「ハピテク」、検索機能を刷新 現在地からテイクアウトができる店舗をカンタン検索

2020年10月5日(月)配信

 プレシャスパートナーズ(髙﨑誠司社長、東京都新宿区)が運営する「ハピテク」はこのほど、検索機能の強化を主としたリニューアルを行った。自宅やオフィスなど、現在地の近くからテイクアウトができる店舗をカンタンに検索ができるようになった。

 ハピテクは「いつもお店で食べていた味を、家でも楽しもう」をコンセプトにテイクアウトができる飲食店を探せるWebサービスだ。今回のリニューアルでは現在地からの検索に加え、今テイクアウト営業中の店舗が一目でわかる「テイクアウト営業中」フラグの表示機能を追加。「現在地×現在時間」で、店舗検索が可能となった。

 店舗からのメッセージ掲載も始めた。「マスク着用することが当たり前となり、接客するスタッフの方の笑顔が見られなくなりました。料理の先にある スタッフさんの笑顔を発信し、お店のファンづくりを支援したい」(同社)という。

車内換気性能などバスの安心安全をアピール 東京バス協会ら

2020年10月5日(月) 配信

小池百合子都知事も出席した

 東京バス協会と日本旅行業協会(JATA)関東支部、全国旅行業協会(ANTA)東京支部は10月1日(木)、東京都庁の正面玄関前でバスの安心安全をアピールするデモンストレーションを行った。小池百合子東京知事同席のもと、車内換気性能の実証実験などを実施した。新型コロナウイルスの影響で需要が落ち込んでいる貸切バスの安全性を広く周知し、需要回復につなげたい考え。

 東京バス協会の山口哲生会長は「バスイコール密イコール危険とのイメージがなかなか払拭できず苦慮している」と現状を説明。同日から、GO TOトラベルキャンペーンに東京が追加されることを受け、今回の企画を行ったと説明した。

 デモのほか、東京都民にバスの感染防止対策を広くアピールするため、東京都内で随時ラッピングバスを走らせる。窓を閉めても約5分で車内の空気が入れ替わることなど、対策や標語などを掲示。バスは4両1組、計6組24両で走行する。同日はラッピングバスの出発式も行った。

 立ち会った小池知事は、バス業界が感染対策に取り組んでいることを労い、安全性の周知に協力していく姿勢を見せた。主催者によると、ラッピングバスの出発を見送る際にはバスガイドに笑顔で手を振り返し、応援するようすがうかがえたという。

JTB、学校にNGO派遣 新プロジェクト始まる

2020年10月5日(月) 配信

村尾信尚氏

 JTB(山北栄二郎社長)は9月1日(火)、ジャパン・プラットフォーム(JPF)と連携し、学校とNGOをつなぎ、探求学習をサポートする17 GOALs PROJECTを開始した。JTBが学校からSDGsを教育する講師の派遣依頼を受け、世界の社会課題の解決に取り組むJPFが、加盟する44のNGOから講師を派遣する。生徒には加盟NGOの活動内容と現実味のある学びの場を与える。

 参加費は、JTBが受け取る代金のうち1%を学校がJPFへ寄付し、活動費に充てる。

 9月18日(金)には、プロジェクトの第1弾となる授業が、中央大学付属高校(東京都小金井市)で行われた。講師はJPFの顧問でNEWSZEROの元メインキャスターの村尾信尚氏が務めた。授業は基調講演と座談会を開催し、最後には鼎談を実施した。

 基調講演のテーマは「新しい時代の君たちへ」。初めに村尾氏はニュースキャスターの経験から、「ニュースには、伝える人の主観が込められている。さまざまなテレビや新聞を見てほしい」と呼び掛けた。

基調講演のようす

 Go Toトラベルキャンペーンと今年4月に10万円の特別定額給付金が配られたことにも触れた。村尾氏は「財源には皆さんが払った税金が活用されている。政治に興味を持ち、意見を伝えるべき」と訴えた。

 座談会では、選択授業でSDGsを学ぶ生徒が村尾氏に質問した。

生徒は座談会で質問を投げ掛けた

 2年生の女子生徒は基調講演に関連して「中立的なメディアはありますか」と問い掛けた。

 村尾氏は「(存在するか)分からない。私は中立を心掛けたが、難しい。色々なニュースに触れて中立を掴んでほしい」と応えた。

 鼎談には村尾氏とJTBの檜垣克己執行役員が登壇した。司会は同高校の古澤康久教頭が務めた。テーマは「これからの教育に求められること」とした。

鼎談のテーマは「これからの教育に求められること」。(左から)檜垣克己執行役員、村尾信尚氏、古澤康久教頭

 冒頭、古澤教頭はJTBの檜垣執行役員に企業の立場から教育に求めることを聞いた。

 檜垣氏は「生徒には世の中の環境が激変するなか、自分は何ができるかを明らかにし、実行する力が求められる」と意見を述べた。

 村尾氏には教育現場でのメディア活用方法を尋ねた。

 村尾氏は「生徒に世の中の出来事を伝えるときには、『一部の人が意見を述べていると思ってみてほしい』と教えてほしい」と話した。

3団体が地域に貢献 観光庁長官表彰が決定 観光庁

2020年10月5日(月) 配信

観光庁はこのほど、観光庁長官表彰に3団体を選出した

 観光庁は10月2日(金)、第12回観光庁長官表彰の受賞者を発表した。海外メディアにも数多く取り上げられ瀬戸内エリアのブランディングに大きく貢献した「瀬戸内国際芸術祭」の実行委員会など、計3団体を選んだ。

 選出された3団体のうち、「みちのく潮風トレイル」を運営するNPO法人みちのくトレイルクラブは、観光を通じ地域の復興に貢献した。トレイルを訪れる人々と、地域住民との交流を通じた持続可能な地域計画や、観光振興に寄与したことが受賞につながった。

 NPO法人安心院町グリーンツーリズム研究会の宮田静一会長は、会員制農村民泊「安心院方式」を生み出したことがきっかけで、全国に先駆けて「グリーンツーリズム推進宣言」が同町で議決された。グリーンツーリズムの推進に貢献した同氏の取り組みが評価された。

 なお、同委員会と観光庁が検討した結果、地方自治体と連携した地域活性化への貢献を評価し、ももいろクローバーZに特別感謝状を贈った。

 同賞は魅力ある観光地づくりやその魅力の発信など、観光の振興、発展に貢献した個人や団体に対して贈る。

 今回、観光庁での授賞式は行わず、地方運輸局から受賞者に賞状などを贈呈する。

ロケツーリズム協議会加盟4市町が団結 映画「今はちょっと、ついてないだけ」 製作決定

2020年10月5日(月)配信

 映画「今はちょっと、ついていないだけ」の制作発表が2020年9月24日(木)、東京都内で開かれたロケツーリズム協議会(藤崎慎一会長)の会合で行われた。

 ロケツーリズム協議会に加盟する千葉県茂原市、長野県千曲市、愛知県幸田町、長崎県島原市が一致団結し撮影に協力、1つの作品を作りあげるという、全国的にもめずらしい取り組みだ。同協議会も全面協力する。

 「雲を紡ぐ」で直木賞にノミネートされた小説家・伊吹有喜さんの同名著書(光文社文庫刊)が原作。自然写真家として脚光を浴びるもバブル経済崩壊ですべてを失った主人公が、上京して住み始めたシェアハウスで、同じような境遇の人たちと「人生の敗者復活戦」に挑む物語だ。監督・脚本は「パーフェクトワールド 君といる奇跡」(2018年公開)などを手掛けた柴山健次氏が担当。Zipangが制作し、2021年秋以降の公開を予定している。

ロケツーリズム協議会 withコロナ時代の地域活性事例を報告 映像制作者と自治体が率直に意見交換

2020年10月5日(月)配信

西伊豆町の星野町長(左)が取り組みを報告

 ロケツーリズム協議会(藤崎慎一会長)は2020年9月24日(木)、リーガロイヤルホテル東京(東京都新宿区)で今年度3回目のセミナーを開き、自治体や映像制作者ら70人が参加した。

 withコロナの時代、「今こそ経済の復興!観光の回復!」を掲げ、映画やドラマのロケ地となった実績を観光資源として活用し、地域の活性化へつなげることを目指している。第1部の事例発表では、自粛期間中に取り組みを進めた地域が、どのような成果を挙げつつあるのかを発表。第2部のグループワーキングでは、ロケ誘致に係るノウハウを学んだほか、自治体・映像製作者双方が率直に意見交換し、新たなマッチングの可能性を探った。

 事例発表では「緊急事態宣言下にあってもオンラインでロケ情報を制作者と共有」(愛知県幸田町)や「ロケ誘致をきっかけに市民が街に愛着を持つようになった」(神奈川県綾瀬市)など、会員の近況を紹介。静岡県西伊豆町からは星野淨晋町長が会場に駆けつけ、人命を最優先するなか、いち早く約3億円の財源を充て宿泊・飲食業者らに休業要請を行った経緯や、緊急事態宣言解除後は一転、ロケ誘致をはじめ観光面で攻めに転じたことを報告した。同町では9月、映画「たぶん」(20年晩秋公開予定)のロケハンツアーも行われた。制作者側からは「ロケハン中、各施設での撮影可否や貸切について即答してもらい、大変助かった」など、高い評価も得ている。

 分科会のうち「地域とのマッチング」をテーマとした部屋では、自治体・制作者双方が参加し、それぞれの立場や意思決定の仕組みについて理解を深めた。制作者側からは、誘致に係る費用補助について、映画と情報番組での考えの違いが伝えられたほか、「ロケハンに同行いただく地元の人が、その地の魅力を分かっていないこともある」などの声も挙がった。  

 今回の会合は、オンライン参加も募り、全国各地から約40人が参加した。藤崎会長は、「協議会は映像制作者と地域のマッチングの場。リアルに対面して生まれる事例も多くある中、11月のセミナーは、より大勢に足を運んでもらいたい」と呼びかける。

リーガロイヤルホテル東京でロケ地ツアーも

ドラマの1シーンを再現

 同日、会場となったリーガロイヤルホテル東京で、ロケ地ツアーも開かれた。ドラマ「半沢直樹」で、堺雅人さんと及川光博さん出演シーンの撮影が行われた「セラーバー」では、実際の撮影風景を再現して「なりきり写真」を撮影するなど、参参加者からも好評だった。一般向けには、クラブツーリズムが、ランチ付きでリーガロイヤルホテル東京のロケ地見学ツアーも企画している。

 「セラーバー」はコロナ禍で現在休業中だが、それを逆手にとり「撮影時間が制約されない空間」(同ホテル繩手典子販売促進チーフ)としてPR。撮影の問い合わせも絶えないという。

「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(117)お客様と呼んで3流 名前を呼んで2流 一流とは? ○○さんで関係深める

2020年10月5日(月) 配信

 

 当社内で、お客様を「客」と言う企業が少なくない、という話が出ました。これでは、「おもてなしの想い」は育たないと感じました。クライアント企業には「社内でも『お客様』と当たり前に言えるようにしましょう」と話をしています。

 1月にある企業を訪問したとき、新年度ポスターのスローガンを見て驚きました。そこには「お客様を、お客様と当たり前のように呼べる会社になろう!」とあったのです。その年には、「新しいおもてなしの目標」を企業スタッフたちと話し合いました。すると、翌年には「お客様と呼ぶことを卒業して、○○さんとお名前で呼べる会社になろう!」とスローガンが変わっていたのです。以来、その企業の「おもてなし力」は、地域のお客様から高い評価もらえるようになったのです。

 年2回のセミナーで、「お客様を、お客様と呼べて3流。〇〇様とお名前を呼べて2流。では、一流の企業に必要な呼び方とは。答えは〇〇さんです」とお話しすると、参加した高級レストラン経営者から、「お客様を〇〇さんとは、私どもでは呼べません」と、ご意見が出ました。場の雰囲気や客層もあり、さん付けでは失礼なこともあります。しかし、私は「おもてなし力を高めて、〇〇さんと呼んでも失礼にならない関係性を築くことが大切です」と、あえて申し上げたのです。

 ホテル・リッツ・カールトン東京で、私を「西川さん」と呼ぶスタッフがいます。初めのころは、「西川様」でしたが、何泊目かにスタッフへ「私はいつになったら、リッツ・カールトン東京の本当のお客様になれるのかなぁ」と問い掛けました。

 「『様』と呼ばれると隔たりを感じる。親近感をもって、『さん』と呼んでもらえればうれしいね」と話したのです。すると、そのスタッフは親しみを込めて「西川さん」と呼ぶようになり、リッツ・カールトン東京が我が家のように感じることができるようになったのです。

 お客様をどのようにお呼びするかは、おもてなし力を高めて行く目標にもなります。常に「様」と呼ばれ、それが当たり前の人には、「〇〇様」が心地よいかもしれません。しかし、「様」と呼ぶことで高級店である印象を保つことはできません。お客様との関係性を深めて行くことが、おもてなしでリピーターを創造することにつながるのです。

 「丈次さん」と呼んで下さるクライアント企業やお店がたくさんあります。

 呼び慣れていない方にとっては、照れくさい呼び方かもしれませんが、私にとっては最幸にうれしい響きで、特別な企業であり、お店になっていったのです。

 
 

コラムニスト紹介

西川丈次氏

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。

 

「街のデッサン(234)」「hope to トラベル」で旅人と観光地を幸せに 旅への憧れと喜びが観光事業の起点

2020年10月4日(日) 配信

鎌倉小町通りにも若者のにぎわいが

 若い時分から髪を長くしていたので、調髪は妻の懇意にしているヘアサロンにお世話になっている。サロンの美容師の先生は旅好きで、たっての願いは80歳を超えた高齢の実母をパリ観光に連れていくことだった。それは母親が長年憧れていたことで、先年、先生のご亭主(車イス担当)も巻き込んで、3人でのパリ滞在を敢行した。3人ともパリは初めてで、妻が見所や地下鉄の乗り方などをアドバイスして、宿はアパルトマンホテルに泊まる旅を成功裏に完遂させた。

 母親は長年の想いが叶い、ご亭主は義母を押して石畳の街路や地下鉄を乗り継ぎ懸命に観光地巡りを頑張り、パリの人々は彼の姿に感銘して大いにサポートしてくれたらしい。ご亭主の株は上がり、誇り高い気分で帰国された。

 そんな経緯もあってか、私が調髪に行くたびに話は旅のことになる。コロナ渦中の旅の話になり、「Go toトラベルキャンペーン」が始まった時期には、「昔から八甲田山の麓にある鄙びた温泉宿に行きたかったから、キャンペーンを利用していこうかしら」とカットしながら語っていた。私は「Go toキャンペーン」の評判にいまいちの感を持っていたが、心の中に秘めている旅への期待や、想いを喚起させる役割を持つのではと思った。彼女にとって残念だったのは、東京が外されて鄙びた宿の夢が実現できなかったことだ。

 このキャンペーンの問題点は、コロナ蔓延で疲弊する観光地や、観光関連の中小企業の事業者を経済的に支える思惑も無論大切であるが、肝心のお客様であるトラベラー(旅人)の旅への深い愛着や願望を支える仕組みに至らなかった点にあると思う。要するに観光経済を救う経済感覚はあっても、旅の持つ人間価値への思いやりが不在なのである。それはいわば「観光思想」の欠如でもあろう。

 80歳を超えた高齢の母親にも若いころからの旅への情熱があった。美容師の先生もカットの手を止めたときに、「鄙びた温泉」が頭を過る。ご亭主には、旅が家族の紐帯をさらに強くするという、確信にも近い「旅の思想」があるのだ。

 それらの想いを顕在化させ、実現をサポートしていく優しい思想が、結果的に観光地にお客を集め、喜ばれ、お金を落してもらう観光地経済の復興につながる。それはGo toという命令的な口調ではなく、私には「hope toトラベル(幸せな旅をしたい)」という旅人(顧客)の心根と、観光地で受け入れる人々の慈愛が共創して創り上げる観光産業こそ、未来的に思えるのである。

コラムニスト紹介

望月 照彦 氏

エッセイスト 望月 照彦 氏

若き時代、童話創作とコピーライターで糊口を凌ぎ、ベンチャー企業を複数起業した。その数奇な経験を評価され、先達・中村秀一郎先生に多摩大学教授に推薦される。現在、鎌倉極楽寺に、人類の未来を俯瞰する『構想博物館』を創設し運営する。人間と社会を見据える旅を重ね『旅と構想』など複数著す。

 

津田令子の「味のある街」「ひと本 栗饅頭」――石田屋(東京都板橋区)

2020年10月3日(土) 配信

石田屋「ひと本 栗饅頭」1個160円▽東京都板橋区上板橋2-32-16▽☎03(3933)3305。

 東武東上線「上板橋駅」南口から、上板橋南口商店街を南へ2分ほど行った右手に、老舗の「石田屋」はある。和菓子も洋菓子もおいてあるのが特徴だ。朝8時を過ぎると、細長い行列ができることも多い、人気の店である。

 
 「手みやげ」というのは、人様にお会いするときに、ちょっとしたプレゼントをするという世界共通の習慣で、人間関係を円滑にするためにとっても便利なツールのひとつではないだろうか。人々が、それぞれ趣向を凝らしてセレクトする光景が好きな私は、「この人は、どれを選ぶだろうか、誰に贈るのだろうか」と想像をめぐらせ店内で観察したりしながら、手みやげ選びの参考にしたりもする。

 
 ということを考えながら、今日も列の後ろについた。あと5人ほどで店の中に入れそうだ。今回は、和菓子好きの友人宅に招かれたので、あまり相手に負担にならないようなおすすめの逸品を買い求めに来たわけだ。ゲットするものは、すでに「ひと本 栗饅頭」6個入りと決めている。その品は、一粒栗を、ザラメ糖を使って練った白餡と柔らかな生地で包んで焼き上げ、羊羹をかけたもので、店の一番人気商品なのだ。

 
 石田屋のロゴの入った包装紙を取り除き、化粧箱が現れたときのよろこびを味わったあと、ふたを開ける。一つひとつ丁寧に包装された例のものが行儀よく並んでいる。薄紙を剝ぐように本体を取り出す。そこまではできるだけ優しく、かつスピーディに行う。一連の儀式を終え、栗饅頭を食べる準備が完了する。さっと手に取り一気にそのまま口へ押し込む。

 
 石田屋の創業は1950(昭和25)年。「できるだけ多くのお客様に満足いただけるよう、良い素材を選び、シンプルながらも丁寧なお菓子作りを」というのがモットーだ。工場直売の利点を生かし、保存料や添加物に頼らずに、材料が本来持っている味を提供できるよう心掛けてきたという。友人からの、「いつものを、お願いね」という実に厚かましいお願いが妙にうれしい。私のお菓子選びにぬかりはないと実感できる瞬間だから。

 

(トラベルキャスター)

 

津田 令子 氏

 社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。

 

「観光革命」地球規模の構造的変化(227) 菅義偉政権と観光立国

2020年10月3日(土) 配信

 9月16日(水)召集の臨時国会で菅義偉自民党総裁が第99代首相に指名され、菅政権が正式に誕生した。ここで菅政権による観光立国政策の今後について予測を試みたい。

 菅首相は安倍政権の継承を主張している。第2次安倍政権が発足した2012年のインバウンドは836万人であったが、15年に1974万人、17年に2869万人、19年に3188万人と激増している。とくに16年に策定した「明日の日本を支える観光ビジョン」では20年にインバウンド4千万人、消費額4兆円、30年にインバウンド6千万人、消費額15兆円、という数値目標を掲げた。

 コロナ禍の発生以前にはインバウンドを軸にした観光立国政策は成功を収めていた。しかし安倍首相の悲願は「憲法改正」であり、「観光立国」にはさほど熱意を注いでいなかった。コロナ禍以前に観光立国政策が成功を収めたのは、観光族議員を主導する自民党の二階俊博幹事長と政府の菅官房長官の功績が大であった。二階幹事長と菅長官とが絶妙の両輪として最大限に機能した結果、観光立国が大幅に進展した。

 コロナ禍発生後の「Go Toキャンペーン」でも、二階幹事長と菅長官の政治力が存分に発揮され、コロナ禍で苦境にあえぐ観光業、旅行業、宿泊業、イベント業、飲食業などの救済に貢献している。このたびの菅政権の誕生においても、二階幹事長は真っ先に菅氏を支援し、菅政権樹立の実質的な立役者となった。二階・菅コンビの紐帯が強固である限り、菅政権の観光立国政策は盤石なかたちでの進展が期待されている。すでに菅首相は観光を成長戦略の柱として重視することを表明している。

 しかし「Go Toトラベル」や「Go Toイート」キャンペーンを見る限りでは、JTBや「ぐるなび」などの特定企業の優遇が顕著であり、地方創生に本当に貢献できるかどうか定かではない。観光が地方創生に貢献するためには、日本各地で「民産官学の協働」による地域資源の持続可能な活用に基づく地域主導型観光の振興が必要不可欠である。菅首相はあくまでも「30年にインバウンド6千万人」達成を目指しているが、コロナ禍の世界的な収束は容易ではない。今後の菅政権による観光立国政策の行方に注視していきたい。

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。