までに2万店規模を目標にしている。ただ前回調査時は9・8%増で今回は5・2%増。残り4399店と迫ったが、増加率が伸び悩んできた。

 切り札になるのは酒税免税制度。今年10月に酒蔵で販売する酒類の消費税に加え、酒税を免税とする制度が適用される。昨年4月時点で酒蔵の消費税免税店は45カ所と少ないが「全国で酒蔵は3千件以上あり期待している」(田村明比古長官)。今後は、許可を受ける酒蔵を増やしていきたい考えだ。

 このほか免税店を増やす意欲があるコンビニエンスストアなどに、働きかけを強めて政府目標の達成を目指す。

 なお、全国の免税店数は16年4月1日からの1年間で5330店(前年度比15・1%増)増の4万532店と初めて4万店を突破した。

ツルだけにあらず

 鹿児島県北西部、熊本県との県境に位置し、ツルの飛来地として知られる出水市は、薩摩藩の外城(郷士の住宅兼陣地)として整備された広大な武家屋敷群が今も残る歴史のまちでもある。

 その「出水麓武家屋敷群」の一画に今年5月、出水麓の歴史をジオラマ模型や映像、貴重な資料などで紹介する「出水麓歴史館」が誕生した。近くには、一般公開されている「税所邸」と「竹添邸」があり、共通入館券(大人500円・小中学生300円)で3施設すべてを見学できる。ちなみに、入館券はバッジになっており、記載された年内であれば、何度でも入館できるという太っ腹仕様。武家屋敷群では浴衣(5―9月)や着物(10―4月)の着付け体験を行っており、こちらは外国人観光客にも人気だとか。

【塩野 俊誉】

経済効果は5905億円、MICEで観光に追い風も(観光庁)

2015年国内の国際会議の経済波及効果は約5905億円に上る――。観光庁はこのほど、数値の算出を初めて行い「日本経済にもたらす影響は大きい」と期待感を示した。算出と合わせ聞き取り調査も実施。外国人参加者の約68%が「開催前後に観光予定がある」と答えた。国際会議を含むMICEの誘致が観光消費の追い風になりそうだ。

 外国人参加者は3大都市圏で観光する割合が高く、宿泊日数も伸びる。外国人参加者の平均宿泊数は約6・0泊だったが、3大都市以外は1―2割ほど低下した。「3大都市以外は滞在や観光活動を促す情報提供やプログラムを作ることが重要だ」と指摘。

 国連世界観光機関(UNWTO)の観光サテライト勘定(TSA)によれば、内部観光消費は3045億円だった。このうち外国人参加者のみは462億円。国際会議の地方開催で、地域の活性化にもつなげたい考えだ。

 世界の国際会議の情勢も報告された。15年の開催件数は06年比で約1・4倍。ただ参加平均人数は1・3倍で、小規模化が進んでいる。

 これに伴いホテルでの開催が拡大。15年の開催件数は3倍以上になった。「小・中規模の会議に対応でき、パーティーなどを行える点が需要と合致した」とみている。

 ヒアリングでもホテルは開催に好意的だ。「収益面だけでなく、人材育成でもメリットがある」(JRホテルクレメント高松担当者)。英語で打ち合わせやハラル食などへの異文化対応が「貴重な経験になる」という。

 一方で日本は国際会議の誘致対策に遅れが目立っている。アジア・中東・オセアニア地域の開催件数シェアは、直近10年間で18・4%から15・4%に落ち込んだ。上位10都市の開催件数を比較すると東京は8位(80件)で、1位のシンガポール(156件)の約半数だ。伸び率も中位につけた。

 新興国などの都市が誘致を強化するなか、盤石な地位を築けていない。「都市のポテンシャルに見合う存在感があるとは言い難い。一層の対策が必要」との見解を示した。

 今回の「MICEの経済波及効果及び市場調査事業」は日本政府観光局(JNTO)の基準に沿う国際会議2847件を調べた。今年度には企業会議と企業の報奨・研修旅行、展示会も調べ、同調査と合わせて、MICE全体の経済波及効果の算出を行う見通し。

「変なホテル」海外へ、子会社化で台湾に進出(HISグループ)

 HISホテルホールディングス(平林朗社長、HHH)は5月23日に、台湾でホテルチェーン大手の「グリーンワールドホテルズ」(GWH、台北市)の子会社化を終えたと発表した。HHHは台北市内16軒のホテルを経営管理する。このうちの1軒を変なホテルに改装。変なホテルが初の海外進出に乗り出していく。

 子会社化を機に、中国語圏市場や東南アジア、オセアニアなどの海外進出へ拍車をかける。国内で培ったホテル運営やマーケティングのノウハウを生かしていく。ホテル事業の収益を拡大する一方で、HISの旅行事業との相乗効果も見据えている。

 HHHは3月21日にGWHの第三者割当増資を引き受け、5月23日に新株発行に関して振込手続きを終えた。所有株数は5596万1455で、所有割合は51・0%となった。

 なお、変なホテルの3号棟目は8月1日に、愛知県・蒲郡市のラグーナテンボスで開業する見通し。自社ブランドの国内外ホテルと合わせ、HISグループは今期に30軒のホテルを展開している。今後5年間で国内外100軒まで広げる考えだ。

離島の魅力紹介、鯨本あつこ氏

鯨本あつこ氏

 まちむら交流きこうと、ライターズネットワークは5月11日、東京都内でセミナーを開いた。講師としてNPO法人離島経済新聞社統括編集長の鯨本あつこ氏(いさもと・あつこ)が登壇。「島の今をネットワークで発信する力、新しいメディアの力」をテーマに講演した。

 離島経済新聞社は、日本各地の約400の有人離島の文化や智恵、暮らしのネットワーク化を目的としている。Webや紙媒体による情報発信、教育などさまざまな事業を展開している。

 鯨本氏は「島の人たちは自活力が強い」と離島を取材するなかでの印象を語った。地熱や洋上風力を利用した発電、ワークシェアリングなどの先進事例や、独特の文化を持つ島の魅力についても紹介した。

鉄道の利用促進を、無人駅貸出しで活性化(JR北海道)

 北海道旅客鉄道(JR北海道)はこのほど、無人駅活用に向けた新たな取り組みを発表した。98カ所ある無人駅を、観光協会や商工会議所などに無料で貸出す。地場産業のPRや観光案内所などに利用してもらい、駅の活性化とまちのにぎわい創出につなげ、鉄道利用の促進をはかる。

 JR北海道が5月9日日に公開した2016年度決算によると、台風の被害などを受け当期純損失126億円を計上。島田修社長は、「来期も189億円の経常赤字を計画する厳しい見通し。北海道新幹線を活用した経営基盤の強化に取り組み、事業範囲の見直しによる抜本的な経営構造改革を進める」との談話を発表した。

 昨年には、北海道の鉄道網の半分以上の13線区、1237キロの線区を単独で維持するのは困難と訴え、「地域交通の維持」について沿線自治体らとの協議を開始している。道もこの問題に対し、「鉄道ネットワークワーキングチーム」で検討を進めており、5月25日には高橋はるみ北海道知事が、初めて名寄市内で宗谷線沿線関係者と意見交換を実施した。

 沿線自治体でも、鉄路存続へ向けた試みが始まっている。同社がバスなどの交通体系への移行を考えている札沼線の北海道医療大学―新十津川間では、月形町と新十津川村、浦臼町の首長が自ら沿線の魅力をガイドするバスツアーが行われている。これは月形町の提案で、シィービーツアーズ(北海道札幌市)が企画したもの。3年前から国道275号線を歴史街道として売り出すために始めたが、今年は浦臼―新十津川を札沼線で移動し、より多くの注目を集めている。

創立50周年記念フォーラム、「新潟創生宣言」に350人(ホテル泉慶)

飯田浩三社長

 ホテル泉慶グループは創立50周年を記念して、未来を探るフォーラム「新潟創生宣言」を5月14日、白玉の湯華鳳で開き、350人を超える人が県内外から集まった。

 基調講演は、内閣参与で経団連21世紀政策研究会顧問を務める、飯島勲氏が「政局を語る」をテーマに講演。世界の指導者が変わるなか「安倍政権の役割は大きい」と語り、「これからは日本海時代の幕開け」と強調。とくに農業、観光の重要性を説いた。最後は「住みやすい社会を中長期的に考え、後戻りしない政治を行わなければならない」と締め括った。

 また、「新潟から発信する地方創生に向けた産学への期待」と題したシンポジウムを実施。パネリストは増田寛也東京大学公共政策大学院客員教授と亀田制作日本銀行新潟支店長、高橋姿新潟大学学長、田中通泰亀田製菓代表取締役会長。コーディネーターは山崎史郎前内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局地方創生総括官が務めた。

飯島勲氏

 亀田日本銀行新潟支店長は、新潟県の人口減少率は全国ワースト9位(16年10月現在)というなかで、新潟にとっての地方創生は「人口減少問題に立ち向かい、未来志向を持つこと。新潟ならではの良さを、強みを再発見する必要がある」と述べた。高橋新潟大学学長は、地域の中小企業との連携、地域ニーズに応える人材育成や研究の推進が必要だと訴えた。19年4月に創生学部を新設し、人材の育成と定着を目指すという。

 田中亀田製菓会長は、「保守的な発想が強く、独創的なアイデアに挑戦するという気風が弱い」という県民性を譬えた。そのなかで、危機に立たされたときに気持ちが燃え上がる新潟県人の成功から学ぶことが重要だと呼びかけた。増田東京大学公共政策大学院客員教授は地域で雇用の場を創出する必要性を説き、「子供たちの声が届く魅力ある職場づくり、環境を整える必要がある。地域の特色を出し、相手が望んでいる言葉で伝え、変える勇気をもって挑戦してほしい」と語った。

 コーディネーターの山崎氏は「若い人だけでなく、その親たちに地元の産業、企業をより知ってもらう必要がある。インターンシップがキーワード」と説いた。

パネルディスカッション

 フォーラムを前に飯田浩三ホテル泉慶社長は「お客様、地域の皆様、取引先の関係者のおかげで創立50周年を迎えることができた」と謝辞を述べ、「この50年間、インフラ整備が充実し、新潟県も発展してきた。一方、中越、中越沖地震や東日本大震災で、大変厳しい状況も経験した。よく乗り越えてきたと感慨深いものがある」と振り返った。今後については「世界のグローバル化に伴い、新たなサービス形態が求められる。旅館業という職業に誇りを持ち、お客様に、社会に対応すべく、積極的に貢献できる企業として努力していきたい」と方針を述べた。

 二階堂馨新発田市市長は「地方創生が急務と言われるなか、裾野の広い観光は切り札と言われている。月岡温泉は観光のプラットフォームとして誘客策を進めている。20年の東京オリンピックを控え、新たなマーケットを積極的に推進している。当市も市制施行70周年の節目に、新たな100年に向かって泉慶グループと共に発展していきたい」とあいさつした。