10日間で受講者2500人超、6月9日から“後編”(観光庁)

オンライン講座「旅館経営教室」

 観光庁が5月26日から、同省ホームページでスタートしたオンライン講座「旅館経営教室」の受講者数は6月4日現在2500人を超えた。

 同講座はサービス工学研究の第一人者で、サービス産業革新推進機構代表理事の内藤耕氏が講師を務めている。5月26日からの前編は「サービス生産管理」の方法をテーマに、1本約10分の動画講義で計100分間程度を受講。各週で数問の確認クイズが出題され、規定の修了条件(60%以上)をクリアすると、観光庁長官の修了証が発行される。

 5月28日時点の受講者を年代別にみると、40代が最も多く、全体の33%を占めた。次いで50代は21%、60代が17%、30代が16%、20代が9%と続く。エリア別では都市部の方が、受講率が高い傾向にある。職種別では、旅館・ホテルなど宿泊業は全体の26%で、小売業や飲食業、製造業などその他産業や、教育機関などの受講者も多い。

 また、北海道の鶴雅グループでは100人を超えるスタッフが受講し、成果は将来の人事にも反映させるという。

 観光庁観光産業課の小俣緑係長は「日本旅館協会など宿泊団体も『サービスの生産性』に高い関心を寄せていただいている。後編(第2週)は現場サービスの労務管理などの内容となっており、若い旅館経営者をはじめ、業種を問わず幅広い方々に受講してほしい。また、旅館経営の悩みなども掲示板で共有されており、いい場になっているのでは」と話す。

 後編は6月9日から公開し、「現場スタッフの労務管理とパフォーマンス評価」の方法が主な内容となる。前編、後編とも8月31日まで公開され、動画はダウンロードすることも可能だ。

          
≪キーパーソンに聞く 内藤 耕氏≫

 宿泊業を題材にした経営教室であるにも関わらず、旅館・ホテル以外で働いている人も多く聴講し、その内容に大きく共感されている。このことは、サービス産業生産性向上が政府の政策課題の最前面に出始めているのにその方法論がこれまで判然としていなかったのが、どうも業種の壁を超える普遍性ある科学的方法論がある可能性を示唆しています。現場でしばしば指摘されるサービスの内容や施設の規模の違いが問題の本質ではないということです。この「旅館経営教室」で紹介しているサービス生産性向上の方法論を学び、より労働条件が改善され、優秀なスタッフがより長く働いてくれるようになれば、直面する深刻な人手不足の問題も克服できようになります。つまり、これからの企業にとって重要なのは、この生産性向上への取り組みの是非ではなく、具体的にいつから生産性向上に取り組み始めるかです。

“ステップ”の年に、「動く。感じる。旅になる。」

田川委員長(中央)、見並副委員長(左)
田川委員長(中央)、見並副委員長(左)

ツーリズムEXPO、9月24―27日開催

 日本観光振興協会と日本旅行業協会(JATA)は5月28日、東京ビッグサイト(東京都江東区)で9月24―27日まで開く、「ツーリズムEXPOジャパン2015」の概要を発表した。2回目の開催となる今回は“ステップ”の年と位置付け、世界最大級の観光イベントとして、さらなる飛躍を目指す。 今年のツーリズムEXPOのキャッチフレーズは「動く。感じる。旅になる。」

 ツーリズムEXPOジャパン実行委員会の田川博己委員長(JATA会長)は「現在、東京五輪の20年を視野に、その中間年の16年を1つの節目として事業を計画している」と語り、今年は昨年からステップアップし、新しいプログラムや取り組みに挑戦していくとした。「16年はリオデジャネイロで、オリンピックの次回開催地として東京がコールされ、日本が注目される年。ツーリズムEXPOジャパンも大きく飛躍するジャンプの年にしたい。観光産業の関係者にとって、欠かせない観光総合イベントへの確立が大きな目標」と述べた。

 大きな5つの事業を展開するなかで新たな取り組みとして、観光産業の発展や拡大に寄与する団体や個人を表彰する顕彰事業「ジャパン・ツーリズム・アワード」を創設する。「国内・訪日領域」「海外領域」「UNWTO部門賞」の3部門を設ける予定。見並陽一副委員長(日本観光振興協会理事長)は、「地域や観光事業で大きな発信をしている人や取り組みに光を当てることが、観光立国に結びついていく」と意義を語った。

 国際観光フォーラムの今年のテーマは「Tourism&Culture―旅と文化―」。文化を守り、伝えながら資源化し、それをいかに産業として拡大、発信していくかを議論する。基調講演には世界貿易機関(WTO)元事務局長で、世界観光倫理委員会議長のパスカル・ラミー氏が登壇する。また、フォーラムでは新たに日本アセアンセンターと共催でASEAN地域にフォーカスした「インターナショナル・ツーリズム・リーダーズ・ミーティング」を開催。ASEANと日本の観光産業内の各専門家やトップらによる会議を行う。

 出展数1500コマを予定する展示会は、国内・訪日関連が約4割増加する見込みで、北海道新幹線開業を控える北海道が大きくPRを展開するほか、訪日外国人観光客の増加を背景に、ショッピングツーリズム協会が30コマと大規模なブースを展開する。

 今年の交流会「JAPAN NIGHT」は、都市空間を利用した「都市型MICE」を具現化。丸の内エリアの国家戦略特区を活用し、伝統と先端、技術とアートを通し、日本の多様性を体感する空間を演出する。

 これらの展開で、今年の入場者数は約17万人を見込む。若年層にはSNSでの発信強化をはかるほか、在日外国人向けのPRも積極的に行い、昨年から約1万人の増加を目指す。

旅館内に「ローソン」、宿泊客ニーズに対応(琵琶湖グランドホテル)

ローソン琵琶湖グランドホテル店
ローソン琵琶湖グランドホテル店

 滋賀県大津市のおごと温泉の琵琶湖グランドホテル(金子博美社長)の館内に5月9日、「ローソン琵琶湖グランドホテル店」がオープンした。旅館内に大手コンビニチェーンが出店する全国初の事例。オープン後に、同店の詳細や出足の状況など取材した。
【関西支社=土橋 孝秀】

 ローソン琵琶湖グランドホテル店は、館内1階ロビー内に新設。正面玄関入ってすぐのフロント横に位置する。婦人服や雑貨を販売していたブティックとロビーラウンジの一部を改装したもので、店内の広さは約200平方メートル。ローソンの一般的な店舗と比べ、ほぼ倍の広さがあり、飲料やおにぎりなどお馴染みのローソン商品のほか、同ホテルがこれまで売店で販売していた土産品約600種類をローソンに販売委託する。

 店内入ってすぐのスペースが土産品エリアで、菓子類や地酒、漬け物、コスメ商品などがずらりと並ぶ。奥がローソン商品のエリアで、淹れたてコーヒーを販売する「マチカフェ」のほか、ATM(現金自動預け払い機)や酒・たばこ販売、郵便・宅急便取り扱いなど通常のコンビニサービスを提供する。

 店頭のネオンサインはローソンカラーの青色をほとんど使わず、木目調の落ち着いた色合いにし、和風旅館の雰囲気とマッチするようにした。店員の制服も青白ストライプではなく、茶色のエプロンに黒シャツで統一。店内からは中庭を望み、開放的な空間になっている。営業時間は午前7時から午後11時。年中無休(休館日・貸し切りなど除く)。

 同ホテルの下田直輝専務は、従来の売店を閉鎖し、コンビニ導入に踏み切った経緯について、「お客様の利便性アップや幅広いニーズに応えるのが最大の目的」と話す。ローソンで購入した酒・つまみ類の宴会場への持ち込みはできないが、客室への持ち込みは可能。ローソンオープン前まで、客室で飲む酒やデザートを求めて、約400メートル離れたコンビニまで買い物に行くお客もいたという。

 一方、ローソンも新業態への出店を加速するなか、宿泊・日帰り合わせ年間24万人が利用する同ホテルの集客力に目を付けた。

 同店の長谷川尚太店長は「フランチャイズオーナーとして、別に1店舗運営しているが、新しいことの連続」と話し、宅配数の多さやピーク時の集中具合など“旅館内コンビニ”という特殊性に驚く。

 オープン後の状況は、土産品購入が大半で客単価は約1500円。従来の売店とほぼ同額だが、ローソン側からすると通常店舗の約3倍という。ローソン商品では酒やつまみなどが売れるが、ポテトチップスなどの袋菓子はほとんど売れないという。しかし、家族連れが多い夏場になると状況が変わる可能性もある。下田専務は「年間を通して状況を見ていきたい」と話し、「お客様の反応は好評。商品をさらに充実させ、魅力的な“コンビニ店舗型売店”にしていきたい」と意気込む。

お馴染みのコンビニ商品が並ぶ
お馴染みのコンビニ商品が並ぶ
店内の土産品コーナー
店内の土産品コーナー

下田直輝氏
下田直輝氏

琵琶湖グランドホテル・下田直輝専務

 ――コンビニ導入の経緯は。

 10―15年前は団体客中心で、売店では土産物のまとめ買いがほとんどだったが、今はまったく違う。個人客に客層が変化するなかで、今の売店のままでは売り上げ増は見込めない。お客様の幅広いニーズに応えるには、コンビニ導入が最善と考えた。旅館にコンビニを入れることに社内から異論もあったが、最近のお客様は旅館に対して、旅館ならではの「非日常性」に加え、シティホテルのような「機能性・利便性」を求めることが増えている。MICEやインバウンド客はとくにその傾向が強く、導入に踏み切った。

 ――改装にあたって。

 和風旅館のイメージを損ねない店作りを第一条件に求め、壁や床の色、照明などを提案した。具体的には、照明は通常店舗ではLEDの蛍光灯だが、ここではLEDのダウンライト。結果、柔らかい雰囲気に仕上がった。店頭のローソンマークもできるかぎり小さくしてもらった。

 ――店員におもてなしが求められる。

 スタッフの教育はローソン側の範疇だが、館内にある以上、「コンビニの対応が悪い」と言われれば、我われの責任も免れない。人材教育の徹底は繰り返し求めているが、今後も重点を置いていきたい。

 ――インバウンド客の利便性も高まるのでは。

 全館・全客室Wi―Fi対応するなどインバウンド誘致に力を入れている。台湾の旅行会社からは早速、「ホテルに到着する前に必ずコンビニに寄っていたが、その必要がなくなる」という喜びの声をいただいた。(同店を運営する)フランチャイズ会社には免税への対応と、ドラッグ商品などの充実も働きかけている。

 ――宴会の酒類売り上げ減などリスクは。

 コンビニ商品の宴会への持ち込みはできず、大きな影響はないと想定している。それよりもお客様の利便性が向上することで、旅館のイメージアップになる。会議などMICEの取り込みも強化しているので昼間のお客様も多い。これまでの売店売り上げをローソン側に差し出しても、宿泊客・日帰り客の増加などで全体の売り上げアップにつながると期待している。

長谷川尚太氏
長谷川尚太氏

ローソン琵琶湖GH店・長谷川尚太店長

 ――旅館内に初めての出店だ。

 客単価の高さに驚いた。通常店舗は400―500円程度だが、ここは約1500円。売れる時間も夜9時から11時と、朝7時30分から8時30分に集中する。人員シフトも難しいが、団体客の詳しい情報をホテルから毎日もらい、対策を立てている。

 ――ローソン商品の品ぞろえは。

 通常店舗の3分の1程度にアイテム数を絞っている。調味料や洗剤、日用品などは置いていない。ただ、不要と思っていた尿漏れパットやストッキングなどに意外な需要があることもわかった。旅先で粗相はしたくないというお年寄りのニーズがあり、ストッキングはホテルの従業員を中心に売れる。補聴器のボタン電池を買われたお客様もいて、他の旅館では電池が置いていないと喜ばれた。

 家族連れが増える夏場になると、おにぎりやジュース、弁当の需要が出てくるだろう。ホテルとしっかりコミュニケーションをとりながら、お客様のニーズに対応していきたい。

 ――店づくりについて。

 スローガンは「旅先の思い出に笑顔を添えて」。スタッフ全員でその想いを共有して、おもてなしに取り組んでいる。「いらっしゃいませ」の掛け声も通常店舗では大声を張り上げるが、旅館でそれは馴染まないので、落ち着いたトーンになるように工夫している。お客様はローソンに来ているのではなく、旅館に来ているということを肝に命じ、努力していきたい。

新社長に清水一郎氏、伊予鉄道

清水一郎社長
清水一郎社長

 伊予鉄道(本社・愛媛県松山市)は5月25日、新社長に清水一郎副社長が昇格する人事を内定した。佐伯要社長は会長に就任する。6月25日に開かれる株主総会と取締役会で正式に決まる。

 清水氏は国土交通省観光庁で観光戦略課長などを歴任し14年4月に退官、同年6月から同社副社長に就任している。

 清水氏は松山空港ビル、伊予鉄タクシー、伊予鉄トラベルの社長も兼任する。
 
 
 

8年連続沖縄1位に、海外はマレーシアがトップ(ロングステイ)

 ロングステイ財団(舩山龍二会長)がこのほど発表した「ロングステイに関する意識調査」によると、2014年度の国内のロングステイ人気都道府県は8年連続で沖縄が1位となった。海外の希望国トップは9年連続でマレーシア。

 国内ロングステイは滞在期間1週間以上で、地域文化との触れ合いや住民との交流を深めながら滞在するライフスタイルと定義づけており、今回は全国の1060人に対し、移住や引っ越しではないことを前提に国内ロングステイへの関心を調査した。

 順位は、沖縄以下、北海道、京都府、長野県、東京都、福岡県、静岡県、神奈川県、宮崎県、鹿児島県。ランキングに入った都道府県は、気候や交通・施設などの環境がよいことなどが理由にあがった。

 海外のロングステイ調査は、同財団が14年4月から15年3月までに主催したイベントなどの参加者にアンケートを行ったもので、有効回答数は3575枚。

 マレーシアの人気は、受け入れのための査証プログラム「マレーシア・マイ・セカンドホームプログラム(MM2H)」制度の充実や気候、治安、医療水準の高さにあるという。2位以下はタイ、ハワイ、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、シンガポール、アメリカ本土、フィリピン、インドネシア。

 なお、国内、海外の調査とも詳細は9月に発売予定の「ロングステイ調査統計2015」で発表する。

四国DC17年春に、4県・JR四国など会合開く

四国DC推進委員会の第1回会合
四国DC推進委員会の第1回会合

 JRグループの大型観光キャンペーン「四国デスティネーションキャンペーン(DC)」の2017年4―6月実施決定を受け、高松市内のホテルで6月1日、四国4県やJR四国などで組織する四国DC推進委員会の第1回会合が行われた。

 四国DC開催は03年以来14年ぶり。DC期間中はJRグループ6社が駅構内や列車内で四国PRを集中的に展開する。

 会合には四国ツーリズム創造機構の松田清宏会長をはじめ、徳島県商工労働観光部の折野好信次長、香川県交流推進部観光振興課の玉井秀紀課長補佐、愛媛県経済労働部観光交流局の佐伯登志男局長、高知県観光振興部の伊藤博明部長ら14人が参加した。

 松田会長は「ようやく誘致することができた。四国には素晴らしい素材がたくさんある。本番まで時間は少ないが、推進委員会と実行委員会が両輪となり、何度も四国へ来てもらえるようなキャンペーンを展開したい」と意気込みを述べた。

 同日には推進委員会事務局(四国キヨスク本社内)の看板かけ式典も行われた。

 来年春には旅行会社の担当者らを招き、「全国宣伝販売促進会議」を開くほか、プレDCも展開。瀬戸内国際芸術祭2016とリンクさせ、四国への誘客を強化する。

架空の旅行会社設立、提携会社でツアー販売(高知県)

尾﨑知事(中央)やブロガーらが登壇した
尾﨑知事(中央)やブロガーらが登壇した

 高知県は6月3日、高知の知られざる魅力を体感できる架空の旅行会社「高知家 エクストリーム トラベル社」を立ち上げ、東京都内でキックオフイベントを開いた。年間30ほど企画されるツアーは、提携する旅行会社(JTBコーポレートセールス、とさでんトラベル)を通して実際に販売し、同日、Webサイトもオープンした。

 第1弾として発売されたプランは、高知の街中を食と酒を楽しみながら走る「路面電車で土佐の宴を!」や、高知が誇る高級料亭「濱長」で土佐芸妓とお座敷遊びが体験できる「土佐のお座敷遊びを極める!」などの6ツアー。一般的な高知のイメージを飛び越える、“エクストリーム”なツアーを取りそろえ、尾﨑正直知事は「『ドを過ぎる』のが高知流。地元の人だけが知っている高知の魅力を、ぜひ県外の皆様にも体験していただきたい」とアピール。今後はツアー参加者への調査や、サイト上で募集する旅行企画の提案などのマーケティングデータを元に、観光資源の発掘や、オリジナリティある旅行パックの企画開発も行っていくといい、「Web上でツアーを進化させていき、より多くの旅行会社様で扱っていただけるよう商品化できれば」と期待を寄せる。

 サイト内では、実際に人気ブロガーにツアーを体験してもらい、執筆したブログのSNSシェア数を競う「エクストリームブロガーフェス」も開催し、ブログやメディアタイアップを活用した情報発信も展開していく。

 イベント当日は、参加する6人のブロガーが登壇し意気込みを語ったほか、濱長の土佐芸妓・かつをさんも駆け付け、「しばてん踊り」など、土佐に伝わるお座敷遊びの魅力を紹介した。

No.403 40周年記念事業、台湾で「100選」旅館をPR

40周年記念事業
台湾で「100選」旅館をPR

 旅行新聞新社は今年、「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」が40周年を迎えたのを記念し、4月23―26日まで台湾で「100選」事業を売り込むプロモーションを実施した。日本からは趣旨に賛同した100選入選旅館、21軒・31人が参加。期間中は、台北で開催された雑貨などの見本市「ギフショナリー台北」に出展して一般消費者にPRを行ったほか、24日は台湾の旅行会社30社を招き、説明会と施設との交流・商談会を開いた。

 
 

 
 

≪旅行会社30社が参加、旅館との商談会実施≫

 4月24日の説明会・交流会は、台湾の観光業界専門誌で本紙と提携している旅奇(Travel Rich)の協力で実施。台湾で、日本への旅行を扱っている旅行会社30社・50人が集まった。

 台湾の旅行会社を前に旅行新聞新社の石井貞德社長は「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選は我われが40年前から開始したイベント。40年を記念し、今回の台湾でのプロモーションを企画した」と説明。「昨年は283万人、今年は1―3月ですでに77万人の台湾のお客様が日本を訪れており、皆様が送客していただいていることに感謝している。今日は山形から鹿児島までの選ばれた旅館が参加しているので、交流を深めていただき、より多くのお客様を日本へ招いてほしい」と語った。

 説明会では…

 

※ 詳細は本紙1587号または6月5日以降日経テレコン21でお読みいただけます。

政治と観光 ― 純粋な民間交流とは異なる印象

 日本人海外旅行者の伸び悩みが続いている。円安という要因は大きいが、近隣国への旅行者の大幅な減少も影響している。

 日本は自由な国である。外務省の渡航情報で退避勧告や渡航延期勧告に指定されたエリアでなければ、しかるべき手続きを踏んだうえであれば、基本的に世界中どこを旅行しようと、問題はない。

 旅行先を選ぶ際には、「憧れの国」や「料理の美味しい国」「危険の少ない国」「旅行中に心地よい思い出が作れそう」「笑顔でもてなしてくれる国」などは人気が高いだろう。

 日本は今、海外からの外国人観光客が多く押し寄せている。こちらも円安効果によるところが大きいが、決してそれだけではない。その国に魅力が必要であるし、安全性や、おもてなしの心がなければ、多くの外国人観光客は訪れない。ある意味で、厳しい国際競争である。紛争が起こったり、治安や衛生面などに不安があれば、外国人観光客の足は止まる。だから観光大国はそれらに気を遣いながら自国の魅力を大々的にPRするし、文化力も磨いていかなければならないし、国際的な関係にも細心の注意を払う。

 経済や人的交流が密接になるほどに、平和とは反対の方向に向かうケースが意外と多いというのは、観光業界の末席に身を置く者として残念であるが、事実である。経済は政治よりも、国境の壁は低い。「政冷経熱」という言葉があるように、たとえ国と国の関係が上手くいかず、緊張関係になったとしても、民間同士のつながりは簡単には切れない。企業はすでにグローバル化しており、政治的な国境線は無意味どころか、障壁にさえなっている。

 ビジネスを除く観光客は、もっと個人の事情によるもので、「危険」だと感じた国には進んで行かないし、「自分たちが良い印象を持たれていない国には、あまり行きたくない」というのは、自然な感情である。それでいいはずである。そして、そのような数字が現れている。

 「国際交流は大切か?」と聞かれれば、答えはYESである。「青少年の交流は増やしていくべきではないか?」と問われれば、その通りである。仮に「深い関係のある近隣国との政治的な関係が悪化し、交流が細くなっている状況にあるならば、民間が進んで交流を太くさせるべきではないだろうか?」と言われれば、首を横に振ることはできない。

 すべて「その通り」であるし、異論を差し挟む余地はない。なぜか。それは、正論だからである。

 正論は正しいから正論なのだが、正しいがゆえに、それを持ち出されてしまえば、誰も反論できないという欠点を持つ。それが権力者であれば、なおさらである。

 多くの日本人は、相互の国際交流の大切さを知っているし、「そうすべき」だとも思っている。それを百も承知のうえで、「そうしない」現状を、私は良識だと捉えている。充分に良識を持ち合わせた大多数の民間人が旅行を差し控えるには、それなりの考えや理由があるからであり、無理な修正は逆に危険な流れを生む可能性もある。

 今回3千人超の観光業界の観光文化交流団が訪中した。「民間交流」の言葉が強調されていたが、純粋な民間交流とは異なる印象を受けたのは、私だけだろうか。

(編集長・増田 剛)

派遣団3162人が訪中、人民大会堂で観光交流の夕べ

北京市の人民大会堂に3000人超の訪中団
北京市の人民大会堂に3000人超の訪中団

 日中観光文化交流団(団長=絹谷幸二氏)は5月22―24日の日程で、中国・北京市を訪れ、中国旅行社との商談会や、ファッション・観光・文化交流会、ビジットジャパンFITトラベルフェアなどさまざまなイベントを実施した。

 23日には人民大会堂に3162人の派遣団が一堂に会し、「日中観光交流の夕べ」を開いた。習近平国家主席も出席し、二階俊博自民党総務会長と握手をした=写真。また、絹谷団長が「日中交流に尽力していく」旨の民間宣言を行った。